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JASRAC理事長、音楽教室からの徴収を語る「仲間内にやさしいっていうのはまずいですよね」

 2017年2月、JASRACがヤマハなどの音楽教室から著作権使用料を徴収する方針を発表したことは記憶に新しいだろう。

 異を唱えるヤマハ音楽振興会などは、「音楽教育を守る会」を結成し、JASRACに対する反対署名を行うと、「演奏人口の減少、音楽文化の衰退に繋がるのではないか」といった“反JASRAC”の機運は高まり、40万名以上の声が集まる事態にまで発展。

 今回ニコ生では、JASRAC現理事長である浅石道夫氏をゲストに迎え、JASRACの方針、そして音楽教室騒動の真相を追う!

 中村伊知哉氏(慶應義塾大学教授)、ひろゆき氏(4chan管理人)、池村聡氏(弁護士)を交え、本当にJASRACは嫌われるべき存在なのか……鋭く迫っていきます。


JASRACと音楽教室との演奏権の範囲を巡る応酬は、10年以上にわたり繰り広げられている

中村:
 JASRACがヤマハなどの音楽教室から演奏著作権料を徴収する方針を発表した件、まずはニュースの概要をご紹介します。

#2017年2月、JASRACが音楽教室からの演奏著作権料の徴収を2018年1月から開始する方針を固めたと発表。
#「録音物の再生演奏は無料で利用できる」という規則が2000年に著作権法から撤廃され、2003年頃からJASRACはヤマハなど音楽教室側に交渉を持ち掛けた。
#音楽教室事業者はそれを拒んで10年以上が経過。その間にJASRACはフィットネスクラブやカルチャーセンターを著作権料の徴収対象に広げ、2017年に入り、音楽教室からの徴収に向け動きを加速。
#2017年6月、JASRACは音楽教室からの徴収を来年1月から開始することを正式に発表。それに対して、ヤマハなど音楽教室事業者は「音楽教育を守る会」を結成【※】。東京地裁に対して、JASRACの徴収権限が無いことを確認するための訴訟を提起した。

※一般財団法人ヤマハ音楽振興会、株式会社河合楽器製作所、一般社団法人全日本ピアノ指導者協会など7つの企業・団体によって今年2月に結成された組織。現在は約350の企業・団体が参加。

中村:
 今回、この放送を行うにあたって、運営スタッフから「音楽教育を守る会」に事前に質問をお送りしました。まずは、その質問と回答の概要をご紹介します。

質問内容および番組中で紹介した回答の概要

Question:
今回、JASRACの請求に対して、債務不存在確認訴訟(お金を支払う義務はないという旨)を提起されましたが、どのような趣旨・背景からでしょうか?

Answer:
・音楽教室のレッスンに演奏権が及ぶのかについて、音楽教室事業者が勝手に解釈したり、著作権等管理事業者が勝手に運用してはならない、司法に判断を仰ぐのが妥当と判断した。現行の著作権法が制定された1970年時点で、ヤマハ・河合楽器らの音楽教室に46万人以上の生徒が在籍しており、音楽教室の存在は無視できない存在であった。

・現行の著作権法が制定された1970年時点で、ヤマハ・河合楽器らの音楽教室に46万人以上の生徒が在籍しており、音楽教室の存在は無視できない存在であった。

・当時の立法者が音楽教室からも徴収すべきと考えていたなら、演奏権を定める第22条があの様な文言である筈がなく、確実に徴収を可能にする文言が採用されていたはずである。

・カラオケ法理に従い、生徒や教師による演奏の演奏主体を音楽教室とする(ことで音楽教室から使用料を徴収する)ことを考えているかもしれないが、音楽教室の演奏にまで拡張適用することは無理があると考えている。

※質問と回答の全文はこちら→「音楽教育を守る会」への質問事項および受け取った回答全文

楽器メーカーが音楽教室を開くというのは日本独特のケース

中村:
 要約すると「現行の著作権法が制定された約50年前には既に音楽教室は社会的に認知されており、音楽教室からの徴収を想定していたなら、該当する条文もそういう文言になっていたのではないか?」また「お店と音楽教室では性格が違うのではないか?」という回答になっていますね。

ひろゆき:
 ちなみに、使っている楽譜などに関しては、音楽教室サイドは著作権料を支払って、使用しているということですよね?

浅石:
 使われている楽譜に関しては権利処理をしています。100%クリエイターの方々に還元しています。

ひろゆき:
 その上で、曲を演奏するときに、その際にもお金が必要ということをJASRACは言っているわけですけど、他の国ではどういう扱いになっているんですか?

浅石:
 営利を目的としている企業や団体で、使用料を支払わないということは基本的にないですね。

ひろゆき:
 大学の音楽科などであれば免除だけど、音楽教室というビジネスを営んでいる場所に関しては、外国のケースで言えば支払うということですか?

浅石:
 そうですね。ただし、ヤマハさんのように一般の営利事業者が音楽教室を開いているというのは、日本独特のケースなんですよね。

ひろゆき:
 ほぉ~。

浅石:
 スタインウェイ音楽教室、ベーゼンドルファー音楽教室といった、海外の楽器メーカーの名前を冠した音楽教室はあまり聞かないと思いませんか?

ひろゆき:
 たしかに楽器メーカーの音楽教室って他の国では聞いたことがないかもしれない(笑)。だいたい、個人が運営しているイメージですね。

浅石:
 営利組織が教室をしているケースというのは、国外ではなかなかないんですよ。

ひろゆき:
 ちなみにヤマハ音楽教室さんの年間の売上げってどれくらいかご存じなんですか?

浅石:
 ヤマハ音楽教室さんのみの数字は把握していないのですが、「音楽教育を守る会」に参加された事業の総売上げは、721億円です。

ひろゆき:
 けっこう大きなお金が動いていますね~。実際、どれくらい請求したんですか?

浅石:
 総額の2.5%を料率の上限として、あとはお話合いの中で実際に何%になるのか協議していきましょうと伝えていました。

ひろゆき:
 上限2.5%だとした場合は、徴収額は最大約18億くらいになるわけですが、必ずしも2.5%と決まっていたわけでもない……。

浅石:
 料率をどうするか、というお話をする以前に、「支払う義務はない」ということで門前払いされ、訴訟という形に発展していったというわけです。

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