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下着の色を検査…法の裏付けのない“ブラック校則”が増え続ける理由は親にあり!?「問題が起きた時に学校を責める保護者から自衛するため」

💡ここがポイント

●従業員に無理な労働を強いる“ブラック企業”。
●社会人のみならず、学生などにも厳しいルールを課す“ブラック校則”について議論。
●ブラック校則が増え続ける理由として、小飼弾氏は「問題が起きたときに学校を責める親があまりにも多いせいだろう」と語った。

 スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫氏が高畑勲監督が「ブラック監督だった」と発言したことが話題になりました。

 これを受けて、9月3日の『小飼弾のニコ論壇時評』にて、小飼弾氏山路達也氏のふたりが、今や企業だけでなく、ブラック校則など学校にも広がる「ブラック労働」について議論を交わしました。

左から小飼弾氏山路達也氏

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日本は、個体は強いが集団になると弱くなる

山路:
 ジブリとか、クリエイター志望の人がこういう有名監督のもとについて働こうと思ったとき、ブラック労働になってしまうのは避けられないことなのかなとか。

小飼:
 いや、だけれども、そうなったらじゃあピクサーはどうなのか。

山路:
 ちゃんと、会社としてブラックに陥らないようにやることはいくらでもできる。

小飼:
 これは僕の持論でもあるんですけど、よく日本人は、個体は弱い、要するに個々のプレイヤーはたいしたことないけど、集団になると強いと言うじゃないですか。僕はまったく逆だと思っている。

山路:
 そうなんですか。集団になったときに強くはない。

小飼:
 アメリカや中国には、確かに個体力のあるスーパープレイヤーみたいなのもいます。でも、ハイアールが会社の敷地内での野グソを禁止することから始めたように、ならすと個体力は大したことがない。そういうルールを積み上げていくことによって、そういうレベルの人たちでもちゃんと戦力になるようにしているわけ。まっとうな組織を作る力というのが日本は弱い。

山路:
 きちんと組織の構成を考えてやるトップがいないということなんですかね。

小飼:
 そう。まとまると弱い。逆に個体はすごいというのは各方面を見ていてもわかるじゃないですか。

山路:
 勝手に組体操をやらせるとすごい組体操をやっちゃうみたいな感じなんですかね。

小飼:
 いや、組体操をやらせるとかではなくて、ハリウッドの原作とかも3分の1ぐらいは日本の漫画から取ってきているんじゃないかというぐらいですし。普通に、サッカープレイヤー、ベースボールプレイヤーも輸出していますよね。実は、傑出した個は結構いるわけですよ。なんだけど、会社単位、組織を作ったもので、世界でうまくいきましたという例がとても少ない。

山路:
 高度経済成長期のときは、製造業とかでなんやかんや上手くいっていたんだけど、あれは何だったんですかね。

小飼:
 3分の1は言い過ぎですかね。だけども今、本当にネタ切れ度がすごくて、ハリウッドってもう、シークォル【※】のシークォルばっかり作っているというイメージがあるんですよ。

※シークォル
続編。

山路:
 2とか3とかね。あるいはマーベルみたいにリーグを作って戦う話。

小飼:
 米国でも『カメラを止めるな!』はバカ受けだったみたいですけど、当然と言えば当然かもしれないですね。

『カメラを止めるな!』
(画像は『カメラを止めるな!』公式サイトより)

山路:
 続編だらけのなかに。

小飼:
 新鮮なネタに飢えていたので。それは置いておいても、ちゃんと組織を作って、そのなかに人を当てはめていくというのは、本当に、そこの部分が日本は1世紀遅れている。

断れない労働者に責任はないのか? 「性犯罪にあったときに被害者を攻めるのと同じこと」

山路:
 この前『小飼弾の論弾』のほうでも取り上げましたが、有休をとるためにクイズにチャレンジしないと、みたいなブラック労働をやるようなところが現れてきたとか。

小飼:
 ブラック労働とかうんぬんっていうのも、まさにそれなんですよ。

山路:
 断れない労働者のほうに責任はないんですかね。それはこういう風なものというのは、全部トップ層の問題なんですかね。

小飼:
 それは責めようと思えば責められるんですけど、結局そういった場合というのは、上が悪いときには上が悪いんですよ。

山路:
 責任を取るためにいると。

小飼:
 下の方にも、いい上を選ばなかったとか言いようはありますよ。でもそれは、性犯罪にあったときに被害者を攻めるのと同じことなんです。それは認められない。一切ダメ。

なぜ「ブラック校則」が増えていくのか?

山路:
 あとそういうブラック労働的なものが、企業じゃないところにもありますよね、学校とか。

小飼:
 確かに学校がすべてのスタートのような気がする。だって、無法地帯じゃない。「先生怒らないからやった人は手を挙げなさい」というのはダメじゃん。「なんでやったんだ」「黙秘権を行使します」と言えます?

山路:
 確かに、それってアメリカとかは子供のときから教えられるのですかね。

小飼:
 教えられるというよりも、学校担当の警察がいます。

山路:
 常駐して。

小飼:
 裏を返すと、そうでもしないとセキュリティを確保できないという悲しい現実もあるんですけど。

山路:
 それってどっちがいいのかなみたいな。学校に銃を持ってきてぶっ放すやつがいる国と。

小飼:
 それは極端にしても、校内のルールというのは娑婆のルールとあまりにも違うじゃないですか。

山路:
 いじめとかが起こっても警察とかに言わないで、なんやかんや変な感じで隠蔽しようとしますよね。

小飼:
 校則というのも、法の裏付けがないわけじゃないですか。いろんな法律を破っているわけじゃないですか。親が一念発起して、「この校則はダメだ」という風に言うと、取り下げるか、仮に裁判になったとしても学校は負けちゃうんですよ。

山路:
 下着の色まで検査する学校があると聞いて、それは完全にアウトだろうとか思うんですけどね。

小飼:
 それは、やっぱり学校の場合は、学校より強いのは誰かと言ったら親なんですよ。親が毅然とした態度を取らないといけないんですよ。長女の通っていた学校で、「SNSを禁止する」と言っていたんですけど、僕はそのときに、一歩でも校外に出たら、おたくらのルールというのは適用されない。娘にもいつも言っていたんですよ。学校の言っていることと僕の言っていることが矛盾していたら、僕のほうが100%正しいと。それはなぜかと言ったら、僕は間違っていても責任を取れるから。学校は取ってくれないだろう。

山路:
 言うだけですもんね。

小飼:
 その通りです。SNSを使ってはいけないというのは、その場で生徒手帳を僕がビリっと破いて。

山路:
 それはまた実力行使に出ましたね。

小飼:
 ただし、その場合に何か問題が起きた場合には「学校を責めませんよ」という風にも言いました。ムチだけではないです。その意味で、なんで学校のローカルルールが肥大化するかと言ったら、問題が起きたときに学校を責める親があまりにも多いんでしょうね

山路:
 躾もやってくれ、みたいな。

小飼:
 そう。本来は、校門の外から出たらもうそれは学校のルールじゃないはずなんですよ。何か問題が起きたら、責めを負うべきは親なわけですよ。でも、そういったものまで学校を責める保護者ばかりだと、結局学校も自衛のために校則を積み上げていく感じになってしまう。

山路:
 日本の学校って、何もかもが詰め込まれているというか、たとえば地域の親の活動みたいなものも、部活動みたいなものも、さらに学習のことも、全部学校に任せているところがあって。

小飼:
 さっきの下着の色うんぬんっていうのも、一応最初は何か問題が起きたんですよ。そのルールが積み重なるように。それを防ぐためにルールが作られた。でもそのときの生徒というのは卒業しちゃう。校則だけが残るという感じで積みあがっていったんじゃないかなという風に僕は予測しています。

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