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「憲法改正」について各党首はいったい何を語ったのか?――白熱のネット党首討論・書き起こしまとめ【衆院選2017】

 10月7日(土)、自由民主党・希望の党など8党の党首が六本木ニコファーレに集合。ニコニコ生放送などで討論の様子を配信する「ネット党首討論」を行った。討論のテーマは、事前アンケートで視聴者の関心が高かった「外交・安全保障」「憲法改正」。それに加えて、ニコニコユーザーから各党首への質問を募集。最も要望が多かった質問について各党首が回答を行った。

 本記事では、1時間以上にわたる党首討論の中から、「憲法改正」箇所を書き起こした内容をお届けする。(「各党首への質問」も後ほど公開予定)

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【衆院選2017】ネット党首討論「外交・安全保障」

登壇者:
自由民主党 / 安倍晋三 総裁
希望の党 / 小池百合子 代表
公明党 / 山口那津男 代表
日本共産党 / 志位和夫 委員長
日本維新の会 / 松井一郎 代表
立憲民主党 / 枝野幸男 代表
社会民主党 / 吉田忠智 党首
日本のこころ / 中野正志 代表

司会:夏野剛(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特別招聘教授)
進行:馬場典子(フリーアナウンサー)


馬場:
 今回の衆院選では憲法改正を巡って改正案の具体的な内容、あるいは改正そのものの是非が大きな注目点となっています。このテーマについて、まずは各党のお考えをお話しいただきます。

夏野:
 日本のこころ中野さんよりお願いいたします。

日本のこころ・中野正志代表

中野:
 私たち日本のこころは今年4月に自主憲法草案を発表させていただいております。当然ながら前文もしっかり変え、また天皇国家元首、自衛軍を保有。そして、緊急事態条項も設け、また環境権の問題にもしっかりと触れております。各界各層の皆様方からたくさんのご意見を頂戴いたしました。私たち、ばんきりばんきり憲法改正、新憲法ということで国民のみなさまに申し上げてまいりましたけれども、この選挙を契機に憲法改正、新憲法創出という流れができつつあるということは大変幸いだと思っております。ぜひ国会が、まともな国会で憲法問題をしっかり議論し、しっかり結果が出せる、そのことを望んでおります。

夏野:
 ありがとうございました。では社民党吉田さん、お願いいたします。

社会民主党・吉田忠智党首

吉田:
 今回の衆議院選挙で憲法改正が、大きな争点になったと思っています。特に憲法9条の問題は5月3日に安倍総理が9条改憲発言をされた、そうしたことを受けたものであると思っておりますけれども、憲法9条に自衛隊を明記すること。それは一昨年の私たちは憲法違反と思っておりますけれども、戦争法、安保関連法にお墨付きを与えることになる、そのように思いますし、社民党は自衛隊の存在については憲法の枠内でありますけれども、安保関連法も含めて今の自衛隊の現状については極めて違憲の疑いが強い、そのように思っています。国民のみなさんは憲法9条を変えることを、私は望んでおられないと思いますし、変えるべきではないと思います。9条は耐え難い苦痛を与えたアジアのみなさんに対する約束であり信頼の証だと思っております。9条を活かした平和外交こそ求められている。そのことを訴えたいと思います。

夏野:
 ありがとうございます。立憲民主党枝野さん、お願いいたします。

立憲民主党・枝野幸男代表

枝野:
 先程米艦防護に関わる総理のご発言も、北朝鮮有事を想定した米艦防護は個別的自衛権で十分説明ができるんですね。それから自衛隊が合憲であるというのは、自民党歴代政権がずっと言ってきたことであって、今更条文に書かなければならない必要性はない。むしろ、違憲の安保法制が存在する中で、自衛隊の明記をすればそれを追認することになるという、立憲主義の観点からもとても認められるようなプロセスではないということを申し上げたいと思います。ただ、私どもは憲法を不磨の大典とは思っていません。変える必要があって変えることの国民的な合意があるテーマについては十分な議論をして変えればいいと思っています。憲法を変えないとできないということは実は多くありません。環境権などについては法律でいいものを作ればいくらでも進んでいきます。唯一、私が現時点で問題があるとすれば総理大臣の解散権が自由に任されている。これは憲法を変えないと変えられないかもしれないので、この議論を進めるべきだと思っています。

夏野:
 日本維新の会、松井さん、お願いします。

日本維新の会・松井一郎代表

松井:
 まず、最初に申し上げたいのは、憲法を変える権利を持ってるのは国民のみなさんの1票1票であります。国会議員で憲法が変えられるわけではありません。よって、我が党は戦後、助詞も含めて句読点まで含めて一言一句変えなかったこの憲法が今の時代に合っているのかどうかを真剣に議論をしてまいりました。その中において、我々は教育無償化を憲法にしっかり明記をする。これは少子化対策でもあり、経済対策だと思っております。また違憲か合憲かその都度揉める、こういうものをしっかり判断をできる組織を作る。憲法裁判所を設置する。そして我々の地方の立場として、地方の位置づけをしっかり憲法に明確に位置づけるというこの3点について日本維新の会は憲法の案を作っております。

夏野:
 ありがとうございます。日本共産党志位さん、お願いします。

日本共産党・志位和夫委員長

志位:
 安倍首相は9条1項2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むとおっしゃっておられます。そうするとどうなるか? それは単に存在する自衛隊を憲法上合憲化するというだけに留まりません。法の世界では、後から作った法は、前の法に優先するということが、一般原則として言われます。ですから、たとえ2項を残したとしても、後から別の項目で自衛隊が明記されたら、そちらが優先されて2項が空文化、死文化してしまうことになる。そうなりますと無制限の海外での武力の行使が可能になってしまいます。そして総理が書き込もうという自衛隊というのは安保法制によって集団的自衛権が可能になった自衛隊です。その自衛隊が書き込まれれば、憲法違反の立法が合憲化されることになります。私は安倍首相の取り組もうとしておられる9条改憲に反対しようと、この1点で力を合わせることを訴えたいと思います。

夏野:
 ありがとうございます。公明党山口さん、お願いします。

公明党・山口那津男代表

山口:
 公明党は、今の日本国憲法は大変優れた憲法であり、特に3つの原理、国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義、これらの原理は今後も堅持していくべきであると考えます。その上で実施してから70年を超えているわけでありますから。その間、新しい価値が生み出され、そして憲法に盛り込むにふさわしい価値に熟成しているとすれば、それを新しい規定として加えていくという加憲という考え方を取っております。何が加憲にふさわしいかはこれからもっと議論していかなければなりません。その上で今、自民党も自衛隊を憲法に明記してはどうかという提案はしておりますけれども、その前提として2つの考え方が、まだ集約されておりません。公明党はそれを見守っていきたいと思います。いずれにしても、国会で議論を深め、国民の理解が相伴っていくことが重要だと考えます。

夏野:
 ありがとうございます。希望の党、小池さん、お願いします。

希望の党・小池百合子代表

小池:
 昨日のことなんですが、ネパールの若い女性が東京都庁を訪問されました。ネパールでは2年前に憲法改正をして、そして大統領と副大統領のいずれかを女性にすると、このように決めました。兼日、初めて女性が大統領になり、今女性で議長を務めている。つまり、このように必要に応じて憲法は変えるべきものと考えます。ドイツに至っては戦後60回近く基本法を改正しているのはご存知のとおりであります。つまり憲法とは未来を見つめ、時代の要精とともに改正するものであり、世界では当たり前のこと。議論が集中する9条の件だけではございません。都知事として改めて地方分権が不十分だと痛感をいたしております。地方自治、第8章ももっと強化すべきであります。また情報公開につきましても、憲法に盛り込むことで行政、政治の見える化が進みます。一院制も我が国の政治を大きく変えることでありましょう。主役である国民の皆さんとともに大きく議論したいと思います。

夏野:
 ありがとうございます。自民党安倍さん、お願いいたします。

自民党・安倍晋三総裁

安倍:
 先般、舞鶴のイージス艦の自衛隊の基地を視察し、激励をしてきました。今この北朝鮮の危機に際して、24時間365日国民の命を守るために頑張っているのは自衛隊の諸君です。また、災害においては危険な現場に命をかけて飛び込んでいくのも自衛隊。しかし、朝日新聞の調査で憲法学者のアンケート、「自衛隊は合憲」と言い切っている学者は2割にしか過ぎない。7割以上は違憲の疑いがあると言っている。ですから、教科書にもその記述があり、自衛隊員の子どもたちはその教科書で学んでいるという現実があります。私たちの世代の責任でこの状況を変えていかなければならないと思います。自衛隊をしっかりと憲法に明記することで、この不毛な論争をなくしていきたいと考えています。

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