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JASRAC理事長、音楽教室からの徴収を語る「仲間内にやさしいっていうのはまずいですよね」

音楽教室は教育なのか、それともビジネスなのか?

中村:
 今回の件で、JASRACさんは「ビジネスではないのか?」と唱える一方、ヤマハさんなどは、「これは文化であり教育である」というようなことを仰られている。双方の見解が違う点についてはどう思われますか?

浅石:
 教育的な観点があり、公益という考え方があることは理解しています。ただ、ヤマハさんなどは学校法人という形ではなく、あくまで営利事業として教室を行っている。となれば、私益が発生していますし、教えている方々も報酬をいただいているはずです。それはおかしいのではないですか? と。

ひろゆき:
 ヤマハが専門学校を作って、(学校法人化した上で)音楽を教えるなら徴収はしない? 

浅石:
 しないというか、法律上できません。

ひろゆき:
 専門学校もそうだろうし、幼稚園や保育園のようにお遊戯で歌ったり、音楽を流していることが問題ないように、同じ扱いになると。

浅石:
 その通りです。非営利、無償……生徒さんたちからお金をもらわないで、教える方々もボランティアでやれば、問題ありません。

ひろゆき:
 仮に学校法人で授業料という形でヤマハがお金を取っていたとしても、JASRACは徴収しない、できないんですよね?

浅石:
 そうです。

ひろゆき:
 だったら、ヤマハは学校法人化したほうがよくない?(笑)

中村:
 先ほどお話にもありましたが、「総額の2.5%を上限として」とありましたが、料率に関しては何か具体的なことが?

浅石:
 まず2.5%というのは上限規定で決められていることなので、それを超えることはありません。数字に関しては、実態を見て決めていく、ということになります。

ひろゆき:
 調べてみたら、ほとんどJASRACの曲を使っていなかった、という場合なら料率も当然下がるわけですね。

浅石:
 そうなります。実態を見て、決めるということですね。

池村:
 2.5%という上限の数字はどこから?

浅石:
 これまでの演奏会の規定や、教室で行う際のケースなどを勘案して2.5%が上限だろうと。

ひろゆき:
 その数字って、裁判所が決めるケースもあるのですか?

浅石:
 裁判所はそこまではしないですね。当事者で決めなさい、ということですね。

ひろゆき:
 演奏するだけで2.5%は多すぎじゃね? という意見もあると思うのですが……。

浅石:
 あくまで上限であって、どのラインが適切かを話し合いましょうと持ちかけていたところ、ヤマハさんは「0%だ」というわけです(苦笑)。

中村:
 そういった料率というのは、普段は話し合いの中で?

浅石:
 そうです。文化庁に届け出た料率を超えてはいけませんから、実態に合わせて、(上限として届け出た)料率の範囲内で話し合いで決めていきましょうというのが方針です。

ひろゆき:
 ちなみにカラオケの場合ってどれくらいなんですか?

浅石:
 一ヶ月、一部屋3500円ですね。

ひろゆき:
 となると、10部屋を持つカラオケボックスは月35000円ということかぁ(笑)。

なぜこのタイミングで音楽教室への徴収方針を固めたのか?

中村:
 80年代にカラオケボックスから徴収することが決まり、次にダンス教室、という具合に順々に使用料の徴収開始の推移があったと思うのですが、なぜ今この段階で音楽教室からの徴収を開始する方針を固めたのでしょうか?

浅石:
 私が理事長になったとき(2016年6月末に就任)に、一番の問題は公正取引委員会の問題でした。

中村:
 ほう。

浅石:
 約10年間続いていた問題で、その中でJASRACの業務が停滞していたのは事実です。その問題というのが、放送局との包括的(利用許諾)契約において、もし他団体が入ってくるとJASRACとすでに結んでいる包括的契約に加え、別料金を支払わなくてはいけなくなるため、我々との包括的契約が参入障壁になっているのではないか?(独占禁止法違反なのでないか?) というものでした。

 そのため割合に応じた使用料にしなければいけないのですが、当時は放送局から使用する全楽曲の報告がなかったため、割合の算出ができない状況でした。その中で、「割合に応じて」と協議が進んでいたため、我々は「意義あり」という形で問題が長期化していたわけです。

ひろゆき:
 なるほど。

浅石:
 私が理事長になった際、長期化することで本来の業務に差支えが出ていたその問題の(排除措置命令の)審判請求を取り下げる決断を下しました。経済的なリスクはありましたが、JASRACの本来の業務に邁進しましょうと。

ひろゆき:
 ということは、公正取引委員会が決めたルールに従ったと?

浅石:
 そうです。その問題が決着したので、滞っていた問題をしっかりやりましょう、と、その一つが「音楽教室からの演奏著作権料の徴収」というものでした。ですから、音楽教室だけでなく、パチンコホール【※】の問題も合意に至るなど、これまでストップしていたやるべき本来の業務を進めているだけなのです。

※パチンコホールに代わり、遊技機メーカーが、JASRACが管理する楽曲1曲につき、遊技機1台当たり80円の使用料を支払うことに(2017年は50円、2018年は60円、2019年は70円の支払い)。

6月の総会では異を唱えるクリエイターはいなかった

中村:
 池村さんは、「音楽教育を守る会」との裁判が、どのように推移するとお考えですか?

池村:
 いや~それは分からない(苦笑)。双方、ガチンコですからね。

ひろゆき:
 地裁、高裁、最高裁と続くとしたらどれくらいかかりそうですか?

池村:
 地裁だけで1年くらいはかかると思いますね。もしかしたら、途中で裁判所から和解のすすめがあるかもしれない……そういったことは珍しくないですからね。

浅石:
 この問題は、我々も音楽教室さんも講師の先生も、目的は文化の発展という意味では一緒なんです。身内で揉めているような状態になっているのは心苦しいですよ。

ひろゆき:
 そんなに頑張らなくてもいいんじゃないですか? だって、徴収率が増えたところで、ボーナスが出るわけでもないんですよね?(笑)

浅石:
 (笑)。ですが、著作権の手続きが必要にもかかわらず、そこに目をつぶるようなことはできない。

ひろゆき:
 それってJASRACに委託している音楽家の方々が、「きちんと徴収せいや!」みたいなことを言ってくるんですか?

浅石:
 一部の人は、「そこまでしなくていい」と言いますが、多くの方からは「きちんとやるべきだ」という声をいただいています。6月の総会では、我々の行動に対して“×”を示すような方はいませんでした。

ひろゆき:
 そうなんですか!? でも、ネット上で「いかがなものか?」と苦言を呈す作詞家さんなどもいらっしゃいましたよね?

浅石:
 一つにまとめようとは、さらさら思っていません。そういう意見もあっていいと思いますし、反対を唱えるJASRACのメンバーがいても良いと思っています。その上で、今のJASRACの方向性については「よし」と言っていただいています。

中村:
 JASRACの場合は、個別のケースでそれぞれに反対・賛成ありますからね。今回の音楽教室の案件以外に、何か推し進めていくということはお考えですか?

浅石:
 ネットのP2Pの件【※】については、我々は刑事告訴という形で行っていますし、何かしら動いてはいます。今回、音楽教室の件がクローズアップされていますが、この件以外にも著作権を守るために動いていることはご理解願いたいです。

※ファイル共有ソフトを用いた音楽ファイルの違法アップロードに対して、管轄区域の警察署に告訴状を提出

ひろゆき:
 JASRACが、P2Pなりインターネット業界から徴収するのは当然だとして、なにゆえ音楽業界同士で争って、お金の奪い合いをするのかがイマイチ分からないところがあるんですよ(苦笑)。お金の総量が増えるわけじゃなくて、取り分が変わるだけじゃないですか?

浅石:
 でも、仲間内にやさしいっていうのはまずいですよね。同じように権利・主張をして、JASRACへの手続きが必要だと判断したら、当然、申し入れさせていただきます、という方針はブレてはいけないと思っています。

中村:
 たしかに、徴収した上でクリエイターに“分配”するわけですから、その公平性はなくてはならないでしょうね。ちなみに、日本ではJASRACですが、世界各国にも著作権管理団体があるんですよね?

浅石:
 最も古いのは、1851年にフランスで創設された「SACEM」という団体ですね。日本は1899年に著作権法が制定されるので、それ以前に保護する団体が、世界では存在していたということになります。ちなみに、これが世界各国の著作権使用料徴収額ですね。

ひろゆき:
 スイス、高ッッ!!

浅石:
 ヨーロッパの人たちから見たら、日本は著作権への認識が甘いのではないか、という状況です。単純に比較できないですが、一つの楽曲に対する価値をどう考えるのか、ですよね。

中村:
 音楽ビジネスのマーケットで言うと、アメリカと日本がツートップなんですよね。だからこそ、人口一人当たりの著作権使用料徴収額も少ないということもあるんでしょう。一つの楽曲に対する価値、というのは国によって違う。結果、著作権に対する認識にも幅があると。

浅石:
 JASRACは、CISACという著作権協会国際連合の理事ですから、世界各国の相手とも取引を行っています。海外で楽曲を使用する場合、我々がきちんとその権利を守らなければいけないので、国内においてもやるべきことをきちんとやらなければいけないと感じています。

※本記事は上記放送で取り上げた音楽教室からの著作権使用料の徴収で話された内容について、読みやすくするため編集を加えた内容となります。該当箇所を書き起こした内容はこちらをご確認ください。
今、音楽著作権の管理を考える(音楽教室パート・書き起こし)

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