小林幸子をボーカルに迎えたアナタシア初オリジナル曲『未完成道中』――ジャンルと世代を越えて響く“挑戦”の1曲
今回は踊り手グループ、アナタシアさんが5月20日に投稿した「未完成道中」を紹介する。
2015年に活動を開始し、踊ってみた文化を牽引してきた彼らは、今年で結成11周年を迎えた。これまで数々の踊ってみた動画を発信しながら、ニコニコ超パーティーなどの大型イベントから単独のワンマンライブまで、多くのリアルステージにも立ってきた。
メンバー編成の変遷を経て、現在は5人で活動している。4月には新メンバー募集も開始され、新しい景色へと踏み出そうとするまさに絶好のタイミングで届けられたのが、グループ初となるオリジナル曲「未完成道中」だ。

ボーカルに迎えられたのは、国民的演歌歌手にして、ニコニコ動画とも深いゆかりを持つ小林幸子さん。本作は、4月25日に開催されたニコニコ超会議2026「Collection THE LIVE ~踊ってみた×歌ってみた~」ですでに初披露されていた楽曲だ。
自分の最高値を更新し続けるという前向きなメッセージが込められた歌詞が、本来以上の説得力をまとって響いてくるのは、演歌の枠を超えてポップスやジャズ、さらにはニコニコ文化圏までも往来し続けてきた小林幸子さんを通して歌われるからこそ。ダイナミックなサビの<まだね まだね 未完成の私!><この世界の誰よりもハイセンス最先端!>というフレーズが、これほどしっくり馴染む歌い手はほかにいないかもしれない。

和の伝統を背負う演歌界の歌姫と、ネット発のダンスカルチャーから生まれたアナタシアさん。ジャンルこそ異なれど、その根底に流れる志はどこか重なって見えるという点は、興味深い。11年を経てもなお高みを目指して走り続けるアナタシアさんの姿は、ジャンルも世代も飛び越えて挑戦を続ける小林幸子さんの背中を追いかけているようでもある。その熱量がそのまま結晶化したハネルさんのフロウと、5人のダンスパフォーマンスは、文字通り圧巻のひと言だ。
ハイブリッドなサウンドデザインも、特筆すべきポイントだろう。作曲・編曲は、洗練されたエレクトロサウンドやフューチャーベースを得意とするボカロP・Norさん。作詞は、フューチャーベースからエレクトロポップ、エレクトロハウスまでを軽やかに横断するnyankobrqさんが手がけている。
“小林幸子さん×和”のイメージを取り込みながらも、単純な和風路線では終始しない。サビ前の太鼓のようなアタック音やフィルインが和の高揚感を演出しつつ、その響きがトラップ/ヒップホップ由来の重低音へとなめらかに接続されることで、サイバーな質感が最後まで保たれている点が本作の肝になっている。ラストの<その先はヒ・ミ・ツ!>という一節には、小林幸子さんが“ニコニコの愛されキャラ”でもあることへのさりげない目配せが感じられ、思わず頬が緩んだ。懐かしさを覚えさせながらも、同時に、まだ聴いたことのない質感を鳴らしている。

「未完成道中」というタイトルは、不思議なほど前を向いた言葉だ。完成しきらないからこそ、次の景色へと進めることがある。トップに立ちながらも、なお“未完成”であり続けるからこそ美しい。ジャンルも世代も関係ない。形を変えながら走り続けること――その美学を、まっすぐに手渡してくれる1曲だ。
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