大雨でフタが外れたマンホールに人が吸い込まれる事故が東京各地で発生していた…夏の集中豪雨により“溺水トラップ”と化した「豪雨マンホール転落事故」を解説
今回紹介する、ゆっくりするところさんが投稿した『【1985年】大雨で冠水した道路で蓋が外れてしまったマンホール その穴に吸い込まれていった人たち『豪雨マンホール転落』』という動画では、音声読み上げソフトを使用して、1985年に東京都内の各所で発生し、冠水した道路で開いていたマンホールに転落、死亡および怪我人がでた事例について解説していきます。
投稿者メッセージ(動画説明文より)
今回は、リクエストがありました『豪雨マンホール転落』の紹介です。
冠水した道路を通行していた人たちは、開いていたマンホールの穴に気付かず、吸い込まれてしまったり、躓いたりと、小さな事故が都内で多発していました。
中には自転車ごと吸い込まれて溺れてしまい、翌日まで発見されなかった人まで居ました。都内に設置されていたマンホールは、約30万以上。
この事故を契機に、その全てのマンホールが調査され、危険箇所については改良型の蓋を設置するなど、大規模な対策が取られました。
集中豪雨で溺水トラップが発生
魔理沙:
今回紹介するのは「豪雨マンホール転落」だ。1985年7月14日。東京都内の各地。
霊夢:
なんか珍しい紹介の仕方ね。
魔理沙:
今回の事例は複数同時発生していたからな。事故当日は太陽が照りつけて、天気はすっかり真夏。関東地方は九州北部、中国地方とともに「梅雨明け」になりそうな空だった。しかし日中にこの夏最高の暑さを記録するほどだった天候も、夕方になって昼間熱せられた地表付近の空気が上昇気流となって、上空の冷たい空気と混ざり合い、大気の状態が不安定となり、雷雲が発生した。
そして東京は千葉、神奈川の一部は雷とともに激しい雨に見舞われた。この時の1時間雨量は、東京練馬区で50ミリ、大田区40ミリ、横浜35ミリなどに達し、東京地方には午後6時55分に大雨洪水警報が発令されていた。そのため都内の河川は氾濫。街の人たちが窓の外を見ると、周囲の景色が一変しており、驚愕するほどだった。何しろ道路が水浸しで、池のようになっていたからな。この雨は夜になっても降り続いた。
そして午後7時頃。杉並区内に住んでいた63歳の男性は、冠水した道路を歩いていた。すると突然片足が道路の中に深くめり込み、転んで胸を強く打った。
霊夢:
え、道路に足が?
魔理沙:
この大雨によって、冠水した道路に設置されていたマンホールの蓋が開いてしまっていたんだ。
霊夢:
こわっ! ほとんど罠じゃないの。
魔理沙:
そのとおり。雨水で冠水した道路は、濁った水で満たされており、アスファルトの地面が見えないような状態だった。
霊夢:
それでマンホールの穴が見えなかったわけね。
魔理沙:
それとほぼ同じころ、大田区では同じように冠水した道路を自転車で通過していた男性が、蓋が開いて外れてしまっていたマンホールの穴に気づかず、そこに自転車ごと胸まで吸い込まれてしまった。男性は周囲に助けを求め、付近の人たちが引き上げようとしたが、彼はマンホールの中に自転車と共に吸い込まれていった。
「たかがマンホール程度の穴で」と思う人も、もしかしたらいるかもしれないが、こういったいわゆる「溺水トラップ」にはまってしまうと、抜け出すのはなかなか難しいんだ。歩いていたら、突然足のつかない深さの筒状の穴に落ちて、しかもそこは水を周囲から吸い込んでいることもある。
また別の場所、板橋区では男女が乗った乗用車がマンホールの穴にはまり、二人ともが打撲などのケガを負うなど、こういった被害も各所で発生していた。そして翌日の7月15日の早朝。大田区でマンホールに吸い込まれてしまった男性を発見した。
霊夢:
あの自転車の人……無事だったの?
魔理沙:
いや、残念ながら溺れてすでに命を落としていたようだ。
霊夢:
いきなりマンホールに吸い込まれて溺れて、次の日まで見つからないなんて怖すぎるわ。
魔理沙:
このマンホールの蓋が開いてしまうという現象は、都内の約数十箇所以上で発生しており、紹介したもの以外にも小さな事故が多発していた。
霊夢:
でもマンホールの蓋ってそんな簡単に開いちゃうの?
魔理沙:
マンホールの蓋が外れた原因は、計画を上回る集中豪雨による雨量によって、下水道施設の能力以上の水流が生じ、マンホール内の水圧や空気圧の上昇などによって起こっていた。
霊夢:
そういえば大雨でマンホールから水が噴水みたいに飛び出しているのを見たことがあるわ。あれも一緒かしら。
魔理沙:
それはかなり激しいものだが、仕組みは一緒だろう。被害が拡大した原因は、マンホールの蓋が外れた場所の道路を通行禁止、または危険箇所の表示などの処置が一切とられなかったことだといわれている。しかしどのマンホールの蓋が外れていたのか、道路が水浸しの状態で見分けるのは困難であり、事後対策が取れなかったのも無理はなかった。
東京都は、この日都内で発生した複数の事故を契機に、都内のマンホール約30万箇所を、延べ30の出張所の職員を動員して総点検を行った。
霊夢:
え、都内のマンホールって、30万箇所もあるの!?
魔理沙:
マンホールというのは、道路をよく見て歩いてみるとわかるが、意外と多いんだ。さらにマンホール一個一個について、近隣住民らに聞き込みを行い、最近の雨で少しでもマンホールが浮き上がったような蓋は回収され、改良型に交換された。
霊夢:
対策された蓋に変えたの?
魔理沙:
こういった危険箇所の蓋については、浮上防止型の蓋に交換されることになった。同年、東京下水道局では、傾斜地の下など、マンホールの蓋に水圧のかかりやすい場所を重点に、ボルトで固定する耐圧型蓋や、格子状になっていて水を通すが簡単に外れない「圧力開放型蓋」など、浮上防止型蓋を約2000ヶ所に設置した。
霊夢:
かなり大規模な対策がとられたのね。
魔理沙:
そして先述した自転車ごと吸い込まれてしまうという痛ましい事故が起こった大田区では、施設改善要望に基づき、区全域のマンホールを浮上防止型に交換するという措置がとられた。この日、大雨で水が溢れた道路では、外れたマンホールの位置がわかるわけがなく、マンホールの穴に落ちる事故が何件も発生してしまった。
これは予想以上の雨量という自然現象が直接の原因ではあるが、人身事故になるのを防ぐ手立ては十分存在していたため、その教訓からここまでの大規模な対策がとられることになった。
霊夢:
被害者が出たのは悲しいけど、それで前よりも安全なマンホールに変わっていたのね。
魔理沙:
予想を上回る環境変化によって、安全性が保たれなくなることは多々ある。2021年7月現在も、大雨によって西・東日本で雨による災害が発生している。
霊夢:
そういえばタイムリーな話題だったわね。
魔理沙:
急な土砂災害などは防ぐのが難しい場合もあるが、今回紹介したような事例は私たち個人でもある程度は予防することができる。冠水が起こるような大雨のときは、必ず区、市などの行政の指示に従い、避難などを行うようにすること。河川や用水路に近づかないようにしなければならない。特に都会の川は一時間に50ミリ以上の雨が降れば氾濫すると言われている。
霊夢:
大雨のときはむやみに外に出たり、冠水した道路を歩いたり しないほうがいいわね。
魔理沙:
どうしても行かなきゃいけない場合は、万が一溺水トラップに落ちても助かるように、ペットボトルなどの浮力になるものを持っておくとかすると、生存率が上がるかもな。
特に梅雨の終わりごろや、日本海付近に前線が停滞しているときは集中豪雨が発生しやすい。空が急に真っ暗になったり、雷鳴や稲妻が起きたら、集中豪雨の前兆だ。なるべく早く安全な場所に移動しよう。
集中豪雨が多いこの季節。転落を防ぐためにも、冠水した道路を歩くときは十分気をつけましょう。解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画を視聴してみてください。
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