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「日本はアメリカにNOと言えない主権国家である」アメリカの自由出撃を許さない軍事同盟から取り残された日本に『国防』ができるのか【話者:伊勢崎賢治】

なぜ日本は憲法がないままなのか

伊勢崎:
 ジブチの主権を蹂躙していることに気づきもしない日本人は、自分たちがされている主権の蹂躙にも気づかない。

 だって、9条がいくら戦争を放棄していても、日米地位協定によって「戦争しない」権利が奪われているのですよ、戦後ずっと。アメリカと地位協定を結び駐留を許す国は数多あれど、いまだに駐留米軍の「自由出撃」を許す国は日本と韓国だけなのです。 

 旧敗戦国のドイツやイタリアだけでなく、アフガニスタンやイラクといった、今まさに戦時であり、米軍がいなければ本当にすぐに壊滅するような国でさえ、駐留米軍の出撃にはノーと言える「主権」が地位協定で保証されているのですよ。

 これは、国際関係では当たり前のことなのです。だって、国防を駐留米軍に頼っているとはいえ、駐留米軍の出撃により、その報復を直接受けるのは、アメリカ本土でなく、その受け入れ国自身なのですから。

 それに、友好国の戦争から中立であるためには、中立法規という国際法の要件を満たさなければなりません。つまり、領土、領海、領空を使わせない。通過もさせない。ましてや資金提供はしない。日本は何も満たしていません。世界で最も主権を放棄する地位協定で世界で最も戦争をするアメリカを体内に置いているのです。日本は、「自動交戦国」なのです。アメリカのための。

 はっきり言いましょう。アメリカの「自由出撃」による日本自身の国防への脅威を勘案しない国防論は、ジャンパンハンドラーたちの足にひれ伏し同じ利権を貪る既得利権集団のプロパガンダにしか過ぎません。

日本の米軍基地が重要ならば「日本の負担を軽減してほしい」という議論にはならないのか

 アメリカの本土は、10,000キロも海の彼方です。こんなに離れたここ日本と朝鮮半島にこんなに大きい軍事拠点というのは、アメリカにとっても政治的、経済的なリスクです。日本を守るためだと説明して米国民が納得しますか? そんなバカなことはない。米国民は、アメリカの国益だからと、納得するのです。

 ソ連が崩壊し東西冷戦が終わって、アメリカ軍がいるお陰で共産主義が侵略してこない、という理由がなくなる。じゃあ、何のための米軍駐留?ということが本質的に問われる世界情勢に大変換したのです。

 それと同時に、対テロ戦争のように、ソ連みたいに明確な国家としての脅威じゃないけど、みんなで戦わなければならない状況が継続する。それも、アメリカの強大な軍事力に頼ってどうにかなる敵じゃない。だから、みんなで対処しなければならない状況ですね。

 米軍が駐留すると、我々が沖縄で経験しているような事件、事故が必ず発生する。それが引き金となって米軍出て行けみたいなことになっては困る。実際、フィリピンやイラクでアメリカは全撤退を余儀なくされた苦い経験があり、それをアメリカは明確に外交の失敗と位置付けているのですね。

 だから、アメリカが求めているのは駐留の安定なのです。そのためにアメリカが相手国と締結する「地位協定」の改定が必要になってきたのです。

 今、アメリカ自身の地位協定の基本的な考え方に今なっているのは「互恵性」の導入です。つまり、地位協定にアメリカと相手国の法的な対等性を導入する。

 どんな気をつけても絶対に犯罪、事故は起こります。でも、起こった時、相手国の国民に、この事故は協定の「不平等」が生んだものではない、という言い訳ができる余地を残すということですね。つまり、相手国がアメリカ本土に軍を駐留させたとしても、同じ協定上の特権があるという言い訳ですね。

 これは形式だけで事故の予防にはならないじゃないかと思うかもしれませんが、たいへんに大きな意味を持っているのです。だって、法的に対等ということは、「アメリカがやることは相手国もできる」、もしくは「アメリカが相手国に許せないことをアメリカは要求できない」ことになるのです。

 互恵性が導入されれば、米軍の相手国での基地、空域、海域使用は、相手国政府「許可制」になります。「自由出撃」なんてアメリカが本土で許すわけないでしょ? 航空規制も環境規制も、全て相手国のものにアメリカが従うことになります。これは、ドイツ、イタリアはもちろんですが、今アメリカが戦争をやっているアフガニスタンでもそうです。追い出された後、舞い戻ることになった、イラク、フィリッピンでもそうです。

 ドイツ、イタリアを含むNATOという軍事同盟において、この互恵性は、徹底されております。「自由出撃」を許さない主権国家の集まりが軍事同盟なのです。

 こういう世界情勢から見事に取り残されているのが日本です。

なぜ日本では国防の議論がされないのか

 こっちが聞きたいですよね。よく70年間続いたな、と。一つ言えるのは、憲法のことも含めて、日本が被害者側、加害者側になる両方の地位協定のことも含めて、「想定外」にしてきたことが、もうそれでは済まされなくなった時代に来ているのだと思います。

 アメリカの仮想敵国の真正面に位置するのが日本。加えて、アメリカ本土から最も離れたところで、その仮想敵国の進出を抑える防波堤、つまり「緩衝国家」なのが日本です。この日本を支配するにおいて、国内で「最も差別された地域」沖縄に、あえて駐留を集中させ、駐留が起因となる反米感情が、常にその地域に限定された「民族自決運動」になるように、その緩衝国家本土の「反米国民運動」に発展させない。これが誰かのグランドデザインだったら、あっぱれとしか言いようがありません。

 加えて、日本の海岸線上に、原子力発電所がずらりと並んでいます。それも、「仮想敵国」の側に、です。国防を最優先に考えるなら、まず、ありえない。この愚行を、敢えて理論的に説明するとしたら、われわれは「仮想敵国」を含む国際社会の良識と善意を前提として、国防を考えてきた、というしかありません。つまり、原発を攻撃するという国際人道法の違反行為は、あの“北朝鮮政府でさえ”決してやらない、国際社会は必ず国際法を守るという前提がなければ、日本の国防は、その概念さえ成り立たないのです。

 だいたい、北朝鮮のミサイルなどの飛翔体が落ちるのと、米軍オスプレイが落ちるのと、どっちの確率が高いんでしょう。オスプレイは実際落ちてますし、米軍機の部品を含めて沖縄の学校に何回も落ちている。北朝鮮の飛翔体が飛ぶのは宇宙空間であり日本の領空ではありません。米軍機は日本の領空。そして、日本には「管制権」がない。なのにJアラートは? 冗談の世界でしょ。

 つまり、日本の国防論は、実際に何回も発生して、これからも高確率で日本国民が被る明確な脅威を「想定外」にするのですね。国防論を語る主権が、そもそもないのです。その根幹の問題は、戦後ずっと続いてきた日米関係にあります。これは、アメリカに出て行けと言っているわけではない。でも、主権ある同盟国に、まず、なったらいいじゃないですか。米の他の同盟国のように。なぜ、できないか。

 答えは簡単。古今東西いつの世でも、社会変革の騎手になるべきリベラル。日本のリベラルが、対米従属を、構造的に、必要とするからです。

 だって、日米関係を、主権をベースにしたものに変革するには、既に述べた「互恵性」つまり法的な対等性を確立することであり、これは、今、地位協定に関するアメリカ自身の「標準」になっていますので、日本が要求すれば簡単に実現します。

 なぜやらないか? 既に既得利権の構造にどっぷり浸かっている親米保守にこれを期待したって無理です。だからこそ、リベラルが率先しなければならない。ところが、リベラルがやらない……。だって、地位協定における法的な対等性って、アメリカと軍事的に対等になるということですよ。護憲派がこれを容認しますか?

 もっと厳密にいうと、例えば日米地位協定の改定の外交交渉ということになり、もし僕がアメリカ側の交渉官だったら、日本に絶対にこう言います。「日本には軍事過失を扱う法体系がないでしょ?」っと、「法の空白」を突いてくるはずです。

 つまり、ジブチへの外交詐欺のツケがここで日本自身に回ってくるのです。

 お判りのとおり、これは全て9条問題です。厳密に言うと、戦力を持てないとする9条2項のために、世界五指の通常戦力が戦力じゃないとするために「解釈」を重ね、日本を世界で唯一「軍事過失」に責任を持てない軍事大国にしてしまった。

 9条2項の問題をこのままにしておく限り、日本の国防に主権は発生しません。

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