将棋普及のために尽力する羽生善治棋聖のエピソード「タイトル戦の合間に、予定をやり繰りしてイベントに来てくれることがよくある」
10月28日のニコニコ生放送『第30期竜王戦 七番勝負 第2局初日 渡辺明竜王 vs 羽生善治棋聖』に、解説として佐藤秀司七段、聞き手として宮宗紫野女流初段が出演。
「羽生棋聖は順位戦、竜王戦、叡王戦と非常なタイトな日程を初めて見ました。対局予定が積み重なった棋士のお話を教えてください」という視聴者からのお便りに対して、佐藤七段は「私は実体験というのはないですから(笑)」と語りつつも、多忙ながらも将棋普及のために尽力する羽生棋聖のエピソードを語りました。
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すべては将棋界のためにプラスになれば……
宮宗:
愛知県の男性からのお便りです。「羽生棋聖は10月26日に順位戦を戦い、10月27日は竜王戦の検分と前夜祭、そして10月28日、29日は竜王戦で、10月31日には叡王戦段位予選決勝と非常にタイトな日程となっています。私はこれほど予定が詰まっているのを初めて見ましたが、お二人が知っている対局予定が積み重なった棋士のお話を教えてください」
佐藤:
私は経験ないので、実体験というのはないですから(笑)。本当のトップの一握りですよね。
宮宗:
いわゆる対局過多というか、こういう経験をされているのは羽生先生が一番多いでしょうね。
佐藤:
ええ。あと、例えば、イベントをやるにしても、企業さんが協賛についてくれる場合、「羽生先生にご挨拶や講演をお願いできませんでしょうか?」という話が結構あるんですよね。こちらは羽生さんの忙しさを知っているじゃないですか? なので、「さすがにちょっとな……」と思いながら、一応、お願いしてみると羽生さんは何とかスケジュールをやり繰りして……。
例えば、タイトル戦とタイトル戦の合間に1日空いているとするじゃないですか? 普通は、そういう時は、休養にあてたり研究にあてたりしたいというのが当然だと思うんですけれども、羽生さんは何とかやり繰りして来てくれたりすることがよくあるんですよね。これは本当に想像できないですよ。
宮宗:
できないですね。たしかに(イベントに)来る方のことを思えば、なかなか本当にお会いできない先生にお会いできれば、もう本当にうれしいという気持ちはありますよね。
佐藤:
本当そうなんですよ。羽生さん自身、自分は将棋界の顔であり、自分の影響力とかそういうのをもちろんご存じでしょうし、すべては将棋界のためにプラスになればとか普及になればということを考えていますので、本当にそういったところを犠牲にしてでも「大きく考えれば将棋界にとってプラスになるならば」ということで受けてくれるんですね。本当にすごいですよ。
宮宗:
もうすごい、すごいというか……。対局はもちろんですけれど、その間も相当にいろいろなお仕事をされているんでしょうね。
佐藤:
かつても、たしか谷川先生が、すべてのタイトル戦に出ているような状態の時なんて、月に10何局とか指していることもありましたからね。当然、タイトル戦での移動日もありますから、多分ほとんど家にいるような時間はなかったんじゃないかな? と思うくらい、タイトなスケジュールだったと思うんですけどね。それはもう宿命なんだというふうに理解されているんだと思います。
宮宗:
そうですね。先ほどコメントにもありましたけど、大山康晴先生も相当お忙しかったんでしょうね?
佐藤:
そうですね。スケジュールが空いているのが嫌だというような話を聞いたことがありますね。
宮宗:
そうなんですか。普及と言いますか、会長としての立場もあってですよね。それもやりつつ、もちろん対局もありと。
佐藤:
はい。大山先生の場合は、今の将棋界をさらに良くしていこうとか、盛り上げていくためにはそういったことを率先してやられていたんじゃないかと思いますね。本当に全国を飛び回っていましたからね。本当、東奔西走プラス南奔北走? そういう言葉あるかどうか知りませんけど、本当それぐらい、あちこち全国を飛び回っていました。