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最年長出場者の中村九段、稲葉八段に味のある戦い:第2期 叡王戦本戦観戦記

プロ棋士とコンピュータ将棋の頂上決戦「電王戦」への出場権を賭けた棋戦「叡王(えいおう)戦」。2期目となる今回は、羽生善治九段も参戦し、ますます注目が集まっています。

ニコニコでは、初代叡王・山崎隆之八段と段位別予選を勝ち抜いた精鋭たち16名による本戦トーナメントの様子を、生放送および観戦記を通じてお届けします。

叡王戦公式サイト

中村修九段(左)と稲葉陽八段
中村修九段(左)と稲葉陽八段

 本局の観戦の依頼をいただいたとき、中村の肉声を届けたいと思った。9月22日に「本戦直前 叡王戦を10倍楽しく見る方法」に出演した時のこと。視聴者アンケートで「中村‐稲葉戦はどちらを応援する?」という問いに対し、圧倒的な票数を中村が集めたのだ。もちろん稲葉を応援しないというわけではなく、最年長出場者への声援だろう。ベテラン受難の時代に、53歳の中村の本戦出場は快挙の一言だ。取材を快諾してくれた中村。敗戦の翌日にもかかわらず、機嫌よさそうに話してくれた。

嬉しい本戦出場

 九段戦から本戦に出場できるのは5人。ほかの段位に比べればすごく優遇されています。だから私がヘタな将棋を指したら、次から枠を減らされてしまうかもしれない(笑)。頑張らなきゃいけないと思いました。

 九段戦決勝の佐藤康光戦についてはいろいろな方から声をかけていただきました。段位戦では1日2局指される方もいる。佐藤さんは私との前に三浦さんと戦っているので、消耗するのはわかっていた。だから私が自分の体調を完璧に持っていけば差は埋められると思いました。普通の状態でやったらダメですよ。棋士会の上司ですし(注・佐藤が会長、中村が副会長)、尊敬の念が強すぎますから。

 昔、夢を見たことがあるんです。佐藤さん含めた何人かと旅館に泊まっていて、みんなで酒を飲んでいる。酔いつぶれてふと目を覚ましたら、佐藤さんが一人で空き缶の片づけをしている(笑)。リアルな夢で、いかにもありそうでしょう?

 ああ、話がそれました。本戦は久しぶりに大きなチャンスでしたけど、メンバーがかなり厳しい。対戦相手の稲葉さんは攻めが鋭いですが、それ以上に受けが強い。調子に乗って攻めるとしっかり受けられてひどいことになると思いました。でも佐藤戦もそうでしたけど、私が勝つには攻めるしかない。手数が伸びると力の差が出て、こちらが間違える可能性が高いんです。以前は「受ける青春」というニックネームをいただいて、それに縛られていたこともありました。今は気にしていません。現代将棋は攻めなきゃダメですよ。受け潰して勝つのは難しい。

端歩二題

 もちろん事前に作戦はいろいろ考えましたけど、確信を持てるような指し方は見つからなかったですね。振り駒で後手になり、▲7六歩に△8四歩と突きました。矢倉にはならないだろうと思っていて、角換わり模様はある程度予想通りでした。

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 ただ普通の将棋にするつもりはなくて、10手目に△4四歩(第1図)と突きました。角交換を拒否して力戦にしようと。昭和の将棋にしたかったんですね。私が昭和の人間だから(笑)。

 印象に残っている局面ですか。うーん、難しいですけど、2つの端歩ですかねえ。

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 △9四歩(第2図)が緩手でしたか。以下▲7九玉△8四角▲2六角△4二銀上▲3七桂△7三桂▲4五歩△同歩▲同桂△同桂▲同銀で、本譜は先手に先に桂交換されてしまいました。私は昔からこの種の緩手が多いんです。だから相手に主導権を握られて、自然と受け将棋になったんですね。

 どうすればよかったか。△9四歩と突かずに△8四角として、▲7九玉△7三桂▲2六角△6五歩▲同歩△5五歩▲同銀△6五桂(A図)で先攻できましたね。▲3七桂が入っていると▲4五歩と突かれてダメなんですけど。

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 桂交換の後、お互いに陣形を整備しましたけど、先手に穴熊の遠さを生かされてしまいました。

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 △9五歩(第3図)もよくなかったと思います。▲6八金右と固められて、△6五歩▲同歩△6二飛と攻撃態勢を作りましたけど、▲4五歩からの攻めが厳しかった。そうなると玉形の差が出てしまいます。以下はダメですね。

 △9五歩では、△8六歩▲同歩の突き捨てを入れて8七の地点に穴を開けておくべきでした。そうすれば将来王手がかかる格好なので、穴熊相手にも戦えました。▲8六同歩には△6五歩▲同歩△6二飛とします。対局中は▲6九飛で手がなさそうと思って断念したんですけど、△2四歩(B図)と無理やり角頭を攻めてどうだったか。これなら形勢はともかく、「自分から攻める」という当初の狙いが達成できました。

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 一局を振り返って、何手か疑問手が出るのは仕方ないと思うんです。それはいちいち後悔しません。まあ、年を取って人間が図太くなったということもあります(笑)。

 本局も悪い手は指しましたけど、まったくチャンスがなかったわけじゃない。やはり△9五歩のところで△8六歩と突き捨てなかったことが悔やまれますね……。

人間らしい工夫を

 今回の本戦出場は宝くじを買ったというか、いい夢を見させてもらいました。最近はなかなか表舞台に出る機会がなくて、注目されることが少ないですから。

 今後はやっぱり、個性を意識してやっていきたい。みんなと同じことをやっていても埋もれてしまいます。序盤で工夫を凝らすように意識しているので、そこは注目していただければありがたい。正直、終盤で差をつけられることが多いので、序盤で工夫してリードを奪いたいんです。

 棋士の存在価値ですか? うーん、私は昭和の人間なので、いまのようにソフトが強くなるという状況は想定していませんでしたからねえ。でも将棋というものに真理があって、それにコンピューターが近づいていくのなら、見られるのは嬉しいです。もちろん棋士も切磋琢磨してやっていかなければいけません。人間らしい工夫というものは必ずあると思うので。

(観戦記者:大川慎太郎)

 

叡王戦公式サイトより引用

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