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心臓疾患のある患者に肺の手術を……病院職員による確認ミスと過信からまったく必要のない手術をされた「大学病院患者取り違い事故」を解説

 今回紹介する、ゆっくりするところさんが投稿した『【1999年】取り違いにより、全く必要のない手術をされた患者たち・・・『大学病院患者取り違い』』という動画では、音声読み上げソフトを使用して、1999年に発生した、患者を取り違えて手術を行った医療事故について解説していきます。

投稿者メッセージ(動画説明文より)

今回紹介するのは「大学病院患者取り違い」です。
心臓病の手術を受ける予定だったAと、肺の手術を受ける予定だったBが入れ替わってしまい、それぞれ全く必要のない手術をされてしまった、恐ろしい勘違いの事例です。
不幸中の幸い、手術後も二人の体に異常は認められませんでしたが、病院職員による小さな勘違いが積み重なり、いつの間にか二人は入れ替わって手術室に運ばれてしまいました。


確認ミスと過信から発生した事故

魔理沙:
 今回紹介するのは「大学病院患者取り違え」だ。これは1999年に起きた非常に恐ろしい医療ミスだった。1999年1月8日、神奈川県横浜市にある医学部附属病院第一外科。この日、病院の共同病室には弁膜症の手術を予定していた患者、A(74歳)と肺の手術をする予定の患者B(84歳)が入院していた。

 ふたりは心臓の手術と肺の手術をそれぞれに3日後に受ける予定だった。そこにラウンドと呼ばれる回診を行うため、手術室を担当していた看護師が訪れた。この看護師は肺の手術を受けるBに対して、その内容を説明し、現在の病状や体の特徴などを確認し、伝えた。

 このラウンドという回診は、通常手術の前日に行われるものだったが、前日はちょうど日曜日で病院は休み。そのため前の週の金曜日であるこの日に、そのラウンドが行われていた。その後、麻酔医も病室を訪れ、同じように今度はAに心臓の手術の説明をし、注意事項などを伝えていた。その時、この麻酔医はAに対して、「入れ歯は事前に外しておいてくださいね」とも伝えた。

 1月11日、手術当日。ストレッチャーを使い、患者AとBの搬送がはじまった。ふたりの手術は、ほぼ同時刻に同じ建物内で行う予定になっていた。この時、病棟を担当していた医師のひとりが、搬送されていくAの背中に「フランドルテープ」というテープを貼り付けた。フランドルテープというのは、主に心臓病患者などに使用されるもので、このテープにはニトログリセリンが染み込ませてある。

 このテープのことは搬送先の手術室にも伝えられ、その後各患者のカルテはストレッチャーの下に置かれた。このふたり分のストレッチャーは、ふたりの看護師によって一台ずつ運ばれていた。しかしこの時の院内は非常に混雑しており、看護師の人手不足状態だった。そこでエレベーターにふたりのストレッチャーを乗せたところで、ひとりの看護師が「ごめん、あとお願いできる?」と言って、もうひとりの看護師にふたりの搬送を任せた。  

 搬送を任された看護師は、同時にふたりを何とか搬送した。手術前に、このふたりの患者は、カルテの引継ぎなどが行われる「手術室交換ホール」に運ばれた。この手術室交換ホールというのは、雑菌の侵入などを避けるため、ガラスの壁で仕切られており、その中には患者の体を手術室側に搬入するため「ハッチウェイ」というベルト式の装置が備わっていた。

 そしてこの手術交換ホールで、また別の看護師に対し、搬送してきた看護師は「病棟のAさんとBさんです」とふたりの名前を伝えた。このホールで引き継ぎを行った看護師は、三日前にラウンドのためにふたりの病棟を訪れていた看護師だった。

霊夢:
 手術とかの説明に来てた人ね。

魔理沙:
 しかし、この引き継ぎをしていた看護師は、「Bさん、おはようございます」と間違ってAに向かって挨拶をした。Aさんはこのことを特に気にせず、軽く会話を続け、看護師も「Bさん、昨日はよく眠れました?」と続けて間違ったままに会話をしていた。

霊夢:
 もうこの時点で嫌な予感……。

魔理沙:
 搬送してきた看護師は間違いに気づき、念を押して「Aさん、お願いします」といった。しかし、勘違いしている看護師は間違いに気づかず、逆に搬送してきた看護師のほうが間違っていると思い込み、そのまま会話していた。搬送した看護師のほうは、ふたりと面識がなかったので、「もしかしたら自分のほうが間違っている?」と、こっちはこっちで別の思い込みにより、Bのほうを心臓病患者だと勘違いした。  

 その後、ふたりの患者は手術室に送られ、カルテは別ルートで手術室に送られた。手術室では看護師が患者に対して名前を呼びながら準備をすすめていたが、この時ふたりの患者は、それぞれ間違った呼び方をされたにもかかわらず、そのまま呼びかけに応じてしまっていた。

霊夢:
 結構なご高齢だもんね。なんかそういうこともありそう。

魔理沙:
 心臓病の手術室では、患者Aに入れ歯を外すように指示した麻酔医が口から管を入れたとき、「あれ?歯がそろってる」と疑問に思ったものの、それ以上深くは考えず手術をはじめてしまった。

霊夢:
 あのニトログリセリンのテープは?

魔理沙:
 本来であればAの背中には「フランドルテープが貼られている」という情報が事前に届いていたので確認するべきだった。しかし、医師や看護師らは背中にテープのないこの患者のことを一瞬不思議に思ったものの、やはり気にせずに手術を続けた。一方、本当の心臓病患者のAのほうは、肺手術を行う手術室に運ばれていた。

 この手術を担当した医師は、Aの背中にフランドルテープが貼られていることに気がついたが、「なんだこのテープは」と言いながら剥がし、特に不審にも思わずに手術をはじめた。すでにこの時点で、ふたりの患者には帽子やアイパッチが装着され、口には管が通されていたので、顔の確認をすることは難しい状態だった。

 麻酔医は患者の髪の毛の色が記憶にあるものよりも妙に白く、短くなっていたことに気がついたが、「散髪でもしたんだろう」と自分の中で納得し、確認などはしなかった。また、以前は心臓内の血圧が異常に高かったにも関わらず、この手術直前の検査では正常な値を示していた。

霊夢:
 そりゃそうよね、だって全然違う人なんだから。

魔理沙:
 さらに心臓の血液の流れをみる超音波検査の映像も、前回の結果とはまるで違っていた。だが医師たちは患者の肋骨の形から、「やはり患者はAである」とみなし、血液や超音波検査の結果も、麻酔によって一時的に起こるものだろうとして解釈。しかし麻酔医は念のために患者を運んできた看護師に対して、「患者Aが手術室に運ばれてきていたかどうか、病棟に確認してくれ」と指示を出した。病棟の回答は「Aさんは確かに手術室に行っています」というものだった。

霊夢:
 そりゃ行ってはいるけど、入れ違っているのよ!

魔理沙:
 その直後、患者B(Aと勘違い)の手術が本格的にはじまった。心臓の手術では、大量の出血が予測されるため、あらかじめ自分の血液を採取し、それを手術で使用する「自己輸血」を予定していた。だがこの時、実際に患者Bに輸血されたのは患者Aの血液。

霊夢:
 それって、確かやばいんじゃなかったっけ。

魔理沙:
 当然、血液型の違う血液を輸血したりすれば、大変なことになる。しかし、この時は不幸中の幸いだろうか、ふたりの血液型は全く同じで、特に問題は起こらなかった。手術中、医師らは患者の心臓の状態が、手術前の病状よりも妙に軽かったことに気がついたものの、特に手術を中止したりはせず、そのまま手術は完了した。勘違いで心臓の手術を受けてしまった肺疾患の患者Bは、その後手術室のとなりの集中治療室に運ばれた。

 その一方で心臓疾患のあった患者Aは、別の手術室で肺の手術を受け、同じくこの集中治療室に運ばれてきた。偶然にもふたりは再びこの集中治療室で隣り合わせになった。その後、ここで行われた体重測定でAであるはずの体重がカルテのデータと大きく異なることがわかり、はじめて「患者を取り違えていたのではないか」という疑いが出てきた。その日の夕方、前年まで患者Aの主治医だった医師がAのもとを訪れ、Aの顔を見た。

 しかしAは医師が知っている顔ではなかった上に、隣で寝ている患者のほうが自分の記憶の中のAに似ているではないか。そこで元主治医が患者に改めて名前を尋ねたところ、今回の取り違えが発覚した。幸いなことに、ふたりの体に異常は認められず、その後改めて本来予定されていた手術を受け、無事退院したが、通常はあり得ないような勘違い事故が起きていたんだ。

霊夢:
 よく無事だったわね……。

魔理沙:
 本来であればこのような患者の搬送でも、マンツーマンで行動することが原則だった。しかしひとりの看護師がそれぞれ心臓と肺の手術を予定していた患者ふたりを病棟から手術室の待合所である、交換ホールに取り違えて搬送していたことが主な原因だった。

 それに加え、名前の確認ミス、麻酔医、執刀医、助手もすべて確認を怠っていたことも原因だった。その後、この病院では問題発覚後、患者の足に名前を書いたり、名札をつけたりする再発防止策を開始。厚生省では、類似事故防止策に関する報告書を発表した。

 その中では、患者識別バンドの装着、スタッフによる事前の患者 訪問、職員一人で行動することを避ける、患者本人に名前を名乗ってもらい確認すること、患者の顔写真をカルテに貼り、一緒に搬送することなど、様々な再発防止策が作られた。

霊夢:
 それくらいしないと、また勘違いと思い込みで事故が起きるかもしれないもんね。

魔理沙:
 これは病院の規模には関係なく発生しうる医療ミスだとして、この大学病院をはじめ、全国のほかの病院にも注意喚起を行った。この大学病院は外科から小児科まで約21の診療科、600を超える病床数、11もの手術室を備える大病院であり、患者からの信頼も厚く、地元では非常に評価の高い病院だった。しかしこの事件が発覚すると病院の評判はガタ落ち、一時的にではあるが悪い噂が広まって、通院患者が激減した時期もあったそうだ。

霊夢:
 そりゃそうでしょうね。医療ミスとか、私たち患者側じゃ防ぎようがないから怖いもんね。

魔理沙:
 この日のように、多忙な状況ではミスを生むし、医師や上司への過度な盲信はこういった事故を引き起こすこともある。「何かがおかしい」と、少しでも違和感を感じた場合は、必ず確認することが重要だった。

霊夢:
 そうね。それは医療に限らず、どんなことでもそうかも。


 少しの勘違いから取り返しのつかないことに発展してしまった事故でした。現在の解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画を視聴してみてください。

▼動画はこちらから視聴できます▼

【1999年】取り違いにより、全く必要のない手術をされた患者たち・・・『大学病院患者取り違い』

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