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「有名人は指名手配犯と一緒。個人情報もプライベートもない」水道橋博士が語る『週刊文春』とスキャンダルジャーナリズム

 2016年世間を大いに騒がせ、流行語にもなった「文春砲」。そんな『週刊文春』の編集部に徹底取材し、数々のスクープの知られざる裏側を明かそうという企画が、ニコニコドキュメンタリー総力特集「文春砲」だ。

ニコニコドキュメンタリー総力特集「文春砲」公式サイト

 前回の田原総一朗氏デーブ・スペクター氏へのインタビューに続いてお話を伺ったのは、「前日に『文春』の早売りを買うのが生きがいのひとつ」と話す水道橋博士だ。芸人として長年芸能界で活躍し、「文春」誌上で2013年には『週刊藝人春秋』を連載したこともある博士は、数々のスキャンダルやスクープを間近で見てきた。

 「芸能界で最も早くブログを始めた男」としても知られる博士に、ネット社会でのスクープの広がり方、週刊誌と芸能界の「持ちつ持たれつ」の関係などについて話していただいた。


――2016年は『週刊文春』の「文春砲」が世間を騒がせましたが、博士は『週刊文春』についてどう考えてらっしゃいますか。

水道橋博士:
 ボクは今、ちょうど3年前に『週刊文春』に連載した原稿を単行本化する『藝人春秋2』を書いているんだけど、この本は新谷学編集長がボクに語り掛けるというところから始まるんですよ。内容的には50週分の連載をまとめたものと新たな書き下ろしなんだけど、8月に上梓する予定です。同時に5月からは『週刊文春』でも連載を復活させるんですよ。そうなると、ボクは紀尾井町の文藝春秋の社屋で毎週、読み合わせ毎回やるんで、もともと編集部にも出入りしているし、ある意味文春関係者であるわけですね。

 新谷さんは明治・大正期のジャーナリストであり、日本の諧謔精神を培った編集者でもある、宮武外骨に影響を受けてるよね。正義を振りかざすだけがジャーナリズムではないんだよね。宮武外骨の「過激にして愛嬌あり」という言葉があるけど、「文春」は諧謔であり、愛嬌の部分が大事だと。それは本当にそうですよ。例えばたけしさんも毒舌を言いながら愛嬌があるから愛されてる。「文春」ってそういう愛嬌を大事にしてるんだよね。

――今、そういう愛嬌のあるメディアはあまりないと。

水道橋博士:
 ないよね。例えば世間や芸能界に届いていないけど、ベッキー問題だって、テレビ番組の降板や出演自粛はやり過ぎだと文春側の方だって思ってるから。だってその後、文春にベッキーの手紙を公開するわけじゃないですか。ベッキーをどこまでも追い掛けて排除しようとか、引退しろって言ってるわけではない。ボクもそこに共鳴してるんですよ。『週刊文春』って芸能人いじめじゃないかって言われるけど、でも実はそうじゃない、そこまでいじめを徹底しようって思ってるわけじゃないんだって。そこがいつの時代もみんな、わからないんだよね。

――やろうと思えばもっとやれますからね。

水道橋博士:
 問題なのは、そういうジャーナリズム論、対策が芸能人側に今はないんですよ。ボクはもう男性週刊誌は3~40年にわたって毎週ひたすら読んでるからね。「文春」「新潮」「ポスト」「現代」「アサ芸」……でもそういう人ってなかなか芸能界にいないんですよ。芸能人って、この手のスクープ記者が何を狙って、何の動機でやってるか分からないんですよ。ただただ自分たちの敵だと勘違いしている。

 2016年に公開された『SCOOP!』って映画見たら分かるじゃないですか。彼らは彼らの生態系をつくっていて、彼らの間の仁義があって、彼らなりの正義がある。あの映画の中の福山雅治はそうなんだけど、自らは清いわけではなく享楽的に生きるのがスクープカメラマンという生き物。社会正義のためじゃなく標的を追う。そういう職業なんだっていうのを、今の芸能界の人たちが知らなさすぎる。そういう人たちと昔から持ちつ持たれつで良いことも悪いことも、情報を与えたり、与えられたりして、芸能界をつくってきてたのを。

――なるほど。

水道橋博士:
 たけしさんは『FRIDAY』事件で講談社に討ち入りに行くほど取材側とは揉めたから、講談社とはしこりが残った。でも実は、その前は東スポと揉めたんだよね。でもそこから和解して草野球で交流しながら、今たけしさんは客員編集長になってるでしょ。東スポ映画祭もやるようになった。そこからもう20年以上経つんだから。そういう関係性をマスコミとは築いていくもんだっていうことを、新しく芸能界に入ってくる人たちも、新人マネージャーも知らないじゃないですか。芸能界は『義理と人情』の中で生態系がある。「ここの事務所はここの媒体と懇意だから、これ以上は書けない」みたいな網の目が張り巡らされている。全てに細部にわたるルールと伝統としがらみがある。それが分かってない人だらけなんですよ、今。だから不可思議な事件も起きているの。

――『週刊文春』が他の週刊誌と違う強みは何だと思いますか?

水道橋博士:
 週刊誌自体の売り上げが下がっている中、新年号で90万部、通常は65万部程度売れる。ぶっちぎりですよ。新谷編集長体制の「文春」は、花田編集長時代以来のブームをつくってるよね。そのためには地道な作業と取材費も使う。あと編集部が明るくないとダメですよね。映画『SCOOP!』で描かれるように、「何万部売れました、うおーっ!」というような高揚感。スクープを狙う記者たちは売上を上げるためにいるわけだからね。

 文春は硬軟織り交ぜだよね。政治経済の社会悪も取ってくるし、芸能人のスキャンダルも取ってくる。人間は人の裏側に興味があるのよ。芸能人なんて自己申告の表の側しか見せない職業だから。そうじゃない、裏では女遊びをやってますよ、薬やってますよ、性格悪いですよ、そういうのを世間は知りたいわけですよ。

――まさにそこが読者の興味の対象だと。

水道橋博士:
 新谷編集長も確実にその方向にあるよね。芸能人のスクープをやると絶対に売り上げが伸びるから。ベッキーとか、あれだけ表向き好感度の高い真面目な人が、実は裏では不倫やってると。そういうのはヒューマン・インタレスティング、人間臭いからやっぱり面白いよ。

――やはり不倫ネタは面白い。

水道橋博士:
 でもボクは不倫って全然悪いと思ってないけどね。今のところボク自身は浮気童貞だけど、あくまで今のところだし。家族に悪いかもしれないけど世間に悪いとは思わない。田原総一朗さんなんかジャーナリストとして3回も政権転覆させてるけど、下半身のスキャンダルで政治家を攻撃したことは1回もないのよ。なぜかというと自分自身が私生活で長くダブル不倫してたから。当時は、それをマスコミも記者仲間も全員知ってたのだけどそれを見逃した。そういう持ちつ持たれつの関係を作っていたから。そこにはやはり「義理と人情」があるの。

 鳥越俊太郎さんは「サンデー毎日」の編集長時代、宇野宗佑首相(当時)の愛人を暴いたのは俺の取ったスクープだって言うじゃない。だから自分が都知事選に立候補したら、逆に書かれるんですよ、「文春」「新潮」で愛人ネタを。自分が疑わしいことをやってるじゃないですか。書かれて当たり前ですよってなるよ。でも、そこもノーコメントで突っ張って、逃げ回っても無理ですよ。政治家や選挙に出馬した人とマスコミはお互い拳銃を構えてるわけだから。あとは愛嬌ですよ。鳥越さんは長年流行語大賞でずっと審査委員長をやっていたのに昨年は都知事選に出馬したからっていう理由で辞退したでしょ。あの時に会場へ行って「ゲス不倫」の表彰のとき、「誰も来ないなら代わりにボクが貰います!」って前に出ていけば、愛嬌になったのに。惜しいなぁ。

――新谷編集長は「親しき仲にもスキャンダル」ということをおっしゃいます。

水道橋博士:
 ボクが読んできた『週刊文春』史上で一番すごいと思ったのは、2002年の山崎拓の記事。山拓が自民党の幹事長のころ、愛人と親子どんぶりしてたっていう記事を抜くんだけど。テレビで取り上げられないのよ、あまりにも生々しくて。卑猥過ぎて。それをスッパ抜いたのが新谷編集長だったの。これせっかく築いた政府の要人との信頼関係なくなるじゃん。それでも「親しき仲にもスキャンダル」っていう話を、ボクと初めて会った時にしてくれて。なるほどねーと。しかも今も山拓に、ちゃんとあいさつに行くんだって。絶交しているわけじゃなくて。それが記者なんだよ。絶対、取材対象に取り込まれない。何時書くかわからない。書くことが当たり前、その自覚を持ってやってるかどうか。

――ジャーナリストとしての矜持ですね。

水道橋博士:
 そう、職業としての矜持ですよ。「文春」はショーンKの、ベッキーの、乙武くんの人生全てを奪おうとしてるわけじゃないよっていうことだと思う。そういう「文春」をボクは拍手してるし、ボクの連載でも芸能人を扱うけれど、人間賛歌をやりたいんだよ。もともとボクが芸能人ではなく、芸能界に潜入しているルポライターだっていう自覚は、亡くなった竹中労の影響なんだけどね。

――博士は「芸能界で最も早くブログを始めた男」と言われるなど、ネットの生態系について理解されている方だと思います。ネットでのニュースの消費のされ方についてはどう思われますか。

水道橋博士:
 ネットの記事はほぼ裏を取らなくても良いという文化の上で成り立ってて。要はクリックされれば中身を読まれなくたっていいんですよっていう世界観。出版社がやっている文化とまったく違いますよね。出版社では取材をきちんとして、ウラをとって。しかも情報源は秘匿するっていうルール、それって文は残っていくもの、文化そのものという大前提があるのね。そういうのをまず一般人は知らないじゃないですか。ネットは、むしろ人目を引くことだけが大事で、ウラとりや事実はそんなに関係ない、消費すれば終わりですよっていうのがネット文化なのかもしれない。

 でも人の世は多様で、いろんな意見があるのがネットだと思うよ。ボクはそれをなくせとも思わない。もし2ちゃんねるをなくしたら、重大な内部告発もなくなりますよ。それは社会を健全にするのに必要なこと。便所の落書きのようなものがあふれるかもしれないけど、君の意見は違うと言う権利自体はなくしてはダメ。「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」ってのが基本中の基本です。

 ボクは今Twitterのフォロワーが50万人以上いるけど、ボクへの悪口だろうがなんだろうが、まあ反射的に怒ったりはすることもあるんだけど、「博士間違ってるよ!」って言われるのはいいと思う。ボクもブロックも基本しない主義だし、大いに受けて入れるよ。間違っている時は謝るしね。そこが今の「自称・鋼のメンタル」先生とは違いますよ。

――これだけ一般の人が日常的にネットに触れている中で、スクープのあり方も変わっているような気がします。

水道橋博士:
 ほぼ全ての人がスマートフォンを持ってるわけだからね。盗撮社会なんてもんじゃないよ。有名人であるってことはもう指名手配と一緒だからね。歩いていればスマートフォンで撮られて当たり前なんだから。有名人なのに不倫でデートしてること自体が、どれだけ隙があるんだっていう話ですよ。指名手配されてずっと追われてるのが有名人であって、「私にもプライベートがあるんで」とか言う資格なんかないとボクは思ってるからね。考え方はいろいろあると思うけど、そもそも芸能人は准公人で個人情報なんかないと思う側だね。誰も頼んでないのに自分が好きで芸能人やって、身を晒してるわけだから。その覚悟がないのならやるなって思う。

――スクープの広がり方、どう転ぶかというのは、記事を出すほうも予測がつかなくなっているんでしょうね。

水道橋博士:
 週刊誌側が怒ってるのは当然ですよ。自分たちの記事をコピーペーストされて、「一部週刊誌が報じた」じゃなくて、ちゃんと「文春」の記事って書いてくれっていうね。MXテレビの大川プロデューサーの番組も昔は地上波トークの解放区でしたよ。例えばマツコ・デラックスさんの『5時に夢中!』とか……東京という地方で、自由に言いたいことを言う番組であったにもかかわらず、今はネットですぐに部分部分を切り取られて瞬時に拡散していく。MXテレビの生放送やフジテレビ『バイキング』の発言は常に炎上している。もはや炎上で暖をとっている状態。火に薪をくべている感覚なの。それは「切り取られる」ことは本意じゃないけど、でも、もう萎縮することなく、その環境に慣れるしかない。

 たとえば漫才や寄席も密室の中の演芸であって、テレビではできないことができるのが特権だったから、浅草キッドの漫才って成り立ってた。そういうガス抜きの世界なのに。今は舞台の内容をTwitterに配慮なく書かれても困るし。そういう芸も成り立ちにくくなってるよね。

――ありがとうございました。最後に『週刊文春』について一言お願いします。

水道橋博士:
 ページ数はもうちょっと厚くてもいいと思うけどね。すぐ読み終えちゃうから。ボクは活字中毒なんだよ。木曜発売なのに水曜日の14時ぐらいには入手するからね。都内をかけずり回って。「週刊少年ジャンプ」みたいなもんだよ、1日でも早いのを入手しなきゃ気が済まない。その誰も知らないものを読んでるときの「みんな知らないんだな、明日すごい騒ぎだぞ」っていう気持ち。あれがボクの楽しみなんですよ。なんだろう、導火線に火がつく感じかな。

 田原総一朗氏デーブ・スペクター氏、そして今回の水道橋博士氏と、「文春」についての全3回のインタビューを掲載してきました。

 「文春砲」の裏側に迫るドキュメンタリードラマ『直撃せよ!~2016年文春砲の裏側~』は、いよいよ2月4日(土)20時放映です。

ニコニコドキュメンタリー総力特集「文春砲」公式サイト

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