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西洋の元素記号を中国語に翻訳した昔の人はエラかった! “皇帝の漢詩”と“五行思想”に由来する音訳を使った命名規則がかっこいい件

 今回紹介する動画は敏度さんの投稿した『元素の中国語名称をボロボロ日本語で語る【VOICEROID 紲星あかり、ついなちゃん】』です。

 台湾出身の敏度さんは、日本留学試験を受けたときに、中国語とあまりに異なる日本語の元素名に衝撃を受けたそうです。この動画では、元素名がどのように中国語に翻訳されたのかを、解説していきます。

投稿者メッセージ(動画説明文より)

氟鈾碳鉀釔氧鈾(FUCK YOU)みたいな暗号、中学の時めっちゃ流行った。


■元はバラバラだった中国語の元素名

あかり:
 今回は元素の名前について話をしよう。うp主が日本留学試験を受けたとき、元素の日本語名に衝撃を受けたらしい。

ついな:
 そもそも元素・分子・原子みたいな用語は分かるんかな?

あかり:
 それらは和製漢語で中国でも表記は同じ。西洋学問の漢字翻訳については、明治時代の日本は中国(当時の清)よりも積極的に取り組んでいたんだ。でも元素の漢字翻訳には影響しなかった。

ついな:
 なにか受け入れがたい理由でもあったのかな?

あかり:
 いいや。19世紀中頃に、清の学者たちがそれぞれの規則で元素の名前を翻訳していたんだ。音訳にした人もいたし、意訳にした人もいた。それに外国から入手した西洋文献に基づいて翻訳した元素の名前もだいぶ違う。そうやって、元素の名前が乱立している中、日本の翻訳が混ざっても、より一層混乱してしまうだけだった。

ついな:
 当時の学生たちは元素の名前のせいで化学を嫌いになりそう。

あかり:
 そしてついに、科学者・徐寿(じょじゅ)とイギリス人学者ジョン・フライヤールが元素の命名規則を確立させようとした。中国語風の名前になりすぎず、また長すぎないことを原則として、元素は漢字一文字にすることを提唱した。今でも新元素はこの規則に基づいて命名されている。

ついな:
 あんなに長い名前を音訳して、どうやって漢字一文字に収めるの?

あかり:
 まず部首で元素の大まかな性質を分ける。次に西洋の元素名の第1音節、または第2音節と組み合わせる。例えばナトリウムは金属元素だから金へん。第1音節「ナ」は「内」と発音が近いから組み合わせた。

ついな:
 これって結局、避けたかった中国風の名前とちゃうん?

あかり:
 あえて日常生活では全く使われていなかった漢字や、徐寿が作った漢字を使っているよ。当時の人々にとって非日常的な漢字だったから、翻訳した言葉だということが連想されやすいんだ。

ついな:
 でも元素って金属ばかりなんじゃ? 金へんの漢字は足りたの? もしかして一人で金へんの漢字をいくつも作ったの?

■元素の命名には漢詩と五行思想が役立っていた!

あかり:
 一説によると明朝の初代皇帝・朱元璋(しゅげんしょう)のお陰で、元素の名前に使えそうな漢字は既に作られていたんだ。
 1368年、明の初代皇帝朱元璋は、五行思想に厚い信仰を寄せていて、その信仰心を子供の名前に注ぎ込んだ。26人の息子がいて、名はすべて木へんの漢字一文字。

あかり:
 夭折した2人を除いて、残りの24人一人づつに当てて20文字の漢詩を作った。この24人の息子の子孫たちの名前は、父親送られた漢詩の文字と、五行思想の相生に従って名付けられる。

あかり:
 例えば朱元璋の息子・朱棣(しゅてい)の息子の命名には、漢詩からとって2文字目は「高」、3文字目は火へんの漢字をあてた。朱棣の長男・朱高熾(しゅこうし)が第4代皇帝に即位すると、その10人の息子の名前の3文字目には五行思想に従って土へんの漢字を使った。

あかり:
 朱高熾の長男・朱瞻基(しゅせんき)が皇帝に即位すると、その息子2人にはこれもまた五行思想の相生の関係の金へんの漢字を付けた。この命名規則を明は最後の第17代皇帝・朱由檢(しゅゆうけん)まで守り続けた。

あかり:
 皇族が代々このような規則で命名し続けたので、既存の金木水火土へんの漢字はすぐに尽きた。祖先や親戚と同じ字を避けるために、明の皇族は新しい漢字を作り続けた。

ついな:
 皇族の名前だけに使う漢字なんて、非日常的やな。

あかり:
 一説には徐寿が元素の名前を翻訳したときに、明朝皇族の命名規則のお陰でたくさんの金へんの漢字が使えるんじゃないかと言われていたらしい。

ついな:
 まさに時代を先取ったキラキラネームやな。

あかり:
 今回はここまでかな。

ついな:
 もう1か月ぐらいは元素を見たくないな。

あかりついな
 それじゃあ、まったねー。


 元素名の中国語への翻訳には、中国の王朝文化、さらには自然哲学思想である五行思想が大いに影響していているという解説でした。同じ漢字文化圏ながら政治・文化の違いを感じさせる内容に、多くのコメントが寄せられました。

 動画内では本記事には収まりきらなかった王朝と五行思想の関連や、中国と台湾の元素名の違いも紹介しています。より詳しい解説についてはぜひ動画をご覧ください。

視聴者のコメント

投稿謝謝茄子!
すごくロジカルに決めていったのね。合理的。
神システムじゃん
『漢字は一文字にできる』のが強すぎる
元素からこんな話になるとは、面白い

▼動画をノーカットで楽しみたい方は
こちらから視聴できます▼

元素の中国語名称をボロボロ日本語で語る【VOICEROID 紲星あかり、ついなちゃん

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