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【猪瀬直樹×東浩紀×夏野剛】トランプが勝ったので言いたいこと言ってみた 「アメリカ人は自分を承認してくれる強い父を求めていた」

 全世界が注目する中、過激な発言で話題を集めてきた共和党のドナルド・トランプ氏の勝利というまさかの結果に終わったアメリカ大統領選。

 トランプが勝利したその日の夜に、元都知事で作家の猪瀬直樹氏、評論家の東浩紀氏、実業家の夏野剛氏の3人が急遽集合。「アメリカ大統領選挙終わってトランプ勝ったので言いたい事を言う生放送」と題し、米国の行く末や世界が抱える課題について、酒を囲んで気兼ねなくしゃべる生放送を敢行した。

 「ヒラリーじゃ世界は面白くならない」、「今は過激な民主主義の実験の時代」、「政治学者には今回の選挙は語れない」など、3人の口から誰にも縛られない意見が次々と飛び出す!


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左から猪瀬直樹氏、夏野剛氏、東浩紀氏。

勝ってしまったトランプ

夏野:
 ニコニコユーザーの皆さん、こんばんは。緊急特別番組でございます。アメリカ大統領選挙は日本時間の9日夕方ごろ、ドナルド・トランプさんが次期アメリカ大統領になることが決まりました。この番狂わせは日本でも大きな報道になりました。大衝撃です。今日本は動揺していると言っても過言ではありません。そんな中で急遽、特別番組をご用意しました。名付けて「アメリカ大統領選挙終わってトランプ勝ったので言いたい事を言う生放送」! ということで、このトランプ勝利を私たちはどう受け止めるのか。NG一切無しで議論していきたいと思います。今日のスペシャルゲストはなんと、猪瀬直樹元都知事と評論家の東浩紀さんです。

東:
 よろしくお願いします。

夏野:
 なんとトランプさん私、大学の先輩なんだよね。何の関係もないけどね。

猪瀬:
 ペンシルバニア大学だよね。

夏野:
 イヴァンカ・トランプも後輩なんですよ。娘ね、美人の。

東:
 じゃあもうすっかりトランプファミリーじゃないですか。トランプとクリントン、どっちが良かったんですか? 宮台真司さんと小林よしのりさんはトランプ支持を表明しましたね。

夏野:
 経営者の特質っていうのがありまして。勝ったら変わるんですよ。孫さんの言動を見てって。お前太陽光発電どこ行ったんだ、孫さん。日本の携帯業界良くするつもりが今利益貪ってるじゃねえか。

東:
 今日の結果見て、夏野さんの中で変わっちゃったんだ。

夏野:
 いやいや、俺じゃない。トランプがこれから変わる。だって手段と実際やることは別だと思っちゃってるんだもん、あの人。政治家としていちばん大事なことは、今まで我々はね、首尾一貫性とか哲学とか論理の一貫性だと思ってたじゃないですか。そういうことは関係ねえ、結果さえ出せばいいっていうのが経営者なんですよ。その経営者代表がトランプだと思ってるんで。

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東:
 猪瀬さんいかがですか。

猪瀬:
 ケント・ギルバートが面白いことを言ってたんだけど、ニューヨークのセントラルパークのスケートリンクが改修工事で6年続いて終わんないと。そうしたらトランプが来て個人資金を投じて3ヶ月で完成させたと。こういうエピソードがあるわけだよね。クリントンさんじゃ面白くないでしょ、結局。だから何かを期待してるんだよね。

夏野:
 今回クリントンじゃなくてトランプに投票してるほうが格差に苦しんでる人たちなんですね。要は所得レベルが低いとか、いわゆる都会と田舎の問題とかね。今回得票を取ってる、共和党が元々強かったというのもあるんですけど、あんまり豊かじゃないところは一斉にトランプ。でもトランプは格差の象徴みたいな男なわけですよ。

東:
 分析そのものは簡単なんだと思うんですよね。多くの人が言ってる通り、リベラル疲れ、ポリティカル・コレクトネス疲れ、多様性疲れってやつでして。

夏野:
 日本でも起こってるね。

差別したい気持ちは人間の中にある

東:
 ポリティカル・コレクトネスなんてうんざりだと。そういう気持ちって人間の中にあるわけですよ。もういいよと、ぶっちゃけうんざりだよみたいな感じの、俺らは本音で生きていきたいからっていうのが来たってことでしょう。これ自体には所得の階層はあまり関係ないと思いますよ。白人貧困層も支持してるかもしれないけど、直前にオルト右翼が話題になりましたように、シリコンバレーのエリートたちも今回かなり支持している。あと、女性も意外と支持したって数字が出てます。

夏野:
 一方でヒラリーは、せっかく女性っていう利点を持ってるのに、老練な政治家っていう売り方しちゃいましたよね。

東:
 しかしヒラリーってなんであんなに嫌われてたんですかね。

夏野:
 やっぱね、ババアだからだよ。

東:
 ちょっと本音を出し過ぎじゃないですか(笑)。

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猪瀬:
 今回は政治という期待じゃないよね。つまり違うものを探してるってことだよね。今回ワシントンポストもニューヨーク・タイムズも間違えたでしょ?

夏野:
 時代環境の変化を全くメディアが捉えてなかったということだと。今までのメディアの立ち位置って若干左目のリベラルっていうのが一番安全なポジションだったわけですよね。

東:
 だから今回分析としてはシンプルなんですよね。いわゆるサイレントマジョリティーこそが被害者意識を募らせてるっていうのは、いま全世界で起きてる現象ですよね。日本でも起きてる。例えば僕なんか男性の日本人で団塊ジュニア世代で人数も多くて、おまけに結婚して子供もいるわけだからマジョリティーもマジョリティーなんだけど、だから、この生き方がいいでしょって絶対に言えないわけね。子供持ったほうがいいよなんて絶対に言えないし、結婚した方がいいよとも言えない。なぜならそれ自体が暴力だしハラスメントになるから。公には、同性愛もいいよ、子供産まないのもいいよ、結婚しないのもいいよって言うしかない。まあ、それはそれでいいし、そういうのが必要だとも思うけど、他方、ときどき、なんで俺は素朴に自分の生き方を肯定できないんだとは思うわけです。おまえの生き方そのものがマイノリティの否定だって言われても、俺は俺だしなあ、みたいな。

夏野:
 それは主流だから言えないみたいな。

東:
 主流だからこそ言えないし、多数派だからこそ言えない。多数派の自己肯定自体が暴力になってしまうという現実がある。それは現実に存在すると思います。でもかといって自分がマイノリティで「ない」ということ自体は、それはそれで逃れられない条件なわけじゃないですか。で、そういうことに対して鬱屈みたいなものが……、これは政治以前の問題じゃないかな。今回のトランプ現象っていうのは、政策とかの問題ではなくて、もう少し手前の段階の問題だと思うんですよね。

夏野:
 これって今全世界で起こりつつあるじゃないですか? 要は、みんなが貧民である。フィリピンで起こったことも全く一緒だし、ロシアだって同じことが起こってるわけですよね。 で、言ってみれば、日本もそういう匂いがあるわけじゃないですか?

この人生を誇りに思いたい

東:
 白人男性で、キリスト教の信者で、中西部に住んでて、爺さんも曾祖父さんも農家で荒野を耕してきたと。そういう人も自分の人生を誇りに思いたいわけですよね。

夏野:
 思いたい。テキサスとか。

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東:
 思いたい。親父は第二次世界大戦闘ったよと誇りたい。でもそれに対して、いやちょっと待てよ、そうじゃないんだ、多様性を大事にしなきゃいけないんだと言われ続けるわけですよ。

夏野:
 ただね、僕は最初に言ったようにトランプはビジネスマンなんで、結局最後はTPPの話も損得で行くことになると思う。

猪瀬:
 もちろんそうなるんだけど、トランプが国家を守ろうとすればTPPはグローバル化だからいらないってことになるんだよね。その国民でいたいという人たちがグローバル化に対して、移民も含めて反対しているっていうのが、おそらく沈殿しているんだよね。

夏野:
 沈殿しているのと、なにか情報がよくわかってないままに判断しているっていう、小池都知事現象とかと似ているところにあって。

猪瀬:
 つまりメディアは遅れているわけだよね。

夏野:
 メディアの立ち位置はちょっとリベラルな左で理想を言っていて、現実にできないところを言ってるから。そうすると、あらゆる新しい政策は、全部批判的にならざる負えないんですよね。

トランプをトリックスターに仕立て上げたメディア

猪瀬:
 トランプとクリントンの戦いが四年のうちの一年以上やってるわけだよね。いろんな欲求不満を全部吐き出しているわけだよね、一年間で。南北戦争と同じなんだよね。南北戦争って、成人男性の四人にひとりが死んでるんだよね。徹底して残酷な戦い。その内戦の固定化というのが、四年に一回政争をすることによって、新しい王様を選ぶと、その王権の正当性が出てくると。そうするといっぱい沈殿しているものが全部浮上してくるわけだよね。

夏野:
 ただ、メディアはそう思ってなかったんだけど、メディアが実はトランプを応援しちゃったんだよ。ヒラリーを押しすぎちゃって。

猪瀬:
 トランプをトリックスターとして扱ったから。非合理的な無意識的なものがバッと吹き出した。

夏野:
 よくよく政策を見ていると、あんまりトランプの政策の中に国民にとっていいっていうことはあまりないんですよね。金持ち優遇じゃんということを堂々と掲げてるし、移民は入ってくるなとか、けっこう過激なことを言っていて。

猪瀬:
 国民国家のかつてのモデルをもう一回再構築しようって話だね。グローバル化を止められないことはみんなわかってて、でも止めてほしいというふうなことですよ、要は。だけどこれから先グローバル化に行くしかないんだよね。移民はいけないとかTPPは反対だとかっていうと、引きこもり型の国民国家になるけどね。でもそれは、20世紀の世界だね。21世紀ではないね。

夏野:
 あの人はマーケティングの人なので、なにかシンボリックなものはものすごく攻撃するんだけど、そうでないものはほっとく感じはするんですよね。

猪瀬:
 本人も半分無意識でやってると思うんだよね。政策がそれぞれ矛盾しててもあまりかまわない。何が心に響くかとか、彼自身の本能みたいなものと、沈殿しているいろいろな想いみたいなものがシンクロしてるんだよね。

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