再分裂したビットコイン『ビットコインゴールド』の問題点を小飼弾が解説。「フォークしているのにプリマインしているという、ある意味矛盾した部分がある」
“純粋通貨”――仮想通貨こそが通貨の本当の姿
小飼:
ノーベル経済学賞を受賞するにあたって、唯一にして最大の障害というのが、誰がサトシ・ナカモトなのかっていうのが、誰もオフィシャルには知らない。少なくともその証明は出てきていない。僕だったら絶対ドヤ顔して、こういうものを創ったんやけどみたいにブログで喜々として書きますよ(笑)。
山路:
偽名かどうかも、分からないわけですもんね。
小飼:
そこがすごいところなんだよな。だから匿名で出した以上は、本人の人なりというのを評価市場に加えるわけにはいかないじゃないですか。純粋にプロトコルだけを見ざるをえない。
山路:
別にサイエンスとか、ネイチャーに発表されたみたいなのと違いますもんね。
小飼:
違うわけです。
山路:
仮想通貨が経済学に与える意味は何でしょうか。
小飼:
僕は、仮想通貨ではなくて純粋通貨という言い方をしたいね。あれが通貨の本当の姿なんですよ。
山路:
今はまだお金ってある程度、物理的な媒体と結びついているじゃないですか?
小飼:
日本では特にそうですね。日本銀行券の発行料を増やしたというニュースがありました。要は現金の量を増やしたということです。もっとタンス預金をするための金が欲しい! なんですよ。わざわざタンス預金されるために、より多くの1万円札が刷られている。少なくとも、現金は減るはずなんですよね。
山路:
物理的な媒体と結びついているから変動が抑えられているってことはないですか?
小飼:
逆です。価値がないと思えば、あっという間に紙くずになってしまう。
山路:
そうか、むしろ弾さんが言う純粋通貨になった方が……。
小飼:
純粋通貨だったら、他に替えられる。純粋までいかなくても、これが銀行口座にある数字なら、簡単に証券口座にある数字にして、例えば、株式にしたり債権にしたりというのができるわけですよ。
山路:
むしろその流動性が高まるので、それって経済にはやっぱりいいことと考えていいんですか。
小飼:
数字だけ動かす方が通貨として正しい姿なんだから。
仮想通貨を促進させる為に必要なのは信用
小飼:
これだけ電子決済の手段が増えて、クレジットカードが普及しているにも関わらず、現金の発行量を増やしましたっていうのは、これは明らかに後退です。日本はもう先進国ではなくなっているんじゃないかみたいな論調が、最近少しずつ大きくなっていますけど……。
山路:
電子マネーであるとか、仮想通貨みたいなものを促進させるために必要なものは何なんでしょう?
小飼:
それがまさに、信用という言葉なんです。数字でしかないがゆえに、信用というのがより強く求められる。逆説的にヤクザとかの仕事の人達もなぜ現金は受け取るかっていったら、現金には形があって名前がないから。
山路:
より匿名性が強い。
小飼:
そういうことです。
山路:
そういう昔ながらの、紙とかコインみたいな通貨に拘るのはむしろ信用があまり流通していないとも言えることなんでしょうか? 例えば会社の価値や人の価値では、日本人は信用しない、みたいなことにもつながったりするわけですか。
小飼:
実はそういうことでもあるんですよ。匿名を希望するということは、実名を出した時に、信用がダメージを受けるんじゃないかってより強く思っていることの裏返しなんですよね。本来であれば、実名を出すのは、信用を積み上げるのに向いているはずなんですよね。
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