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将棋界の未来を背負う及川六段と佐々木五段が対決:第2期 叡王戦本戦観戦記

プロ棋士とコンピュータ将棋の頂上決戦「電王戦」への出場権を賭けた棋戦「叡王(えいおう)戦」。2期目となる今回は、羽生善治九段も参戦し、ますます注目が集まっています。

ニコニコでは、初代叡王・山崎隆之八段と段位別予選を勝ち抜いた精鋭たち16名による本戦トーナメントの様子を、生放送および観戦記を通じてお届けします。

叡王戦公式サイト

左から、佐々木勇気五段、及川拓馬六段
左から、佐々木勇気五段、及川拓馬六段

 黄金世代という言葉がある。特定の分野において、比較的狭い年齢層に突出した才能を持つ人材が集中している状況を指したものだ。とりわけスポーツの世界で使われることが多い。
 例えばプロ野球界だと、最近ではメジャーでも活躍中の田中将大投手と前田健太投手、昨年の流行語「トリプルスリー」を実現した柳田悠岐外野手、今年の首位打者となった坂本勇人内野手らを擁する88年世代が浮かぶ。
 また、二刀流で知られる大谷翔平投手とそのライバルの藤浪晋太郎投手、25年ぶりの広島東洋カープ優勝の立役者となった鈴木誠也外野手らの94年世代は、その若さもあいまって、今後の活躍がより期待されている。
 将棋界の黄金世代はどうか、何といっても思いつくのは「羽生世代」である。羽生善治三冠、郷田真隆王将、佐藤康光九段、森内俊之九段など、スター棋士の枚挙にいとまがない。
 将棋界の世代分けに関する特徴として、生まれ年よりも、奨励会入会年で区切るほうが一般的なことが挙げられる。上記の羽生世代は皆、1982年(昭和57年)に奨励会入りを果たしているから、「57年組」とも呼ばれている。
 その羽生世代も40代の半ばを迎えた。次世代のスターが待ち望まれる。本局の両者はそれぞれ、次の黄金世代候補に属している棋士ともいえる。
 及川は98年に奨励会入りを果たした。この年の奨励会入会者には佐藤天彦名人や広瀬章人八段、糸谷哲郎八段がいる。同期のプロ棋士は9名だが、これは57年組(8名)を上回る数字だ。
 04年入会の佐々木は同期に菅井竜也七段、永瀬拓矢六段、斎藤慎太郎六段らがおり、近年では屈指の当たり年とされている。
 将棋界の未来を担う両者の対局を見ていこう。

趣味の世界

 本局は角換わりに。端の位を取る取らない、金の位置の微妙な違いなど、第1図の類似形は昭和20年代から指されているが、未だに結論らしきものがない。

 第1図から佐々木は△2二玉と上がったが「△4二金右と迷った」と局後に明かしている。以下の一例は▲3七桂△6五歩▲6四角△8四角▲4五歩△6六歩▲4四歩△同銀(A図)でどうか。

 感想戦で最終局面までの検討が終わった後、再度第1図の局面に戻って検討が続けられた。そのマニアックな突き詰め方は趣味の世界といってもよいほどだが、両者の情熱を感じる一コマだった。
 実戦は△2二玉から▲3七桂△6五歩▲同歩△8六歩▲同歩△7五歩と進む。△8六歩が佐々木の工夫で、この突き捨てを入れずに△7五歩という前例はあった。佐々木の突き捨てが攻めを加速する効果的な手段となるのか。

指し過ぎの叩き

 進んだ第2図。左辺でのチャンバラが一段落して、反撃に出た先手が▲2四歩△同歩と突き捨てを入れた局面である。
 及川は▲2三歩と叩いたが「指し過ぎだった」と後悔する。代わる手段としては▲6五銀と▲5五角があった。
 まず▲6五銀には△8七歩▲同金△5五角▲6四角△同角▲同銀△8五歩▲同歩△4六角▲5五角△8五飛(B図)が示されて、「ここまでは想定」と佐々木。

 及川は、▲6五銀には△5五角▲6四角△9九角成▲8二角成△7七香▲7六銀△8八銀▲6九玉△7八香成▲5九玉△8九銀不成(C図)で自信がないと振り返る。

 また、第2図から▲5五角だと△8六飛▲8七歩△8五飛▲7四銀が一例となる。実戦の進行は▲2三歩△同金を入れてから▲5五角だったため、△6二飛があった。先手が歩を一枚使ったのが大きいのだ。「飛車回りがピッタリ過ぎた」と及川はうなだれる。
 以下、▲6三歩△同飛▲7四銀(歩を使っていなければここで▲6四歩と打てる)△7七歩成▲6三銀不成△7八と▲同玉△7七歩▲同桂△7六銀と進んで第3図。桂を取らずに銀の重石をかける、この一手が激痛である。

急ぎ過ぎたか

 第3図から▲6五桂は△8七角▲8八玉△7八金▲9七玉△7七銀成で先手玉が寄り筋に入る。▲6九玉の早逃げはやむを得ないが「こう逃げるのでは序盤に取った9筋の位が全く生きていません、つらいですね」と生放送解説を務める門倉啓太四段。
 ただ、次の△6八歩はやや急ぎ過ぎだったか。△8七角▲5九玉△6三金とゆっくり指すのもあった。角打ちが肝要で、単に△6三金は▲7二飛から7六の銀を抜かれてしまう。
 △6八歩からは▲5九玉△3九角▲3八飛△2八金▲4九玉△7七銀不成▲6五銀と進んだが、この局面で先手玉に寄りがないのが、佐々木の誤算だった。

歩1枚の堅さ

 最後の分岐点となったのが第4図の局面。及川は勢いよく▲4四角と飛び出したが、4筋の歩が切れたため、△4一歩が生じてしまった。この1枚の歩で、後手陣は見違えるほど固くなったのだ。

 第4図では▲6六角しかなかった。対して△6九歩成▲4四歩△5九と▲4三歩成△4九との攻め合いは▲3三とから後手玉が詰む。▲6六角には△1三玉と角筋から体をそらして、▲7一飛成に△2二金と受ければ後手が良さそうだが、本譜よりはアヤがあった。
 佐々木は2年連続のベスト8進出。次戦の相手は同世代の千田翔太五段だ。若き俊英同士が、どのような戦いを見せるのだろうか。要注目である。

(観戦記者:相崎修司)

叡王戦公式サイトより引用
叡王戦公式サイトより引用

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