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「日本はアメリカにNOと言えない主権国家である」アメリカの自由出撃を許さない軍事同盟から取り残された日本に『国防』ができるのか【話者:伊勢崎賢治】

日本が目指すべき「国防のかたち」とは

伊勢崎:
 まず「干渉国家であるという諦め」を持って欲しい。NATOとの決定的な違いというのは、あちらはお友達がみんな地続きで寄り添っている。我々日本は、孤立した島国。周りを見たら中国、韓国、台湾しかいない。台湾を抜かしたら、今の日本の政権は、彼らに唾を吐いてるようなもんじゃないですか。これでどうやって生き延びるか。

 加えて、僕の友人で原発関連企業の幹部の言葉に「稼働中の原発は自らに向けた核弾頭」というのがありますが、これを海岸線にずらっと並べた緩衝国家である日本。

 ノルウェーみたいな国は参考になりますね。日本の10分の1位の人口ですが、冷戦中は、NATO加盟国の中で唯一、ソ連と接していた。

 両国の間には北極圏の「バレンツ海」があり、お互い主張する領海にズレがあって40年間以上ずっと係争中でした。ここは、冷戦時代からソ連の弾道ミサイル潜水艦配備の要所であるばかりでなく、原油や天然ガス、そして漁業資源が豊富です。ここで2010年、係争海域をほぼ2等分することで合意に達したのです。

 ノルウェーはNATOのメンバーですが、日米地位協定の全土基地方式「どこにでも基地の提供を求める権利」などアメリカにもNATOにも認めていません。加えて、ノルウェーでは長年、与野党のコンセンサスとして、自国領内に米NATO軍を駐留させないということが広く対外的にも認知されていました…最近クリミアの一件があり、戦後初めて、小規模ですが米海兵隊を暫定的に入れました。それが今ノルウェーの社会で議論を二分しています。

 NATOの一員でありながら東西両陣営の狭間にある緩衝国家としてのノルウェーが、「自立」する自らのアイデンティティーを確立し、そして、それを内外に誇示することで、それを国防の要としてきた試行錯誤なのです。このアイデンティティーがなかったら、バレンツ海の係争解決で、ロシアが同意するどころか、二国間の交渉に応じるわけがありません。

 日本はどうでしょうか? なぜ北方領土問題が解決できないのか。1年前に山口県で安倍プーチン会談があった時に、読売新聞しか報道しなかったのですが、プーチンは会見で「日本とは領土交渉ができない。なぜなら日本に決定権がないから」と言ったそうです。これはプーチンが、全く、正しいです。

 だって、もし二島返還などで合意し、国境が確定してしまったら、その次の日から、日米地位協定上、アメリカは国境のすぐそばに基地をつくれるのです。

 ロシアから見たら日本は交渉の相手ではない。これ、日本の右翼は、愛国を気取るなら、ちゃんと認識して欲しい。今の日米関係のままでは、日本の領土問題は永久に解決しない。

 9条2項の改正と日米地位協定の改正は、右/左、保守/リベラル、改憲派/護憲派、双方が、違いを超えて考えるべき時です。

 国防にも、平和にも主権を回復するのです。

▼記事の箇所は47:56からご視聴できます▼

日本国防論~宮台・白井・伊勢崎・孫崎・伊藤インタビュー集~

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