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追求したのは「TRPGのおもしろさを最大限伝えられるか」。シェアの取りかたを研究し、趣味の範囲を超えて動画づくりを目指す理由とは【肉声動画投稿者・まにむさんインタビュー】

肉声動画というスタイルをなぜ選んだのか

──さて、さきほど肉声という言葉も出てきましたが、2015年以前のニコニコ動画で投稿されているTRPG動画は、ゆっくりボイスを使用しているものがほとんどで、肉声をそのまま動画に入れ込んでいるものは少なかったと思います。TRPG動画を作る際、なぜ、あえてメジャーではない肉声動画というかたちを選んだのでしょう?

TRPGゆっくり肉声
20112,100件20件3件
20123,151件1,561件3件
20133,787件3,378件12件
20143,883件4,013件13件
20154,162件5,056件67件
20164,765件6,480件471件
20174,373件5,667件443件
20185,956件6,031件350件
20198,325件5,400件358件

※TRPG(「TRPG」タグ)、ゆっくり(「ゆっくりTRPG」タグ)、肉声(「肉声セッション」タグ)がついている動画を年別でカウント。あくまで動画についているタグをソートし集計したものであるため、該当する動画がカウントされていない(逆もしかり)ケースも少なくない。(データは2020年2月13日集計)

まにむ:
 僕の感覚だと、肉声のほうがメジャーでゆっくりのほうがニッチなジャンルなんです。TRPG動画に限れば、確かにゆっくりがメジャーで肉声がニッチではあったのですが、ゲーム実況をはじめ、ほかのジャンルを含めて考えると、肉声ばかりじゃないですか。

 なので、逆になんで主流は肉声なのにTRPG動画ではウケていないんだろうと不思議に思っていました。

──2015年以前においても、肉声を用いたTRPG動画は存在するのですが、数もほとんどなく再生数も伸びきらない傾向でした。

まにむ:
 当時、TRPG動画をいろいろ見るようになって、肉声のものが全然なくて、気になって肉声動画に絞って探してみたときがあったんです。

 おっしゃる通りいくつかは投稿されていて見てみたんですが、内容じたいはおもしろいのですが、動画として見せるときにその魅力が伝わりにくいと感じたんですよね。だからもっとおもしろい表現をしないと伝わらないし、ウケないんだろうなと思っていました。

──その表現が漫画テイストな見せかただと。まにむさんの投稿後、肉声動画が一気に増えていきますよね。動画の見せかたもまにむさんの動画のようにイラストと吹き出しで見せる手法が取り入れられ、多くの人気動画が生み出されていきました。

2016年に投稿された人気動画(画像の検索ページはこちら)を見てみたところ、再生数上位のほとんどが肉声動画だった。2015年に投稿されたまにむさんの動画をきっかけに肉声動画が活気づいていったのは間違いないだろう。

まにむ:
 もちろん、ゆっくり動画もおもしろいんですけど、ゆっくりボイスであるということに壁を感じる人は多いのかなと。TRPG動画でも、肉声でおもしろい動画があれば、肉声動画を見る視聴者が多いと僕は思っています。

──肉声動画の魅力ってどこにあるのでしょう? 個人的には、リアルな掛け合いや反応をダイレクトに感じられる部分だと思ってはいるのですが。

まにむ:
 肉声の魅力というより、僕らの日常会話って普通は顔を見て会話するものじゃないですか。そこから、顔が見えない肉声だけのもの、ゆっくりボイスで作られているもの……と、なればなるほど、オタク向けに、よりニッチになっていくんです。

 そういうものになればなるほど、ニコニコのコアユーザーの好みではあると思うのですが、やはりフィルターがひとつ挟まっていると思います。肉声はそのフィルターがない、その違いでしょうか。

──短絡的に考えると、再生数を伸ばせるのであればそっちのほうが劇的に増えていく気もするのですが、ニコニコにおいては2020年現在でもゆっくりと肉声だとゆっくり動画のほうが圧倒的に多いんです。これについてはどのような要因があるとお考えでしょう。

まにむ:
 僕もゆっくり動画の投稿者は、なぜ肉声で動画をあげないのだろうって常に思っています(笑)。

──なんと! 想像でしかないですが、自分の声を公開するのに抵抗だったり恥ずかしさがあるんでしょうか。

まにむ:
 僕も恥ずかしさが理由かなとは思っています。ゆっくり動画を投稿されている方々は、セッションのおもしろさに自信を持っている印象がありますし、技術力のある方ばかりなので、肉声動画を作ってみるのもいいんじゃないかなとは思っているんですけどね……。

──現状は増えないと……。

まにむ:
 クリエイティブな部分の話だと、動画の制作時間でしたり、それを継続できる環境の問題が大きいのかなと思います。もともとあの動画は、どうやったらTRPGのおもしろさが伝わるかだけを考えて動画を作ったんです。制作じたいに半年近くかけていますし、なかなか真似できるようなものではないと思っていました。

──半年!? すさまじい制作期間ですね。

クオリティを追求したことで、動画の制作時間は半年にも及んだとのこと。当然ながら投稿期間も半年以上のスパンになっている。
「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」シリーズはこちら

まにむ:
 ですので、同じような動画を作ろうとしても、1話は出せても2話、3話と続かないんですよ。例えばコウノスケさん【※】は、彼も漫画家志望だったので、継続できる能力があったと思うんですが、趣味で作っている人にとって制作時間がかかるし完結まで続けるのは大変だと思います。

※コウノスケさん……「ちょっと噛み合わない初心者たちのクトゥルフ」、「ノリで火星に来た探索者たちのクトゥルフ」をはじめ、多くの人気肉声動画を投稿した投稿者。

──肉声動画が増えるために、または投稿を続けるために必要なことってなんだとお考えですか。

まにむ:
 絵を描いている人たちが諦めないこと、それに尽きると思うんですよね。せっかく1話がおもしろくても、2話3話と続くうちに絵を描く人のモチベ―ションが下がっていって、作業が遅れたり止まってしまったりすると、動画の更新が途切れてしまうので。それをやりきれるようにしてもらえればいいんですけどね。やりきっている人たちはちゃんと再生数を残しているので。

 または、「ポケモンTRPG」シリーズ【※】は、キャラクターイラストを切り抜いて動画を作っているので、あのような作りもひとつの方法だと思います。

※「ポケモンTRPG」シリーズ……ポケモンシナリオを改変して作成されたTRPG動画。

 問題点があるとすれば、YouTubeには出せないんですよね。消されるし、広告を付けることは絶対にできないし。そこをどう考えるかですかね、投稿者が。人気が出たとしてもYouTubeに出せないのはもったいないと、僕個人としては思います。

再生数やコメントなどの反応が動画投稿活動の原動力

──2018年に動画の投稿がなかったのにはなにか理由があるんですか?

まにむ:
 正直なところ、動画制作がめんどくさくて……。

──なにか別のことに熱中されていたんですか?

まにむ:
 なにかというわけではなく、動画を作っていたら、なにもできないんですよ。仕事をして帰ってきたら動画制作、本当にそれだけ。趣味の時間を全部制作時間にあてないといけないので。それが辛いので間が空いてしまうんですよね。

アニメーションのようにキャラクターたちが動く。そう、まるで本当にTRPGの世界に入り込んで冒険しているように。このクオリティを維持するとなると制作にかかる労力はトンデモナイことになりそうだ。
(画像は「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG に」より)

──動画制作の中でとくにここが大変だったっていうエピソードがあれば教えてください。

まにむ:
 例えば最初の動画シリーズですと、動画を継続してあげるつもりがなかったせいで、内容的にものすごく濃い、制作時間がかかるものを作ってしまったため、そのクオリティで作り続けないといけなくなってしまったことです。

 継続的に上げる前提であれば、継続しやすい方法も考えたでしょうが、当時はひたすらつきつめて作っていたので……。その作品が連載ものになってしまったのが、ちょっときつかったです。

──そんな辛い動画制作を続けられている理由にもつながるかと思うのですが、動画投稿活動の中でもっとも脳汁が溢れる瞬間ってどのタイミングなのか教えていただけないでしょうか。

まにむ:
 やはり再生数とかコメントとかを見ているときです。

──動画への反応だったり感想だったりがモチベーションにつながっていると。

まにむ:
 はい。そこが原動力だと思います。

2015年6月時点のコメントログを見てみたところ、視聴者からのパート2投稿への期待や感想コメントが溢れていた。
(画像は「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」より)

──ちなみに動画化するセッションって、どういう基準で選んでいるんですか? 例えば、動画にするのを前提にセッションを行うのか、セッションをしていておもしろい内容になったから動画にしようとなるのか、どちらなのでしょう。

まにむ:
 シナリオじたいは動画を視野に入れて作っていて、動画メンバーも自分の中で最終的な着地点みたいなものはあります。ただ、セッションがおもしろくて動画化するパターンもありますね。

 例えば、2019年に投稿した動画は、もともとはあのメンバーで動画を作る気はなかったんです。でもセッションしてみたらおもしろくて、動画にすることになりました。

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