今、音楽著作権の管理を考える(音楽教室パート・書き起こし)
本テキストは、ニコニコ生放送「今、音楽著作権の管理を考える【JASRAC理事長が出演】」から、音楽教室からの著作権使用料徴収に関するパート(56:53~92:11)を書き起こした内容になります。
中村:
さて最後に取り上げるテーマなんですけれども、これが最近大きく取り上げられている話題です。音楽教室での著作権料発生問題です。ヤマハ音楽教室問題と呼んだらいいんですかね?
今年の2月ですが、JASRACが音楽教室からの演奏著作権料の徴収を来年2018年の1月から始めるという方針を固めたという発表がありました。録音物の再生演奏は無料で利用できるという規則が2000年に著作権法から撤廃されまして、2003年ごろからJASRACはヤマハなどの音楽教室側に交渉を持ちかけています。
音楽教室の事業者はそれを拒んで、10年以上が経過しているわけですが、その間にJASRACはフィットネスクラブやカルチャーセンターを著作権料の徴収対象に広げて、今年2017年に入って音楽教室からの徴収に向けて動きを加速しました。
今年の6月、JASRACは音楽教室からの徴収を、来年1月から始めるということを正式に発表しまして、それに対してヤマハなどの音楽教室事業者は、「音楽教育を守る会」を結成しまして、東京地裁に対して、JASRACの徴収権限がない、集める権限がない、ということを確認するための訴訟を起こしたということでございます。
まず、その「音楽教育を守る会」というものなんですけれども、これを改めて説明いたしますと、この会、「音楽教育を守る会」というのはJASRACによる音楽教室からの音楽著作権料徴収の動きに対応するために、ヤマハ音楽教室、ヤマハ音楽振興会、カワイ楽器製作所、全日本ピアノ指導者協会などの7つの企業団体によって、今年の2月に結成された組織です。現在は約350の企業・団体が参加をしています。こちらのニュースですけれども、「音楽教育を守る会」に対して、番組スタッフから事前に質問をお送りいたしました。すると回答をいただくことが出来ました。どうもありがとうございます。こちらの紹介をいたしましょう。
まずその質問5つありまして、最初の質問「今日、今回JASRACの請求に対して、債務不存在確認訴訟。つまりお金を払う義務はないという、そういう確認の訴訟を提起されましたけれども、どのような趣旨、背景からでしょうか?」ということです。音楽教室のレッスンに演奏権が及ぶのか? という、そういうような話なんですけれども、これは著作権法が出来たのは1970年、今から約50年ほど前ですけれども、その当時とは大きく違うということが、回答の中でございました。
それから、お店を主体とするというものと、音楽教室は演奏まで拡張適応することは無理があるんじゃないかということも、この最初の質問については言っておられます。まとめて言うと、50年前の立法した時の意図とは違うでしょうということと、それから店と教室では性格が違うんじゃないかというようなことが、回答としてございました。
ひろゆき:
ちなみに使われている楽譜とかは、普通に買って使ってるわけですよね?
池村:
使われている楽譜はちゃんと。
浅石:
楽譜は、権利処理はしているはずですね。
ひろゆき:
じゃあそこで、楽譜を買ってそこの曲を演奏するという時は、それはそれでそもそもお金が必要なものなんですか?
浅石:
ですね。はい。
ひろゆき:
ちなみにこれ、他の国だとどうなんですか? 音楽教室の著作権って。
浅石:
営利を目的としているところで、使用料を支払わないっていうことは、基本的にないですね。
ひろゆき:
大学とかで音楽科とかだったら、それは免除だけど、音楽教室っていうビジネスをやっているところは、基本的にはじゃあ権利を払うっていうのは、外国では当たり前ということなんですか?
浅石:
そうです。ただしこのヤマハさんのように、一般の営利事業者がこういう教室をやっているというのは、日本独特の流れというんですか、例えばスタインウェイ音楽教室って聞いたことがないでしょう?
ひろゆき:
はいはい。
浅石:
ベーゼンドルファ音楽教室って聞いたことないですよね?
ひろゆき:
確かに楽器メーカーの音楽教室って他の国では聞いたことないですね。
浅石:
聞いたことがないですよね?
ひろゆき:
わりとなんか人、個人が先生としてやっているみたいな感じですよね。
浅石:
そうそう、だからこういう営利組織がやっているようなところというのは、外を見てもなかなかないんですね。
ひろゆき:
ちなみにヤマハ音楽教室の年間の売上っていくらくらいなんですか?
浅石:
ヤマハさんだけじゃないんですけど、この訴訟に参画したお店というか事業者の総売り上げが、721億。
ひろゆき:
721億円。結構お金が動いてますね。
浅石:
動いてますね。
ひろゆき:
ほお、実際そのうち、いくらくらい請求したんですか? JASRAC的に。
浅石:
だから総額の収入の2.5%を上限として話し合いの中で決めましょう。という話なんですけれども、もともと門前払いで。
ひろゆき:
じゃあ700億円の売り上げがあるんだから、最大14億円くらいもらえるといいなと思って請求をした?
浅石:
それは、ここの訴訟をしているまとまりの人たちです。それ以外にも音楽教室をやっているところはたくさんありますから、倍くらいはありますけれども、ここに限定すればそういうようなところですね。
ひろゆき:
まあ700億円儲けているんだったら、多少払えばという気はしますけどね。
中村:
この会にはあと4問質問していますので、それもちょっと見てみましょうかね。
2問目としては、「音楽著作物の実演、演奏をビジネスの重要な素材として使っていて、利益を得ているのに、その対価を権利者に支払わないのはおかしい」という、これはJASRACの意見に対してどのように考えますか? ということに対して、さっき話がありました、「楽譜ですとか発表会で演奏する時の申請はしている。お金は支払っている。」ということです。
これに対して、浅石理事長が第1回の口頭弁論で「受講料収入から1円も還元しないというのはどういう意図なのか?」ということをおっしゃっています。
またその次、続きですけれども、「ちゃんと権利者に分配がなされているんだろうか?」といった先ほどの、ファンキーさんの話と同じですけれども、「分配の透明性についてはどうなのか?」という回答がなされています。
それから次の質問ですが、ピアノ以外の楽器教室、カラオケ教室など公的な教育以外の私的な音楽教育ビジネス、これも日本独特という話が出ましたけれども、多岐にわたると考えられますけれども、どこまでが支払い対象なのか、その基準はどのように考えているのか? という質問に対しては、先程の最初の質問の回答と重複するということであります。
そして海外の話も先程ありましたね、アメリカではすでに音楽教室での著作物の使用に対しては、使用料が徴収されている、これをどう考えるか? ということです。これはアメリカ、海外と事情が違うというとか、法律の仕組みが違うという回答と、それから次のページですけれども、なお司法の判断がなされた後で徴収対象であるとなった場合には、その料率については、先程2.5%という話がありましたけれども、料率については歩み寄る参考になるかもしれないなと。結局いくらなのかという話まで、ここ言及をしてもらっています。
そして最後5つめの質問ですけれども、その他、niconico」の利用者に対してメッセージがあればお願いします。大きな注目を集めているので、著作権や音楽教室、それにJASRACという機関を考えるきっかけとして、捉えていただきたい。まさに今それでこの番組をやっているわけですけれども、それから多くの方が音楽を愛し、音楽に囲まれて暮らして欲しい。街に音楽がいつも流れていて欲しい。そこに無理なく権利者の創作の対価が還元されることが、望ましい。この辺りは、立場を超えてみんな思ってることかもしれなくって、問題提起をして頂いていると思っております。
最後にJASRACの徴収方針や徴収方法が窮屈な制度・締め付けとなってはいけないんじゃないかということ、またこの問題を契機に、JASRACが著作権の徴収機能、著作権料を集めるという機能からより多くの音楽ファンに活用してもらえるように、あるいは音楽マーケット拡大に向けた施策を合わせて行ってもらえないかという、これは問題提起といいますか、提言のようなものも頂いているということでございます。
ひろゆき:
コメントにあったんですけど、JASRAC管理曲を使わなければ、何の問題もないじゃないですか。なんで質問にJASRAC管理曲を使わなければいいんじゃねえ? という質問をなんで入れなかったんですかね? だってJASRACの管理曲を使わなければ、全然問題ないじゃないですか。
浅石:
問題ないです。
ひろゆき:
なんでこんなに揉めてまで、使いたがるの? という質問をしてほしい。
中村:
JASRAC以外の音楽、つまり他の。
池村:
クラシック曲とかでいいんですよ。
浅石:
いいんですいいんです。
ひろゆき:
ボカロの人で、JASRACを使っていないという人もいるわけで、別に、それとかやればいいじゃないですか? 初音ミクとかで練習すればいいじゃないですか? なんでJASRACを使いたがるの?
浅石:
なんででしょうかね。
池村:
たぶん人気がある曲の方が、子供にウケるから。
ひろゆき:
という質問をして欲しかった。niconico運営には。
中村:
さて、この問題について池村さん、どういうふうにみればいいんですかね?
池村:
結構難しくて。
中村:
論点、いくつかありますよね?
池村:
論点いくつかあって。
中村:
公衆への演奏というのと、ビジネスか教育かみたいな話とかも。
池村:
ビジネスか教育かっていうのは、結構感情的な話になっちゃうと思うんですけど、法律的にいうとまさに公衆に対して聞かせる目的で演奏することが権利の対象なので、ピアノ教室って先生と生徒、ごく少数でやってるわけなので、こういったものの小規模な範囲でのピアノの演奏とか楽器の演奏が果たして著作権法が及ぶ演奏権の対象なのかというのは、1つの論点としてあって。
ただ先程のライブハウスじゃないですけども、教室が演奏の主体なんだというふうに考えるというのが、これまでの裁判例の流れではあるので、これまでの判例の流れから言うと、JASRACさんの方が有利だというのが、著作権関係の学者さんだったり弁護士さんの意見ではあります。
ひろゆき:
でもヤマハとかの方は逆に裁判をヤマハ側がやったんですよね。
池村:
そこは、挑んでいるんだと思いますね。今まで裁判があるのは、ダンス教室のCDの再生だったりカラオケボックスだったので、音楽教室というのは、これが初めてのケースなので、そこでちょっと、特に生徒の演奏何ていうのは、あれが本当に対象でいいのかっていう論点はあると思うんですよね。
中村:
演奏して聞かせるのは、先生の場合もあれば、生徒の場合もある。
池村:
分けて考える必要が、たぶん、あると思うんですね。
中村:
なるほど。公衆っていうのは、不特定多数とは違うんですかね?
池村:
不特定または多数ですね。著作権の場合は。
中村:
不特定。
池村:
不特定であればいいので。
中村:
だから教室の中にそんなにたくさんいなくたって。公衆ということになると。
池村:
それまで裁判所の考え方としては、生徒というのは、特定の教室だけ見れば、特定少数かもしれないけれども、誰でも申し込めば契約できるんだから、そういう意味では不特定だろうというのが、裁判所の考え方ではあるんですよね、これまでは。それの流れでたぶん、JASRACさんとしては、100%勝つ自信があるんだというふうにおっしゃっていると思うんですね(笑)。
中村:
ちなみにその音楽教室で使っている曲のリストというのは、JASRACに送られているんですか?
浅石:
出版の申請が使う楽譜でいただいていますから。
ひろゆき:
じゃこの楽譜だったらこの曲というのが。じゃあJASRACが取ったお金の分は、わりともう99%くらいの確率で、クリエイターにちゃんと還元されている?
浅石:
出版、楽譜に関しては、99%ではなく、100%。はい。
ひろゆき:
100%クリエイターに戻っていると。
浅石:
はい。
ひろゆき:
はいはい。じゃあクリエイターに戻っているんだったら、別に、要は、ちゃんと使ったもののお金が行かないというのはマズイと思うんですけど、音楽家が作った楽譜を音楽教室で使われて、それがJASRACにきちんとお金が行って、クリエイターに戻るっていうんだったら、そこは全然問題ないんですね。
池村:
プラスして今回、教室内での演奏に対しての。
中村:
演奏ね。
ひろゆき:
演奏の権利だから、楽譜だけじゃなくてプラスαで演奏権についても収入が欲しい。そういうことか。
浅石:
それとかCDだとかDVDの上映もしてますから。
池村:
見本のCDを流すみたいな。
ひろゆき:
お手本としてライブのCDだったりDVDを流したら、それに関してはという、はいはい。そこでももう裁判所で決めた方が早くないですか?
浅石:
それで基本的に法的な問題は、今裁判が進んでますから、そっちでしっかりと、主張して立証して決めていくんだというのが早いんだろうとは思いますね。
中村:
裁判の場には、理事長は出られるんですか?
浅石:
第1回目に出ました。なんというんですか、これまでJASRACは原告の立場だったんですけども。
中村:
原告。ああ攻める側。
浅石:
ここに裁判官がいるとすると、こちら側だったんです。
ひろゆき:
はいはい。
中村:
ああそういうもんなんですか。
浅石:
今回被告なんで、ちょっとこう東京地方裁判所も被告側に座ると、ちょっと違う、景色が変わったなって。ただ向こう側にもヤマハさんの方たち座って、ヤマハさんにしても「音楽教育を守る会」の方たちって、私たちとよく知っている方なんですよ。
中村:
まあまあ、音楽業界の関係者ですからね。
浅石:
ですから何でこんな風になっちゃってるのかな?というのが、私としては非常に残念なんですね。ですから私ずっとこの問題は話せばわかる。話し合いで決めましょうよと、ずっと言っていて、本来JASRACって、こっちが裁判すると、ずっと来てたんですけども、この問題はもう話し合いだからというふうに言っていたところ、向こう側から訴えられたというようなところなので。
ひろゆき:
話し合いにしない方が、世間は理解しやすいんじゃないですか?
浅石:
かもしれないですね。
ひろゆき:
もう裁判所がこう決めましたと言ったら議論の余地ないじゃないですか? それ、やっぱりJASRACがある程度強権的な大きな組織だから、言われたら従わざるを得ないみたいな感じで怖がられている部分があると思うんですけど。
浅石:
例えば、音楽産業の中で、ヤマハさんとかカワイさんと、JASRACと比べたら、JASRACなんてこんなちっちゃいもんですよね。
ひろゆき:
どんなサイズなんですか? ヤマハとカワイさんって?
浅石:
だってヤマハさんなんてすごいじゃん。
中村:
楽器を売ってますからね。
浅石:
楽器を売ってますし、カワイ楽器さんも含めて
ひろゆき:
初音ミクで儲けてるのもヤマハさんですからね。
浅石:
要するに、すごい産業を持っている所と、私たちだから、なんかJASRACはね、こんなに大きくていじめているんじゃないかみたいな図ですけれども、とてもじゃないけど昔は、ヤマハさんに私たちなんか、ものを言えるような状況ではなかったっていうのが、事実ですよね。
中村:
一方で今回は、JASRACとしては広告をとって聞かせているビジネスじゃないかという立場で、一方でヤマハなどはこれは文化だと、教育だというような言い方をしてますけれども、その辺りの見解はどうですか?
浅石:
基本的にヤマハさんがやっているところについて、教育的なものがあるというのは、私は理解しているんですね。それは公益的なことをやっているっていうことも理解しています。ただ、やっているのが、学校のようなものではなくて、営利事業としての立場でおやりになっているわけですよ。だからそこはヤマハさん、カワイさんという私益が発生していますし、音楽教えている方たちって報酬をもらっているわけですよね。
中村:
まあ721億円というと大きな産業だと思いますよね。
浅石:
JASRACの著作権だけ0っていうのは、どう考えたっておかしいでしょ? というのが基本的な。
ひろゆき:
じゃあヤマハが専門学校を作って音楽を教えるんだったら、請求はいってなかった?
浅石:
いきませんいきません。
中村:
そういうことですか。
ひろゆき:
じゃあ、ちゃんと学校法人として教育が目的です。というところでやってくれるんだったらこんな話にはなってない?
浅石:
なってないです。だから私達そういう学校、専門学校も含めて、許諾を求めに行くなんて、法律上できないですから。
ひろゆき:
幼稚園とか保育園とかでやっても好きにやればと。はいはい。
中村:
なるほどね。
浅石:
ですから、そういう道を選んでいないんで、目的は正しいかもしれないですけど。
ひろゆき:
まあ音楽文化というんだったら、それはもう素直に学校法人にしたら? という方が早い気もしますけどね。
浅石:
非営利無償で、要するに、お金を生徒さんたちからもらわないで、それで教える人たちも、ボランティアでやっていれば。
ひろゆき:
別に学校法人で授業料をもらって、お金をとっても別にJASRACは請求しないんですよね。ヤマハ学校法人にすればいいじゃん。
中村:
宇多田ヒカルさんが、学校の先生はタダでいいみたいな発言をして、ちょっと微妙になっちゃいましたけど。
浅石:
私たちも、宇多田ヒカルさんとは同じ意見ですよ。学校で自由に使う分について何も私たちは言いませんし、はい。
中村:
先ほど、先方の回答でも、裁判ではっきり決まったら、料率のところもちょっとというような話がありましたけど、先程2.5%と仰った。ということは、そういう音楽教室で、月1万円払ってるとしたら、250円がそこから行くという。
浅石:
JASRACの使用料規定って上限規定なんです。2.5を超えちゃいけないんですけど、2.5の範囲内で利用者の方たちと、実態を見て決めていこうということをやりましょうと、言っているんですけど。
ひろゆき:
じゃあ、調べてみたら、JASRACの曲をほとんど使っていなかったから、2%とかの形で。
浅石:
そういう実態を見ましょうということです。
池村:
その2.5というのはどこから出てきた数字なんですか?
浅石:
2.5というのは、演奏、これまでの演奏会の規定だとかというのを勘案して、こういう教室ではこれが相当だろう、アッパーだろうというふうに思っているということでしょうね。いろいろな規定がありますから、そこを勘案しているということですね。
ひろゆき:
そこの適正価格がいくらかみたいなのも、裁判所が決めてくれる可能性はあるんですか?
浅石:
決めないと思いますよ。そこは当事者でということになりますね。
ひろゆき:
演奏するだけで、売り上げの2.5%って多いんじゃね? という意見もあるじゃないですか?
浅石:
はいはい。
ひろゆき:
それって、どれくらいの額が適切かと。
浅石:
それを話しましょうよって言ってるんですけれども。
ひろゆき:
あっもう両者で話し合いで、と。
浅石:
でもそれは、話し合いに乗りませんという。ゼロだと言っている話ですね。
中村:
だいたい、そういう料率というのは、関係者との話し合いの中で決めていくものなんですか?
浅石:
話し合って決めていきます。ですから料率は文化庁に届けているやつは、このパーセンテージという風に決まっていても、それ以下で決めているというものもありますし。
中村:
そのパーセンテージは文化庁に届け出る。
浅石:
届け出る。で、届け出た料率を超えちゃいけない。でもそれはアッパーの料率なんで、その範囲内で実態に合わせて利用者を代表する人たちと話し合いをして決めていきましょうと。
ひろゆき:
ちなみにカラオケって何パーセントぐらい取ってるんですか?
浅石:
カラオケって、どのぐらい取ってるんだっけかな?
ひろゆき:
カラオケ屋さんに行って1時間1000円とか払って歌ったとしてだいたい何%ぐらい。
浅石:
お店からは3500円ぐらい、月。
ひろゆき:
月に?
浅石:
はい。
ひろゆき:
3500円を払えばカラオケ屋やり放題なんですか?
浅石:
そうです。
ひろゆき:
あ、そんなもんなんだ。ライブハウスより全然安いですね。
浅石:
そうですね。だから、日本の生と録音物の再生というのが、かなり虐げられてるのはあります。
(収録に同席していた川上氏から「1店3500円?」と質問)
浅石:
1部屋。ボックスはボックスで分ける。
ひろゆき:
だから、カラオケボックスで10部屋あったら月に3万5000円。ああ、はいはい。
中村:
スナックやカラオケからお金を取ると、ちゃんと決まったっていうのは最高裁で判決が80年代でしたっけ、あってカラオケボックスがあってダンス教室、順々にこう来て今回音楽教室になったんで。今回、今年に入ってそういう大きな動きが出てきたっていうのは何か事情があるんですか?
浅石:
私が理事長になった時に、一番の問題点というのが公正取引委員会の問題だったんです。これが約10年間続いていたわけで、その中でJASRACの業務というのが、かなり停滞していたのは事実なんです。
中村:
公取とはどういう対立の……。
浅石:
放送局との間の包括契約が、そのことによって他団体がもし入っていくとプラスアルファを払わなきゃいけないんで。
中村:
先ほどの別団体の話ですね。
浅石:
そうするとJASRACとの包括契約がそういう参入障壁になってるだろうということで、その割合に応じた使用料にしなさいというような状況だった。それは当時、ファンキーさんのところもありましたけども、全楽曲の報告がなかったので割合の算出ができない状況の中でそういうふうに言われたので、我々は異議ありというふうに申し入れて、ずっと戦っていたというような状況なんですね。
その中で、やはりかなり大きな問題でしたから、なかなかJASRACの本来業務を積極的にしていくというところが、やっぱりなかなか、できなかったというのは事実なんですね。で、私が理事長になった時に、その排除措置命令に対する審判請求を取り下げると。まあ経済的なリスクはありましたけれども、それを取り下げてJASRACの本来業務に邁進しましょうという形になった。
ひろゆき:
公取の決めた通りのルールに従いますと。
浅石:
従いますということで。
中村:
決着したということで、次の話として出てきたということですか?
浅石:
要するに、これまで滞っていたものをしっかりやりましょうというような形で出てきたものなんです。ですから、この問題だけじゃなくて、例えば今年の1月からパチンコの機器ありますよね? あそこに音楽をチップで載せるときには使用料いただいて、BGMとしてお店全体、ホールからもいただいていたんですけれども、そこで大当たりすると曲が鳴るじゃないですか? それの上映についても、この1月からいただくというふうになって、それはもういただいていると。
そこで、この問題があってということで、今演奏権管理についてこれまで少し滞ってたものについて積極的にというか通常の業務として、話し合いをしましょうということになって、今問題になっているというようなところですね。
中村:
池村さん、この問題は裁判の行方ってどう見ておられます?
池村:
それはわからないですね。ガチンコでやってらっしゃいますから。
ひろゆき:
地裁でやって高裁いって下手した最高裁まで行くわけで、どれくらい期間かかりそうですか? 結論まで。
池村:
地裁で1年ぐらいですかね。
中村:
結構かかるんですね、これも。まあその間に話し合いで決着する可能性も。
池村:
もしかしたら途中で裁判所から和解の勧めとかもあるかもしれないし。まあ普通はあるので。
中村:
ああ、そうですか。こういう問題って、他の案件だったら役所が出てきたりするじゃないですか? 例えば、解散しちゃいましたけれども、林芳正文部科学大臣が小学校と音楽の営利の教室とは違うよと発言をされて、ちょっとJASRAC寄りのことをおっしゃってますけれど、考えてみたら著作権の制度も学校教育も、どっちも文部科学省の所管だから、本来なら役所が出てきてこうじゃないの? と裁いたりすることがあってもいいのかなと思うんですけれど、著作権の場合は、あまりそういうことないですか?
池村:
著作権って別に規制じゃなくて権利ですので、それは権利者と利用者との間で本来話し合うべき話だから、そこに役所がしゃしゃり出るっていうのは本来民事不介入みたいな話でないと思うんですね。
中村:
話つかないとやっぱり。
池村:
ただ両者の話し合いがもつれていて、間を取り持ってよみたいな、そういうところでということはあると思います。
ひろゆき:
めっちゃもつれてるじゃないですか、いま。
池村:
だから、そういう場合に文化庁としても何とか仲良くやれよ的なことまでは言えても、どっちかにしろということは言う権利ないですのでそれは裁判所に持っていくしかない。
中村:
文化庁におられたときって、そういう案件って相談に来られることってなかったんですか?
池村:
でもしょっちゅう来ますよ、いろんな人が。陳情みたいな形で。
中村:
でも、そういう時でも、もうJASRACは天下りの人もいないし、裁判でやるということなんですかね。
池村:
あまりにも法律違反をしているようなことであれば、ちょっとこれはまずいんじゃないの? というのは、言うと思いますけども、これは本当に裁判で片づけていただくしかない話なので。
ひろゆき:
天下りっていなくなってもう何年ぐらいになるんですか?
浅石:
えっと何年ぐらいかな。約10年ぐらいですね。丸9年は経ってると思います。
中村:
この話も法律の問題ですけども、音楽教室とか文化とかっていうような社会的な感情が絡んできたり、全然違う議論になったりするというところにJASRACがいるんで、そこが厄介ですね。
浅石:
この問題って、例えば音楽教室さんも我々も、それから音楽教室で教えている講師の人たちも目的は文化の発展っていう部分では一緒なんですよね。だから仲間が揉めちゃってるから、なおさらなんか、なんていうんですかね。
だってファンキーさんだって一時期JASRACのメンバーだったんですから。今はあれですけど。そういうその、なんか今身内の話になっちゃっていて。私としては本当に、膝詰めで話せば全部素直に解決できるんだろうというふうに思ってるんですけどね。
ひろゆき:
JASRAC、そんなに頑張らなくてもいいんじゃないですか? 頑張ってもボーナス出る会社じゃないじゃないですか。
浅石:
ないですね。
ひろゆき:
したら別にもうそんなに言われるしというので頑張らないっていう手もあるじゃないですか。
浅石:
でもやっぱりそこに著作権の手続きをすべき実態があれば、それに目をつぶると言うのは、私たちとしてはやっぱりできないですよね。
ひろゆき:
それは、やっぱり著作権を委託している音楽家が文句を言うんですか? 「お前らやれよ」みたいな。
浅石:
今回については、一部の人はやるなということを言いますけれども、多くの人はやりなさいと言っているわけですから。
ひろゆき:
じゃあJASRACの総会とかで音楽家の人的にヤマハを訴えろというのが多数派なんですか?
浅石:
訴えろというか……。
ひろゆき:
金取れというのが。
浅石:
そうですね。JASRACがやってることについて6月の総会でバツと言った方はいなかったです。
ひろゆき:
あっ、そうなの? でもネット上で教室からお金を取るのはいかがなものか? と言っている作詞家さんとかいるじゃないですか。
浅石:
文化って多様性ですから、全部ひとつにまとめようなんて、さらさら私は思ってないですね。だから反対だと言うJASRACのメンバーがいたって、それはいいんですよ。だってそうじゃなければなんか強制してるみたいな話ですから。
ひろゆき:
まあ確かに全員一致はおかしいですからね。
浅石:
みんな言いたいことは言ってくださいよと。だけど総体どうですかという部分については、JASRACの今の方向性について、よしというふうに言っていただいているということですね。
ひろゆき:
じゃあ、その6月の総会では別にヤマハについて金を取るいう方向で進むのはOKというのが、音楽家が言っているわけですよね?
浅石:
はい。
中村:
JASRACの場合は、本当にそれぞれ個別の事案で賛成の人がいて反対の人がいて争いになるというのが続いてますから、それを全部裁判で長い時間かけて解決していくと、なかなか骨が折れますね。今回の音楽教室の話以外にも、他に、いろいろとこれから起こりそうな問題というのもあるんですか? 別に言っていただかなくても結構ですけど。
浅石:
BGMの問題は個別にもう訴訟になってますし、ネットのP2Pの話については無断で送信可能化に上げているというような部分について私たちは刑事告訴という形で行っていますし。ですからJASRAC、ほとんど毎月なんかやってますよ。表に出ないだけで。
(収録に同席していた川上氏から「なぜ音楽業界内からも厳しく徴収するのか?」と質問)
ひろゆき:
川上さんがマイク付いてないんでもう1回説明すると、P2Pなりインターネット業界からJASRACが金取るのはまあ当然だろうと。でもその音楽業界同士で争って金取っても結局同じ業界なんだから、お金の総量が増えるわけじゃなくて単に取り合いをするだけで意味ないんじゃね? と。なんでそんなんやってんの? という話なんですよね?
浅石:
だって仲間内に優しいっていうのはまずいでしょ? それって。同じように権利主張はしていきますよと。
ひろゆき:
それが、たとえ関係ないIT業界でも音楽業界の仲間でも取るものは取るぞと。
浅石:
取るものは取るぞって。要するに手続きが必要だとJASRACが判断した場合については当然申し入れていくと。それは仲間だからちょっと何とかしようよとかというようなことはもう一切。
中村:
冒頭おっしゃってた徴収というのと分配というのと両面あるからそうなるんでしょうね。またJASRACさんは真面目ですしね。
浅石:
真面目にやらないとこの業界は、っていうふうに思います。ただ、例えば全世界のGDPとかそういう比較をちょっと出してもらえるかな。
ひろゆき:
全世界比較なんてあるんですか?
中村:
世界各国に同じような団体っていうのはあるんですよね?
浅石:
あります。一番古いフランスのSACEM、1851年創設です。
中村:
19世紀だ。
浅石:
日本の著作権法ができたのが1899年ですから、それより前にもう音楽著作権協会があったと。要するにこれ1人あたりどれぐらい払っているのっていうところの。スイスとかデンマークとかというぐらいで、日本は17位くらいなんです。GDPに含める部分については24位っていうことなんで。だからヨーロッパの人たちから見たら日本は何をやってんだよと。
ひろゆき:
なんでスイスこんなに高いの?
浅石:
人が少ないというのもあるけれども、当然その分使用料をたくさんもらっている。だから例えば、ひとつの楽曲に対する価値をどういうふうに見ているのか? 単純にこれで比較はできませんけれども、やっぱりヨーロッパ、北欧の方とか、それからドイツとかフランスだとか、そういった国の著作権に対するひとりあたりの支出額というのは日本と比べるとやっぱり全然違いますよね。
中村:
音楽ビジネスのマーケットで言うと日本とアメリカが。
浅石:
アメリカ、日本です。
中村:
アメリカ日本がすごく世界の中で、ツートップで大きいけど実質的なグラフでは低いと。まあだからこそ音楽の市場っていうのは大きくなったっていうのはあるかもしれない。
浅石:
あるのかもしれないですよね、そうですよね。ただまだまだ、だからそういう面ではJASRACがなんか取り過ぎだというような……。
ひろゆき:
まあJASRACが取り過ぎと言うのであれば、何と比較して取りすぎと言っているかという話ですよね。
浅石:
そうですね。だからもう日本だけをJASRACは目指してないですから。少なくともJASRACというのはCISACという著作権協会の国際連合の理事の国でもありますので、こういう相手とすべて取引きをしてるわけで。そうすると例えばスイスとJASRAC、日本というふうになった場合に、なんで、日本でこれだけしか払ってないの? というような。
中村:
もっと取れよという感覚もあるわけですか? 海外では。
浅石:
日本なんて、まだまだ宝の山じゃない、我々に比べたらっていうことを平気で言いますよね。
中村:
なるほど、あるかもしれないですね。
今回書き起こした放送内容は、こちらからご覧いただくことが可能です。(56:53~92:11)