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再分裂したビットコイン『ビットコインゴールド』の問題点を小飼弾が解説。「フォークしているのにプリマインしているという、ある意味矛盾した部分がある」

 10月24日にビットコインから新たにビットコインゴールドのフォーク(分裂)が実施されました。今秋、今回の動きも含めてビットコインは合計4種類に分裂すると言われています。

 これを受けて『ニコ論壇時評』では、ビットコインで取引を行っているVALUのリードエンジニア小飼弾氏山路達也氏が今後のビットコインゴールドの動向や、仮想通貨が経済に与える影響について解説します。

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ビットコインゴールドは鳴かず飛ばず…

左から小飼弾氏、山路達也氏。

山路:
 最近話題になっているビットコインの分裂問題についても聞いていいですか。最近ビットコインからビットコインゴールドに分裂したわけですよね。

小飼:
 分裂したと言ってもビットコインゴールドの場合、もう鳴かず飛ばずなので、これはあまり大きなケースではないと思います。

山路:
 さらに11月にまた分裂するんじゃないか、とも言われています。

小飼:
 そのほうが重大なことです。

山路:
 弾さん自身は、VALUというサービスで関わっていますね。

小飼:
 売り上げが全部ビットコインという会社のリードエンジニアもしておりますけれどもね。

山路:
 このビットコインの分裂というのはVALUに大きく関わってくるわけですよね。

小飼:
 振り回されっぱなしですけれども、そういうのに振り回されるのも業務というか、仕事の一環でもあります。

山路:
 いまだにビットコインの分裂がよく分かっていないところがあるんですけれども、例えばビットコインにはブロック・チェーン【※】を使った台帳とかの履歴がずっとあるというじゃないですか……。

※ブロック・チェーン
インターネットなどオープンなネットワーク上で、高い信頼性が求められる金融取引や重要データのやりとりなどを可能にする分散型台帳技術のこと。高い透明性や信頼性をインターネット上で確保できることから、多様な用途への応用が期待されている。

小飼:
 分裂とは台帳の1ページ目、2ページ目、3ページ目があるとして、ここにたまたま同じもの2つあるんですけれども、台帳の2ページ目までは同じだが、3ページ目から先は違うページをくっつけようという、これが“フォーク”です。

怪しいイメージになってしまったビットコインゴールド

山路:
 だけど昔の履歴に関しては、共通のものを参照することになっちゃうわけですよね。

小飼:
 そういうことです。だからそれでいいんですよ。

山路:
 分裂というかフォークをしたときに、その価値は理屈で考えたら、例えばビットコインとビットキャッシュに分裂したときなどの合わせたときの価値は同じままになりそうなものなのに、それぞれに価格が上昇することもありますよね。

小飼:
 基本的にいったん分裂したら単なる別物なんですよ。ただしビットコインとビットコインキャッシュの場合はきれいに分かれられた理由のひとつというのは、マイニング【※】をするための仕組みというのがどっちも共通に使えるんですよね。

※マイニング
ブロック・チェーンの更新・記録をする行為。この行為を行った者をマイナーと呼び、マイナーには成功報酬として新たなビットコインが与えられる仕組みになっている。金を採掘することに例えて「掘る」とも言う。

山路:
 そういうインフラみたいなものを流用できるんですね。

小飼:
 どちらも共通に使えるのでより儲かる方を掘るというふうに、要するに二股をかけられたというのも大きいんですよね。結局掘ってくれる人がいてなんぼなので。なぜビットコインゴールドが鳴かず飛ばずになったかと言ったらついてくるマイナーが多くなかったというのがあります。実はビットコインゴールドがダメだと言われている理由のひとつが、プリマイニングというものにあります。

山路:
 プリマイニング?

小飼:
 プリマイニングというのは、要は台帳の最初の1ページ目に誰がいくら持っているのかというのを、決め打ちで書くことをプリマイニングと言うんです。元祖ビットコインも実はそれがなされています。だからサトシ・ナカモトさん【※】は100万ビットコイン持っているはずだというふうに言われているのは、それはプリマイズされた分です。

 でもこれはまっさらな1ページ目からやっているので、そうなるんですけど、でもビットコインゴールドの場合のプリマイムは、流通する前にマイナーがビットコインを採掘するのとほぼ同じ仕組みで、採掘してその分を懐に入れちゃう。だからフォークしているのに、プリマインしているというある意味矛盾したところがあるわけですね。

※サトシ・ナカモト
ビットコインを作ったことで知られる人物の称する氏名。本名かどうかも含め、当該人物の正体は不明。

山路: 
 それって、マイナーが儲けようとしてるとしか考えられないような。怪しすぎなのではないかという……。

小飼:
 あとビットコインゴールドの場合は、それに対応する業者ですよね。ビットコインの世界で1番大事なのはマイナー達なんですけど、使う人達もいないとやっぱりついてこれないわけですよね。

山路:
 使う人たちの支持が得られないと結局……。

小飼:
 鳴かず飛ばずになってしまう。

成長段階にある仮想通貨には、偽物も入ってくる

山路:
 ビットコインに関して、例えばビットコインキャッシュに分裂しても、本来だったら価値が同じなんでしょうか。

小飼:
 みなさん、よく覚えておいてください。価値というのは、あったりなかったりするものではないんですよ。見出されたり、見出されなかったり、あるいは無視されたりするものなんです。

山路:
 そこに価値があると思ったら、価値が生まれる?

小飼:
 そうです。

山路:
 例えばビットコインとビットキャッシュの分裂騒ぎがあって、ビットコインゴールドもそうですし……つまり分裂する度に、価値・価格が上がっているじゃないですか。

小飼:
 まず仮想通貨自体が、今成長段階にあるわけです。こう言うのもなんですけれども、仮想でない既存の法廷通貨に対して、切り取り放題の状態にあるわけですよね。バブルという人もいるけれど、だから僕は仮想通貨が伸びるのは確かなんですけど、だからこそ偽物がいっぱい入ってくる余地もあるわけですよ。

山路:
 初めて株式会社が誕生した頃みたいな形でしょうか。

小飼:
 ましてやブロック・チェーンというのは、過去は改変不能だけども未来はいくらでも改変可能なので。実はビットコインゴールドが鳴かず飛ばずになったというのは、ビットコインというプロトコル【※】の健全性を示しているんですよ。だから分裂するのはいくらでも自由だけれども、ちゃんと掘れよ、ちゃんと掘れなかったら、萎むだけだよということです。

※プロトコル
コンピューター同士が通信をする際の手順や規約などの約束事。

山路:
 私の理解ではビットコインの信頼性は、エネルギーを投入しているという事実によって成り立っているみたいな感じで考えていいんですか。

小飼:
 その通りです。プルーフ・オブ・ワーク【※】と言います。

※プルーフ・オブ・ワーク
仕事量による証明。ハッキング等によるコイン偽造を防ぐため、偽造するためにはより多くの「仕事量」を費やさなければならない。

山路:
 例えばその価値の合計というのは、いかに電力を投入しているかということが裏付けになっている。

小飼:
 もう少し正確に言うと計算力ですね。

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