プログラマー小飼弾氏が選ぶ、2017年を総括する3つのキーワード「前原」「凍結」「ビットコイン」
仮想通貨バブルや東芝、けものフレンズなどが話題になった2017年も、まもなく終了しようとしています。
そこで12月25日放送の『小飼弾のニコ論弾時評』では、小飼弾氏と山路達也氏が、「2017年とはどんな年だったのか」をテーマに、ニュースを総括して見ていきます。
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ニュース2017第一のキーワード『凍結』
山路:
まず、はじめの2017ニュースキーワードで『凍結』なんですけど、キーワードに選んだ理由はなぜでしょうか?
小飼:
特にTwitterとかで顕著なんですけど、別にTwitterだけではなくFacebookでも、アカウントのSuspensionというのはいっぱい続きました。なにせ米国大統領選挙が、ロシアにハックされていたというのが、発端にはあると思うんですけれども、誤爆というのか、誤凍結しまくっていて。
山路:
日本なんかだと、ちょっと「殺す」という文字が入っていたら凍結されていたとか、雑な感じがしましたよね。あれ、明らかに機械的な処理だったわけじゃないですか? そういう凍結なんかも、人がやっていたんですか?
小飼:
機械的な処理なんでしょうかね? 本当に機械的な処理をしたとしたら、@realDonaldTrump(トランプ大統領のアカウント)とか凍結されなきゃ絶対におかしいんですけどね。雑なんですよ。
山路:
それこそTwitterの従業員がトランプ大統領のアカウントを一時停止したみたいな事件ありましたよね。
小飼:
あれはどう考えても正しい行動だったはずなんですけど。
山路:
こういう凍結する、しないみたいなことを民間の一サービス企業がやっていて、しかもそれが世界にものすごい影響を与えているということが、今年の注目ニュースというんですかね。Twitterに関して言うと、今もここ1週間くらいでトラブルというか、結構いろいろ話題がありました。
小飼:
改善したと言って、それが明後日の方向の改善というのは、もう、どのSNSもそんな感じです。
山路:
mixiの足跡機能みたいなやつですね。
自身の影響力に振り回されるTwitter
山路:
弾さんから見て、1番大きなTwitterの問題点はなんでしょうか?
小飼:
1番大きなものというのは、人の手を加えすぎていることでしょう。だから、「キーワードで凍結」が簡単なわけですよ。でも、それよりも、もっと問題なのは、なんで凍結したのかというのがわからないこと。
山路:
説明がまったくないですもんね。でも、IT企業なんかのサービスに共通するものなのかなという気はしますけどね。
小飼:
たしかに規約上は凍結する、しないというのは、運営の胸先三寸なわけですけれども。
山路:
一企業が、そこまでの決定権をもって、それが影響を与えるというあり方というのは望ましいんですか?
小飼:
それを言ったら、たかだか一国の政策が全世界に影響を与えるという意味では、北朝鮮の核開発だって同じなわけです。なんですけども、ひとつの特徴としては、一私企業の、一商用サービスのほうが、影響が大きい。人がやっている組織というのは、どんなものでも恣意的な運用というのがあるわけです。
法律なんてしょっちゅうそうです。「なんでこいつらが、野放しなんだ。こんなに人が捕まってるのに」、そんなのばっかりですよね? それよりも一私企業のやってることの影響力の方がでかくなっている。
山路:
本来だったら、Twitterも自分たちがそこまでの影響力を持つとは思ってなかったのに、いつの間にか国と同じぐらいの影響力を持つようになってきちゃったみたいな。その影響力の大きさに彼ら自身がもしかしたら、悪気があるとかっていうよりも。
小飼:
振り回されているというところはありますね。
Togetter凍結問題はソフトウェアによく見られる現象だった
山路:
あと、ここ一週間くらいで起こった事件としては、Twitterを利用している他のアプリとかサービスの利用者のアカウントが凍結された。例えば、Togetterというサービスなんかも使えなくなるというか、いったんログアウトするとログインができなくなるみたいな状態でしたっけ? そういうトラブルありましたよね。
小飼:
これはどんな世界でも見られるものなんですよ。特にそれが顕著だったのが、OSとサードパーティーのアプリケーションの関係で、例えば、昔はスクリーンセーバーひとつとっても、サードパーティーのアプリケーションだったんですよ。
これがいいというので、OSのほうでも取り込んでと。だから、ものによっては、OSのベンダーが、しれっと黙って取り込んだり、ちゃんとお金を出して買ったりもするんですけれども、これはいいなと思われたものというのをサードパーティーのために用意されていたプラットフォームが取り込んでいくというのが、およそどんなソフトウェアの世界でも見られる現象ではあるんですよね。
山路:
最初の大きなものとしては、Internet Explorerあたりですか?
小飼:
あのころはWebブラウザすらサードパーティー製のアプリだったわけですよ。
山路:
今、コメントでスクリーンセーバーの「After Darkのフライングトースター」と、すごく懐かしい名前が出てきましたね。
小飼:
懐かしいな。今はmacOSだけど、昔は大文字で始まるMac OSだった。昔のMac OSがMac OSというようになったのはたしか8のときじゃなかったかな? 7.5のころまではSystem 7.5。それは置いておいても、ブラウザは入っていて当たり前ですし、今や結構いろいろなものというのがOS本体に含まれていますよね?
そういったことを考えると、例えばTogetterみたいなサービスというのを、Twitterが取り込むというのは、おおいにありうるわけですよ。モバイルアプリですら、元々はほかの会社が開発していたサードパーティーのものを買い取ってやっていたわけですから。
TwitterはFacebookの足元にも及ばない?
山路:
今はTwitterの公式機能としてTweetDeckがあるけど、あれもサードパーティの機能を本体が取り込んだものですね。
小飼:
例えば、Togetterに相当するサービスというのは、まだないわけですよね。まだないというのか、強いて言うとモーメントという機能がそれに近いのかもしれないけれども、ずっとしょぼいわけですよ。
山路:
Togetterのサービスは復活したみたいですけれども、Twitterの中の人たちは、どの程度考えてアカウント停止をやったんでしょうか? 本当にきちんと考えてのことなのかな?
小飼:
本当に考えているわけないじゃん。
山路:
ズバリですね(笑)。
小飼:
こういうのもなんですけれども、Twitterが商売的には、Facebookとかと比べると明らかにさえないわけです。株価戻していると言っても、Facebookの足元にも及ばないわけじゃないですか? だから、だれのためのサービスというのが、Twitterの場合はグラグラしているわけですよね。Facebookの場合は明らかです、広告主のためですから。
山路:
Twitterは、ちょっと広告が多いなみたいな感じになると、また文句も出るし、そのへんのバランスがビジネスとしてうまくいってないのかな、という気はしなくもないですね。
小飼:
凍結は別にTwitterだけではなくて、全SNS共通の課題にはなっているので。