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なぜ十六歳の竹内雄悟はプロ棋士になろうと思ったのか?【叡王戦24棋士 白鳥士郎 特別インタビュー vol.10】

 6月23日に開幕した第4期叡王戦(主催:ドワンゴ)も予選の全日程を終え、本戦トーナメントを戦う全24名の棋士が出揃った。

 類まれな能力を持つ彼らも棋士である以前にひとりの人間であることは間違いない。盤上で棋士として、盤外で人として彼らは何を想うのか?

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 ニコニコでは、本戦トーナメント開幕までの期間、ライトノベル『りゅうおうのおしごと!』作者である白鳥士郎氏による本戦出場棋士へのインタビュー記事を掲載。

 「あなたはなぜ……?」 白鳥氏は彼らに問いかけた。

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なぜ渡辺大夢はフリークラスを抜けることができたのか?【vol.09】


叡王戦24棋士 白鳥士郎特別インタビュー

四段予選突破者 竹内雄悟五段

『なぜ十六歳の竹内雄悟はプロ棋士になろうと思ったのか?』

 西の名門・森信雄門下。
 竹内雄悟五段は、その森門下の一人である。
 第1期叡王戦で優勝した山崎隆之八段、第2期叡王戦で準優勝の千田翔太六段など、強豪がひしめく森門下。
 その中で今期は、竹内だけが本戦入りとなった。

 プロ入りは、年齢制限の迫った25歳。
 しかし奨励会時代が長すぎた……というわけではない。
 なぜなら竹内は、高校2年生で奨励会に入ったのである。
 早ければ小学生、遅くとも中学生までには奨励会に入らねばプロになるのは難しいとされる。
 そのことは、竹内も知っていた。
 だからプロになろうと強く思っていたわけではなかった。

 そんな竹内が、プロ棋士になろうと思ったきっかけは何だったのか?
 そもそもなぜ、名門と呼ばれる森門下に入ることができたのか?

 四段予選決勝で勝利した直後の竹内に、それを尋ねた。

──ごぶさたしております。

竹内五段:
 いつも楽しませていただいてます(笑)。

──ありがとうございます。いかがですか?『りゅうおうのおしごと!』をお読みいただいて……。

竹内五段:
 将棋界のネタがふんだんの盛り込まれてるじゃないですか。いや、自分、将棋界に住んでますけどあまり将棋界のことに詳しくないので、すごい勉強になることが……『へえー』と思って。

──プロの先生からまさかそんなお言葉をいただけるとは(笑)。

竹内五段:
 面白いなと。

──竹内先生には監修をお願いしている『西遊棋』の一員ということで、『りゅうおうのおしごと!』1巻発売時に推薦のコメントをいただき、そちらを帯に入れさせていただきました。POPにして書店に飾らせていただいたり。

竹内五段:
 自分なんかでいいのかなと思いましたけど(笑)。

──私はそれ以前からニコ生の番組などで竹内先生のお人柄を拝見していましたので、嬉しかったですし、適任だと思いました。予想外にライトというかポップというか、プロ棋士の先生というイメージからかけ離れていたので、担当編集も『すごいテンションの高いコメントが来ましたよ!』と喜んでいました(笑)。

『りゅうおうのおしごと!』1巻の帯には竹内五段(当時四段)のコメントが

──挨拶はこのくらいにして……本戦入り、おめでとうございます。今日は本当に快勝という感じが。

竹内五段:
 結果だけ見ればですけど、まあ危ないところは結構多かったので。

──全体的に指し手が早く感じました。優勢になってからは時間も使われずにバシバシと。

竹内五段:
 ああ、そうですね。予想できる範囲では早く指そうかなと思って。

 長時間の対局だとそんな僕、早指しじゃないんですけど。やっぱり考え出したらもうキリがないので。早めにある程度で見切りをつけて指そうかなというのは思っています。

──やはりその決断の良さというのは、最近の好調につながっておられるんですか?

竹内五段:
 どうなんですかね? いや、しっかり自分の力だけで勝ち切れてるわけではなくて、粘ってたら相手が間違ってくれたとか、運の要素もあって。勢いが付いてきたってことなのかなとは。

 指運っていうのかな。自分がいい手を指したわけじゃなかったので『よし!』という内容ではないですけど……流れがいい方向には行ってるかなと思います。

──なるほど。予選の勝利者インタビューでもありましたが……竹内先生は晩学でいらっしゃいますよね。プロになる人たちの平均よりも、将棋を始めるのが少し遅かった。

竹内五段:
 高校1、2年で『怪童戦』に優勝して……。

──竹内先生の師匠である森信雄七段の一番弟子、故・村山聖九段を偲んで、広島で開かれている大会ですよね。

竹内五段:
 はい。

──奨励会に入られたのは高校2年ですよね?

竹内五段:
 そうです。

──怪童戦で結果が出たときに森門下に入られたということなんですか?

竹内五段:
 確かちょっと前に、もう森先生の家に通い始めてたので。2回目に優勝したときは、まあ勢いを付けて奨励会試験に向けて……そうですね、流れが掴めたかなという。

──ご出身は広島県ですよね?

竹内五段:
 そうですね。広島将棋センター。

──数々のプロ棋士を輩出した名門・広島将棋センターで将棋を始められた。どれぐらいの年齢のときなんですか?

竹内五段:
 将棋を始めたのは小学3年生の冬ぐらいだったかなと思います。

──奨励会入りまで時間が空くんですけど、そこの間はどういう感じで過ごしておられたんですか?

竹内五段:
 もともとプロになりたいって気持ちが強かったわけではなくて……。

 とにかく将棋が好きだったので将棋の大会に出たりするのが好きだったのかなという感じで。成り行きでいつの間にかプロを目指すようになった感じです。

──成り行き(笑)。そこの成り行きの辺りをお伺いできればと思います。

竹内五段:
 普通は高校2年ぐらいで将棋のプロを目指すなんて考えないと思うんですけど、全然将棋のことを知らない僕の祖母が『そんなに将棋が好きだったらプロ目指してみないの?』みたいな話をして……。

 将棋を知らないからこそ言えたみたいなところがあって。なので『ああ、確かにそういう道もあるのかな』と、自分の中でちょっと気付かされた部分があって。

 そんなに学校の勉強も好きじゃなかったので……棋士になって好きな将棋をして生きていけたら最高だな、と思って。

──そのころは広島にお住まいで?

竹内五段:
 あ、そうですね、はい。

──奨励会に入られて、広島から大阪に移ってこられたわけですね。

竹内五段:
 そうです。18歳で。

──奨励会、ご自身の中では苦労されたというお気持ちですか?

竹内五段:
 三段に上がるまでは、あまり苦労とかは思ってなくて。ただ将棋やってたら勝手に三段まで上がったみたいな感じで。

 ただ、年齢制限が近づいてくると、だんだん将棋が弱くなってくるというかスランプに落ちてきて……まあ自分は昔から実戦ばかり指すタイプだったんですけど、それだけじゃちょっと通用しなくなってきたというか。

 それを考えるとまた精神的にちょっと弱くなってみたいな、負のサイクルだったんですけど……まあでも、ちょうどスランプのときにプロになったので。

──えっ!? スランプのときにプロになったんですか!?

竹内五段:
 そうですね。すごい将棋が伸び悩んでる時期にプロになったので。なんか……『え? 自分がなっていいのかな?』みたいな感じで。

──そのスランプはどうやって克服なさったんですか? それとも今もまだスランプ……な、わけはないですよね?

竹内五段:
 自分、環境に馴染んでいくのが人より遅いところがあって……。

 まあ棋士になっていろいろずっと悩み続けて、ちょっとずつ改善されていったみたいな感じかな、と。

 苦労したのは三段ぐらいからですけど……そうですね。環境になかなか馴染めないときは、いつも苦労するような気がします。

──環境というのは、例えば広島から大阪に移ってきてその環境がということですか? それとも戦う舞台ですか?

竹内五段:
 舞台なんですかね。そこは自分でもよく分かってないですけど。まあ単純に、将棋が弱かったっていうのもありますし、ずっと感覚で指してきたとこがあって。

 そこの感覚がズレたりしてスランプに陥ったのかなという。

──なるほど……。

竹内五段:
 論理的に考えるようになったのは、プロになってからなので。

 本当に僕はあまり、アマチュア時代から別に詰め将棋を解いてたとか棋譜並べしてたとかはなくて、もうほとんど実戦でずっとやってきて……。

 実戦で磨いた感覚で指してたので。ある程度『だいたいこんな手かな?』みたいな感じで指してたので、アマチュアのおっちゃんとあまり変わらないと思うんですけど(笑)。

 なんで、すごい変わってるだろうなというのは自分でも、はい、思います。

 みんな玉の堅さとか、どれぐらい攻めてるかとか、論理的に組み合わせながら考えてると思うんで。そういうのをやり始めたのはたぶん一番遅いぐらいかなと思いますね。

──その中で最近勝てるようになってきたというのはやはり、馴染んできたからなんですか?

竹内五段:
 うーん……そうですね。感覚とか論理的に考えるとか、なんか自分の中でバランスが取れてきたというか……調和した?

──以前、森先生ともお話しさせていただいたんですけども……結構ざっくばらんにお弟子さんのことを言うというか。

竹内五段:
 そうですね。森先生、結構。

──好き嫌いが。

竹内五段:
 好き嫌い激しいですし、結構決め打ちして、あの人はこういう人だって言うところがあるんで。けど師匠は意見がブレないので。

 弟子としては信頼しやすいというか。

──どんな感じで接されたんですか? 竹内先生には。

竹内五段:
 昔は叱られたりしたこともありますし。

──三段リーグでちょっと長くいたからとか、そういうことですか?

竹内五段:
 いや、そういうことじゃなくて、なんか……なんですかね。自分、質問に対して1回オウム返しで同じこと言ってから答えるみたいなところがあって、そこは良くないっていうふうに言われて。

──ヨウム飼ってるのに?

竹内五段:
 たぶん1回、理不尽なことで弟子を叱るみたいな方針なのかなと今では思ってて。

──ああ、なるほど。1回ガツンとやっとくっていう。

竹内五段:
 そうですね。師匠のことはなんでも聞いておかないけん! みたいな。はい。

──竹内先生はそのとき、高校生ですよね? 弟子として受け入れてくれる人がいたっていうのは、やっぱり大きかったですか。

竹内五段:
 そうですね。はい。森先生はわりとどんな弟子でも取るというか。そんな強くない人でも弟子に取って、来る者拒まずという感じなので。

──私は誰かに弟子入りしたこととかはないんですけど、弟子に取られるっていうのは『あ、俺も見込みがあるかも』と思えることなんですかね?

竹内五段:
 うーん……そもそも弟子に取ってもらったって思ってたのかどうか、ちょっと覚えてないですけど……いつの間にか森門下に入ってたみたいな。はい。

 将棋を初めて指しにいった日に、研究会に参加させてもらったんですけど、そこでちょっと将棋指させてもらって。

 で、その日に研究会で勝ったら一門に入れてもらえるのかな? とか思ってたんですけど、そのときは結構勝ったんですけど、結局なんにも言われずに、まあ取りあえず家に帰ったら、また次の研究会来なさいみたいな感じで。

 そっからなんか、つながりができたという……。

──ああ、そうなんですね。

竹内五段:
 いつの間にか弟子になってた。

──いつの間にか弟子になり、いつの間にかプロになり(笑)。

竹内五段:
 師匠になっていただいたみたいな、切り替わったわけじゃないのでちょっと分かんないです。

──そうなんですね。不思議な感じもちょっとしますけど、でもいいお話を伺いました。竹内先生は、お弟子さんをお取りになるご予定は?

竹内五段:
 ちょっとまだ考えてないですね。

──お子さんが生まれたばかりですしね。

竹内五段:
 そうですね。まあ忙しい時期なので、いつかはもしかしたら取ることになるかなという気もしますけど、まだ5年以上先かなという。

──やはり広島の?

竹内五段:
 地元に限らず縁があれば。自分がそのときに、弟子を取る……取るに足る、最低限の人間になってれば、まあ、取ってみたいなというのは。

 やっぱり僕の師匠の森先生がすごく弟子の面倒をしっかり見ていらっしゃって、僕も見ていただいたので、やっぱりそれを繰り返していきたいという気持ちがあって。

西日本豪雨災害支援チャリティー将棋フェスティバル

──私は先日、竹内先生もご出演なさった将棋のチャリティーイベントに参加させていただきました。最近は災害も多く、広島も被災されることが多くなってきたと思います。そういうときに棋士として何を思われますか?

竹内五段:
 そうですね、自分にできることがあればやりたいです。本当に微力ですけど……チャリティーイベントに参加させていただくぐらいはしたいなと。

 体を張ってるわけじゃないので、あまり力になれてるとは思わないですけど。

──将棋教室などもしておられるんですよね?

竹内五段:
 あ、はい。去年から宮本(広志)五段のアキノクラブで教室をやらせてもらったり、将棋連盟でも子供教室を日曜に月2回やらせてもらったりしてて。

 将棋のイベントまでは、自分はまだちょっとできないというか……なので、将棋教室を通して……僕、子供をメインに教えさせてもらってるんですけど、そういうところで裾野を広げていけたらというか。

 そこで逆に、自分が子供に応援してもらってるみたいなところもあって。そういうのは大事だなと思うし、これからもそういう教室はやっていけたらいいなと思ってます。

──棋士の先生は、お子さんが生まれると『将棋を教えたいタイプ』と『教えたくない』タイプに分かれるような気がします。竹内先生は、教えたいタイプですよね?

竹内五段:
 そうですね、プロにするとなるとまた話が変わってくるんですけど。

 将棋自体はやっぱり面白いし頭にもいいですし、いいことばっかりですし。

 それに、ぼんやりと……まあ娘がなんか、自分の教室とかに遊びに来てくれたらちょっと嬉しいな、みたいなのも考えたりとかして(笑)。それもいいなと思って。

──例えばニコ生とか、テレビとかにお父さんが映ってると、お子さんも喜ばれるんですよね。もっと大きくなってからだとは思いますけど。

竹内五段:
 どうですかねぇ。もう……喜んでもらえたらいいなと、はい、思ってます。

──先期は五段だった髙見先生が叡王になられるという、叡王戦ドリームがありました。竹内先生はその辺りはいかがですか? やはり、期するものが……。

竹内五段:
 そこはあまり考えたことないですけど……やっぱり本戦に出て活躍したいっていうのはありますし、都成さんとかは結構昔からずっと指してたので……最近あまり指さないですけど……。

 プロになって僕は勝ってないので。たぶん2回ぐらい負けてて。本戦でリベンジを果たしたいなとかは。

──都成先生と。

竹内五段:
 はい。あります。

──当たって、倒したい。

竹内五段:
 まず同世代から、ちゃんと倒したいなって。

──藤井聡太先生も上がってこられましたが。

竹内五段:
 ああ……そうですね。そこは最後のほうでいいと(笑)。

──皆さんそれおっしゃる。最後でいいって(笑)。

竹内五段:
 いや、けどやっぱり……そうなんですよね。もう藤井さんには4回負けてるんで。本当に次勝たないといけないなっていうのがあるから……それはもうちょっと先で、実力を付けて当たりたいなっていう。

──勝ち続ければ、やっぱり当たる可能性も出てきますからね。

竹内五段:
 はい。まあ当たったら当たったでやっぱり楽しみにはなると思うんですけど。

──お話を伺ってると……失礼ながら、竹内先生にはまだ伸び代がすごいおありかなと思うんです。ご自身でもたぶん、思ってらっしゃる部分かなと思うんですが。

竹内五段:
 そうですね。本当にまだ弱いなと思う部分がいっぱいあるので……たぶんまだ、自分の中では伸びるかなと。

──だから好調、不調の波があるのかな? と。

竹内五段:
 そうですね。結果を見たら『どうしたのかな?』みたいな。自分でも不思議な。

──今なら誰にでも勝てる、ぐらいの。

竹内五段:
 いや、そういう内容でもないからそんなことは全然言えないです。謙遜でもなくて本当に。

──お子さんが生まれてから、やはり勉強時間はちょっと減ってしまった感じなんですかね?

竹内五段:
 そうですね。確かに時間を削られるというか、家で子供が泣いたり、夜起きたり……まあ僕は夜、寝させてもらってるんですけど。

 まあいろいろ、家事の手伝いとかはするようになったので。自分が勉強したい時間にできるわけじゃないから、その時間を有効活用するというか。

 無駄な時間はなくなったので、逆に勉強時間が減って集中して勉強するようになったから、まあいいのかなという部分もありますね。

──例えば、他の方と予定が合わなくて実戦もなかなか……。

竹内五段:
 ああ、そうですね。今ちょっと研究会はやってなくて、はい。基本的に家で勉強してて。

──理論系の勉強を?

竹内五段:
 そんな意識してやってるわけじゃないですけど、まあいろいろ自分で棋譜を並べたり、考え方とか……そうですね。詰め将棋とかもあまりやってないですけど。

──お子さんが生まれたことで、気持ちの面はいかがでしょう?

竹内五段:
 やっぱり将棋と子供は別なんですけど……そうですね。順位戦とか長い時間戦ったりしてると、弱気になっちゃうときも多々あるので。

 まあそういうときに、ちょっと自分の尻を叩いてというか。はい。

──子供の顔が浮かんで……みたいな?

竹内五段:
 まあそうですね。弱気になったときに折れてたわけではないですけど、その部分がやっぱりちょっと強くなったっていうのは大きいのかな。

 メンタル的なとこが、ちょっと強くなったのかもしれないです。

──メンタルはやはり大きいですか? 将棋を指していくうえで……。

竹内五段:
 そう思いますね。まあ10代であればそういうことは特に考えなくてもできてたと思うんですけど、20代、30代になってくると、いろんなことが増えてくるので。

 やっぱりそれをどう自分の中で処理するかというか、苦手な部分をどうこなしていくかとかいう部分で、やっぱりメンタルは大きいような気がしますね。

──失礼な言い方になってしまうかもしれないですけど……私も自分の業界ではトップとは結構離れてて、下も追い上げてきて、中間みたいな。竹内先生と似たポジションなのかなって。

竹内五段:
 はい。

──これからどうしたらいいのか、迷うわけです。今ちょっと流行してるものに寄っていったらいいのか、それとも自分の持っている武器を尖らせていって、それで生き残るべきか……すごい不安な部分があるんです。どっちが正解かはわからないけど、少なくとも今のままだったら絶対に生き残れないという。竹内先生も、同年代ですけど兄弟子に当たる糸谷哲郎八段とか、ああいうすごく強い人たちが近くにいて……。

竹内五段:
 そうですね。とんでもない強い人がいます。

──さらに後ろからどんどん凄い人が出てきたりとか……そういうときに、どうやってこれから自分が棋士として生きていこうかなとか、考えたことはおありですか?

竹内五段:
 そうですね、棋士としてずっとやっていこうと思ったら、今のままじゃあちょっと弱すぎるので、本当に力の底上げが必要かなとずっと思ってますし。

 やっぱり棋士って35歳とかぐらいまでが一番強い時期なのかと思うので。まあそれ以降になってくるとやっぱり、しっかり底上げしてないとどんどん弱くなって勝てなくなっちゃうから、今は大事な時期で……。

 自分をどういうふうに変えていけるかっていうのは、あるかなと思いますけど。けど、真剣にそういうとこに向き合えてるかというと……ちょっと……。

──日々のいろいろなことが多すぎて。

竹内五段:
 まあ毎日なんか、自分、結構考え方が変わるタイプなんで。

──ああ、なるほど。

竹内五段:
 はい。毎日ちょっとずつ。

 まあなんか、いい方向に転がればいいかなって、はい。

──勝ってしまうと、どんどん対局も付いていきますもんね。考えてる暇がなくなるというか。

竹内五段:
 ああ、最近は嬉しいことにそうですね。そういう、考えてる暇がないほうがたぶん、いいと思いますね。はい。迷いが……はい。

──竹内先生は、将棋における才能ってどういうものだと思われますか?

竹内五段:
 才能。

 そうですね……まあ将棋を好きっていうのがまず1つで。あとは将棋をやる体というか、健康も才能の1つかなと。はい。思いますね。

──例えば子供さんを指導されてたりして、この子には才能があるなと思われる瞬間とかは?

竹内五段:
 やっぱりすごい好きで、常に家でもやってる子はすぐ強くなりますし。好きが一番強い武器かなっていう。

──逆に、努力の部分っていうのは将棋だとどういうものになると思いますか?

竹内五段:
 努力。

 努力は大事だと思いますけど……たぶんそれを努力って思ってやってる人って、あまり強くなれないんじゃないかなって思ってる部分もあって。自然に好きでやってるのが一番いいのかなと。

──努力と思わないのが才能っていう感じですかね?

竹内五段:
 それはあるんじゃないかなと思いますね。

──どうですか。ご自身にその才能はあると?

竹内五段:
 いやあ、うーん……そうですね。いや、うーん……。

 いま言った中だとちょっと、才能があるとは言えないので。それをどうやって自分で補っていくかという。

 ただ将棋って、1つの能力があれば勝てるとかいうわけでは……まあそういう人もいますけど、なんて言うか……実践的な技みたいなとこもあったり、時間の使い方であったりとか……。

 自分の能力が相手よりちょっと劣ってたとしても、戦い方っていうのはいろいろあるから、そういうとこでどんどん強くなっていけばいくらでも勝負はできると思うので。

 直線的な強さとか、なんかよく言われますけど……なかなか直線的な強さって頭に積んでるエンジンが……藤井聡太くんとかみたいな人と勝負するとなると、一直線じゃやっぱり厳しいところがあるので。

 まあ曲線的な強さをたぶん磨いていくのが一番、僕みたいなタイプはいいのかなという気がしますね。

──やっぱり自分にあるものを研ぎ澄ましていくっていう結論になるんですかね?

竹内五段:
 結局はもう持っているものでやりくりするしかないと、はい。

──持ってるもの。そうなんですね。やっぱりそうなんですよね(笑)。

竹内五段:
 結局。

──そうなんですよね。結局そうですよね。本当に皆さん強い世界ですもんね。もう本当に。

竹内五段:
 そうですね。もう楽に勝たせてくれる人がいないので。

──そうですね。今日、予選決勝で戦われた井出先生なんかはどうですかね?

竹内五段:
 はい。めちゃくちゃ強いので。やっぱり警戒してる相手の1人だったので。

──かなりの強豪ですよね。

竹内五段:
 そうですね、はい。

──四段戦は一番大きな山なわけじゃないですか。そこで勝って1位になったのは、相当大きな自信になるのでは?

竹内五段:
 そうですね。今まで自分が棋士になって、結果というのはあまり残したことがないので、本戦に出れたというのはめちゃくちゃうれしいですね。

 勝率が上がるより、結果が出るほうがいいと思ってるので。そういうところで勝負強さを見せれたのは良かったかなと。

──あと4つ勝てば挑戦者決定三番勝負です。

竹内五段:
 ちょっとてっぺんが遠すぎて見えない(笑)。

──では最後に……これはちょっと臭いかな? でも……。

竹内五段:
 ?

──本戦で勝ったとき、娘さんに声を掛けるとすれば?

竹内五段:
 えー? まあ……『ミルク代を稼いできたよ!』ですかね。

──かっこいいですね。海外のサッカー選手みたいだ(笑)。

 

 本戦抽選の結果、竹内は広瀬章人八段との対戦が決まった。
 竜王戦の挑戦者でもある超強豪。
 そして広瀬の次に控えるのは、渡辺明棋王。
 厳しい山ではある。
 しかしこれまでの竹内の道に、楽なものなど一つもなかった。
 普通であれば最初から踏み込もうとすらしない道に、ふらりと自然体で足を踏み入れ……自分だけの道を踏み固める。

 それが竹内雄悟という棋士なのだ。


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