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なぜ及川拓馬は子育てをしつつ強くなれたのか?【叡王戦24棋士 白鳥士郎 特別インタビュー vol.14】

 6月23日に開幕した第4期叡王戦(主催:ドワンゴ)も予選の全日程を終え、本戦トーナメントを戦う全24名の棋士が出揃った。

 類まれな能力を持つ彼らも棋士である以前にひとりの人間であることは間違いない。盤上で棋士として、盤外で人として彼らは何を想うのか?

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 ニコニコでは、本戦トーナメント開幕までの期間、ライトノベル『りゅうおうのおしごと!』作者である白鳥士郎氏による本戦出場棋士へのインタビュー記事を掲載。

 「あなたはなぜ……?」 白鳥氏は彼らに問いかけた。

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名人の中にある宇宙戦艦ヤマト完結編(佐藤天彦名人)【vol.13】


叡王戦24棋士 白鳥士郎 特別インタビュー

六段予選Bブロック突破者 及川拓馬六段

『なぜ及川拓馬は子育てをしつつ強くなれたのか?』

「本戦で当たりたいのは……やはり藤井聡太さんですね」

 予選決勝で三枚堂達也六段を倒した男は、そう言って爽やかな笑顔を浮かべた。
 及川拓馬六段。
 今、勝ちまくっている棋士の一人だ。
 勝率は、藤井聡太七段の8割1分5厘に迫る8割1分2厘。3位以下を大引く引き離して全棋士中2位(10月11日時点)。
「藤井聡太と戦いたい」という言葉は、決して強がりではないだろう。

 専門誌『将棋世界』の歴史あるコーナー『詰将棋サロン』では選者を務めるなど、対局以外でも精力的に活動している。
 妻は、同門の女流棋士・上田初美女流四段。
 プロ棋士と女流棋士の夫婦には、まだ幼い長女と、そして産まれたばかりの二女がいる。
 絵に描いたような幸せな家庭……ではあるが、夫婦二人とも現役の棋士であるということは、つまり共働き。
 育児をしつつ、戦わなければならない。
 勉強時間も減り、将棋に集中できなくなったのでは?
 そんな中で、どうすれば強くなれるのか?

 このインタビューは、全てのイクメンに向けた福音である。

──まず、今期の好調の理由についてお聞きしないわけにはいきません。勝率8割を超えておられますが?

及川六段:
 自分でも驚いてるんですけど(笑)。

 やっぱり一番大きなところは、8月の上旬に二女が産まれまして。

──おめでとうございます!

及川六段:
 はい、ありがとうございます。やはりそれで、精神面での充実というのが、好調に繋がっているのかなと思います。

──私、将棋世界の『詰将棋サロン』で及川先生のコラムを楽しく拝読させていただいているのですが……たまに、長女さんの成長記録になっているというか(笑)。

及川六段:
 す、すみません(笑)。

──大きくなってくるとなかなか寝てくれないから遠くまで散歩に連れて行ったり、公園に遊びに行ったり……やはり勉強時間は減っているんですよね?

及川六段:
 そうですねぇ。やっぱり減りますよね。

──そこにもう一人、お子さんがお生まれになって……さらに勉強時間は減ったのではと思うのです。

及川六段:
 それについて一つ、思っていることがありまして。

 将棋の勉強をする時間が減ったことで、逆に、勉強できるときに将棋が非常に楽しくなったと言いますか。

──はい。

及川六段:
 集中してできるようになったという実感があります。より深く勉強できるようになったと。

──将棋に対する飢餓感、という感じでしょうか?

及川六段:
 他の方と比べて勉強時間が少ないことに対する焦りはもちろんあります。そのぶん、集中してやらなきゃという気持ちと……。

 あと、こんなこと言ったらダメなんですけど……育児よりも将棋が楽しいわけですよ(笑)。

──なるほど(笑)。

及川六段:
 自分の好きなことができるということもあって、集中してできているのかなと思っております。

──焦り、というお言葉が出たので、それに関しておうかがいしたいのですが……先期の叡王戦で、金井六段が七番勝負に出場なさいました。

及川六段:
 はい。

──同じ埼玉県の棋士ですが……その姿をご覧になって、いかがでしたか?

及川六段:
 はい。実はですね、金井さんとはもう、小学生の頃から知り合いでして。

 小学生名人戦の県大会の決勝で、金井さんに負けたんですね。それで私、代表になれなかったので……その頃からの間柄なんですけども。

 確かに、そういった同年代で身近な方がタイトル戦に出場するのを見て、自分もより頑張らないといけないなと思いましたね。

──予選決勝の相手は、三枚堂六段でした。髙見叡王とは親友でありライバル。今回の叡王戦でも期するものがあったと思うのですが……そんな相手と正面からぶつかって、いかがでしたか?

及川六段:
 いやー……そうですね。私よりも若い方は、もう非常に強い方が多くてですね。毎回、対戦するときに苦労してるんですけども……。

 今期で大きかったのはですね、予選一回戦で、佐々木勇気さんに初めて勝てたことです。

 これが……6回目でですね。今まで5連敗してて、内容もよくなかったんですけど、今回……実は私、詰みを逃したんですよ。

 逃したんですけど、相手も対応を間違えたので、勝つことができたんですね。そこで、何か流れが変わるのを感じました。

 そこを乗り越えて、波に乗れて、伸び伸び指せたと思うんです。

 佐々木さんと三枚堂さんって年齢も近いですし。それで、気負うことなくできたのかなと思います。

──下の世代の方々について……盤を挟んで、相手が詰みを逃したことで、相手も及川先生を怖がっているというか……そういうことに気付けた? ということですかね?

及川六段:
 まあ、もしかしたらそういうこともあったかもしれませんし……。

 今期、他の若い方々にも勝つことができているので、それがプレッシャーを与えることになったのかなとも。

──及川先生といえば詰将棋ですよね。

及川六段:
 はい。

──詰将棋との出会いについて、教えていただいてもよろしいですか?

及川六段:
 もともとですね、小学生の低学年の頃から、詰将棋を解くのが好きで。詰将棋サロンを解いてたんですけど。

 一番ハマった原因はですね。私の師匠……伊藤果(八段)なんですけど、そこの教室に行くようになってからですね。

【叡王戦開催記念】チーム対抗 詰将棋カラオケ」に、詰将棋審査員・問題作成として登場した伊藤果八段

──その時、果先生は詰将棋サロンの選者をしておられて……。

及川六段:
 そうなんですよ! たまったま! 意識全くしてなかったんですけど、選者をしておられたときで。

 そこで、詰将棋には解くだけではなくて創る世界もあるということを教えていただいて、一気にハマっていきましたね。

──仮にですけども……もし詰将棋にハマることがなかったら、プロになれなかったかも? ということを考えることはありますか?

及川六段:
 確かに……それは、なれなかった可能性が高い思います。

 なぜかというと……小学校の低学年の男の子って、みんなその頃、詰将棋にハマるんです。それは、答えが必ずあるからなんです。

──ああー……なるほど。

及川六段:
 必ず一つの答えに辿り着く。自分もそれが好きで。それが、将棋にハマる原因の一つですよね。

──私、及川先生の経歴の中で一つ不思議だったのが……高校の頃、ギター部を『創った』という。

及川六段:
 ふふふ。

──詰将棋を創る人はいても、なかなか部活まで創る人っていないですよね? しかも、ギターの演奏って答えは一つじゃなくて、人それぞれの特色が出るものじゃないですか。

及川六段:
 はい(笑)。

──どうしてそういうことになったんでしょう?

及川六段:
 それはですね……非常に子供っぽい理由なんですけど。

 小学生のときに、発表会みたいなのがあって。私の友達がギターを弾きまして。それを見て『かっこいいな!』と思って。それで中学生から始めたんです。

 でも残念ながら中学にはギター部がなくて。高校に上がってから、友達と『ギター面白いよね』っていう話になったとき……ギター部、なかったんですよ!

──はー……。

及川六段:
 じゃあ創ろうよ、となりまして。ないものは創る。それで、友達と結成しました。

──なるほど。将棋部を創るっていう話ならよく聞くんですが、ギター部というのが珍しいなと思って。

及川六段:
 そうなんですけど、私は本当に音痴で(笑)。

──そうなんですか!?

及川六段:
 そうなんです。ですから、歌ではなくて演奏に回ったのもあります。

──及川先生のご発言には、他にも『将棋は絵を描くことに似ている』というのもありますが……絵を描くこともお好きなんですか?

及川六段:
 よくご存知で(笑)。あの、私……絵も下手くそなんですけど……。

 将棋というのは、絵を描くというか……推理小説にも似ているなと思うことがありまして。

 将棋というのは、指し方って自由なんですよね。真っ白なキャンパスに、自分の好きなように駒を動かしていくのが……絵に似ているなと。

──及川先生は、表現者としての部分が強いのでしょうか?

及川六段:
 どうなんでしょうねぇ? 将棋って、中身は本当に理論的なので……。

 研究者としての面が大きいのかな? とは思いますけど……感覚という面では、表現者としての部分もあるかもしれません。

──及川先生は以前コラムで『詰将棋は一人で創るので、その人の感性を出しやすい』と語っておられました。

及川六段:
 はい。

──本戦に出場する棋士の中では、藤井七段、斎藤七段、都成五段と及川先生が詰将棋創作をされると思うのですが、それぞれの特徴を教えていただけますでしょうか?

及川六段:
 斎藤さんは……表現が正しいかはわからないですけど、優等生タイプですね。

 全ての作品が水準以上で、綺麗にまとまっているという感じだと思います。

 都成さんは、才能派タイプ。奇抜な手順を表現するのを得意とされていますね。

 だから数を創るわけではなく、自分が思いついた、なかなか他人には思いつけない奇抜な手順を、詰将棋で表現できるタイプですね。

 で、藤井さんは、あのー……どちらかというと、優等生タイプに近いところがあります。

 でもちょっと違うところがありまして。それが、趣向を入れてくるところなんですよ。

 自分の描きたい、けど都成さんほど奇抜ではなく、解く人に『おっ!』と思わせるような手順をいれつつ、しっかりと仕上げてくるタイプですね。

 ちょっとずつ皆さん違うんですよね。

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──では、及川先生ご本人の特徴は?

及川六段:
 それは……そうですね、うーん…………他の方に聞いていただいたほうがいいかもしれませんね(笑)。

 ただ、私はまだ荒削りなところがありまして。

 完成していないなと自分で感じる部分が、指し将棋でも詰将棋でもあります。

──そうなんですね! まだ伸びしろが?

及川六段:
 はい。私の目指す、詰将棋の究極というのは……その手順を表現する、一番、最高の形というのがあるはずなんですよ。

 その駒をそこに置くと、一番少ない駒数で、その手順を表現できる……はず。その詰将棋ができたときに、やっと一人前なのかなと思うので。

 だからまだ、私は修業が足りないなと。

──及川先生は女流棋士の上田初美先生とご結婚なさいました。ニコ生の勝利者インタビューでもご家庭のことに関して非常に多くの質問が出ておりました。

及川六段:
 はい。ありがたいことで……。

──私は以前、及川先生がニコ生に解説者としてご出演なさる際にメールをお送りしたことがありまして……。

及川六段:
 そうなんですか!?

──『将棋をしていなくても、妻と結婚していた』というご発言に感動したものですから。

及川六段:
 若い頃はそういうこと言っちゃうんですよね(笑)。

──非常に感動して、自分の妻にも……私の妻は書店員なのですが……『俺の本を入荷してくれなくても結婚した』みたいに、流用させていただいたり(笑)。

及川六段:
 ふふふ。

──まあ、それは置いておいて……及川先生は、人生で一番緊張した瞬間が『結婚式の始まる前』と将棋年鑑のアンケートに書いておられましたが。

及川六段:
 はい、はい(笑)。

──将棋と全く関係なかったんですが(笑)。その時は、どうやって緊張をほぐされたのでしょうか?

及川六段:
 将棋とは別の緊張感がありまして。結婚式、新郎はスピーチがありますよね?

──ありますね。新郎新婦が披露宴に入場した直後に行うウェルカムスピーチと、最後、来客の皆さんにお礼のスピーチをします。

及川六段:
 最後の、シメのスピーチをひたすら考えて、緊張を緩和しようとしていました(笑)。

──はいはいはい(笑)。

及川六段:
 ですから式の途中も、最後のスピーチが気になって楽しめなくて(笑)。

──私も経験しましたけど、新婦は手紙読めばいいからズルいですよね(笑)。

及川六段:
 書いてあることを読めばいいですからね。男の方はそういうわけにはいかないので。

──そのときは、立派に大役を果たされましたか?

及川六段:
 そうですね。意外とよく言えたんじゃないかと。

──棋士の先生方も、たくさんいらっしゃって?

及川六段:
 二人とも同業者ということで、8割方、棋士と女流棋士の方々にお越しいただいて……。

──何か、エピソードなどありましたら教えていただけますか?

及川六段:
 近所に住んでる仲のいい佐藤慎一(五段)さんに、ギターの弾き語りをしていただきまして。

 あと、プロにはなれなかったんですけど、鈴木肇くん。

 小学校の頃から仲が良かったんですけど、私と妻が結婚する切っ掛けを与えてくれたので……非常に面白いトークをしていただいて、場を盛り上げていただきました。

──そうだったんですね! ……というか、鈴木さんが切っ掛けだったんですね?

及川六段:
 そうなんですよ! もともと(上田女流四段とは)同門だったので、知ってはいたんですけど、話す間柄じゃなかったんですね。

 肇さんは2人ともと仲が良くて。それで、3人で将棋を指す機会を作ってくれて。そこからですね。

──はぁー……そうだったんですね。鈴木さんは、もう、最初から引っ付けようと?

及川六段:
 全くそんな気はなかったと思いますね(笑)。たまたま。

──鈴木肇さんは、今年の全日本アマ名人にもなられましたし、漫画『リボーンの棋士』(小学館)では監修をしておられるなど、現在も将棋界において精力的に活動しておられます。

及川六段:
 みんなに好かれる、かわいい感じの方かなと思います(笑)。

上田初美女流四段
(Twitter:@ueda823

──上田先生は、女流棋士の中でも特別な方かと思います。タイトルも獲得されていて……そういう方と、ご自身を比べることとか、『自分もタイトルを!』と思うようなことは、ありませんでしたか?

及川六段:
 やっぱりですね、妻のほうが認知度もありますし、活躍もしてますし。そういう面もあったんですけど……。

 結婚する前にですね、師匠に『そういうことがあるけど、大丈夫なのか? 乗り切れるのか?』みたいなことを言われたんですよね。

 『結婚するなら、そこを乗り越えないといけないよ』とは言われていたので。そこの部分は、そのときに。

 やっぱり、感じるものはあるんですけども、割り切ってですね。私生活と将棋とは割り切るようにして、考えています。

──そうだったんですね……。そこも、伊藤果先生が。

及川六段:
 そうですね。どちらかというと、師匠はそこを心配していまして……。

 まだ……私は若くて、ちゃんと考えていなかったんですけど、結婚してからそういうのを認識することが多々あったんです。でもそこはもう、割り切って。

──上田先生は、育休明けでも強くて。『むしろ強くなって帰って来たんじゃないの!?』くらい、ビックリしたんですけど……。

及川六段:
 ふふふ。

──その上田先生がツイッターで、妊娠中の体調の変化に合わせて戦い方や勉強方法を試行錯誤しておられたと書いていらっしゃって。私は非常に感銘を受けたのですが……。

及川六段:
 あ、そうだったんですか?

──ご存知なかった!?

及川六段:
 はい。妻のツイッターは見ないようにしているので。

──ああ、そうですよね。私も妻のSNSは見ないようにしてます(笑)。

及川六段:
 そうですよね(笑)。

──そんな上田先生の勉強する姿勢などをご覧になって、いかがでしょう?

及川六段:
 うーん……私、どちらかというと妻は天才肌なんじゃないかと思っていて。

 あんまりね、将棋の勉強しているところを見せないんですよ。家でも。

 だから……『いつ勉強してるのかなー?』って感じでも勝てるのでね。羨ましいなと(笑)。

──ははははは!

及川六段:
 ただ、やっぱり勉強時間が減っているのは事実なので。隙間の時間を見つけて、携帯中継を見ていたり、データベースで棋譜を見たりはしていますね。

──勝利者インタビューの際、藤井聡太先生と戦いたいと。

及川六段:
 はい。

──藤井先生の将棋については、どうお考えでしょう?

及川六段:
 そうですねぇ……これが本当にですね、弱点がなくて。

 一番、私が思う強いところは。終盤、優劣がつくところだと思うんですね。

 そこで藤井さんは本当に力を発揮して、なかなか悪くならない。で、悪くなっても二枚腰三枚腰で粘る。で、終盤は、悪ければ粘る手を逃さず、勝つときはスマートにということで、洗練されている。既に。若いんですけども、洗練されてるなと。

──及川先生は、詰将棋解答選手権のチャンピオン戦で、昨年は3位入賞なさいました。

及川六段:
 なんとか、はい。

──その大会で、藤井先生は唯一の全問正解で優勝でした。やはり詰将棋の能力に関しては、隔絶したものを感じられますか?

及川六段:
 もう圧倒的ですね。歴代で……その前に三連覇した宮田さんの時は、私は宮田さんが棋界で一番だと思っていましたが、藤井さんが出てきてから数年は圧倒的に藤井さんが一番早いんだろうなと思っています。

──詰将棋の能力について、おうかがいしたいのですが。

及川六段:
 はい。

──難しい詰将棋は解けるけど、指し将棋はそんなに強くないという人がいるじゃないですか。それは、どうしてなんでしょう?

及川六段:
 それはですね。特殊な能力で、詰将棋をたくさん解けば、数学でいう方程式のようなものが見えてくるんですよ。

 そういうのが見えてしまう。答えが見えてしまえば、あとは裏付けですよね。

──ああー……。

及川六段:
 っていう解き方をすれば、ある程度の棋力があれば詰将棋は早く解けるんです。

 でも藤井さんは、そういうことではないんです。

 藤井さんは、読みが本当に深くて。『この形でこう解く』ではなくて、初めて見た感覚で、読みで、あのスピードで解けているので。だから、運ではないんですよね。

 実力で解いている。そこが、まぐれで上位に行くのと、常に上位に行く人の違いです。

──藤井先生にお話をうかがったときにですね。

及川六段:
 はい。

──どうやって、こう……将棋を指すときに考えてるんですかと。頭に将棋盤を思い浮かべてるんですか? と。そうしたら、そうじゃないとおっしゃるんですよ。

及川六段:
 はい? どういった……。

──じゃあ詰将棋はどうですかと聞いたら、詰将棋は読みだけなので(もっと盤はいらない)と。これ、どういうことなんですかね? 行方先生に聞いたら、わけがわからないと……。

及川六段:
 ……確かに。確かに。

 普通ですね、将棋盤というのが、頭の中にあって。その駒を動かして考えるんですけど……そうではないってことなんですね?

 藤井さんは、目で、視覚的に考えているということなんですね。

──及川先生のお話をうかがって、形が分かっているから考えなくても解けるのかなと思ったんですけど……。

及川六段:
 そういうことじゃないはずなんですよ。藤井さんの早さは。本当に、多分……その図面だけでいけるんでしょうね。脳内で変換する必要がないんでしょう。視覚的に考えているんですよ。

──そういえば、盤は目の前にあるから(頭の中にはいらない)とおっしゃってました。

及川六段:
 その盤面の中で完結しているのかもしれませんね。ちょっと、特殊な考え方をされているんだと思いますよ。

──そんな相手に対して、どう戦いますか?

及川六段:
 もう、純粋な気持ちですよ。初対戦ですので。スーパースターと戦ってみたいという、純粋な気持ちです。

 負かしてやろうとか、そういうことではなくて(笑)。

──本当に今、及川先生は将棋が楽しくて……強い人と戦いたくてワクワクしておられるのですね。

及川六段:
 そうですね! そういう気持ちです」

 

 そして10月11日。叡王戦本戦の組み合わせ抽選が行われた。
 及川の相手は、増田康宏六段。強敵である。
 藤井は及川と別の山に配され、二人が戦うためには、決勝三番勝負に進まねばならない。
 遠い道のりである。
 だが……勝率1位の藤井と、2位の及川であれば、そうなっても決しておかしくない。


 ニコニコニュースオリジナルでは、第4期叡王戦本戦トーナメント開幕まで、本戦出場棋士(全24名)へのインタビュー記事を毎日掲載。

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