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高見、逆転勝ちでベスト8進出 豊島将之八段―高見泰地五段:第3期 叡王戦本戦観戦記

 「叡王戦」の本戦トーナメントが11月25日より開幕。3期目となる今回から新たにタイトル戦へと昇格し、ますます注目が集まっています。

 ニコニコでは、佐藤天彦 第2期叡王と段位別予選を勝ち抜いた15名による本戦トーナメントの様子を、生放送および観戦記を通じてお届けします。

画像は 叡王戦 公式サイト より

初対戦

 24歳の高見は、3歳上の豊島との初対戦に心を高鳴らせていた。
 「豊島先生はトップ棋士で、年齢がたった3つしか違わないということに驚きます。年は近いですが、実績やクラスでは遥か遠くの存在で、誰もが認める実力者です。盤を挟むことも初めてで、とても楽しみにしていました」(高見)

高見泰地五段

予定の横歩取り

 午後3時に対局が始まると、後手の高見が横歩取りに誘導した。

第1図

 第1図は▲3七桂と跳ねたところ。高見は「豊島先生はどの戦形でも完成度が高いです。どのような将棋になるのか予想がつかず、作戦を立てるのも大変でした。後手番なら横歩取りと決めていましたが、先手の指し方は何通りにも枝分かれします。本譜は▲3七桂の1手前の△8二飛までは練習で指したことがありました」と語る。
 高見は第1図から△6二銀と指したかったが、▲2三歩を気にしたという。(1)△同金は▲3一飛成△同角▲3二銀の両取りで困る。よって(2)△5五角と飛び出すが、▲2二角と打ち込まれて相当怖い。
 本譜は△2三歩と打った。穏やかな流れにして歩得を生かす方針だが、「弱気だったかもしれません」と振り返る。本譜の▲7四歩から▲4五桂、▲3七角の攻めが厳しかった。

先手リード、だが……。

第2図

 第2図は先手が飛車を奪ったところ。形勢判断は先手よしで一致していた。
 豊島は局後、図から▲7二飛打を示した。以下△同金▲同飛成△6二桂▲6五桂△2七飛▲5三桂成△同玉▲4四角△同歩▲3八銀(参考1図)。「悪いですよね。こちらの玉だけが露出してまとめきれないです」と高見。豊島は「よさそうですけど、よくわからない。でも本譜よりは実戦的に勝ちに近く、こちらのほうがよかったですね」と振り返った。

参考1図

 実戦は▲2八歩としたがその後、△6五桂(第3図)が渾身の勝負手だった。

第3図

 「形勢は苦しそうだとは思いましたが、対局中はどのくらい悪いのかがわかりませんでした。これ以上先手に駒を渡すと自滅しそう。また、▲6五桂という手が常に見える局面でしたので『敵の打ちたいところに打て』と、5七と7七の地点にプレッシャーをかける意味で△6五桂(第3図)を思いつきました」(高見)

混戦

 <午後7時25分、豊島の長考。前傾から体を起こすと、両拳を振り下ろして太ももをたたく。「はー」と息をつくと対局室を出ていった。2分後、1人の高見は盤側に回って盤面を見下ろした。>(記者のメモ)

豊島将之八段

 豊島は局後「うまい手が分かりませんでした」と吐露する。本譜は▲4六香と打ったが、△5二銀と打たれて「差が詰まったと思いました」と振り返った。
 ニコニコ生放送の画面に表示される評価値も大きく揺れた。△6五桂の局面では先手に大きくプラスだったが、▲4六香で一気にマイナスになってしまったのだ。ソフト(電王・平成将棋合戦ぽんぽこ)は、▲6六歩で先手よしとしていた。以下△6四馬▲8一竜△7一歩▲6五歩△同馬▲7一竜(参考2図)。次いで(1)△同金▲同飛成△5一銀なら▲6七香。(2)△6六桂には▲同飛と取ることができる。

参考2図

 両者は参考2図まで進めば先手がやれそうだとしたが、▲6六歩は玉の小ビンを開けるだけに読みにくいと話した。高見は後日「▲6六歩は改めて見てみても、形勢がよいと思っている先手からは相当に指しづらいと思います」と語った。

豊島、勝負手を逃す

第4図

 第4図は3八の馬を引いたところ。
 ここで▲6七玉が勝負手だった。以下(1)△3四歩には▲2二歩△3五歩▲2一歩成△3六馬▲5四桂△6九馬▲7八金が並び「負けていてもおかしくない」と高見。また、(2)△3六馬には▲4四銀△3四歩に▲3三歩と打ってこれも相当である。
 戻って、△3七馬(第4図)では△2七馬と引くべきだった。敵玉から遠ざかるのだが、これなら▲6七玉には△4九馬と入ることができる。
 実戦の▲4四銀には△8一歩から△3四歩がピッタリだった。以下△3五歩から△4四歩と駒を入手して、高見は優勢を感じたという。

夢見心地の勝利

 <高見は手を伸ばそうとしたが口元に。駒台の香に触れたが、引っ込めた。今度はしっかり香をつかんで△7六香。>(記者のメモ)

第5図

 「△7六香(第5図)の局面は、踏み込めば勝てそうだという直感があったので、自分を信じて踏み込もうと思いました。△2九角成など、角を逃げる手は考えませんでした。ただ、寄せに出ると駒を渡しますし、ミスが許される相手ではないので、冷静になるのが大変でした」(高見)
 続く▲7五竜に、高見は不器用な手つきで△7七香成、△5八角成と指した。△5九馬と桂を取るころには、軽やかな駒運びになっていた。

投了図

 午後9時54分、△9七飛成(投了図)に、豊島はグラスに水を注いだ。2度口にすると「負けました」と告げた。先手玉は△7七飛からの詰めろで受けが難しい。後手玉に詰みはない。
 強敵を破った高見。感想戦が終わると廊下のソファでぐったりしていた。
 「終局直後は夢見心地といいますか、本当に現実なのか……という感覚でした。11月1日の組み合わせ抽選会の日から、決勝戦のような相手と1回戦で対局できるという、この対局に向けての意識は自分にとって予想以上に大きかったのだと思います。画面の向こうで応援してくれている人たちと一緒に自分自身に夢を見るようなつもりで、次局も気負いすぎず、しかし気持ちを強く持って最後まで戦い抜けるように頑張ります」(高見)

(観戦記者:池田将之)


■第3期 叡王戦本戦観戦記
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画像は 叡王戦 公式サイト より

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