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雪乃イト『百花繚乱☆スターマイン』アニメ「ブレンド・S」の主題歌が着想元であった!?代表曲をご本人ががっつり解説【はじめて聴く人のためのインタビュー】

 様々なボカロPの入門編プレイリストを元に、楽曲の裏話や制作秘話を訊くインタビュー。
 今回登場して頂くのは、今まさに注目株ルーキーとして大勢の視線を集めるボカロPのひとり、雪乃イトさんだ。

 2022年ボカコレ秋にて初投稿ながらルーキーランキング9位の躍進を成し遂げ、その後も着々とその人気を広めつつある雪乃さん。
 今回のインタビューではポップでキャッチーな楽曲とは裏腹に、そのクレバーで職人的な本人の制作スタイルの一面を垣間見る事もできた。

 これからボカロPとしての活動に挑戦したい人、あるいは音楽制作を仕事としていきたい人。そんな人にはぜひ彼の楽曲と併せて、一読して欲しいインタビューともなっている。

取材・文/曽我美なつめ


Synthesizer Vのリアルな歌唱に魅了されボカロPの道へ

──雪乃さんは以前から音楽活動経験があったんですよね。きっかけとかはなんだったんですか。

雪乃イト:
 音楽を始めたきっかけは中学2年の頃、友人に軽音楽部に誘われたのが最初ですね。バンド結成の際にギターを担当する人間がいなかったので「お前ギターな」って感じで楽器を始めて。結局そのバンドは続かなかったんですが、中3の頃には一人で曲を作り始めました。あとはアプリの「melocy」にいろんな既存曲の伴奏を作ってアップしたり。

 高校卒業後は弾いてみたをやったり、サポートやレコーディングの現場に演奏などで参加していました。空より蒼い街に加入したのもその辺りからですね。

──そこからボカロPの道に進んだ経緯はどういったものだったんでしょう。

雪乃イト:
 ボカロのソフトに最初に触れたのは中2か中3くらいの時かな。学生の頃の楽曲制作活動でも一回ボカロを使おうとしたんですが、扱いが難しくて一度諦めちゃったんですよ。

 ただ高校卒業以降に音楽関連のお仕事を頂く機会が増え始めて、いろんな現場でクリエイターの知人も増えてきて。柊マグネタイトくんなんかも、彼がボカロPになる前からの知り合いなんです。それこそ彼が初回ボカコレで大きな結果を残したのを間近で見て興味を持ちましたし、あとはやっぱりSynthesizer Vの登場も大きかったかな。

──雪乃さんの楽曲の主力は、夏色花梨や花隈千冬といったSynthesizer Vたちですよね。

雪乃イト:
 やっぱりSynthesizer Vの歌唱力の高さは大きな魅力ですね。ボカロらしい機械音声の歌声も味はあるんですが、曲全体のクオリティを見た時にミスマッチを感じる事も個人的には多くて。従来のボカロだと調声もかなり大変でしたが、Synthesizer Vはその辺の手間もかなり減ったので、これなら自分でもできるかな、と思ったんです。

──ボカロ曲を作る際、作品の着想やアイデアはどんな所から生まれるんでしょう。

雪乃イト:
 他の方の曲や、あるいはアニメ・映画なんかの映像作品から影響を受けることも多いです。自分がこの作品のタイアップを作るならどんな曲にするかな、とか。例えば「未完成エゴイズム」はLiSAさんの「Rising Hope」だったり、「オーバーレイ・ワールド」はfhanaさんの「青空のラプソディ」。あと「百花繚乱☆スターマイン」はアニメ「ブレンド・S」の主題歌「ぼなぺてぃーと♡S」が着想元だったりします。

──学生の頃のルーツにはELLEGARDENやThe Offspringなどもあるそうですが、聴かれる音楽の幅も非常に広いですね。

雪乃イト:
 ボカロ以外もかなり幅広く聴きますよ。洋楽やアイドル、アニソンにバンド…オーケストラに劇伴とか。本当に雑食ですね。今個人的な波が来てるのは、女性声優ユニットのDIALOGUE+とか、あとは東京事変。直近のボカロシーンだと、瀬名航さんのシンガーソングライターっぽい情緒やワードセンスは自分にない部分で尊敬しますし、やはりシーン全体の動向を追う意味でも、原口沙輔さんは非常に気になる存在です。

──重ねて、楽曲を作る際のこだわりなどはありますか?

雪乃イト:
 ワークフローを細かく設定する所でしょうか。制作ルーティンというか。自分の場合はまず作曲と編曲を全く別のワークとして、ピアノとシンセのみでコードとメロを出して、一番聴かせたいサビ、Cセクションを最初に作って。そこに自然に繋げるためにワンコーラスずつ作っていって、全体が〇分の想定だからここを〇秒ぐらいで収めよう、とか。

──かなり体系的というか、細部までフローを計画して制作するタイプなんですね。職人気質というか。楽曲の雰囲気から持っていた雪乃さんの印象と比べると、少し意外な気もします。

雪乃イト:
 そうですね、わりと几帳面だと思います。ざっくりのインスピレーションでうお~っみたいな曲作りはあんまりないです。かっちり作らないと後で自分が困るので…(笑)あとは演奏を他の方に依頼することも多いので、元のデータがしっかりしてないと向こうも困っちゃうじゃないですか。ディレクションも上手くいかないですしね。

ボカコレ初投稿は2作!その意図や思惑とは?

──そんな雪乃さんのこれまでの作品から、今回10曲をピックアップさせて頂きました。この中で一番聴いてもらいたい!という曲はどれですか?

雪乃イト:
 「百花繚乱☆スターマイン」ですね。自分が一番納得するクオリティで作れた曲なので。作った曲がはたして商品と成り得るか否か、を考えた時に、一番×がつけ辛い曲かと思います。

 セクションの組み方や全体のメロディのキーレンジ、スパイス的にジャジー要素を入れた部分もこだわりですし…あとは転調とか。思い切った転調より、いかに転調したことに気づかれないか、という方が好きで。サビに行くときはいかにもな進行ですけど、サビから普通のキーに戻す時ですよね。プラスにされたキーを、どうやってもう一回Aセクションをやれる所に戻すか。そこも結構こだわってます。

──あわせて、ボカロ初心者の方にお勧めするとしたらどの曲でしょう。

雪乃イト:
 それだと「追憶ポエジー」です。ボカロやアニソンなんかに普段触れない人にもより馴染みやすい、J-POP的で大衆的に寄り添ったバラードの曲が一番適してるのかな、と思います。小春六花の声もアニソンというよりJ-POP感のある声なので、聴き馴染みがいいんじゃないかと。

──また雪乃さん的に、この中で一番思い出深い曲となるとどちらになりますか。

雪乃イト:
 やっぱり「空回りライブラリ」ですね。ボカコレの初投稿でルーキー9位になって、自分を取り巻く環境が一気に変わった曲でもあったので。投稿の際もある程度は聴いてもらえると思っていたんですが、本当にまさかここまで大きな反響を頂けるとは、という感じでした。

──このボカコレでの初投稿で、本作と「最果ての譜」というまったく毛色の違う2曲をアップされた点も話題を集めていました。

雪乃イト:
 そこでいうと、やっぱりアニソン的な技術が詰め込まれた曲はトラッキングの観点からも、自分が今後仕事を受けていく上でアピールしやすい曲調だったのがまずあって。一方で当時のシーンを見た時に、暗めのムードでトラックも電子的な曲が多かったんです。なのでこのボカコレの時は、今後自分がどっちの方向性でいこうか探る目的もあっての2作投稿だったんですよ。

──音楽を仕事とする上でかなり策略的に参加されていた、と。この初投稿も、ボカコレのタイミングを狙ってのものだったんでしょうか。たまたま曲を作ったタイミングでボカコレが開催されて…という流れではなく。

雪乃イト:
 はい、完全にボカコレに照準を合わせての初投稿でした。やっぱり少しでも多くの人にリーチしたい気持ちはあったので、イベント事で視聴者さんが集まる場を選んだ感じでしたね。もちろん他の多くの作品に埋もれる可能性もありましたけど、それ以上にやっぱりある程度のリーチの可能性が欲しかったので。

“音楽制作を仕事にする”に真剣に向き合った歩み

──そのお話からの延長なんですが、楽曲のタイトルについても実は気になっていて。漢字の単語とカタカナのワードを組み合わせた曲名が多く散見される印象ですが、これももしかして意図的ですか?

雪乃イト:
 そうですね。特にデビューから最初の1年間はある程度固定のリスナーさんを掴むために、ブランディングや認知の基礎を固めていて。聴いて下さったファンの声をなるだけ漏らさず拾いたい気持ちもあって、曲タイトルの唯一性は敢えて持たせました。トレードマーク的なものというか。だからこそ月一の定期的な周期で投稿もしていましたし。

──それでもやはり、月一というハイペースでの投稿はある種のストイックさすら感じます。そうなると昨年2023年はかなり戦略的に歩まれた年だったと思うのですが、1年を経て結果としては当初の想定と比べていかがでしたか?

雪乃イト:
 ありがたいことに、思った以上に反響が頂けたというのはあります。これまでバンドでの活動や曲提供の経験はありましたが、自分主体でオリジナルな作品を出す活動は、ボカロPとしてのものが初めてだったので。

 普通なら、無名の一般人が作った音楽ってこんなにも聴かれないですよ。例えばアマチュアバンドとかも、完全新規のリスナーさんなんてライブに5人も来ればいい方で。でもボカロシーンは、素人の作った音楽でもしっかり聴いてもらえる土壌がある。これって本当にすごいことで、ありがたい環境だな、と思うんです。

──様々なジャンルでの活動経験があるからこそ、余計に実感がありますよね。そんな幅広い作風の裏で、かなり体系的で戦略的な制作をされている一面を感じさせないのも、雪乃さんの強みのように思います。

雪乃イト:
 それでいくと、「普通に聴ける曲」っていうのが一番すごいんですよ。ボカロ曲っていろんな違和感があって、それがミソだったり癖になる部分でもあるんですけど。少し勉強すれば、今世の中にあるJ-POPやアニソンが、どれだけ研鑽を積まれているものかがすごくわかるんです。いかにもな難しい事をしている曲も格好いいですけど、それって結局聴き手を選んでしまう一面もあって。今シーンの最前線にいるクリエイターは技術を磨いた先に、いかに音楽を知らない人にも曲を届けるか、になると思うんですよ。

──ボカロシーン自体、まだまだその傾向が色濃く残る印象はありますね。いわゆる“ボカロっぽい曲”というか。その中でも雪乃さんは、もっとボカロで大衆的な音楽をしたい、という方向なのでしょうか。

雪乃イト:
 そうですね。自分の場合はシーン外からも依頼を受けたいですし、そうでないと音楽制作の仕事では生きていけないので…そうなると聴き手を選んでる場合じゃないというか(笑)

──仕事としての音楽、という言葉だと少し寂しい言い回しになりますが…。そういったスタンスで物作りをする、一種のモデルケースでもあると思いますよ。

雪乃イト:
 まあでも、あとはその人の生き方次第ですよね。アーティストタイプか作家タイプか、みたいな話ですけど。表現者としての音楽制作ならやっぱり癖や個性は必要だし。自分の場合は学歴もないし、ずっとこれだけをやってきてて…今更普通に就職しようってこともできないですからねえ。

──ただお話を聴いていて、メジャーシーンでもっと当たり前にボカロ曲が流れる日も今後いつか来るんだろうな、という気もしました。雪乃さんをはじめ、同じようにそういった未来を目指す方もきっといるでしょうし。

雪乃イト:
 今後まだまだボカロシーンにも、いろんな方が参入してくると思いますし。それもまた、ボカロという文化の懐の広さですしね。

Information

雪乃イト プレイリスト 詳細はこちら

「The VOCALOID Collection」 公式サイト

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