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「声優のアイドル化が進む中で“声優とはこうあって欲しい”を体現してくれている」 女性声優『林原めぐみ』の魅力を語る

ライブの副題に込められた意味

池田:
 林原さんのインタビューで印象に残っているのが、声優さんの人気投票で1位になったときのコメントです。

 「人に幸せを与えられたことは嬉しいけれど、人からもらった幸せはすぐに消えてしまう。だから自分で幸せを生み出せる人にみんなにもなってほしい。林原めぐみという存在を忘れるくらいの幸せな日常が訪れたら、それが私にとって一番の幸せです」みたいなことを仰っていたんですよ。

 こんなことを言う声優さんに限らずタレントさんって見たことないってすごく感動したんです。ファンの方に対するスタンスと言うか、思いを伺いたいです。

中西:
 やっぱり林原さんはファンのことをすごく考える人ですね。今回のライブの副題の『あなたに会いに来て』も林原さんが発信した言葉で「こうしたい」と。

サンキュータツオ:
 「私に会いに来て」じゃないもんね。

中西:
 林原さんは「林原めぐみに会いに来てくれたときに、来てくれた方は何を持って帰るんだろう」ということを考えていました。

 たとえば『スレイヤーズ』や『シャーマンキング』の歌を歌うとしたら、林原さんの歌っている歌を聴くというよりも、自分が10歳のときに「スレイヤーズ見てたな」、「この曲をよく聞いてたな」って思う。それは誰に会っているのかと言うと、林原めぐみじゃなくて、そのときの自分の思い出に出会っているんだよ、ということなんです。

 だから「林原めぐみを通して、そのときの自分に会いに来てほしい」というのが、このタイトルに込められた意味なんです。

サンキュータツオ:
 すごいですね。

中西:
 あともう一つ、「このライブはいい意味で不親切にしたいな」と仰っていました。ライブに来たお客さんの満足度を上げようと思うと、演出などを盛っていくのですが、「むしろ不親切くらいの方がお客さんもいろいろ考えたりしてくれるんじゃないかな」と仰っていました。

サンキュータツオ:
 確かにそれ、林原さんが言いそうだわ。

林原めぐみのこれから

画像は林原めぐみ公式サイトより。

スタッフ:
 ライブが終わったあとはどうでしたか。

中西:
 清々しい顔をしてらっしゃいました。それを見て「よし!」と思いました。

サンキュータツオ:
 今までもラジオでお客さんの前で歌を披露することはあったわけですが、2000人規模の会場で、しかもお客さんは自分だけを見に来ていて、もしかしたら今まで経験したことのない何かを感じていたかもしれませんね。

中西:
 ご本人的にも、ライブをやることで「声優が歌を歌う意味を見つけなければいけないな」というのを認識したと思います。今回は会場がサンプラザ中野だったのですが、ファンのみなさんから「もっと大きい会場でやれ」とお叱りも受けました。

サンキュータツオ:
 でもそれはいろいろあるから。林原さんが一番やりやすい環境でやるのが大事ですよ。最後列の人まで同じパフォーマンスで伝えたいみたいなものもありますよ。

中西:
 落語でもそうですよね。

サンキュータツオ:
 200人規模がベストと言われています。でも林原さん、すごいですよね。ライブをやるって、緊張とかはどうなんでしょう。

中西:
 緊張はしなかったそうです。「そこに立って、私は私の役割をやるだけだから」って仰ってました。すごく楽しんでくれていたな、という感覚です。

サンキュータツオ:
 中西さん的にはこれからの林原さんはどう思いますか。

中西:
 林原さんのキャラクターと向き合う姿勢は、絶対に変わらないと思います。やっぱり歌を歌う人じゃなくて、芝居をやる声優なんです、っていうのが根底にあります。

 ですので、林原さんにやってもらう意義のあるキャラクターを、プロデューサーとして提案していくのが仕事だなと思います。あとは定期的にアルバムを出したいですね。林原さんと一緒にアルバムを出す意義を作っていきたいと思います。

サンキュータツオ:
 ご本人は将来のこととか何か考えていないんですか。

中西:
 子育てもあるし、声優としてどう生きていくかというのは常々考えていると思います。僕はあえてご本人の気持ちを聞かないで違う扉を開けていくのも仕事だと思っています。

サンキュータツオ:
 本人も気づかなかった扉を開けるのって気持ちいいですよね。将来、そういう人に何人出会えるかって大事ですよね。

中西:
 そういう意味で言うと、林原さんは人を呼び寄せる運があるなと思います。声優さんで言えば山寺宏一さんとかはお互いに魂を高めあえる関係ですね。

サンキュータツオ:
 やっぱり林原さんはいろいろなお話を聞くと、会社とかお金じゃなくて、「この人と仕事をする」というのがありますね。原作との向き合い方もすごいですもんね。

中西:
 そうですね。『シャーマンキング』の武井宏之先生とか『スレイヤーズ』の神坂一先生とか、みなさん仲良しですしね。そうやってクリエイターの人たちとガチでやっているからでしょうね。

池田:
 ここ数年で声優さんがアイドル化してますが、「声優さんはこうであってほしい」という私の願望を体現しているのが林原さん。ずっと私の声優の理想像であってほしいです。

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