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人はなぜ廃墟に魅せられるのか?「日本の廃墟ベスト5」を愛好家が選出理由&写真付きで解説【ブルーシャトー・長崎刑務所・大仁金山etc…】

 昭和が終わり、バブル経済の喧騒へと突入していく1980年代の日本で、静かに生まれた廃墟趣味。“懐かしさへの回帰”という願いを抱いたレトロを愛する集団にそれは確かに根付き、今日の廃墟ブームへと至っている。

 廃墟ブームにおいて取り上げられることの多い場所には、バブル以降に開発が頓挫しそのまま放置された商業施設や、経営不振に陥り管理が放棄されたラブホテルといった、古城名刹と比較して史料的価値の乏しいものも少なくない。しかし、どの廃墟にも共通しているのは、その場所へ一歩足を踏み入れると、抗いがたい魅力に満ちた、完全に時間が止まった世界が広がっているということだ。

 放置され、朽ちるに任せた建物、施設、集落……1990年代以降に廃墟マニアたちが、それらを巡った記録をWebサイト等で発表するようになり、近年では廃墟をモチーフにした美麗な写真集が書店に並ぶ姿も珍しくない。2015年、長崎県長崎市の端島【※】(通称:軍艦島)が世界文化遺産に登録されたことも記憶に新しい。

※端島
通称、軍艦島。長崎県長崎市に位置する島。明治から昭和にかけて海底炭鉱として栄え、東京以上の人口密度を有していたが、1974年の閉山に伴って島民が島を離れてからは無人島となり、島の施設は廃墟と化している。

 本記事は潜入ライターとして活躍するニポポ氏@tongarikids)がMCを務めるniconico公式番組「ニポポのニコ論壇時評」において、廃墟愛好家であり『ダークツーリズム・ジャパン』編集長の中田薫氏が自身の選んだ廃墟ベスト5と番外編を貴重な写真資料と共にお届けするものである。

 “平成最後の夏”も終わりを迎え、あと3ヶ月足らずで2018年に幕が引かれる。中田氏による約1万文字・42枚の写真で紹介される廃墟群が象徴する失われた昭和の記憶を通じて、平成という時代が終わる前に「なぜ人は廃墟に魅せられるのか」今一度その魅力を見つめ直したい。

記事中で紹介した
廃墟の写真一覧はコチラから

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第5位 現代美術的モーテル「ホテルブルーシャトー」

左から中田薫氏ニポポ氏

ニポポ:
 「廃墟愛好家の中田薫さんが選ぶ廃墟」、ベスト5です。

中田:
 これは難しい。47都道府県の全部に行っているんですけれども、第5位が『ホテルブルーシャトー』です。これは愛知県のラブホテルなんですけれども、いかにもモーテルですね。ディズニーランドの出来損ないみたいなハリボテの。

ニポポ:
 昔のラブホは、いわゆる回転ベッドやら何やらいろいろあって、お金がかかってましたから。

中田:
 もう壊されて更地になっちゃったんですよ。

撮影:中田薫

ニポポ:
 なにこれ!? めっちゃ綺麗!

中田:
 右と左がベルシャトーとブルーシャトーで、両翼に車を格納して。

ニポポ:
 そうか、車で部屋に付けられるんだ。

中田:
 そうですね。ちなみにこの本体のお城の3階に、経営者一族が住んでいまして。

ニポポ:
 まるで王族じゃないですか(笑)。

中田:
 ここに住むか? っていう(笑)。

ニポポ:
 田舎のラブホに行くと、本当にいまだにご家族が暮らしているじゃないですか。あれはちょっとびっくりしますよね。

中田:
 ラブホテルって、日本の廃墟でかなり数が多いジャンルのひとつなんです。原因はふたつあって、ひとつは相続しない。一代で終わっちゃうんですよ。子供が嫌がる。だから結局相続放棄されちゃうケースがある。もうひとつは、昭和59年に風営法の大改正がありまして、こういう形態のフロントを通さないチェックインやチェックアウトというのは基本的に禁止になったんですよ。

ニポポ:
 いわゆる風営法の管轄になっちゃうわけですね。

中田:
 そうです。それまでは旅館業法での取り扱いだったんですけれども、あまりにもラブホテルとかモーテルが増えてしまった。昭和38年に、モテル北陸というのが、日本のモーテルの第一号だったんですけれども、20年後には1万何千件に増えているんですよ。

 爆発的に増えてしまったので、いかがわしい施設というのが日本中で大問題になりまして、昭和59年に風営法の大改正がありまして、ラブホテルは風俗店という位置付けになるわけですよね。

ニポポ:
 そこから、今度は利権問題に発展したり、大変な時代になっていくわけなんですけれども。

撮影:中田薫

 綺麗! なにこれ! 暮らせるじゃん!

中田:
 やっぱりモーテルというのは、目的が特化していますから。「やるんだ!」と。

ニポポ:
 すごい意気込みで(笑)。

中田:
 そういう造りですよね。

ニポポ:
 今と違ってムードを高めますね。これは、「やろう!」となりますから。 

中田:
 いわゆるメイクラブを目的とした建物は台湾と日本にしかないんですよ。ですから外国人が大喜びなわけですよ。今インバウンドで入っていますけれど、ラブホテルに泊まっている外国人のお客さんは結構いらっしゃるんです。実際快適ですよね。部屋は広いし、風呂もベッドもでかい。

ニポポ:
 なんならプールがあったりしますからね。

中田:
 そう。こんないい施設はなかなかないわけですけれども。メイクラブを抜きにして考えても、泊まりたいっていう。

ニポポ:
 僕らの時代なんかは、一部屋一部屋にメッセージ交換ノートというのがあって。

中田:
 懐かしい。

ニポポ:
 あれは面白かったですね。

撮影:中田薫

中田:
 回転ベッドですね。ミラー&回転です。

ニポポ:
 今、回転ベッドは……。

中田:
 ないです。ほぼ見ないです。

ニポポ:
 作っている会社が1個だけあったような。

中田:
 関西でしたかね。もう作ってないんじゃないのかな。

ニポポ:
 受注生産のレベルでなんとかやっていらっしゃるという話ですけれども。

撮影:中田薫

中田:
 これは昭和の一時期流行った、いわゆるセックス補助具というやつですね。

ニポポ:
 ちょっと待ってください、セックスを補助する道具があったんですか。

中田:
 でもこれ、使い方がわからないんですよね(笑)。どうやって使うのでしょうか。

ニポポ:
 腰の下に敷いて高さを合わせるんですかね?

中田:
 一応48手すべて再現できるらしいんですよ。

ニポポ:
 すごい、面白い。

中田:
 一時はホテルでこれを見かけることが多かったんです。ここの部屋に残っていました。

撮影:中田薫

 お風呂もまたいい雰囲気でね。この部屋の浴槽はあまり広くなかったんですけれど、なんとなく現代美術的で味がありますよね。

ニポポ:
 かっこいい。

中田:
 タイル貼りのお風呂なんですけれど、タイルのお風呂というのは目地が細かいほどいいお風呂なんです。細かいタイルがいっぱい敷き詰めてあって、上品な感じがするんですよね。

ニポポ:
 ひとつひとつ手で貼っているんですね。

中田:
 建築士的にもモーテル建築というのは特殊ですから。

ニポポ:
 これは遺産としてで残すべきレベルですね。

中田:
 文化庁は保存に走るべきですよ。

ニポポ:
 不思議なラブホテルとか、いっぱいあったわけですけれども、人口減の波であったり。

中田:
 「ラブホテル」という呼び名が変わって、たとえば「ブティックホテル」とか、今だったら「レジャーホテル」。「疑似ラブホ」と言うんですけれども、いわゆるビジネスホテルとラブホテルとの中間みたいな、ビジネスユースでも使えるし、観光でも使えるし、メイクラブでも使えるような、ラブホテルというジャンルを超えたホテル形態になっていて、ホテル業者が見つけた法のニッチですよね。

 ニッチな営業形態で「ラブホテル」という名前を使っていないけれども、生き残りをかけて新たな営業形態を生み出している。だから、こういう旧態然としたようなモーテル、ラブホテルというのは駆逐されて、こうやって廃墟になって、そして更地になっていく。

ニポポ:
 そういうことなんですね。

中田:
 「ザ・ラブホテル」という感じのブルーシャトーを5位に入れておきました。

第4位 バブルの脳内天国を再現! 「恵山モンテローザ」

ニポポ:
 続いて4位いっちゃいましょうか。

中田:
 恵山モンテローザ。北海道の恵山町ですね。こちらはバブル時代の物件ですね。

撮影:中田薫

ニポポ:
 なにこれ(笑)。

中田:
 北海道の恵山町は観光不毛地帯なんですけれども、観光客を入れたくて、北海道の民間企業に町の観光開発を託しちゃったわけですね。ところが、委託された業者業社の社長さんが脳内天国を再現しちゃって、金ピカ彫刻を立てまくったりとか、中国風、ギリシャ風などと、なんだかわからないような感じに。

ニポポ:
 水が引いたら、今でも使えるレベルですね。

撮影:中田薫

ニポポ:
 入り口も綺麗な門ですね。

中田:
 ほぼ営業していなかったですけどね。

撮影:中田薫

ニポポ:
 うわ~綺麗な彫刻、もったいない。

中田:
 これはギリシャ風彫刻ですよね。

ニポポ:
 (コメントを読む)「星野リゾートに買い取ってもらえばいいのに」(笑)。

撮影:中田薫

中田:
 今度は中国風なんですよね。巨大涅槃像や、仏像彫刻もあったんですよね。

ニポポ:
 何でもありだったんですね。

中田:
 美的感覚がめちゃくちゃで、本当にバブルのおかしなお金の使い方を象徴してるような、脳内バブルリゾートなんです。

ニポポ:
 素晴らしい。

撮影:中田薫

 待ってください(笑)。金閣寺のレプリカじゃないですか!

中田:
 観音像を建ててみたりとか。恵山町も、お客さんが来るんだと喜んでいたんですけれども、だんだん工事が進むにつれて、「何かおかしいぞ」と住民で怒り出す人が出てきちゃって。

ニポポ:
 むちゃくちゃ感が素晴らしいわ(笑)。

中田:
 結局、これらはすべて廃墟化したわけですよ。

ニポポ:
 営業も大してしていないというのが、また……。

中田:
 300億円事業だったんです。二階建て観光バスを走らせるだとか、青写真だけはすごかったんですけれど、結局営業する前にその開発会社が倒産したんですね。えらいことになりまして、そのうち新興宗教団体が集団移転してくるという噂が立っちゃったものだから、町がこの施設を全部買い戻したんです。

ニポポ:
 300億円で「作ってくれ」と言って、変なやつが来るから買い戻すって、いくら使ったんですか、これ。

中田:
 民間からもお金を集めたんですけども、結局この有様という。廃墟になって脳内天国だけが残ったっていう。

ニポポ:
 さすがに現在は取り壊されてる?

中田:
 まだ残っています。ここまでのあからさまなバブル物件はそうないですね。

ニポポ:
 なかなかないですね。

中田:
 バブル時代というのは、日本中が国の政策として観光客を呼んで、町の活性化をしなさい、そして税収を上げなさいということで、日本中で変な施設がいっぱいできちゃって、それが廃墟化したという数が結構多いんですけれども。

ニポポ:
 ローラースケート場とか、意味がわからないのがいっぱいありましたからね(笑)。

第3位 建築家が本気を出しすぎた「長崎刑務所」

ニポポ:
 3位はこちらです。長崎刑務所。

中田:
 いわゆる文明開化ですね。

撮影:中田薫

ニポポ:
 うわ~、これは文明開化してる。

中田:
 明治40年から平成4年まで85年間、刑務所として稼働していた「明治の五大監獄【※】」のひとつですね。

※明治の五大監獄
明治に全国5ケ所に造られた監獄(刑務所)の総称。他の四ケ所は、千葉監獄(現:千葉刑務所)、金沢監獄(現:金沢美術工芸大学)、奈良監獄(旧:奈良少年刑務所)、鹿児島監獄(正門のみ現存)。

ニポポ:
 めちゃくちゃかっこいいですね。

中田:
 設計はジャズピアニストで有名な、山下洋輔さんの祖父にあたる司法省の技師の山下啓次郎【※】の設計です。明治五大監獄は全部山下監獄と言われていて、すごくおしゃれで味がある。

※山下啓次郎
1868年(慶応3年)、鹿児島郡西田村生まれ。1876年に上京し帝国大学工科大学(現:東京大学工学部)へ進学し建築を学ぶ。卒業後に警視庁入庁し1987年に司法省に移り、建築物の新築および修理を担当。司法省在籍中に欧米の監獄を視察した後、五大監獄を設計。

ニポポ:
 ありすぎますね。

中田:
 明治の文明開化って何が起きたかって言うと、罰を与えるのではなくて、更生に重きを置く。

ニポポ:
 現代国家になっていますね。

中田:
 だから「監獄」という言い方をやめて「刑務所」になるわけです。ここは罰を与える施設ではなくて更生施設です。

撮影:中田薫

 お城みたいですよね。これが正面です。

ニポポ:
 ちょっと入りたいもんね(笑)。

撮影:中田薫

中田:
 壁が5メートルあるわけですね。壁もレンガ造りなので、刑務所特有の圧迫感がない。小菅はコンクリート壁でかなり刑務所感がありますけれど、レンガ造りだと温かみがあります。

撮影:中田薫

ニポポ:
 うわ、綺麗。

中田:
 これは房舎ですね。房舎の中央見張所です。

ニポポ:
 東京駅かと思いましたよ(笑)。

中田:
 そのくらい味があります。通路の先に刑務所の房舎が伸びている状態ですね。

ニポポ:
 美しい。

中田:
 でも台風で潰れちゃったんですよ。危ないから取り壊されちゃいました。

ニポポ:
 刑務所としては扉の薄さがちょっとびっくりしますね。

撮影:中田薫

中田:
 ここがいわゆる所長室ですね。廃墟でも非常に重厚感のある、上品な感じがありますよね。

撮影:中田薫

ニポポ:
 これは何ですか。

中田:
 お風呂ですね。

ニポポ:
 当時はこんなに綺麗に残っていたんだ。

中田:
 広かったし見応えはありましたね。いちいち綺麗でした。

撮影:中田薫

 ここが房舎ですね。

ニポポ:
 すごい! まるで映画みたいですね!

中田:
 注目すべきところは天井なんです。丸い船底の天井になっていて、光を取り入れているわけです。救いというか、更生に重きを置いているというのが、この刑務所の作りからよくわかる。罰を与える施設ではないということですね。

 今だったらレストランでもホテルでも、なんでも使えそうですよね。

ニポポ:
 改築できちゃう。

中田:
 もったいない。

ニポポ:
 こういうのが取り壊されていくという悲しさが辛いですね。

中田:
 残らないというのが日本のダメなところなんですよね。

ニポポ:
 もったいないですよね。

撮影:中田薫

中田:
 これは病舎ですね。病気になった人間が、ここで隔離される。 

撮影:中田薫

 ここは体育場ですね。長崎刑務所は重犯が入っておらず、経済犯とか知能犯とか凶悪犯があまりいないので、わりと自由度が高い。

撮影:中田薫

ニポポ:
 これまた綺麗。しかも広いですね。

中田:
 運動場ですね。

ニポポ:
 全然まだまだ使えそうですね。

撮影:中田薫

中田:
 ここが面会所。手前がシャバで、奥が塀の中ということですね。

ニポポ:
 これも見応えがすごい。

中田:
 取り壊されて門だけが残ったんですよ。

ニポポ:
 門だけでも残すべきですよね。

中田:
 門だけか……という感じですけれどね。

ニポポ:
 僕は門だけでも圧倒されちゃいますね。

中田:
 門だけ残って公園化したのか、あと一部は住宅になったか。長崎刑務所は移転しちゃいましたからね。明治の五大監獄は本当に有名な建築でしたけれど。

ニポポ:
 平和祈念像がある所らへんにも刑務所ありませんでしたっけ。

中田:
 動いたんですよ。

ニポポ:
 あそこから動いたということですか。

中田:
 明治の五大監獄で最後に残っていたのが奈良なんですけれど、2年前か去年になくなっちゃいましたね。

ニポポ:
 今は都市型刑務所がどんどん増えてきていますからね。

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