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「日本では社会問題になると法律の解釈が変わる」ウェブサービスを取り巻く法規制の問題を川上量生・ひろゆき等が徹底討論

 ビットコインをはじめとする「仮想通貨」、個人の価値をビットコインでトレードできる「VALU」、手元のアイテムを気軽にお金に換金できる「CASH」など、今年も多くのウェブサービスが話題を呼んでいる。

 一方で、それらをとりまく法制度・法的規制に対して、「法律がイノベーションを阻害している」や「法規制はユーザーを守るためには必要」などなど、賛否両論の意見が飛び交っていることも事実。

 ニコ生では、知的財産推進計画2017の策定に関わった中村伊知哉氏(慶應義塾大学教授)を進行役に、ひろゆき氏(4chan管理人)、水野祐氏(弁護士)、川上量生氏(ドワンゴ会長)を交えて、「インターネットと法規制」をテーマにしたディスカッションを実施。

 本記事では、「CASH」をテーマに新サービスのビジネスモデルと法律面について議論を行った内容をお届けする。


デジタル版質屋とも言われた『CASH』は何が問題だったのか!?

中村:
 インターネットサービスと法規制の問題について、「CASH」にフォーカスを当てて議論を深めていきたいと思います。CASHは、リリース直後に査定依頼が殺到し、約2か月の停止期間を経て再開したという経緯を持っています。

ひろゆき:
 「中古買い取りサービス」の意味を新たにしてしまったという意味では、偉大なアプリというか(笑)。

中村:
 まずは、CASHというアプリの存在を知っているかユーザーの皆さんにアンケートを取りつつ、どんなアプリなのかおさらいしておきましょう。

『CASH』とは?

・自分が持っているブランド品などの写真を撮ると、その瞬間、写真を撮ったアイテムが現金に変わるアプリ。
・対象となっている物品について、ジャンルや状態を選び、その写真を送るとすぐに査定され、上限2万円までの現金を受取ることが可能。
・リリース当初は、利用者は担保に入れた物品を2ヶ月以内に運営元へ送るか、15%の手数料を上乗せして返金するかを選択でき、質屋のような使い方が出来るサービスとして話題を集めた。(現在は返金時の手数料を廃止)

中村:
 ここでアンケートの結果が分かったので、見てみましょう。

川上:
 意外に知られていないんですね~。

ひろゆき:
 質屋っぽいものをデジタルの世界でやるという、かなりグレーゾーンを攻めているサービスなので面白いなぁとは思いますけどね。

中村:
 自分が持っているブランド品などの写真を撮ると、すぐに現金がチャージされる? う~ん……。

ひろゆき:
 そもそも、すごい安く買い叩かれるので、チャージされた金額で売ると基本的に損をしてしまうんですよね。

水野:
 (笑)。

ひろゆき:
 ヴィトンのバッグが1万円とかになっちゃう。CASH側が想定したのは、その1万円を出して15%の手数料をもらえるから「お得じゃん」という質屋のような金利商売をやろうと思っていたんだけど、結局、金利商売ではなく、中古買い取りサービスになってしまい……これって一体何をやりたかったんだろうという(笑)。

水野:
 15%のところをサービス側が狙っていたか否かは微妙なところだと思うんですけどね(笑)。

川上:
 絶対、狙っていたでしょ!(笑)

ひろゆき:
 ははははは、でも証拠がないですから(笑)。

中村:
 6月のサービス開始時は、リリースからわずか約16時間で7000件の(査定の)申し込みがあって、現金化総額は約3億5000万円に上ったといいますよね。その後、8月に再開し、1日1000万円の上限を設け、キャッシュ化した商品を送る取引期間も2週間にするなど、新たな制限を設けたものの申込みが相次いでいる……。

水野:
 それだけニーズがあるってことですね。

中村:
 再開時には、iPhoneのようなガジェットであるとか、ブランド品に限定するということで、上限買い取り額も2万円までとなっています。

ひろゆき:
 キャッシュを受け取ったユーザーの8割~9割は、きちんと商品を送っていると聞きますよね。真面目なユーザーが多くないですか!? お金だけ受け取って商品を送らないとか、適当なブランド品の画像を拾ってきてそれを送りつけてお金だけもらうとか、そういうユーザーがもっといると思ったのに(笑)。日本って安全だなぁと。

川上:
 担保に取るのが携帯電話なんですよね。電話番号などを押さえていれば、商品は送ってくるだろうと。

ひろゆき:
 たった2万円のために携帯番号を変えるのは面倒ですからね。

水野:
 あと、再開時には15%の手数料がなくなりましたよね。

中村:
 もし商品を送ってこないなどの行為を行った場合は、ブラックリストに入って、このサービスが使えなくなるというペナルティのみ。

ひろゆき:
 CASHが使えなくなっても人生何にも困らないでしょ。

川上:
 一回食い逃げして終わりって人もいるだろうね。

水野:
 査定金額の上限が2万円ですから、事業者側がわざわざ弁護士等に依頼して債権回収するとは思えない……。

ひろゆき:
 手間暇を考えるとね(苦笑)。

質権はあるのか? 法律のグレーゾーンにある『CASH』という存在

中村:
 このサービスって、法律の問題とビジネスモデルがあると思うのですが、法律から考えた場合、質屋のように見えるのですが、実際は質屋営業法みたいな適用は受けていないんですよね?

水野:
 そうですね。グレーなのですが、民法上質権を設定できない。

中村:
 それってユーザーが物を持ったままだから?

水野:
 はい。民法上、物を占有していないと、質権を設定することができないんですよね。だから、ユーザー側に占有があるCASHのサービスではCASHに質権は成立しません。

中村:
 ちなみに、再開前の15%の手数料を取るシステムって、貸金業法みたいなものには引っかからない?

水野:
 CASH側は「キャンセル料」であると説明していたようですが、実質的に「貸金」と判断された可能性はあったと思います。

中村:
 買取のようなシステムにしていたから、すり抜けることもできたという……。

水野:
 そうですね。ここは本当にグレーな感じというか(苦笑)。最初は某有名法律事務所がクレジットされていたのですが削除されていたように、いろいろな面で話題になっていたことは確かです(笑)。

川上:
 いろいろと法律面も鑑みて検討した上で、いけると踏んだサービスだと?

水野:
 僕はそう思いました。

川上:
 日本って社会問題化すると法律の解釈が変わるからなぁ。

ひろゆき:
 ホント、ホント(笑)。決算書類出していない東芝が、上場維持ですからね!

一同:
 (爆笑)

ひろゆき:
 なんだそれ! って(笑)。

中村:
 そういう意味で言うと、CASHは賢いですよね。

水野:
 戦略法務という言い方をするのですが、ヴィジョンと現行法のロジックを使って、グレーゾーンにあるサービスをうまく成り立たせていけるか、ですよね。

川上:
 言葉を選びますね~(笑)。“すり抜ける”って言葉は使っちゃダメ?

水野:
 その言葉の響きだと、どうしても道徳的な話になってしまうので(苦笑)。ちゃんと正当なヴィジョンがないのであれば脱法行為と見なされても仕方がないと、僕は思いますが、初日にCASHの利用規約を見た際に、「法律的にもかなり練り込まれているなぁ」と感じたことは確かですね。

川上:
 練りに練ったけども、話題になりすぎて15%という部分が違法(利息分に相当される)だと判断される可能性もあったと?

水野:
 僕は法律的にも「これは超えられていないんじゃないかな」と思いました。3億5000万~6000万分の利用が殺到してショートしたこともあるでしょうが、法律的にもストップするべきだと判断したのではないでしょうか。

ひろゆき:
 水野先生のところに来て、「CASHのビジネスモデルを完璧にやりたいんですよ!」って相談されたらどうします?(笑)

水野:
 それは考えたことがなかったです(笑)。

ひろゆき:
 そういうグレーなことはやらない!?

水野:
 いやいや(笑)。どういうヴィジョンを持っているかが大事だと思います。

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