ニコ動がぐんぴぃの人生を変えた!? ニコ動マインドと共に育った春とヒコーキが当時のミーム・音MAD・釣り動画など“ニコ動”を語り尽くす!
「フタエノキワミ、アッー!」「城之内死す」「ごまだれ~♪」……。この言葉にピンときた人は、きっと同志。
今やYouTube登録者数200万人弱、ネット民の心を掴んで離さないお笑いコンビ「春とヒコーキ」。 実は彼らのルーツは、かつて多くのネットユーザーが魅了されたカオスな動画サービス「ニコニコ動画」にありました。
「あの音MAD動画を見ていなければ、芸人になっていなかった」と語るぐんぴぃさんと、「釣り動画」に魅せられた土岡さん。 二人が口にするのは、ネットの歴史に刻まれたパワーワードの数々です。
そんな「ニコ厨」だった二人が、ニコ動文化をノンストップで喋り倒したインタビューの模様をお届けします。
文/ニポポ
写真/YSD


「なんだこれ!!」衝撃を受けたニコニコ動画との出会い。音MAD、釣り動画の沼にハマっていく。
――まず、お二人が「ニコニコ動画」という沼にハマったきっかけは?
ぐんぴぃ(以下、ぐんぴぃ):
僕は最初YouTube勢だったんですが、2007年頃に「動画の上に文字が流れるヤバいサイトがある」と聞きまして。 覗いてみたら、もう「なんだこれ!!」と衝撃を受けましたよ。そこから完全にのめり込みました。
土岡哲朗氏(以下、土岡):
僕は高校時代からチラチラ見てたんですけど、大学でぐんぴぃと出会ってから本格化しましたね。ぐんぴぃが異常な熱量で見てるから(笑)。
――当時はどんな動画を?
ぐんぴぃ:
何といっても「音MAD」ですね! 当時好きだったアニメの音MADをよく見てました。
『らき☆すた』の最終鬼畜MADとか、動画に流れてくるコメント含め、アニメ愛の密度が異常なんですよ。
あと衝撃だったのが「ヴェルタースオリジナル」のMAD。 CMの優しそうなお爺さんの顔を、画面中央から反転させて貼り付けるんです。そうすると、キャンディを両手に持った「魔王」みたいになるんですよ!
一同:
(笑)
土岡:
僕は『這いよれ!ニャル子さん』が好きで動画を漁ってたんですけど、サムネ詐欺の「釣り動画」に引っかかりまくって。 サムネはニャル子さんなのに、再生したらいきなり怪しい宗教ビデオが流れるとか。そこから、なぜか「釣り動画」に魅了されちゃったんです。
ただ、釣り動画なんでサムネイルやタイトルだけでは判別が難しいんです。「あれ、また見たいな」と思ってもなかなか同じ動画を見つけられないんですよ!
一同:
(笑)

ぐんぴぃの中に、伝説の釣り師「藤崎瑞希」が住んでいる!?
――ぐんぴぃさんも「釣り動画」の洗礼は受けましたか?
ぐんぴぃ:
やられましたね~! 「おっ、巨乳動画だ!」と思ってクリックしたらガチムチパンツレスリングだったり(笑)。
あとは、藤崎瑞希にはだいぶやられましたよ! エロいサムネで釣っておいて、独特な口調の男が「お前ら、またエロ画像に、釣られたってかッ!」って煽ってくるやつ。
一同:
(爆笑)
ぐんぴぃ:
もうあの人が大好きで大好きで!
僕がYouTubeで視聴者を煽るキャラをやる時、無意識に藤崎瑞希の口調になっていたんです。指摘されて気が付いたんですけど、僕の中に瑞希が入っちゃってて。 あれ、やってみると分かるんですけど……めちゃくちゃ楽しいんですよ!(笑)
土岡:
騙されるって一見嫌なことなんだけど、当時のニコ動には新しい発見があったよね。明らかに騙されてやってきたのに、コメントで強がってるヤツがいたり。
今考えるとそういうコミュニケーションというか、言葉のキャッチボールがうまかったよね! 彼ら。
ニコ動のコメントは、職人のスキルやセンスと視聴者の一体感が唯一無二の快感!
――コメント職人という存在はニコ動の文化を担ってますもんね。記憶に残っているコメントはありますか?
ぐんぴぃ:
「組曲『ニコニコ動画』」みたいな人気動画は、職人のスキルが異常でしたね。歌詞に合わせて緻密な絵を文字で描くとか。「わ~! よく見たいな~」って思うんですけど、それがあっという間に弾幕に吹き飛ばされたりして(笑)。
僕はゲーム実況グループの幕末志士が好きだったんです。彼らは実況中に奇声を上げることが多かったんですよ。
確かマリオ64の1UPキノコから逃げるという動画だったと思うんですけど、「ミンッ!!」っていう奇声が上がった瞬間に、コメント職人が【明=中国の王朝】 1368年から1644年まで存在。朱元璋が元を北へ逐って建国し……(以下略)。
って「明」の歴史を貼り付けたりして!「そこ解説する!?」っていう(笑)。この流れにはめっちゃ笑いました。あんなフォローができるのはニコ動のコメント職人だけですよ!
――(笑)。土岡さんはいかがですか? 印象に残っているコメントなどありますか?
土岡:
僕は『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の実況動画のコメントですね。リンクが宝箱を開けるシーンで、コメント欄が「ごまだれ来るぞ!」「ごまだれ!」みたいに盛り上がってて、最初は全く意味が分からずただ眺めてたんですよ。
パカっと宝箱が開いたら「テレレレ~ン♪」という音楽が流れるじゃないですか、たしかにそれがもう見事に「ごまだれ~!」なんですよ! そこで「なるほど!」と一気に意味が分かって。あの一体感は気持ちよかったなぁ。
彼女と別れのBGMは「城之内死す」!? 「あ」だけの空耳で魔理沙に合法的に興奮……ニコ動と共に過ごした“青春”
ぐんぴぃ:
そういえば、空耳も面白かったなぁ!
「誠☆自重」「売れんかいな!」「フタエノキワミ、アッーーー!!!」(※激しいアクション付きモノマネ)
一同:
(笑)
土岡:
大学生の頃、ぐんぴぃが僕の家のパソコンでニコ動を見てずっとゲラゲラ爆笑してるんですよ。それが「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」最大のネタバレ回「城之内死す」だったんです。
その時、僕に彼女から深刻な別れ話の電話がかかってきたんですよ。30分くらい席を外してたんです。30分くらい席を外して戻ってきたら、こいつまだ「城之内死す」見て爆笑してるんです。
ぐんぴぃ:
土岡くんが深刻そうに彼女と別れ話してる間、ずっと「城之内死す」! 土岡の別れ話を「城之内死す」でハンバーガーにしてやったんですよ。
一同:
(笑)
ぐんぴぃ:
あと東方Projectの「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」という名曲があるんですが、この歌詞を全部「あ」だけで歌うっていう動画がありまして。
これがね!「あ~あああっあ~ん♪」と、喘ぎ声に聞こえちゃうんですよ!! あの動画にはお世話になっちゃいましたね~! 合法的に。
土岡:
どんな空耳の使い方してんだよ。
一同:
(笑)
カオスなニコニコ動画の世界……ニコ動で楽しんでいた動画や文化が人生や芸風に影響を与えた
――現在もYouTubeなどで活動されていますが、今の動画文化について思うことは?
ぐんぴぃ:
音MADに関しては、最近のは音がきれいすぎて! 「雑味」がないといいますか。 そこが少し寂しいんですよね~。
土岡:
もっと音割れとかしててほしいんだ。どこかから流れてきた無線を傍受してるような音質のほうが落ち着くのね(笑)。
ぐんぴぃ:
あと好きなタグで「病院が来い」っていうのがあって。「作者は病気」シリーズっていうのがあってその派生なんですけど、「病院行けよ~」とかじゃなくて、もう「病院の方から来い!」と(笑)。
それと「人類には早すぎる動画」タグも好きでしたね。『カビキラー』のCMの「カビキラー♪」の4文字だけで音MAD作ってますからね。あれは流行ってましたよね~。
「どこまでもマニアックなことをやって大丈夫なんだ」という自信を、「人類には早すぎる動画」からもらいましたね。例えば僕らのYouTubeチャンネルであれば、TikTokとかのたまたま出てくる動画と違って、わざわざ検索しないとたどり着きませんから。
そこまでして見に来てくれているわけですから、バナー漫画(バナー広告に表示される漫画)だけを語る動画があってもいいだろうと。

土岡:
しかもこれ年末年始にやってますからね。
ぐんぴぃ:
なんか年末年始に見るもんないな~って人が、逆にもう自傷行為として見てくれてますから。
一同:
(笑)
土岡:
でもこれ、藤崎瑞希の影響じゃないですか!?(笑)
ただ、釣り動画って視聴者への嫌がらせではあるんですけど、釣ってる本人が本気で楽しんでますから。視聴者にも不思議とそこまで嫌がられないんですよね。
ぐんぴぃ:
視聴者への嫌がらせと言えば、少し過激なネタ動画を「YouTubeのどっかにあがってます!」「探してください!」という方法でアップしたことがあるんです。
そうするとみんなが一斉に探し始めるんですよ。さすがにスタッフアカウントとかだろうとサムネイルを見てやってくるわけです。そうすると……、「お前ら、サムネイルに、釣られたんかッ!」(※モノマネ)
一同:
やっぱり藤崎瑞希が出てきた(笑)。
ぐんぴぃ:
釣りとかイタズラも含めてネットのおもちゃにする感じ。振り回して振り回される感じ。これが楽しいんだな~と思ってますね。
ゲーム実況の幕末志士さんなんかは、ダラダラやらないんです。めちゃくちゃ面白い動画が出来るまで、何か月も新しい動画をあげないんですよ。それを待ち続けてファンは振り回されるわけです。
この好きな人のためにどれだけの時間を費やしたかっていうのが、ファンとしての度合いを測るバロメーターだと思ってます。こういう考え方も、ニコニコ動画で自分が受けた経験が反映されてますね。

――笑って楽しむ動画以外にも印象深い動画はありますか?
ぐんぴぃ:
初音ミクなどのボカロ曲も大好きなんですが、東方Projectの『ナイト・オブ・ナイツ』に合わせて、落語家の立川談志さんの声をあてる「談志・オブ・ナイツ」という音MADがあったんですよ。
当時の僕は立川談志さんの名前はもちろん知っていましたが、名前を知っている程度だったんです。それでこの音MADを聞いたら……カッコいいんですよ!! 談志さんの落語が! そこから落語を聞いてみよう! となりまして。
土岡:
そのまま落研(落語研究会)に入りましたからね。そこで僕らは出会ってますから。
ぐんぴぃ:
そうなんです。音MADしか知らなかった男が落語と出会ってお笑いへの道が開いたんですよ! そう考えると凄いですよね。ニコ動が人生を変えるきっかけになっているという。
――凄い! めちゃくちゃいい話じゃないですか! 多大な影響を受けてらっしゃったんですね!
ニコニコ超会議で“懐かしの動画再現ライブ”!? 空耳試験など…… 2人がニコ動でやってみたいこと
――お2人がもし今、ニコニコ動画にコンテンツをアップするとしたら、何をしたいですか?
ぐんぴぃ:
1人でやるなら音MAD上げたいですけどね~!
土岡:
2人でやるなら……、「おジャ魔女ゲイツ」でも踊りましょうか。踊ってみた。
僕、あの「おジャ魔女ゲイツ」のソーラン節バージョン好きなんですよね~!
ぐんぴぃ:
僕は原点回帰で「釣り動画」作りたいかも! 最近少なくなってきてますからね。絶滅危惧種ですよ。
以前はゲーム実況もやりたいな~、音MADも作りたいな~と挑戦してみたことがあるんですけど、結局全部出来なかった人間なんですよ。難しいですからね~!
――音MADも2012年くらいからはめちゃくちゃレベルが高くなりましたもんね。
ぐんぴぃ:
そうなんですよ! ツールも良くなりましたしね!
ただ、当時の音MADひとつ作るのに大変だった時代の人たちが、今は細川たかしさんのPVを作ってたり、M-1の挿入動画作ってたりと映像業界でご活躍されてるんですよね!
それが本当に嬉しいですね。あの大変だった音MAD作りは無駄じゃなかったわけですから。
――ニコニコ動画からニコニコ生放送にはいかれなかったんですか?
ぐんぴぃ:
ニコ生には行かなかったんですよね~! ニコ生もすごい文化でしたね。本当に。ただ、片桐えりりかさんだけは必死で追いました!
土岡:
DVDまでしっかり買ってましたから。
一同:
(笑)

――ニコニコ超会議にご参加されたことはありますか?
土岡:
超会議はこれまでご縁がないんですよね。
ぐんぴぃ:
超会議に行く機会があったら、全員で当時の懐かしい動画を再現してみたりしたいですね!
土岡:
確かに同時視聴じゃなくて、同時再現っていうジャンルは新しいかもね。そこには動画の内容を再現する人もいれば、流れてくるコメントを再現する人もいて! なんか大合唱があったり。それをどこまでみんなの記憶だけ再現できるかという。
ぐんぴぃ:
あとは空耳のリスニング試験みたいなことやりたいですね!
「ゴブリンバ~ットぉぉぉぉぉぉ!」 あ、「Double Impact(ダブルインパクト)」!! 「正解!」っていう感じで。
土岡:
「正解」っていうか問題自体が間違ってるからね。
一同:
(笑)
【急募】土岡の記憶に残る“謎の裸ギター女性”の動画特定班
――記憶に残ってる動画制作者さんはいますか?
土岡:
僕、本当に1回だけ見て、「この人誰だったんだ!?」っていう動画があるんですよ! 女の人が裸になってお風呂場でギター弾いてるサムネイルなんですよ。てっきり釣り動画かなと思って、「今度はどこに飛ばされるんだろう?」と思ってクリックしたら。
ぐんぴぃ:
「今度はどこに飛ばされるんだろう?」って釣られ慣れし過ぎでしょ!
一同:
(笑)
土岡:
それが釣りじゃなかったんですよ。裸の女性が男の人とお風呂場にいて。ギターを弾きながら「お父さんから発射しました~♪ お父さんから発射しました~♪」って歌ってるんです。もうコメントは大荒れで、「これすぐ消されるぞ!」みたいなコメントが大量に来てたんですよ。案の定動画はすぐ消されちゃったんです。
それ以来、1回も彼女を見ることがなくなってしまって。ただものすごく記憶に残ってるんですよね~。何かご存じの方いらしたらご一報ください(笑)。

ぐんぴぃ:
僕はゲーム実況の、すぎるさんが記憶に残ってますね。そもそもゲームが好きで、先ほどお話した幕末志士さんをはじめゲーム実況はよく見ていたんですけど。
なんかこうゲームを見に来たというより、「俺は高卒で人生なんもうまくいかなくて!」と暴言を吐いているすぎるさんがゲームでさらに酷い目に遭うのを見に来てるといいますか。
一同:
(笑)
ぐんぴぃ:
ゲーム実況なのに、ゲームじゃなく「実況者」。人を見に人が集まっているという新しいスタイルでしたね。
もっと「雑なゴリ押し」を見たい!
――お2人は今ニコニコ動画に足りない動画って何だと思います?
ぐんぴぃ:
もっと雑なゴリ押し音MADが欲しいですね!
例えば「バトルドームのCM」MADにしても、本編じゃなく「ドラえもん、バトルドームも出たぁ~!!」のドラえもん部分しか使わないヤツとかいるじゃないですか。ああいう色気が欲しいんですよ。
土岡:
あ、あれ色気だったんだ(笑)。
ぐんぴぃ:
また「ドラえもん、バトルドームも出たぁ!!」という1つの素材。これを逆再生にすると、「アタイはぁ~! デビルドラゴン!」って聞こえますから。これで一気に素材が2倍になりますからね。
一同:
(笑)
ぐんぴぃ:
今は飽食の時代なんで、久々に素材の少ない音MAD動画を見たいですね。
闇鍋のニコ動から今年の“顔”が決まる「ニコニコ動画アワード」
――お2人はニコニコが大規模サイバー攻撃を受けた際、「ニコニコを振り返ろう」という動画をYouTubeに投稿されました。あれはニコ厨としての思いがあってのものでしたか?
ぐんぴぃ:
苦肉の策だったとは思うんですけど、昔の動画しか見れないという奇策。あれを考えて実行した人が凄いんですよ。もう懐かしくて懐かしくて毎日見てましたから!僕らはそれに乗っからせていただいただけです。
ニコ厨として「ニコ動を助けたい!」とか、そういった正義感は~、全くなかったですね。
一同:
(笑)
――ありがとうございます!ニコニコ動画の今年の“顏”になる動画を選ぶ「ニコニコ動画アワード2025」が開催されます。どうご覧になります?
ぐんぴぃ:
えっ!? あの闇鍋みたいなニコニコの中から今年の顔になる動画を選ぶんですか!?
それこそジャンル毎に表情も違いますし、思いもみんな深いだろうし、宗派も流派も違いますから。「公式ヒヨったな!」とか言われるでしょうし!(笑)
土岡:
確かにそうね。「ニコニコ動画アワード」。
これは……、みんなが大喧嘩して終わる可能性があると思います!
一同:
(笑)
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