プロセカ高難易度曲「ヤミナベ!!!!」制作秘話をボカロP cosMo@暴走Pが語る──「タイトルを決め打ちして作り始めた」【はじめて聴く人のためのインタビュー】
様々な人気ボカロPの楽曲リストを元に、本人からいろんなお話を聞かせてもらう本インタビュー企画。今回はカルチャー初期から令和の現在まで、長年シーンで活躍し続けるcosMo@暴走Pさんが登場!
ボカロ曲の代名詞として名高い「初音ミクの消失」ほか“消失シリーズ“や、近年はプロセカ高難易度曲の作り手としても有名なcosMoさん。
世代を越えて愛される楽曲の数々を生みだす秘訣とは。そして実際に採用を勝ち取った、cosMo@暴走P流の「プロセカ公募対策」も本邦初公開!?
作り手として活動する現役ボカロPから、いちファンとしてボカロ曲を楽しむ人まで。
幅広いリスナーにとって興味深いエピソードがたくさん語られた貴重なインタビュー。ぜひリスト曲と共に、最後までじっくり熟読して欲しい。
取材・文/曽我美なつめ
■ルーツは音ゲー曲!昔から今に至るまで一貫した“好き”を軸にし続けて
──cosMoさんはボカロ黎明期から今に至るまで、長年活動を続けられていますよね。
cosMo@暴走P:
ミクの発売が2007年8月31日だと思うんですけど、その半年前から趣味としてパソコンで音楽を作り始めていたんです。当初はインスト曲ばかりだったんですが、歌モノも作ってみようと思い始めた頃にミクが発売したので、本当にタイミングがよかったというか。当時僕は大学3年生だったんですけど、サークルの先輩に「こんなソフト出るらしいよ」って教えてもらったのが初音ミクを知ったきっかけでしたね。
──当時はまだ「PCで音楽を作る」ことは今ほどメジャーではなかったと思います。そもそものきっかけは何だったんでしょう。
cosMo@暴走P:
昔から音ゲーがずっと好きなので、その影響は大きいですね。音楽を聴くことの入口も音ゲーだったので。コナミさんの「beatmania」シリーズがすごく好きで、自分もいつかこういう音楽を作りたい、というのが曲作りのきっかけでした。中でも僕はGITADORA勢だったので佐々木博史さんの曲や、あとは”ポップンミュージックシリーズ“のwacさんの曲もすごく好きでしたよ。
──とはいえ、曲作りを始めた半年後のミク発売、その約2か月後には今や代表曲のひとつである「初音ミクの暴走」が投稿されています。今聴いても、とても作曲歴1年未満とは思えない完成度なのですが…。
cosMo@暴走P:
実は特にこれといって作曲の勉強はしてなくて、それまでの積み重ねですね。元々ピアノをやっていたので、当時好きな音ゲーの曲をひたすらたくさん耳コピして遊んでたんです。最終的に、自分の持ってるサントラの収録曲はほぼ耳コピで弾けるようになってました。佐々木さんの曲とかはものすごく難しいんですけど、どうにかピアノで弾けるようになりたくて。そんなことをしてるうちに、曲ってこうやって出来てるんだ、というのが自然と身に付いた形です。
──重ねて、初音ミク発売から曲を出すまでのスピード感も驚きの早さです。
cosMo@暴走P:
当時大学生で、時間が有り余るほどあったのも大きかったですね。人生で一番暇な時期に出会えたのは今思えばとてもよかったな、と。ただ僕の場合、そのまま初音ミクに夢中になりすぎた結果、大学を中退していまして。最終的に今も音楽作りを続けていますが、僕自身もまさかこんなことになるとは、という感じです。皆さんには絶対真似してほしくないですね(笑)。
──その中で、曲を作る時はどんな部分にこだわりを置いていますか。
cosMo@暴走P:
特に気にしてるのは初見時のフックやインパクトです。例えば最新曲の「コぇちっちゃ<てゴ×ンネ」は、僕が可不の声を聞いた時の率直な感想がそのまま発想元なんですけど、曲名が出た瞬間「なんだなんだ?」ってなるじゃないですか。そんなふうに、曲名を見た瞬間や初めて曲を知った瞬間におっ、てなる感覚を大事にしています。
──第一印象、ファーストインパクトですね。その形で曲を作るようになったのはいつからなんでしょう。
cosMo@暴走P:
ここ3~4年ですね。YouTuberさんの動画をよく見るようになって心境の変化があったというか。バキ童チャンネルやQuizKnock、Kevin’s English Roomをよく見るんですが、面白いものを作るためにしっかり工夫や試行錯誤をされてることにすごく感心して。自分もこういう風にちゃんと面白いものを作らなきゃな、と思うようになったんです。音楽とエンタメ動画って当然ジャンルは違いますけど、YouTubeという動画サイトの中では同列に並ぶので。そこに引けを取らないように、というのを意識するようになりました。過去の「初音ミクの暴走」「初音ミクの消失」あたりの頃は、どのぐらい人に見られるか等は一切気にせず、自分の好きなもの、具体的には音ゲー要素をひたすら詰め込んで作ってたんですけど。
──また、曲作りの際は歌詞とサウンドどちらが先行するタイプですか?
cosMo@暴走P:
歌詞ですね。最初は歌詞にもならないような言葉や言ってみたい事を集めて、その中で強い言葉や面白そうな言葉を拾っていく、って感じです。さっきお話した曲のフックの部分は、歌詞に関してもかなり意識していて。インパクトのある言葉や、一回聴いただけでバシっと覚えられるようなフレーズが出来るといいな、と考えつつ作っています。
──そんな歌詞についてのアイデアはどこから拾われているんでしょう。
cosMo@暴走P:
日常生活の中で思いつくことも多いですが、仕事案件でどうにか出さなきゃいけない、って時は大体MAD動画を見ますね。MADってかなりトンチキですけど妙に頭に残るフレーズが多かったり、音ハメ感やテンポ感もすごく良くて。自分の求める音楽に近い形をしてるな、欲しい要素が詰まってるな、と思うようになってからはよく参考にしています。映像のヒントにもなりますしね。
──ありがとうございます。あわせて、サウンド面のこだわりなどもうかがえれば。
cosMo@暴走P:
なるべくいっぱい音が鳴ってる曲を作りたい、という所です。これは完全に僕自身が好きな曲の傾向でもあるんですけど。やっぱり音ゲーライクな曲というか、展開が多くて、でもキャッチーで、みたいな曲を作りたい気持ちがありますね。
──ただ、そういった曲は“盛りすぎる”のがよくある悩みかとも思います。その点はどのようにバランスを取っていますか?
cosMo@暴走P:
作業中に時々俯瞰で聴いて、「展開が覚え辛いな」って思ったら必ず修正してます。音は盛り沢山だけど、なるべく聴いて一発で覚えられるような“覚えやすさ”は重視してるので。気になる所は何回も聴き直しつつ、そういう意味でのキャッチーさは大事にしています。それを軸にしないと無限に音詰め込んでいい、ってなっちゃうので。やっぱりどこかで整理はしないといけませんから。
──そんな制作の中で、cosMoさん自身が一番楽しい瞬間はいつでしょう。
cosMo@暴走P:
当初思い付いたネタがきちんと形になった時ですね。例えば「ヤミナベ!!!!」はタイトルを決め打ちして作り始めたので、最終的に楽曲がきちんとタイトル通り“闇鍋感”あるものになって嬉しかったです。曲の最初にあったテーマやアイデアをしっかり具現化出来た時というか。それが上手くいかなくてボツになる曲ももちろんあるので、その分アイデアがきちんと形になるのはやっぱり貴重な瞬間ですね。
──伏線回収というか、「名は体を表す」曲ができた時、というわけですね。
cosMo@暴走P:
あと音楽だけでなく、動画やイラストを作ってる時も楽しいです。映像って楽曲のテーマ性を補強できるので。しっかり曲名通りの音楽が作れた上で、さらにそれを補強する動画ができるともうばっちり!ってなりますね。一方で、映像を作る時はあまり作業量が過剰にならないように、やることが膨らみすぎないように、というのも気を付けてます。僕みたいに音楽も映像も全部一人でやってると、どうしても時間の取り方に限界がありますから(笑)。
■全ボカロP注目!熟練ボカロPによる“本気”のプロセカ公募対策とは
──ここからはリスト曲についても少し深掘りできればと思うのですが、この中でcosMoさん自身が一番思い入れのある曲ですとどれになりますか?
cosMo@暴走P:
難しい質問ですけど…敢えて挙げるなら「ヤミナベ!!!!」ですね。この曲はプロセカULTIMATE公募曲だったんですが、絶対採用されたくて傾向と対策をばっちり練って作ったので。狙い通り公募に受かった点も含めて思い入れがあります。
──実際に採用を叶えたcosMoさん流のプロセカ公募対策は、おそらく全ボカロPが知りたい情報だと思います。教えて頂くことは可能でしょうか…?
cosMo@暴走P:
これをすれば絶対受かる!という訳ではないのは大前提ですが(笑)。まず絶対やっておいた方がいいのは「ちゃんとゲームで遊ぶ」こと。そしてもうひとつが、歴代の採用曲を聴いておくことです。プロセカの曲公募って、これまでの応募曲が誰でも自由に全部聴ける点がとても大きな特徴で。それってつまり、落ちた曲と受かった曲が全部わかるってことなんですよ。なので僕は「ヤミナベ!!!!」応募時に、歴代の公募十数回分の応募曲を一通り全部さらって、「こういう曲が受かりやすい」とか「こういう要素はちょっとマズいかも」みたいな傾向を独自に考えて臨みました。
それと僕の場合、当時すでにプロセカに収録されてた自分の曲とかぶらない曲調かつcosMoらしい曲、という矛盾した要素の両立もポイントでした。似た曲だと公募で取る意味がないと思ったので。収録曲にないテイストかつ自分の持つ音ゲーっぽい曲要素でまだ切ってない手札をと思い、今までなかったテンポの変わる曲というアイデアを使った形です。
あとは…なるべく公募期間序盤に投稿する、ですね。期間自体は確か3ヶ月ぐらいあるんですけど、全応募曲がオープンになる分、ネタ被りで後出しになるのが個人的に嫌だったので。早めに投稿した方が比べ辛くなりますしね。似た曲が並ぶとどうしてもクオリティ勝負になりますが、人によってクオリティの基準って千差万別ですし、そもそも比べられた時点でマズいかなって思うので。そして、公募期間の最初と最後に必ず神社にお参りに行く!個人的に、最後は願掛けもかなり大事だと思ってます(笑)。
──非常に参考になるお話でした、ありがとうございます!重ねて、ボカロ初心者にもう一歩深くボカロへ踏み込んでもらうおすすめ曲だとどれですか?
cosMo@暴走P:
個人的には「僕は空気が嫁ない」ですね。2013年の曲ですが、この作品で今も使っているMV映像の“型”が定まった感じはありました。絵をパッパッと切り替えて歌詞だけを変えていくっていう。その点も含めて、自分の曲と映像の変遷をいろいろ見てもらうと面白いと思います。
──その他、ここだけの曲の裏話などもしあれば教えて頂けると嬉しいです。
cosMo@暴走P:
そしたら、「マシンガンポエムドール」でどうでしょう。最近はこの曲で自分を知って下さった方も多くて、そういう意味でも提供の機会を頂けたことにすごく感謝してますね。この曲、ただでさえテンポが速いんですけど、実は元々さらに速いテンポで作ってて。当初BPM240で作る予定だったんですが、実際にテスト実装してみたら速すぎて何も聞こえないって事態になっちゃったので、泣く泣くテンポを落としてBPM220にした経緯があります。なので、通常の音ゲー曲に比べると曲の尺も若干長めなんですよ。それは当初設定してたBPMよりテンポを落とした裏事情によるものですね(笑)。
あと、この曲はやっぱり作ってて楽しかったのをよく覚えてます。大前提が音ゲー高難易度曲として作ったものだったので、どこまでだったらギリギリ歌として成り立つか見極めたり、ただ早口でノーツを取らせるのもつまらないので、シンセやバスドラの音も混じえて取らせるようにしたり。久々にがっつり音ゲー的な観点で構成したので、作ってて本当に楽しかったです。思いっきり自分の本領発揮ができた曲でした。
■最近好きなボカロ曲から、貴重な交友関係エピソードまで
──最近も音ゲーはよくプレイされているんですか?
cosMo@暴走P:
最近は「SOUND VOLTEX」をよくやってますね。時々お仕事で譜面を作ったりしている以上、やっぱり下手だといけないな、と思って(笑)。趣味と仕事を両方兼ねて遊んでます。
──そうなると、音楽もやはり音ゲー関連をよく聴いているんでしょうか。
cosMo@暴走P:
そうですね。いろんな音ゲーの公募曲を聴き漁ることがもはや趣味な部分もあります。さっきもプロセカ傾向・対策の話に出ましたけど、そもそも普段から音ゲーの公募曲を聴く行為自体が好きなんですよ。
──対策を聞いた際、曲数を想像して実は人知れず絶句したんですが、そのお話で納得しました。cosMoさん自身、それがまったく苦にならないんですね。
cosMo@暴走P:
ボカロの投稿祭を掘る事とかも好きですし、その中でも特に音ゲーのオープン型公募は絶対聴きに回ってます。必ずそこから自分好みの曲を見つけられるので。
──ちなみに、ボカロですと最近「いいな」と思った曲は何かありますか?
cosMo@暴走P:
「星界ちゃんと可不ちゃんのおつかい合騒曲」とか。南ノ南さんめちゃくちゃ好きなんですよ。テンポも速くて音も多くてネタ曲で…。最近だと「裏命ちゃんのフクオカトリップ奇騒曲」もすごく好きですね。僕自身はパロディとかも大好きなんですけど、自分の作風に落とし込むのが少し苦手で。そういう部分も上手いな、と思いながらいつも聴いてます。
あとは、カルロス袴田(サイゼP)さんの曲も好きです。MVも面白いですし、袴田さんの絵もすごく好きなんですよ。LINEスタンプも全部持ってますし、たまにFANBOXもチェックしてます。袴田さんの曲はシンプルに元気になれるというか、聴いてて「あしたも頑張ろう」って気持ちになれますね。
──重ねてcosMoさんは長年の活動もありますし、今も交流のあるボカロPさんがきっといらっしゃいますよね。
cosMo@暴走P:
オワタPは昔からずっと仲が良いですね。この前ニコニコ動画の復活祝いで投稿された「レッツゴー!陰陽師 古伝説コラボ」も、オワタPからのお誘いで参加させてもらったので。昔はそれこそ一緒にゲームしたり、「歌ってみた」のCDを出したりもしてましたし。一番長い付き合いの人じゃないでしょうか。
──貴重な交友関係のお話まで、ありがとうございました。最後に、今後の活動でやりたいことや、目標などあればうかがえると。
cosMo@暴走P:
個人的に、もうちょっと軽い感じで曲を作りたいとは思ってます。今はずっと気合い入れて全力投球で「面白いの作るぞ!」ってやってるというか、ちょっと肩に力入りすぎてるな、と感じる時もあるので。軽い気持ちでサクッと緩く、短いスパンでポンポンとお出しできるものがあればいいな、と思ってますね。
■Information
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