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“10億の企画”を通す戦略をゲームクリエイター松山洋が語る「実績を積むしかない。10年かけて10億のタイトルを立ち上げるつもりでやる」

キャラゲーは、確実にそこに“お客様”がいるビジネス

中野:
 そうしたら、今の段階で「オリジナルでゲームを作りたい」「それなりにデカイものを作りたい」といっている人たちはどうすればいいんですか。

松山:

 実績を積むしかないですよ。

中野:
 小さいインディーゲーム【※】をコツコツ作るとか?

※インディーゲーム
「Independent game」(独立系ゲーム)の略称で、個人や小規模の開発チーム、新規独立系企業、同人サークルなどによって作られたビデオゲームタイトルの総称。

松山:
 それもそうですし、いろいろなパブリッシャー【※】があるわけじゃないですか。パブリッシャーの人たちというのは大きい会社が多い。たとえばですが、集英社さんとの付き合いが太かったり、映画版権を持っている会社は強かったり、いろいろあるわけです。講談社系が強い会社もあったり、それぞれの作品の先生だったり、編集部だったりというのもありますけれどそういったところで、ものを作る。

※パブリッシャー
ゲームの発売を行う会社。それに対して開発を行う会社をディベロッパーと呼ぶ。

 ある程度、キャラクターゲームというのは漫画原作だろうと小説原作だろうと、確実にそこにお客様がいるというのがわかっているビジネスじゃないですか。あとはその人たちにどう喜んでもらおうかという戦略になるので、誰が好きになってくれるかもわからないオリジナル企画って誰も投資なんかしないし、お客様も買いません。

 変な言い方ですが、「NARUTO」シリーズや「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズで、ある程度の存在感を指し示してきたサイバーコネクトツーが作る新作だからこそファミ通さんも記事は書きやすくなるだろうし、世の中の人も「NARUTO」シリーズでこうだったから信じて買ってみようという人もいるだろうし。

『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4 ROAD TO BORUTO – PS4』
(画像は Amazonより)

 結局、人は実績に対してお金を払うわけじゃないですか。ゼロからすごくいい企画さえあれば10億でPlayStation4でゲームが作れるなんてありえないです。だから最初は3000万、5000万の仕事でも、そういったものを積み重ねてやっていかないと。10年かけて10億のタイトルを立ち上げるつもりでやらないと。いきなり10億なんて無理ですよ。

作ってから死ぬほうがいいよ

世界三大 三代川氏:
 これって映画と似ていると思います。テクノロジーが発達して、スマホでも撮れる時代が来ているわけじゃないですか。逆にゲームはそうではなくて、開発費がずっと右肩上がりじゃないですか?

松山:
 そんなことないですよ。特にスマホゲームは個人でアプリ開発ができるじゃないですか。昔みたいに流通を使って、宣伝費を使うということではなく、GoogleにせよAppleにせよ、プラットホームがあって、そこでアプリを配信してという……身の丈にあった勝負ができます。

 お金をかければかけるほど売れるかというと、そうではなくて、お金をかけなくても全然チャレンジできますよ。ただし世界中で星の数ほど、そう思っている人はいますよ。

 「週刊少年ジャンプ」でも持ち込みの若い作家志望の方は万人規模で応募があるわけじゃないですか。そういう人たちの中から何人の人が載るのかというと、「週刊少年ジャンプ」は20枠しかないわけじゃないですか。すごい生き残りをかけた戦いなわけですから、基本的にそれと一緒です。一つ一つが実績の世界だと思います。

 ただ私は「何でもいいのでクリエイティブな仕事がしたいです」という人にオススメしているのが漫画家です。ゲームスクールでも生徒と「さては君はゲーム業界に向いてないね」と話をするんです。つまりチーム制作ができない、コミュニケーションが取れない、でもとにかく表現したいものがある。人に迷惑をかけたくない、自分1人でなんとかしたい。「だったら君はマンガ家になりなさい」って(笑)。

 1作で終わってしまうかもしれないけれど、あなたが今持っている熱量は世の中に出さないともったいない。死ぬんだったら、それを作ってから死ぬほうがいいよっていうお話を若い人にしていますね。 

勝算と戦略は死ぬまで考える

中野:
 松山さんの勝算と戦略は何年先まで考えているのですか。

松山:
 死ぬまでですよ。140歳まで生きる予定なので、そこまでは。

サイトーブイ:
 どれだけ働くんだろう(笑)。

松山:

 いやいや、だって『週刊少年ジャンプ』ってなくならないでしょう。来週も出るんですよ。それが読みたくて死ねないですよ(笑)。

中野:
 原作の最後を知らないでこの世を去りたくないみたいなのはありますよね。

松山:

 『ジョジョの奇妙な冒険』はこれからも読み続けたいし、8部が終わったら9部があるのかなと考えるだけで死ねないと思うし、仮に『ジョジョの奇妙な冒険』が終わったとしても『ONE PIECE』も気になるし、とにかく規則正しい生活と健康面に気をつけて、仕事をしながらも長生きをしようと思っていますね。 

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