ナユタン星人「ダンスロボットダンス」ミクとの掛け合いは本人だった!「エイリアンエイリアン」「アンドロメダアンドロメダ」ほか人気曲の初出し裏話を解説【はじめて聴く人のためのインタビュー】
様々な人気の定番曲をプレイリスト化し、そのリストを元にご本人にお話を伺う本企画。今回はナユタン星人に登場いただき、たくさんの話を伺った。
2015年の初投稿から今に至るまで多くの楽曲を生み出し、現在はボカロシーン外への曲提供も積極的に行うナユタン星人さん。
そんな彼の曲作りにおけるこだわりや、初めて明かされる人気曲の裏話とは?
一貫して「曲作りは誰でもできる」「シンプルなものこそ面白い」と語る、そのメッセージの背景を様々な角度から深掘ってみた。
取材・文/曽我美なつめ
作曲は誰でも簡単にできる!ボカロPを始める敷居を下げたい
──ボカロ曲の初投稿は2015年ですが、以前から曲制作はされていたんですか?
ナユタン星人:
数年前から趣味でやっていました。とはいえ未だに楽器も弾けないので、誰に聴かせるでもない曲を独りで作ってた感じです。当時何気なくPCを触ってる中で録音機能の存在に気づいて、最初は作曲ソフトの入れ方もわからないまま、自分の声だけを重ねて曲を作ってました。可哀想に!さんの動画が大好きなんですが、「おぱんちゅうさぎソング」などで演奏も声だけで作られてて。まさにあのイメージです。あれを初めて見たとき、曲を作るときのパッションが自分と近いんじゃないかと勝手に嬉しくなってました。
──当時はまだまだPCの楽曲制作はハードルが高く、ややニッチな知識を持つ人の創作という印象でした。そこからボカロを知った経緯はどのような形で?
ナユタン星人:
ニコニコ動画をサービス開始からずっと見てたので、東方、アイマス、ボカロが3強だった当時のニコ厨として自然にハマりました。当時のニコニコ動画は投稿者名が表示されないので、ボカロ曲も作者はほぼ名乗らず、ミクさんというバーチャルな歌手を追う感覚に未来を感じました。
──当時の曲で印象深いものはありますか。
ナユタン星人:
一番最初に聴いたボカロが、確か「恋スルVOC@LOID」でした。今だとアマチュアの方の曲を聴く場ってたくさんありますけど、当時はほとんど聴く手段がなくて。なのでプロじゃない人の音楽をこういう形で聴ける点がまず衝撃でしたし、しかもめちゃくちゃいい曲だし。びっくりしたのを鮮烈に覚えてます。
昔から音ゲーも好きなんですが、音ゲー曲ってゲーム会社の中の人が作ることもあって、ゲームのサントラ以外ではCD化されない隠れた名曲も多かったんですよね。その“未CD化曲の良さ”も知ってたので、「これからボカロでたくさんそういう曲を聴けるかも、楽しみだな」と当時思いました。
──そうなると、かなり長期間いわゆる“聞き専”だったかと思うのですが。そこから自身での投稿を思い至ったきっかけは何だったんでしょう。
ナユタン星人:
2015年頃っていわゆるボカロ衰退期とも呼ばれてますよね。僕自身は当時もボカロが熱狂的に好きだったんですが、「確かにシーンに最近元気がないな」とは感じてて。その中で「こういう曲があったらいいな」っていうのを個人的にいろいろ妄想するんですけど、検索しても全然そういう曲がなくて。ないなら作ればいい、の精神で活動を始めた形でしたね。
──曲の着想については、以前別のインタビューで少しお話を伺いましたよね。
ナユタン星人:
前回の話に加えて僕、日頃から頭の中で即興で曲を妄想してることが多いんですけど、作曲する人ってみんなそうなのか結構気になってて。暇な時やぼーっとしてる時、お風呂入ってる時とか。
──頭の中でずっと音楽が鳴ってる、というニュアンスですか?
ナユタン星人:
そうなんですけど、あまりこれって特別な事じゃないと思ってて。音楽に限らず、何かしら趣味がある人って気づいたら自分の好きな事を考えてたりしますよね。旅行好きな人なら「次の休みはどこ行こうかな」とか、漫画やアニメが好きな人なら「あの作品見たいな」とか。それと同じで「こんな曲あったらいいな」ってずっと考えてる感覚ですね。
作曲ってどうやればできますかってよく聞かれるんですけど、すでにみんなできると思ってて。たとえば鼻歌でフンフン即興で歌ったり、家でリモコン探す時に「リッモコッンはどこ~♪」って。そういうちょっと変な歌、歌ったりしませんか。
──確かに時々ありますね。あまり他人には聴かせられない歌ですが(笑)
ナユタン星人:
作曲ってそれの延長で。だから誰でも気軽に1曲つくってみてほしい、というのは言いたいです。僕もそうやって部屋でフニャフニャ歌って変な踊りしながら曲を作るんですけど、PVの映像の動きもそこから決めたり、わりとノリで作ってます(笑)。普段耳にする曲はどうしても手の込んだプロ級のものが多いですが、まずシンプルなものから。たとえば僕の曲を聞いて「こんなの俺でもできるじゃん!」と真似して作曲のきっかけにしてほしいです。
初投稿曲から最新作まで…初出しの裏話も満載!
──そんなナユタン星人さんの作品から、今回は10曲をピックアップしました。楽曲の裏話など伺えると嬉しいのですが。
ナユタン星人:
「太陽系デスコ」は実はかなり初期に作った曲です。活動して3年目に投稿した曲ですけど、活動開始時には既にできてました。当初はもっとハイペースな侵略計画でしたが、1、2作目の「アンドロメダアンドロメダ」「ロケットサイダー」の投稿に思ったより反響があって。もっとじっくり侵略してもいいかも、と思い直して、急遽もう少し後に出そうと決めた曲でした。
──この中で、一番思い入れのある曲はどれになるんでしょう。
ナユタン星人:
「エイリアンエイリアン」ですね。自分の場合、普段曲作りにあまり時間はかけないんですけど、これは少し迷った部分があって。サビ直前の歌唱がない楽器だけの所に、当初はミクさんでナレーション的なセリフを入れようとしたんです。オカルト系のテレビ番組の冒頭に、導入の言葉が入ったりするじゃないですか。「不思議の世界は、意外とあなたのそばにあるんです」みたいな。あの雰囲気をイメージしたんですけど、ちょっと自分の趣味全開になりすぎると思って、その案はボツにした裏話があります。ただやっぱり語りを入れたい欲求はあったので、そこで諦めた分2番をラップ調というか、ポエトリーっぽくして発散しました。
──サビ前に台詞が入っていれば、今とは少し違う形の曲になっていたかもですね。
ナユタン星人:
あと、「ダンスロボットダンス」も裏話があって。サビでミクと掛け合いになる“ダンス!ロボットダンス!”っていう場所、実は自分の声をこっそり混ぜています。これは今までどこにも言ったことがないんですけど。
基本的には自分の声を全世界に発信するのが嫌すぎるんですが、単純にミクが好きすぎて、「ミクと一緒に掛け合いしたい欲」の方が勝ってしまって。ロボの曲だし、ロボット風に加工したらいけるやろ!と、やっちゃいました。
この他にも、こっそり遊びを入れるのが好きなので、リスト外の曲ですが「猫猫的宇宙論」も、実は裏にこっそり本物の猫の鳴き声を入れたり。そういう遊びも探して楽しんでほしいです。
──この中で、ボカロ初心者向けの曲を挙げるとしたらどれになるでしょう。
ナユタン星人:
おそらく「アンドロメダアンドロメダ」が入口の人も多いと思うので、そのまま投稿順に曲を聴いてもらうのが個人的にはおすすめです。それかPVの色ごとにテーマを決めているので、好きな曲があればその映像と同系統のPVの曲を聴いてもらうといいかもしれません。アルバムの色も同じルールで統一してるので、動画のない曲もぜひその流れで聴いてもらえたら。
曲作りを「縛りプレイ」で楽しむスタイル
──重ねて、直近の「エスパーエスパー」もすごくナユタン星人さんらしさを感じた1曲でした。
ナユタン星人:
あれも作っててめちゃくちゃ楽しかったです。ポケモンもずっと大好きですし、ポケモンの技名…しかもエスパーの技名だけを使う縛りで曲を成立させたくて。
元々コンセプチュアルな活動や、何かと縛りをつけるのが好きなんです。もはや性癖と言ってもいいくらい(笑)。ナユタン星人という活動も、「こんなアーティストがいたら面白いだろうな」という妄想から始めて、宇宙というテーマをずっと下敷きにしてますし。
──ゲームでいう、いわゆる「縛りプレイ」ですね。
ナユタン星人:
そういう縛りのひとつとして、「同じ音色しか使わない」というのも初期からずっとやっています。アーティストってメロディや歌詞のスタイルは一貫していて、編曲や音色が豪華になったり洗練されたりして変化していきがちですけど、その逆でメロディや歌詞は自由に変化させて音色だけ固定して何曲も作ったらどうなるんだろうという興味で。やってみたら修羅の道すぎて、単純に大変だからいないんだと思いました(笑)。
同じくゲームで例えると、普通なら物語を進める中で武器や装備をグレードアップして楽しむ中、初期装備の裸に棒切れのままプレイスキルのみで突き進んでる感覚です。
──縛りを続けて約10年…ぶっちゃけしんどいな、と思う事ってありません(笑)?
ナユタン星人:
ピアノなんかは使うだけで良い曲感が出るので、すごく誘惑されます(笑)。でも、その制限の中で工夫して冒険していく感覚が楽しいです。
ただ趣味で最も楽しい瞬間の一つは、新しい道具を手に入れる時だと思うんです。キャンプとかゴルフとかも。音楽をつくる身として、新しい音源ソフトを見つけてワクワクしても「でも自分の曲では使えないなぁ」ってなるのはもどかしいです(笑)。
──最近、特に気になるボカロPさんやボカロ曲などはありますか?
ナユタン星人:
これは一択で、原口沙輔さんです。SASUKE名義の時から注目していて、いま当時と違うスタイルでまたヒットされていて。それもカッコいいですし、曲自体も斬新なサウンドでありつつポップですごいなあと。単純にいちファンとして曲を楽しみにしてます。ボカロだけじゃなく曲提供も絶対強いだろうと思ってたら、直近もMAISONdesの企画でハローキティとのコラボ曲がめちゃめちゃ良くて。原口さんの色がありつつ、コラボ先の要素もある絶妙なバランスで。
前から僕、いろんなボカロPさんの外部提供曲をチェックするのも好きなんです。星街すいせいさんの曲とか。提供曲は、作曲者の元の色とコラボする方の色をどう混ぜているか、バランスの取り方を見るのが楽しいです。
──すごくわかります。どちらも好きだとなお楽しくなりますしね。ぜひナユタン星人さんも引き続き、ボカロ提供問わずたくさんの所で曲を作って頂ければ。
ナユタン星人:
そうですね。その中でさっき話した“縛り”から、今後はちょっとずついろんなものを開放してみようかな、とも思ってます。音色や使う楽器で新しいものをひとつ入れたり。
それでも僕の曲はほんとに骨と皮ぐらいの単純な構造なので、これからボカロPを始めたい、という人にもぜひ参考にしてもらえたら嬉しいです。
■Information
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