ボカコレ2023夏ルーキー部門にて大健闘!しっとりとした退廃的な美しさを漂わせる裏命楽曲「アンヤノホトボリ」
今やシーンの一大イベントともなった、ボカロファンの祭典こと『The VOCALOID Collection』(通称ボカコレ)。
楽曲の新曲投稿ランキングを中心とするこのイベントで、様々な部門の中でも毎回特に熾烈な争いが繰り広げられるのが、新人部門となる「ルーキーランキング」だ。
今回紹介するのはボカコレ夏2023において、約3700曲が鎬を削ったルーキーランキングで34位を獲得した「アンヤノホトボリ」。
取材・文/曽我美なつめ
2021年にボカロPデビューを果たしたたくしPによる、CeVIO AI音楽的同位体シリーズ・裏命を使用した楽曲となる。
しっとりとしたピアノイントロからミドルテンポのビートに乗って展開されるバラード調の楽曲は、美しくクラシカルながらもどこか物悲しい響きを終始漂わせる。
これまでにもエレクトロやバンドサウンドなど、多彩なジャンルの楽曲を手掛けてきたたくしP。だが今作は元々の持ち味である湿度の高い世界観が、繊細でメロディアスなピアノサウンドによって、よりわかりやすく引き出されているのではないだろうか。
そこに重なる、まるで人間の感情の機微を思わせるような裏命の声。メロディの随所に差し込まれる震えの響きが、楽曲の寂寥感により拍車をかける。
サビにかけ、淑やかな空気感から切実な激情を思わせる曲展開との相性も抜群。サウンド全体に厚みを増すストリングスが加わることで、楽曲全体もより華やかかつドラマティックな作品となっている。
また退廃的ながらも目を引く色彩が印象的な、いくら丼(イラスト)とさようなら(映像)による動画も、楽曲の世界観の構成には欠かせない要素だろう。
これまでにも「ミロワール」「ジオラマ」など、複数の楽曲を共に手掛けてきた彼ら。その手腕は、たくしP楽曲におけるダークかつ荘厳な一面を引き出すことに非常に長けた存在でもあるに違いない。
ボカコレ2023夏に投稿した今作を以て、ボカコレ内ではラストルーキーの参加となったたくしP。その後も無色透名祭への参加や、多くのボカロP楽曲におけるミックス、マスタリングを担当するなど、着実にその手腕を広めつつある。
次回開催のボカコレ2024冬を始め、今後も様々な場面においてシーンでの活躍が期待できる。そんなクリエイターの一人であるとも言えるだろう。
「The VOCALOID Collection」 公式サイト
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