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佐藤天彦九段に新人の佐々木四段が食らいつく:第2期 叡王戦本戦観戦記

プロ棋士とコンピュータ将棋の頂上決戦「電王戦」への出場権を賭けた棋戦「叡王(えいおう)戦」。2期目となる今回は、羽生善治九段も参戦し、ますます注目が集まっています。

ニコニコでは、初代叡王・山崎隆之八段と段位別予選を勝ち抜いた精鋭たち16名による本戦トーナメントの様子を、生放送および観戦記を通じてお届けします。

叡王戦公式サイト

佐藤天彦九段(左)と佐々木大地四段
佐藤天彦九段(左)と佐々木大地四段

 本局も敗者の肉声で構成する。こちらは普通の観戦記スタイルで書こうと思ったのだが、佐々木大地四段に事前に送った挨拶メールの返事を見て、ピンとくるものがあったのだ。

 メールには「佐藤名人とは天と地ほどの差ですが、多少なりとも勝負になるよう頑張りたいと思います」という一文が記されていた。「天と地」が両対局者の名前である「天彦」と「大地」にかかっているではないか。もちろん意識していないだろうが(実際、偶然だった)、面白みを感じたのである。佐々木も取材を快諾してくれ、対局翌日にハキハキと敗戦譜を振り返ってくれた。

 佐々木はまだ棋士になって半年ほど。イメージがわかない方もいるかもしれないので、簡単にプロフィールを記しておく。

 1995年生まれの21歳。長崎県対馬市出身で、深浦康市九段門下。姉の大学進学と、佐々木の奨励会入会が重なり、2008年に一家で東京へ出てきた。「上京にあたって父は仕事を変えました。大変だったと思います」。四段昇段までに7年半を費やした。ライバルは増田康宏四段で、先を越されたのが悔しかったという。「四段になれないと思ったことは一度もありませんが、勝てないときは堪えましたね。両親にも負担をかけているので」と述懐する。2016年4月に四段昇段。次点2回でフリークラス入りした。三段リーグを続行するという選択肢は考えなかったのか。

 「とにかくプロになりたいという思いがありました。いまは若手棋士が出場できる棋戦の数も多いので、チャンスはあるかと。佐藤名人の時代とはそこが違いますよね」と佐々木は言う。そういえば佐藤は次点2回でフリークラス入りの権利があったが、それを蹴ったのだった。

 本局は、名人とフリークラス在籍の四段が対戦するという珍しい機会である。2010年9月のNHK杯、羽生善治名人―伊藤真吾四段戦(肩書は当時)以来だ。

想定外の8五飛戦法

 名人の印象は最新形に詳しくて、中・終盤の受けの手に特徴がある、ですね。よく新宿将棋センターでVS(1対1の研究会)をされているのを見かけます。序盤から熱心に感想戦をされていて、夜遅くまで検討を続けていらっしゃるようです。

 私は他の棋戦で負けすぎて対局がなかったので、この将棋に集中することができました。

 最近、佐藤名人は後手で2手目に△8四歩と突くことが多かった。それでも横歩取りは十分あると思っていて、準備の7割くらいはそれに費やしました。なぜだか先手を引けると思っていて(笑)、さらに戦型も横歩取りに進みました。ここまでは想定通りだったのですが。

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 15手目に▲5八玉(第1図)と上がったのが趣向です。これには△5二玉と追随して来るのが自然で、以下▲2二角成から先手が勝った実戦例があります。もちろんその通りには進みませんし、それで先手がいいと思うかどうかも人によって分かれるところでしょう。ただ私は△5二玉以下の順をかなり研究していて、展開によっては詰む詰まないのところまで調べていたんです。

 しかし、名人は△4一玉。以下は普通の8五飛戦法に構えられました。愕然としましたね。8五飛戦法は奨励会時代に指したことがありますし、指されたこともあります。ただし、ある時に先手を持って嫌な指し方が見つかったのです。最近は8五飛戦法をやってくる人も少ないですし、それをずっと放置していた。その嫌な指し方も決して簡単ではありませんが、ダメと分かっている順を指すわけにはいきません。それで本局はいちばんオーソドックスな指し方をしたんですけど、8五飛戦法は昔の定跡しか知らなくて、情報がほぼゼロという状態で臨むことになってしまいました。ええ、8五飛戦法になった時点ですでにしびれているんですよ。▲5八玉をやるんだったら△4一玉も調べておけよ、という感じですよね。ヒマなんだから(笑)。

切れてしまった攻め

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 印象に残っている局面を2つですよね。

 第2図から▲1四歩△同歩▲7五歩と仕掛けました。△5五歩▲2三歩△同銀▲2四歩△3四銀に▲2三角と強攻しましたが、△4五角(第3図)の受けを完全にうっかりしていました。

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 以下▲3四角成△同角▲2三銀△4五角▲3二銀成△同玉▲3五金△2二歩▲4五金△同桂▲4六飛△3五金(第4図)で攻めが完全に切れてしまいました。

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 あまりに手がないので、正直にいうと投了したかった。でも叡王戦は生中継されていますし、楽しみにしてくださっているファンもいる。それに私は深浦門下なので、簡単には投げるわけにはいきません。

 局面を戻って、▲7五歩では▲2四歩でしたかね。後で△7五歩と取られて、反撃されてしまいましたから。

 なぜ7筋を突いていったかというと、一応理由があるんです。対局が夜からだったので、昼間に奨励会三段とVSを行って、その将棋も横歩取りでした。8四飛―5二玉型の横歩取りだったので本局とは違いますが、部分的に▲7五歩と突いて▲8六飛とぶつける筋があったのです。それに引っ張られていたところはあったかもしれません。

フリークラス突破を

 終わっていた将棋が少し怪しくなったところはありましたけど、やはり地力の差が出て、逆転するには至りませんでした。終盤で2か所くらい「こうしていれば」という筋がありましたが、それを指せなかったのも実力です。

 一局全体を振り返って、自分はどうしてもすぐに決着をつける手を読んでしまうんです。師匠のようにじわじわと勝ちに持っていくような指し方ができない。そこは課題です。

 今後ですか。とにかく今年度中にフリークラスを突破して、次の順位戦に間に合わせたい。今回、四段戦で優勝できて本戦に出場できたのは嬉しかったですけど、とにかくいまはフリークラスの突破が目標です。ええ、いまはそれだけですね。

(観戦記者:大川慎太郎)

 

叡王戦公式サイトより引用

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