結局、ビットコインって大丈夫なの? 基本的な仕組みから分裂報道まで、ブロックチェーン専門家と公認会計士に聞いたみた
7月23日、仮想通貨「ビットコイン」を扱う国内の主な取引所は、ビットコインの受け入れや引き出しを一時停止した。この処置は、システムの処理能力向上に関するビットコインの規格変更に伴い、取引記録に混乱が生じるリスクから利用者の資産を守るためにとった処置であると言われている。
最悪の事態を回避し、取引所も順次、取引を再開しているものの、ここ数日のビットコイン相場は乱高下を続けている。2009年に登場したビットコインは、さまざまな注目を集めながら、その価値を高めていき、今年に入ってから1ビットコインが30万円を突破。「仮想通貨が一般的になる日も近い」という声が高まっていた矢先、一体、ビットコインに何が起こったのか――。
番組では、ビットコインの中核技術ブロックチェーンの専門家で『ブロックチェーン入門』の著者である森川夢佑斗氏をお招きし、公認会計士・税理士である山田真哉氏とともに、仮想通貨のイロハを解説。ユーザーの皆さんからのビットコイン・仮想通貨に関する質問にも答えつつ、「本当にビットコインは大丈夫か?」について考えていきます。
そもそも電子マネーと仮想通貨は何が違うのか?
山田:
本日は、ビットコインにまつわる様々な疑問をユーザーからの質問を交え、たっぷり紹介して行こうと思っているのですが、最初に初歩的なことである「電子マネーと仮想通貨は何が違うのか?」というところから説明していきたいと思います。
山田:
まず、“使用するため”には、仮想通貨の場合、円をビットコインなどに両替しなければいけません。電子マネーのように、SuicaやEdyにチャージすることはできません。“価格”に関しては、仮想通貨は外貨と同じように相場が変動します。今は1ビットコインが30万円ですが、日によって相場が変動していく。対して、電子マネーは固定している。
“管理主体”に関してですが、企業などが必ず管理している電子マネーに対して、仮想通貨にはありません。さらに、“日本でインフレなどが起きた場合”ですが、ビットコインなどの仮想通貨は大きな影響はありませんが、 電子マネーは円とともに価値が下がってしまいます。逆に言えば、もし日本でデフレが起きた場合、電子マネーは非常に有利になるということでしょうね。この他に何か付け足すとしたら、森川さん、どういったことが挙げられますか?
森川:
仮にもしも中国が通貨危機に陥ってくると、人民元からビットコインに逃げようという動きが広まるので、ビットコインと法定通貨(円やドル、ユーロなど)のレートに影響が出ることも考えられます。
山田:
それはよく聞きますね~。人民元が安くなると、ビットコインの価値が上がっていく……ある意味、市場にも影響を及ぼされる仮想通貨ですが、2009年に誕生したビットコインは、今や世界を席巻し、名だたる大企業も仮想通貨に参入しています。
山田:
また、三菱東京UFJ銀行が発行する仮想通貨「MUFGコイン」(ビットコインと異なり1円=1コインと相場が固定されている)も、最近では話題を集めています。
森川:
詳細に関しては、まだ不明な部分もありますが大きなトピックにはなっていますよね。
山田:
まだ先の話だと思うのですが、三菱東京UFJ銀行の口座を持っている人は、MUFGコインに交換した場合、MUFGコインでも送金や決済が可能になるってことですよね?
森川:
そういうことになるでしょうね。送金手数料に関しても、従来よりも安くなるのではないかなんて言われています。ただ、ビットコインは発行者、つまり管理主体が存在しませんが、MUFGコインの場合は管理主体が三菱東京UFJ 銀行となります。この点は同じ仮想通貨でもビットコインなどとは似て非なるものという扱いになりますね。
なぜ企業は仮想通貨市場に参入するのか?
山田:
では、「仮想通貨に参入することで企業側にはどんなメリットがあるのか?」ですけども、“手数料が安い” “決済が早い”なんてことが言われています。気になるのは、発行主体がないにも関わらず、なぜこれほどまでに仮想通貨に参入する企業が増えているのか? なぜそこまでビットコインが魅力的なのか? ということについて触れていきたいのですが、なぜそれほどまでに仮想通貨は信頼されているのでしょう?
森川:
円などの法定通貨は中央銀行が発行し、価値を担保しています。1円は1円であり続けるわけですね。日本銀行という発行体の存在によって信頼が成り立っています。
山田:
安倍政権は倒れてしまうかもしれないけど、少なくても日本銀行は大丈夫だという信頼がありますからね(笑)。
森川:
さらに日本は、造幣技術が優れているため偽札が出回らないということも信用が高い一因ですね。発行体が無茶なこと……例えば、日本円をいつもより10倍刷ってインフレを起こしてしまうというような運営のミスや社会情勢不安みたいなものもない。
森川:
次に、電子マネーの価値についてですが、 発行主体が日本銀行ではなく、一般企業が担うことで価値を担保しています。明日、突然、その企業がサービスを停止する、ポイントを廃止するというようなことはないと、皆さんが信頼しているからこそ価値が担保されているというわけですね。
山田:
確かに、明日から使えなくなるかもしれないポイントは誰も貯めない(笑)。
森川:
では、ビットコインの価値の裏付けは何なのかということですが、冒頭で説明したように中央にあたる発行主体や管理主体はありません。
山田:
不安です!
森川:
(笑)。発行主体や管理主体がないということはどういうことか? 偽札によって紙幣が増えるなど不当なことや、紙幣が大量に刷られてお金の価値が変わるというリスクが、ビットコインにはありません。なぜこのようなことが成立するかというと、仮想通貨はブロックチェーンというシステムによって、価値が担保されているからです。ブロックチェーンについては後述しますが、ビットコインはブロックチェーン上で自動的に発行され、記録が行われていくことで、発行主体を持たずに運営が可能となっています。言うなれば、技術によって価値が裏付けされています。
山田:
法定通貨やポイントは、国であったり組織であったり、そういったものに価値が裏付けされているけど、仮想通貨に関しては技術によって価値が裏付けされていると。
森川:
そうですね。1BTC(BTCは、ビットコインの通貨単位。日本円における、円に相当。)が技術によって、常に1BTCであり続ける(ある日突然なくなったりしない)ということが確立されているので信用があるという具合です。ただし、1BTCが「いくらになるか?」という点に関しては、誰かが担保しているわけではありません。ここは国内にも存在している取引所で買いたい人と売りたい人が自由に売買することで価格が決まっている。例えば、僕が1BTCを10万円で売りたいといったときに、10万円で買ってくれる人がいれば取引が成立するといった風にですね。この平均価格帯がいわゆる相場となっています。