ZOZOTOWN・前澤氏の月の周回軌道に入らない宇宙旅行が「月旅行」とは言えない理由「高速で熱海のICで降りずに自宅に戻ってるようなもの」
「月に行った」アポロ計画のロケット
岡田:
アポロ計画では、逆噴射できるロケットエンジンを搭載した宇宙船で月の軌道を回って、実際に降りるかどうかはその場で判断するとしても、もう一度、月の軌道上からロケットエンジンを吹かして地球に戻って来て、さらに地球の近くで減速するという、ものすごい難しいことをやっているんです。そういう意味では、アポロ11号はちゃんと「月に行った」んですよ。月面に着陸したから。
アポロ8号に関しては、今回の前澤さんのプランと同じように、月の周りを回ってきただけなんですけど、それでも、ちゃんと月の近くで逆噴射エンジンを掛けて、月のパーキング・オービット(周回軌道)に乗っています。
そして、地球からの電波が届かないところで、独自計算をしてロケットエンジンを吹かして、もう一度トランスファー軌道(地球帰還軌道)に乗って帰ってきた。そんなかなり難しいことを、船内に2つ、3つ積んであった“ファミリーコンピュータ”並の処理能力しかない当時のコンピューターを使ってやってのけたので、「そりゃすごいな」って思ったんですけども。
でも、スペースX社のロケットというのは「東名高速から降りてないのと同じ」だと、僕は思うんですよね。細かいことなんですけど、月面に降りないからダメというわけではないんです。月の周回軌道に入っていなければ、月に行ったことにはならないんです。
「あれは月旅行ではない」とは誰も言わない
こんなことは普通の人は知らなくて当たり前だし、それでいいんですよ。ただ、大手新聞社の科学部の記者だったら、絶対に知っていることなんです。
だけど、今、出回っている記事の中で、そこにツッコんでいる記事を僕は全く見たことがない。これについて「すごいな」って思うんです。前澤さんというのは、ZOZOTOWNとして莫大な広告出稿を支払うことで、業界ですごく力を持っているので、「あれは本当は月旅行じゃないぞ」とは、誰も笑わないんですよね。
ロケット事業をやっているホリエモンなんか、すごく意地悪なこと言ってますよ。取材に対して「いやあ、俺にはそんな金はないから行かないよ」なんて冗談めかして言いながらも「……まあ、金があっても行かないけどね」なんて言ってます。あれが月旅行とは言えないことを知ってるからですね(笑)。
つまり、「前澤さんが行くのは“月旅行”ではない」ということですね。
▼記事の箇所は22:20からご視聴できます▼
『#249表 岡田斗司夫ゼミ【錯覚の心理学】ZOZOTOWNの社長が買い占めた宇宙旅行代金はもっと安い?ガイナックスはトップ3を作らない?』
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