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コミケや二次創作ができなくなる!? 「著作権の非親告罪化」という大問題【山田太郎と考える「表現規制問題」第1回】

 マンガやアニメなど「表現の自由」を守る活動に取り組む「表現の自由を守る会」の山田太郎氏を案内人として、「著作権の非親告罪」「有害図書指定」「国連勧告」「児童ポルノ禁止法改正」など表現規制のアジェンダを考える連続企画(全5回)がスタート。

 第一回目は、≪コミケが危篤だった日≫と題し、2014年当時、「コミケが開催できなくなるかもしれない」とまことしやかに囁かれていた二次創作をとりまく環境を今一度振り返る。その背景にあったTPPによる著作権の非親告罪化とは一体何なのか? 非親告罪化になった韓国では、マンガ、アニメ、ゲームが壊滅状態にあるという実例を踏まえ、徹底検証!

 ゲストに『魔法先生ネギま!』などを作品に持つ赤松健先生をお迎えし、「表現規制」を巡る国会で行われた議論の裏側、創作活動に与える影響、フェアユースなどについて、大ボリュームの“記録に残る”議論をお届けします!


山田太郎と考える「表現規制問題」 全五回のテーマ一覧(第二回に予定していた自主規制の話題が第五回に変更になる予定)

「TPPと著作権の非親告罪化の問題」とは何か?

山田:
 全5回に亘ってお送りする予定のこのシリーズですが、第1回目である今日は、「著作権の非親告罪化」についてお話を進めていこうと思います。タイトルにもある“コミケが危篤だった日”。つまり、かつてコミケが開けなくなるかもしれないという事態と、著作権の非親告罪化は深い関わり合いを持っていました。表現にまつわる問題は、これまでにもいろいろとありましたが、今後はより表面化してくる可能性があります。そういったことに関して、5回の放送を通じてしっかりとした議論を行い、記録に残るような番組になればと思っています。 

左から、智恵莉(フリーアナウンサー / モデル)、山田太郎(前参議院議員)、赤松健(漫画家)

智恵莉:
 山田先生、最初に「TPPと著作権の非親告罪化の問題」についてお伺いしたいのですが、TPPによる3つの大きな問題があるというのはどういうことなのでしょうか?

山田:
 最初に、「著作権の非親告罪化」と「TPPの問題が何なのか?」ということを整理しておきましょう。TPPが締結することによって、3つの問題が指摘されていました。一つは「著作権保護期間の延長」です。今、日本の著作権は50年間と決まっています。50年経つと、あらゆる著作物が自由になります。つまり、50年間は作った本人のものであるということですね。ところが、これを70年にしようという動きがありました。よく「ディズニーを保護しているんじゃないか?」なんて噂されていますけど、ディズニーさんの没後の年数が経つにつれて30年から50年と増えていった。そして今度は70年に……ちまたでは“ネズミ法”なんて言われていますね(笑)。

赤松:
 保護期間の延長に関しては、大御所の作家さんたちはかなり賛成しているみたいですよ。どうやら遺族の方が50年よりも70年のがやっぱり嬉しいよね、みたいなところがあるみたい。

智恵莉:
 なるほど(笑)。

山田:
 もう一つが、まさに「コミケが危篤だった日」というテーマに関わってくるのですが、「著作権の非親告罪化」という問題。著作権というのは、絵を描いたり、曲を作ったりなど創造物を作った場合、作った本人にその創造物の所有権が自動的に与えられる知的財産的な権利です。当然、他人が勝手に使用してはいけません。使用するには著作者に対価を払ったり、許可を取らなければいけないわけです。日本の法律では親告罪、要するにたとえ真似てある著作物を使ったとしても、使われた著作者が訴えない限り罪には問われなかった(裁判は始まらなかった)わけですが、非親告罪となると、たとえ著作者が訴えなくても、警察当局が「これは著作権を犯している」と見なせば捜査、逮捕、起訴が可能になってしまいます。

山田:
 著作権の非親告罪の中には、かなり大きなものも混じっていて、分かりやすいところでは“コスプレ”も入ってしまいます。もともとオリジナルがあるものを真似る=パロディでやるわけですから該当するわけです。そして、ニコ動ではおなじみの“歌ってみた”“踊ってみた”なども含まれる。当然、コミケなどで扱われている同人誌も該当します。日本のマンガ家志望の皆さんは、赤松先生のような大作家のマンガを真似ながら勉強していく人も多いですから、由々しき事態と言えるわけです。

赤松:
 恐れ多い(笑)。 

山田:
 日本では写経、守破離しかり、「学ぶより慣れろ」「慣れるより盗め」なんて言われているくらいです(笑)。そういったことが否定されかねない事態になっていくということですね。 コミケで扱っている著作物の多くが、著作権上、グレーな部分がある……ゆえに著作権の非親告罪化が行われてしまうと、誰でも捕まる恐れがある。警察当局の命令によって、コミケが開催できなくなるではないかという可能性があるわけです。

 そして、3番目が「法定損害賠償制度」について。賠償の仕組みというのは、どれぐらい損害があったか? ということを被害者が証明する必要があるのですが、明確な数字は分からないところがあるわけです。何部刷って、どれぐらい売れたのか? などは正確に算出することが難しいんですね。そのため金額に懲罰的な側面も持たせていました。

智恵莉:
 なるほど。

山田:
 正確な数字ではなく、簡易的な計算で被害額を算出しても、懲罰の意味も含め多めに損害賠償額が課されてきたわけです。著作権を犯した場合の損害賠償額は、かなり多額になることも珍しくない。コミケで同人誌を売っている人たちからすれば、気軽に売っていただけなのに想定外の請求をされるというケースもありえる。

 以上の3点が特に問題視されていた部分となります。2014年3月の段階では、「このような状況ではコミケが開けなくなるんじゃないか!?」と不安視されていたわけです。

ニコニコユーザーも該当するかもしれない身近な問題!

智恵莉:
 赤松先生は、この問題に関してどのような意見をお持ちでしょうか?

赤松:
 う~ん、“踊ってみた”もダメっていうのはねぇ(苦笑)。振付にも著作権があるんですよね!? 踊っていただけで警察が飛んできて起訴されるかも……というのは無茶苦茶ですよねぇ。ニコニコ動画は、JASRACと契約を結んでいるので曲や歌詞に関しては大丈夫なんですよね? 

山田:
 そうですね。

赤松:
 コミケに限らず、この番組を見ている人の中にも該当してしまうかもしれない人がいる、と。実はこの問題は、非常に身近な問題なんですよね。

智恵莉:
 コスプレをしてコミケに行かれている方も多いでしょうし、ニコ動を利用して“踊ってみた”などをする人も多いと思いますから、確かにその通りですね。

山田:
 とりわけ二次創作、つまり同人誌の存在がクローズアップされると思うんですけど、赤松先生自身も同人作家の経験がありますよね? 実際経験した身として、どのような印象を持たれますしょうか?

赤松:
 私が主に描いていたのは『セーラームーン』のエロパロでしたから、大変なことですよ(笑)!

一同:
 (爆笑)

赤松:
 しかも「まこ×亜美」の亜美受けでした(笑)。でも、私は武内直子先生から「赤松先生の同人誌ください!」って直接言われたことがあるんですよ(笑)! だから、セーフだと思う!

山田:
 それはすごい(笑)!

赤松:
 ですから、作者が好意を持っているかもしれないのに、非親告罪化が行われてしまうと勝手に起訴されてしまう可能性があるってのは恐怖以外の何物でもないですよね(苦笑)。

山田:
 ちなみに、同人誌を作っている頃の赤松先生は、著作権の存在などを気にしていたんですか?

赤松:
 全然ですよ(笑)! 「なんかグレーらしいぞ!」くらいの感覚です(笑)。みんなやってるから大丈夫だろ!みたいな。

コミケが危篤寸前だったとき、国会ではどのようなやり取りが行われていたのか!?

山田:
 では次に、この問題に関して「国会ではどんなやり取りが行われていたのか?」について話をしていきましょう。危篤の瞬間とも言える2014年は、コミケにとって非常に大変な一年だったので、時間軸を追って振り返っていきましょう。

山田:
 以前からTPPに関する議論は行われていましたが、2014年から本格的にアメリカと内容を詰めていった背景があります。2014年2月に、「著作権は非親告罪で調整」というニュースが報道されると、津田大介さんをはじめとするthinkTPP(TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム)などはいち早く反応し、懸念表明をしました。

 当時、経済産業省は『クールジャパン』の一環として、コミックを含む漫画やアニメを推進していた事実があります。立法側にあった私は3月19日に、当時の宮澤経産大臣に「安倍内閣としてどうなのか?」と質問をしました。どういった答弁があったについては、2016年4月に発売した自著『「表現の自由」の守り方』 (星海社新書)にまとめてありますので、そこから抜粋しようと思います。

山田:
 「著作権の非親告罪化となると、コミケなどの同人誌即売会などは打撃を受けると思うのですがいかがでしょうか?」

宮澤経産大臣:
 「コミックマーケットの関係者からは、仮に著作権問題が非親告化された場合には、厳密に言えば違法だが、権利者に実害がない限り、しいては問題視されていない多くの利用者を萎縮させる懸念があることを承知、認識しております」

山田:
 というわけで、否定するのかと思ったら「認識しています」と回答されてしまった(笑)。 

赤松:
 そもそも大臣が“コミックマーケット”とか言っているのがすごい(笑)!

山田:
 後日談なのですが、その後宮澤先生に会った際に「山田先生に言われて初めて“コミケ”を知りました。初めて勉強しましたよ」と言われて、おいおいおい!と(笑)。 

赤松:
 でも、あんまり勉強されると逆に困っちゃいますよね。直接視察しに来て、見られて困るものが見られたりする可能性も(笑)!

智恵莉:
 たしかに(笑)。でも、この答弁がきっかけとなっていくんですよね?

山田:
 そうです。特に「コミックマーケット等の参加者に影響がないとは言えない」という旨の発言が大問題になっていくわけです。つまり、政府が著作権の非親告罪化によってコミケに影響が出るかもしれないということを認めたと同時に、著作権の非親告罪化に関してコミケをはじめとしたアニメやマンガ、ゲームに対して、政府が全く考慮していないということがわかった。

赤松:
 そういうことですよね。

山田:
 3月19日を境に、様々な団体がこの問題に関して議論を交わしていくことになるわけですが、その後、私は6月に決算委員会で当時の甘利TPP担当大臣、下村文科大臣に質問しました。なぜ下村先生にもお聞きしたかというと、自民党が野党だった時代に「著作権の非親告化を一律化するのは良くない」と、当時の民主党政権に質問をしていた張本人なんですよ。まさか与党になったからといって、立場を180度変える……「規制する側には回らないよね!?」と思って、二人に質問したわけです。

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