『タッチ』ヒロイン・浅倉南に日髙のり子が声優デビューから1年で抜擢された理由――声優経験ナシのアイドル歌手が国民的アニメのヒロイン役を次々と射止めた半生を語る【人生における3つの分岐点】
■第3の分岐点:『サクラ大戦3』への出演「またミニスカートで歌うことに(笑)」
日髙:
で、そんな声優としてアイドル的なことをする時期も終わったなと思ったら、『サクラ大戦3』への出演が決まって、またミニスカートで歌って踊ることに(笑)。声優って、本当に面白いですよね。
この「『サクラ大戦』シリーズへの出演が決まった」ことが、私の第3の分岐点です。
――なるほど! 『トップをねらえ!』からはまたしばらくあいだが空きますよね。
日髙:
そのあいだに結婚して、出産もして……アニメ業界的には、「日髙さんもお母さんになったから、そういう役もお願いしてみようか」みたいな感覚だったんですよ。『ONE PIECE』のベルメールさんの役をいただいたのが、わかりやすいですよね。
なのに、『サクラ大戦3』でヒロインのエリカをやってほしいと言われて、えーっ! ですよ(笑)。だってエリカは16歳の女の子ですよ。
しかも『サクラ大戦』シリーズには歌が付きものということでオープニングとエンディングの主題歌のレコーディングがあって、さらにそのあとも舞台をやる度に新しい歌をうたい、OVAがある度にその新しい主題歌を歌い……と、ずっと歌い続けていたんですよね。
――アイドル的な活動は終わったかと思っていたのに、何も終わっていなかった。
日髙:
おまけに歌をうたうだけじゃなく、『サクラ大戦』はステージで歌って、踊る。それを私、「16歳」としてやってるわけですからね(笑)。
でもそこで、「やっぱりアイドル出身の人は動きが違うね!」って褒められたりして。フォーメーションがちゃんとできてたみたいなんですよ。
自分の中では、声優になったとき本当に、どちらかというと職人気質な、いろんな声でいろんな演技をする役者になろうと思ったんです。だから男の子の役にチャレンジしたり、常に役の幅を広げたいと思いながらがんばってるんですが、なぜかそれと同時に、アイドル業もずっとがんばってるんです(笑)。
――めちゃくちゃいい話ですね!
日髙:
私、芸能界に入ったとき、最初に目標としていた夢が、「学園ドラマで高校生を演じること」だったんです。声優になって、『タッチ』に出演したことで、女優として演じることができなかった学園もので中学生、高校生と演じられて、大満足だったんです。
それで『タッチ』が終わるとともに、スタッフさんから「南ちゃんも成長したね」なんて声をかけられて、そのまま演じる役の年齢も上がっていくのかと思ったら、なんだかよくわかんないんですけど、ずっとそのまま十代の役を演じ続けられて。
――『らんま』の天道あかねはまた高校生ですもんね。
(画像はAmazonより)
日髙:
それでキャラソンまで歌って(笑)。
でも、やっぱり何より大きかったのは、『サクラ大戦』でステージに引っ張り出されたことです。私がその当時の、普段の年齢で歌うとしたら選ばないような可愛い衣装を、「16歳」だからということで着させてもらって、セリフもゲームと同じく可愛くしゃべる。
私が歌手デビューしたときに、サンデーズというグループで学んだことの究極形がここにあると思ったくらいですね。
――「究極形」とは、どういうことでしょうか?
日髙:
サンデーズ時代は新人歌手だったので、右も左もわからなかった。自分が本当にこの仕事に向いているのかもわからなくて、一生懸命やってたけど、自信もなかった。
びくびくしていたんです。でも『サクラ大戦』のときは、それから20年近い月日が流れていて、私は胸を張ってフォーメーションのダンスをアイドル要素満載で踊れるし、これまでの活動で培ってきたアイドル要素を全部ここに投入するのだ! と思い切りやれた。
究極形……「これがアイドルの最終形態だ!」って思えたんですよ(笑)。
――たしかにいわれてみれば、それは究極のアイドルかも知れません。鍛え上げてきた技術で、最大級に可愛らしいキャラクターとして、ステージ上に存在する……。
日髙:
そうです、そうです! だから本当に、「芝居」も子供の頃からずっと私についてきてくれたけれど、歌手と言って良いのか、アイドルと言って良いのかわかりませんけど、「歌」もずっとついてきてくれている感じが、私にはあるんです。
そして今でも、『Non Fes』というイベントをやって、歌っているのがすごいなと自分でも思っちゃいます(笑)。
「日髙さん、還暦おめでとう!」って言われながら歌っているのが、とても不思議で、面白いです。
――歌い続けることを大変だと感じたときもあったと思います。そんなときに支えになったことはありますか?
日髙:
そうですね……それは、「歌手としてデビューしたこと」にこだわってきたことかもしれませんね。
アイドルとして、歌手としてデビューする前から子役として活動していたと最初にお話ししましたけど、そのころの私は本名で活動していたんです。歌手になったことで、私は「日髙のり子」になったんですね。
それ以来、自分が「日髙のり子」になった日にこだわりをすごく持って生きてきました。1980年12月1日の歌手デビューの日から、自分の活動の周年を数えてきたんです。
――「日髙のり子」の名前が支えになった。
日髙:
なのに思い返せば、周年で特別な何かをしたことってなかったんです。それは歌手として大成功したわけではなかったからなんですけど、それでもやっぱり、その頃から応援してくださった方、名前を知ってくださっていた方もいる。
やっぱり自分自身がそこを大切にしていこうという気持ちがあって、それが40周年を迎えたタイミングでアルバムを出したり、本を出したりといった活動に繋がっていったんですよね。
■自分から動くよりも、きっかけを育てるのが向いてるのかも
――そんな日髙さんが現在、生きる上でもっとも大切にしていらっしゃることはなんですか?
日髙:
「人との出会い、作品との出会い。ひとつひとつの出会いに丁寧に、真摯に向き合い、そして楽しむ」ですね。
真面目に取り組むだけじゃなくて、自分も面白がって楽しむ要素があったほうが、より良いお仕事になる、より良い作品が出来上がるな……と感じているんです。
手を抜くわけではなく、自分が楽しそうと思ったことを見過ごさずに、ちゃんと向き合って、関わっている時間を楽しむことを重視する。
そんなふうに最近は考えるようになっていて、仕事に限らず、プライベートでの考え方も一緒ですね。だから、日々の過ごし方、時間の使い方はかなり意識しています。
――具体的にはどんなことに気を付けてらっしゃるんですか?
日髙:
少しゆるくなることですね。これ、伝わるかなぁ……ちょっと前に、梅干しを漬けていたんですよ。梅干しって、作る過程で3日間天日干しをしないといけない。
でも私は、仕事がところどころに入っているじゃないですか。だから「この日は10時半から17時まで干せました。次の日は10時半から13時までしか干せません」とか、そういうことになりがちなんです。
――声優さんのお仕事はイレギュラーなスケジュールも多いですもんね。
日髙:
それでも「まあいっか! ちゃんと干すだけ干したもんね!」って考えるようにする(笑)。「こんなに余裕がないから、絶対できない!」と考えないようにすること。それだけで、かなり違いますね。
「完璧にできなきゃ駄目だ」って思い込みをなくして、最善を尽くす。
――日々時間に追われているので、刺さるお言葉です……。未来の目標はいかがですか? 野望のようなものはあられるのでしょうか?
日髙:
野望はないですけど、地味に願っていることはあります。「いろんなお仕事をいただくので、それが全部こなせるように、常に健康でいたい」ですね。
それが何より一番の目標なんですが……あ、でもそうだ。野望、ありました!
――お、気になります。
日髙:
「日高のり子」40周年記念で、本当だったら全国巡りをしたかったんですね。小さいライブハウスで「語りと歌」みたいに、行く先々のそこに住んでいる方たちに来てもらって、「ありがとうございます」の気持ちを直接伝えてまわりたかった。
でも、コロナ禍でそういうことができなくなって、形を変えて「Non Fes」でみなさんに来てもらうという形になったのですが、まだその全国行脚の目標はなくしていないんです。
日髙:
デビュー当時にやっていたように、本とかCDとか、そういうのをみなさんに手に取っていただいて、「ありがとう」の声が届く距離で何かしたいなっていうのを、ずっと目標にしています。例えば土日だけを使って回るとか、長い時間を掛けてちょっとずつでもいいから、そういうことができたらいいなというのが、私の野望ですね。
――お芝居の面ではどうでしょう? 幅広い役をすでに演じておられますが、さらにやってみたい役柄はあったりしますか?
日髙:
最近外画の吹き替えをよくやらせていただいているんです。アニメを多くやらせていただいていたので、違いが面白いですね。
それから時々ドラマにも出させていただくんですけど、来る役の年齢が大体55歳か56歳なんですけど、それも面白いんです。どちらも実年齢に近いところでやるお芝居というか。
――外画の吹き替えと実写のお芝居には近いところが?
日髙:
アニメの声のお芝居では、キャラクター性を若干強めに出すんです。でも外画の吹き替えは人間が演じているものなので、普通に近いしゃべりが求められる。そういう意味ではドラマと近いなと、私は思っています。
その大人のセリフを普通にしゃべるお芝居が、今はすごく面白い。裏で何を考えているかわからない怖い人を演じるだとか、非日常的な芝居をやるのも相変わらず楽しいんですけど、そうじゃない日常的なお芝居に魅力を感じていて、だからそういう役柄というか、ジャンルにもっと関わってみたいですね。
――そういう自然なお芝居だと、それこそ舞台もやれそうですしね。
日髙:
実はそういうお話もあるんです。山口勝平くんから台本が送られてきて、「いつやるかわからないけど、読んでおいて」とだけいわれている作品があって。本当に実現するかどうかわからないですけど、出来たら面白いなと思います。
そんな風に受け身な感じではあるんですが、今までもずっと、なんとなく自分がいただいたものを大切に育てていったら、それが多くの方に支持していただけた。
そういう経験が多かったので、きっと私は、自分から動くよりも、チャンス、きっかけを掴んで、それを育てるのが向いている人なのかもしれません。だから怯んだり臆したりせず、声を掛けてえもらったものに対しては、その中で自分に何ができるかを考えて、チャレンジしたいなって思っています。
――失礼のない範囲なのは当然として、日髙さんとお仕事をしたいと思っている方は、気後れせずにどんどんご依頼をしてみるといいのかもしれませんね(笑)。
日髙:
そうですね(笑)。最近驚いたのは高校野球のPRの広告ですよ。
タッチの神がかったアフレコの記憶、まるで高校野球 日高のり子さんhttps://t.co/6wyywRhuUh
— 朝日新聞高校野球@大阪 (@asahi_o_yakyu) August 6, 2022
「これは神がかっているアフレコだな」と思い出すのは劇場版「タッチ 背番号のないエース」のクライマックスです。〔…〕
セリフを言う前、林家正蔵さんが、自分の頭をげんこつで3回ぐらい殴ったんです…
日髙:
まさかメガホン持って、野球のボールを持って、浅倉南と並ぶなんて。大丈夫かな私!? って思いながらやったんですけど、仕上がったビジュアルを見たらわりとハマってたように自分では思えたので、やってみるもんだなと思いました。
完成したものを見るまでは、すごくドキドキしましたけど(笑)。今でもそういう仕事に対する柔軟性はある方だと、自分では思っています。
“お芝居をしたい”という子供の頃から抱いていた夢のために、芸能界に背水の陣の覚悟で取り組んでいた日髙さん。
アイドル歌手として活動してるときには、迷いもあったと語る彼女だったが、その時代に積み上げてきた努力が後のキャラソン全盛期のヒロイン役として活躍後押しし、『サクラ大戦3』の舞台活動を支えることになる。
本気で取り組んで来たことは、巡り巡って人生のどこかで自分を支えてくれる。
チャンスは自分から動いて掴み取るものであると同時に、日髙さんの言葉どおり「育てるもの」なのかもしれない。
日髙さんの、これからの活躍にも益々注目していきたい。
■日髙のり子さん直筆サイン本をプレゼント!
インタビュー後、日髙のり子さんに直筆サインを自著に書いていただきました。今回はこの書籍を1名様にプレゼントします!
プレゼント企画の参加方法はニコニコニュースTwitterアカウント(@nico_nico_news)をフォロー&該当ツイートをRT。ご応募をお待ちしています。
「日髙のり子さん直筆サイン本」を1名様にプレゼント🎁
— ニコニコニュース (@nico_nico_news) October 19, 2022
▼応募方法
➡️@nico_nico_newsをフォロー
➡️このツイートをRT
▼インタビュー記事https://t.co/osLpR4GyVG
締切:2022/10/26(水)23:59 当選はDMでお知らせします。 pic.twitter.com/PO1hMXozyt
■日髙のり子さん撮りおろしフォトギャラリー
インタビュー後、日髙のり子さんのフォト撮影を行いました。
記事とあわせて、ぜひお楽しみください。
■関連情報
■Non Fes Halloween Party Returns
【東京公演】
●開催日時:10 月22 日(土) 開場15:15 開演16:00
●会場:チームスマイル豊洲PIT
●出演:日髙のり子 and…
亜咲花/アルスマグナ[※東郷スバルの出演はございません]/angela/
うじたまい/all at once/熊田茜音/栗林みな実/椎名へきる/鈴木このみ/七海ひろき/
新田恵海/降幡愛/三ツ矢雄二/宮川愛李/山口勝平/山寺宏一/YURiKA(*五十音順)
●MC:長谷川のび太(文化放送アナウンサー)
<チケット> 3 歳以上有料・枚数制限4 枚
■プレミアムチケット1【オリジナル特典:①ペンライト②Tシャツ③アフタートーク参加券】
¥16,500(税込)・ドリンク代別
■プレミアムチケット2【オリジナル特典:①ペンライト②アフタートーク参加券】
¥13,000(税込)・ドリンク代別
■全席指定【アフタートーク参加券付き】¥9,300(税込)・ドリンク代別
■全席指定 ¥8,800(税込)・ドリンク代別
※ペンライト、T シャツ、アフタートーク参加券(オリジナルラミネートパス)は
会場でのお渡しとなります。
【大阪公演】
●開催日時:10 月29 日(土) 開場15:15 開演16:00
●会場:メルパルクホール大阪
●出演:日髙のり子 and… angela/井上喜久子/うじたまい/大原ゆい子/all at once/
GARNiDELiA/熊田茜音/栗林みな実/椎名へきる/鈴木このみ/三ツ矢雄二/宮川愛李/
山寺宏一(*五十音順)
●MC:長谷川のび太(文化放送アナウンサー)
<チケット> 3 歳以上有料
■プレミアムチケット1【オリジナル特典:①ペンライト②Tシャツ】¥16,000(税込)
■プレミアムチケット2【オリジナル特典:ペンライト】¥12,500(税込)
■全席指定 ¥8,800(税込)
※ペンライト、T シャツは会場でのお渡しとなります。
[Ticket Information]
只今、イープラスはじめ各プレイガイドで発売中です!
東京・大阪 各公演で[●出演者][●チケットのカテゴリーと料金]が異なりますので、
それぞれのラインナップ及び公演詳細は
日髙のり子公式サイト
Non Fes ハロパ Returns 公式Twitter
でご確認ください!