電王戦・叡王戦をもっと楽しむ将棋講座 ―― プロ棋士と将棋AIのこれまでとこれから
将棋電王トーナメントの紹介
室谷:
将棋電王トーナメントは、将棋AI同士のエントリー制トーナメントです。こちらの出場ソフトも昨日の発表会にて発表されました。全部で38チームのエントリーがあり、全チームによる予選リーグ戦の後上位12チームが決勝トーナメントに進みます。決勝トーナメントを制した将棋AIが、叡王戦の勝者と対局します。
遠山:
将棋電王トーナメントというのは、AIの力、ソフトの力というものを試す場なので、パソコンが全部同じなんですね。これもひとつの特徴ですね。
セピア:
なるほど、ハードスペックの差で勝負が決まってしまわないように。
遠山:
純粋に開発者の力、ソフトの力で決まるようになってる。でも、パソコン自体もすごいパソコンなんで。
セピア:
すごいパソコンってどんくらいすごいパソコンなんですか?事務室とかサーバー室にあるこんなでっかい。
遠山:
そこまでではないらしいですけど、でも、普通の人が家に買わないよねってぐらいのパソコンらしいです。
セピア:
でも、凝ってる人であれば、もしかして、そのぐらいのスペックのパソコンぐらい個人レベルで持っているかもしれない。
遠山:
そうですね。ゲームとかやられる場合はそれぐらいのスペックが必要かもしれませんね。
セピア:
私も家に、良いCPUとか積んでるんで、私もプロ棋士と同じぐらいのコンピューターと対戦できてしまう。
遠山:
そうですね。フリーで落ちているのとか対戦できますけど、ちょっと強すぎるんで、やんないほうが良いかなという気もしますけど。
セピア:
いきなりはやめておいたほうがいいと。お互いの平和のために。
遠山:
いきなりはちょっときついと思いますね。将棋長く続けてほしいんで、やってすぐ負けてもうやだよってなっちゃうのは怖いんで。そういうのじゃなくて、例えば今会場に来られてる方でハム将棋ってのが、すごく良いのがあって、ハムスターと将棋が指せるんですね。そういうのでみなさん是非楽しんでいただいて。
セピア:
この話になった途端に、コメントでもハム将棋って言葉がたくさん出てきます。
遠山:
羽生じゃないですよ。羽生将棋だと強すぎて、やる気が失せますけど。
セピア:
私が初めて触ったの羽生将棋でしたよ。64で出た羽生将棋を初めてやったコンピューターゲームの将棋でした。
遠山:
もっと弱くて可愛いのがあるハム将棋って言って、それでちょっとパソコンでいじってみたら、アプリとかで将王とかあるんで、そういうのでやって勝っていくほうが楽しいんでね。
セピア:
勝つことが何者にも代えがたい物がありますからね。
電王戦トーナメントみどころAI
遠山:
電王トーナメント、私自身は二日目に立会人として参加するんですけど、私自身コンピューター将棋ソフト大好きでですね。大会とか必ず行ってますので、今回出るソフトをですね。いくつか紹介していきたいと思います。一つ目は、ponanza。
セピア:
電王戦で勝利したと話題の。
遠山:
そうですね。電王トーナメント今回で4回目ですけど、1,3で優勝、2で準優勝、もう無敵と言ってもいい強さのソフトですね。ponanza自身も強くてすごいんですけど、開発者のキャラが結構面白いところもponanzaの良いところではありますね。
とても強くて、最近プロでも思いつかなかった新構想みたいなのを出しつつあったり、結構一段階上の進化をしているなと言う感じがします。
セピア:
なんかプロ棋士の中で、新手、鋭い手に送られる賞ってありましたよね。
遠山:
升田賞ですね。
セピア:
升田賞をponanzaが獲ってしまう日も近いかもしれない。
遠山:
そうかもしれないですね。ただ、升田賞は人間にだけ送られる賞なんで、今のところは難しいと言われています。ただ、今後も打ち出していけばそういうことがあるかもしれないですね。
セピア:
ちなみに私が不勉強で申し訳ないんですけど、Bonanzaとはどういった関係なんでしょうか?
遠山:
Bonanzaの子供的な感じですかね。憧れて作ったのがponanzaなんです。Bonanzaっていうのは割りと初期のころの強かったソフトで、それを作った開発者というのが、また、いい味出してる開発者なんですね。
室谷:
アカラ2010の合議制に入っていたソフトのひとつですね。
遠山:
保木さんって開発者に憧れて、今の開発者の山本さんが作ったのがponanzaなんですね。でも、名前が似すぎてて、今は後悔していると山本さんが、ちらっと言ってました。
セピア:
この最強と目されているponanzaが、注目のAIとしてあると。
遠山:
二つ目は屋根裏王ですかね。2回電王戦に出場していて、前回は4位なんですけれども、これまた開発者がいい味出し過ぎちゃってる。PVにも登場していますけれども、非常に優秀な開発者の方で、今回かなり力を入れて本気で取り組んでるというので、どれぐらいの力になってるか注目ですね。
遠山:
三番目が技巧ですね。ponanzaをもし止めるとしたら、このソフトかと言われているソフトです。去年電王トーナメントは5位だったんですけども、今年の今年のコンピューター将棋選手権でponanzaにつぐ準優勝だったんですね。
ponanzaはすごいコンピューターらしい将棋を指すんですけど、技巧は人間らしい将棋を指すんですね。そのせめぎあいで、このponanzaと技巧の対決っていうのが、今回の電王トーナメントの魅力だと思います。
ということで、38ソフトありますので、続きは10月の三連休10月8日から10日まである、将棋電王トーナメントでご覧いただければと。
電王戦対局画面の見方
室谷:
次は、対局画面のご紹介です。こちらは、昨年の電王戦の生放送の画面ですね。画面上部左角に先と書いてます。これは、先手という事です。これは、ponanzaが先にいくと、そして、右側が後手、山崎叡王。
真ん中に残り時間が出ています。7時間52分と7時間32分。で、右側が評価値が表示されています。ここでは、ponanzaa側は102、山崎叡王は光って見えないんですが。
セピア:
マイナス102って書いてありますね。この評価値っていうのは、どういうものですか?
遠山:
これはですね。例えば野球だと5対0とか、サッカーなら1対0かはっきり点数で出るじゃないですか?将棋もハッキリ点数で見えたほうが良いということで、始まったことでして、コンピューターがある程度先の展開を予想して、先手のponanzaの方が102点プラスだよっていうことを示してるんですね。
プラス100っていうのは、差があってないようなもので、500ぐらいつくと形勢、差がついてきたかな?っていう。
セピア:
結構細かい差なんですね。100って行ったらもう結構差がついてるかなってイメージでした。
遠山:
500ぐらい来るとまあまあ、1000とか4桁になると結構差がついたなって感じで、その数字を見ると、例えば将棋そんなにわからなくても、これ先手のほうが良いんだなというのが、ひと目で分かるので、非常に便利なんですね。
ただ、この評価値が、必ずしも正しいわけではないんですね。今これは、nozomiというソフトが評価値を出しているんですけど、nozomiさんがもしここで誤って100点として出しているんだけど、本当は、後手の人が優勢みたいなこともあると、ちょっと手が進むだけで、ババババッって点数がひっくり返ったりするんですね。
例えば、こっち+1000とか言ってたのに後手に進んだら逆転したりすると、コメントが増えるっていう、そういう感じで、点数を見ながら将棋を楽しんで、うわぁこっち勝ちそう、あっち勝ちそうみたいな感じで楽しめる、ひとつの指標みたいな感じですね。
室谷:
ソフトによってもだいぶ違うんですよね。
遠山:
ソフトによってもだいぶ違うんですね。評価値を多く出すソフトもいれば、小さく出すソフトもあるので、それによって振れ幅も大きいので、なんとなくの物差しで見るという感じですね。
セピア:
それぞれの評価の物差しによってもなにを基準に優勢劣勢を判断しているのかっていうのかも微妙に違うんですね。でも、その数値がガッと動く時は生放送的にも、かなり盛り上がりどころになるでしょうし、今コメントで見えたのが、1000点がひっくり返ったら、ものすごい湧くっていう、1000点っていいますとどれぐらい差がついてます?
遠山:
1000点っていうと、勝率については8割ぐらいそっちが勝つかな? っていう感じですね。
セピア:
大駒一枚くらい?
遠山:
相当有利ですね。
室谷:
この前予選のニコニコ生放送の解説の聞き手をさせていただいたんですけど、その時終盤3000点からいきなり-3000点ぐらいになって、繰り返しだったんですね。相手玉に詰みがあったのに、それを秒読みで詰ませられなくて、またマイナスになったけど、相手も詰めきれなくてっていうので、すごい振れて。
セピア:
もう3000っていいますと、詰みがあるって段階ってことですね。コンピューターの判断からするとそうなるんですね。
室谷:
沸いてました。
遠山:
なので、みなさんも見る時は、この評価値を見ながら楽しんでもらえたらいいかなと思います。
セピア:
将棋のAIの対局の生放送が少しずつお分かりいただけるころかなと思います。
遠山:
では、そろそろ叡王戦本戦トーナメントの話に行ければいいと思うんですけれども、
セピア:
本戦に出場の棋士の先生がた、16名が決定されました。もう錚々(そうそう)たる顔ぶれの先生がたが16名お集まりの中で。山崎先生と羽生先生の直接対決。一回戦から。
遠山:
これはすごいですね。まさか最初の一番手に山崎さんで、二番手が羽生さんで。こんな事がありますかね。ピッタリ二人が隣になっちゃってる。これは面白いですよ。これは(抽選会の)タイムシフトで、ぜひ、ぜんぜん動じない羽生さんとかを観て欲しいですね。
室谷:
笑ってましたね。
遠山:
笑ってましたね。「ははは」って。
室谷:
「まさか」って感じで笑ってましたね。
セピア:
そして、このひさしぶりに見た羽生九段という表記ですね。
遠山:
そうですね。叡王戦は段位ごとに予選をするので「羽生九段」っていうんですね。羽生さんは多分、五段までしか名乗ってなかったはずなので。
セピア:
実は裏では九段になっているけれど、もうタイトルで呼ばれているのがここ20年ぐらい続いているから、本当に何段とかで呼ばれていたのっていうのは、五段までだったと。
遠山:
そうですね。
セピア:
この中で注目する対局カードというのは、ありますか?
遠山:
まず、これは若手同士で、これがいいですかね。千田五段と広瀬八段。
セピア:
千田先生はPVにも出られていましたね。
遠山:
続いて、深浦先生と豊島先生。羽生・山崎に次ぐくらいの好カードですね。
セピア:
私は深浦先生がとっても好きですね。耐えて耐えての。私は将棋、素人なんですけども、素人目にも「あきらめちゃいけないんだな」って事を、一番教えてくださる先生なので。
遠山:
豊島さんは第三回電王戦に出られてますよね。しかも、今もっとも絶好調なので。
セピア:
関西若手の中で、もう筆頭株と言われている。
室谷:
このカードは、本当に楽しみですね。
ちなみに先ほど、深浦先生のお弟子さんの佐々木大地四段も、本戦トーナメントに出られていて「もしかしたら、師弟対決もあるかな?」とか思ったんですけどね。
遠山:
これは関西対決ですね。
室谷:
久保九段は唯一の純粋振り飛車党だと思います。注目です。
遠山:
そうですね。今回は振り飛車党は久保さんしかいないですかね。
セピア:
鈴木先生とか振り飛車の筆頭がいらっしゃらないですね。
遠山:
そうですね。藤井猛さんとか、みんないないですからね。
室谷:
関西同士ですね。
遠山:
そして、山崎さんと羽生さん。私は山崎さんと同世代なんでね。ここで第一期叡王があっさり羽生さんに負けるのも悔しいので、頑張って欲しいなって気持ちがありますけどね。
セピア:
あらためてお聞きしたいんですけども、これは一発勝負ですか?
遠山:
一発勝負ですね。いやぁ、でも山崎さんは羽生さんにぜんぜん勝ってないんですけど、でも叡王戦には非常に縁があるわけですから、ここは見せてくれると思いますね。
セピア:
続いて中村さんと稲葉さん。これも大御所と注目株というような好カードになりますか。
遠山:
そうですね。稲葉さんは今、豊島さんに並ぶ関西の俊英ですよね。
室谷:
はい。A級ですしね。
遠山:
中村修 九段は、唯一の50代で飄々と狙っていると思います。タイトルを持っていらした事もあるので、年齢的には50代ですけども、勝ち上がる力がある方ですね。
セピア:
次は丸山九段と千葉六段。
遠山:
千葉さんは本人曰く「地味な棋士」なんですけど、彼も私と同世代なんで、丸山さんってトップ棋士ですけど、ここで30代の意地を見せて欲しいなって気もしますね。
セピア:
そして…
遠山:
これで最後ですね。佐藤九段と佐々木四段。
セピア:
現名人ですね。天彦先生は。これは本当に勝手なイメージなんですけど、若手のの急先鋒というか、何か象徴的な絵を感じますね。
遠山:
まぁ、名人であり、若くて入り出しに強くて、本命といっても過言では無いですね。そして、佐々木さんはさっき言った深浦さんのお弟子さんですね。師弟で本戦って、けっこう凄いですね。ここで名人に勝ったら凄いですよね。一躍ニコニコでみんなに覚えてもらえますよね。
セピア:
まずはこのような対局8カード一回戦で、トーナメントで決勝の三番勝負への進出者が決まるという事です。
電王戦スケジュールおさらい
セピア:
最後に電王戦のスケジュールのおさらいです。今は名人戦、棋聖戦というような一般的なタイトルのスケジュールというのもありますけども、この中で、叡王戦は5月から始まっていて、今はこちら6月ですね。
遠山:
そうですね。予選が全部、終わったところですね。
セピア:
それで、叡王戦の本戦のトーナメントが9月の中旬から11月の中旬という事で行われているという事ですね。そして、叡王戦の決勝の三番勝負が12月。
遠山:
はい、そうです。
セピア:
一方、電王トーナメントの方が10月8日から10月10日にあって。電王戦は、電王トーナメントと叡王戦の勝者同士の対戦になる。頂上決戦が2017年の春に行われるという事ですね。
室谷:
忙しいですね。
セピア:
しかもプロ棋士の先生方も、当然ですけども、叡王戦だけをやっていればいいワケじゃないですからね。
遠山:
そうですね。でも、ここに残っている人は、叡王戦にかなり絞っていると思いますね。
セピア:
改めてお聞きしますけど、ちなみにお二人は、先ほどの対戦の注目カードっていうのはありますか?
遠山:
それはやっぱり、第一期叡王と羽生さんの対決になりますよね。
セピア:
やっぱり、そこになりますか。室谷先生は、いかがですか?
室谷:
私は振り飛車党なので、やっぱり久保九段の将棋に個人的には注目しています。
セピア:
私も振り飛車は好きで、指す事が多いので。やはり久保先生。
室谷:
ですね。たくさん対局を観たいなと思います。