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なぜ今「大阪万博」なのか――猪瀬直樹が語る「国家と祝祭空間」の重要性

 夏の都議選に向けた前哨戦として注目されている千代田区長選。投開票2月5日、告示1月29日と迫る中、改めて首都・東京を取り巻く問題を、元東京都知事・猪瀬直樹氏、メディアアクティビスト・津田大介氏、ドワンゴ取締役・夏野剛氏、NewsPicks編集長・佐々木紀彦氏の四人の論客と議論しようという番組『「東京の敵」は誰ですか?2017ど~なる都政』が放送された。

 若い視聴者からの「そもそも万博を開催する意味とは何なのか。高齢化社会がテーマということだが、若者世代は置き去りにされそうだ」という投げかけに、首都・東京だけではなく、“国家としての日本” という規模で考える話題にまで発展した。東京五輪・大阪万博誘致などのグローバルイベントを開催する意味について、4人はどのような視点から見ているのだろうか。


左から夏野剛氏、津田大介氏、猪瀬直樹氏、佐々木紀彦氏。

五輪や万博を世界最先端の高齢社会である日本で開催する意味

夏野:
 オリンピックや万博とか、こういうグローバルに存在感のあるイベントを、今更なんで日本でやらなきゃいけないのっていう声があるわけですよ。

津田:
 それは日本なりの新しい提案をしなきゃいけないというのは、猪瀬さんも思っているんですよね。

猪瀬:
 それは、かなり深い意味がある。2025年万博とかね。だから、世界最先端の高齢社会のなかで解決策を見つけろっていうことよ。

津田:
 課題解決と万博を組み合わせる。

夏野:
 (日本が)発展途上国であった1964年の東京オリンピックだったり、1970年の大阪万博はいいけど、先進国になって、こんな成熟社会になっているのに、「なんで今更オリンピックをやらなきゃいけないんだ、なんで今更万博なの?」って声が、オリンピックの見直しの議論でやっぱり復活してきているわけですよ。小池さんはそんなことを言っているわけじゃないんだけど。

猪瀬:
 それはそうなんだけど。ガバナンス不在だったからだろうな。

夏野:
 ガバナンス不在もあるんだけど、復活してきているんですよ。復活してきていることで一番影響を受けているのが万博誘致なんですよ。「なんで、今さら大阪へ?」っていう世論は結構大きい。

猪瀬:
 これは、それから変えていかなきゃいけない。

他の先進国も勝ち取ろうとする。グローバルイベントはそれくらいメリットがある。

夏野:
 これはぜひ猪瀬さんに、グローバルイベントを(日本に)持ってくる価値を言ってほしい。

猪瀬:
 あのね、まずグローバルイベントって戦い取らないと取れないんだよ。でね、2020年(の東京五輪)だって、取れない可能性がかなり高かったんだよね。そして実は2024年はパリがオリンピックを取ろうとしているわけよ。さらにパリは2025年の万博も取ろうとしてる。みんなね、勝ち取ろうとしてるんだよ。

夏野:
 なぜかってことですよ。それくらい、メリットがあるってこと。

猪瀬:
 東京オリンピックは30兆円の経済効果という大イベントなわけで。さらに、我々日本人が同じ場所にいるんだっていうのを確認できる。それこそトランプが国民国家って言っているけれども、我々も国民国家だよと。それはね、基本ですよ。みんなオリンピックって、すごい興奮するでしょ?

佐々木:
 お祭りですもんね(笑)。

猪瀬:
 祝祭っていうのは、定期的にないと。だから天皇の崩御の問題も、ある意味で祝祭空間なんだよね。崩御、即位っていうのは、大祝祭空間で、オリンピックも大祝祭空間なんだよね。トランプの1年間のクリントンとの戦いも大祝祭空間なんだよ。つまり、日常性だけが世の中に存在するんじゃなくて、岸和田のだんじりでも、博多の山笠でも、諏訪の御柱でも、常にそういうものがあって日常があるわけよね。そういうものがない、ただのんべんだらりとした空間や時間っていうのは、ありえないわけ。

国家にも常に儀式、祝祭空間がある。自分たちの内部で盛り上がる気持ちが必要

猪瀬:
 「なんでそんな無駄なことをやるのか?」っていうのは、よく自分の頭を整理してみろと。お前はいつ興奮しているんだと。24時間のうちに今日は1杯飲むとか。普段は拝んでないくせに、誰かの結婚式がある時に神父さんを呼ぶ。なんで葬式があるのか。国家にも常に儀式、祝祭空間があるわけよね。そういうことについて、みんな自己認識が足りないんだよ。

 で、やるといつの間にか興奮してお祭りに参加してる。だからお祭りを企画する実行委員会は大変。初めてやった時に、やった意味がわかってもらえる。リーダーシップとか、ビジョンというものは、常にそういうものを持っていないとダメなんだよ。だから、オリンピック、あるいは万博。「前にやったじゃねえか」って、そういうのじゃないんだよ。でも、そういうことが安倍さんのところにないんだよ、今。

夏野:
 わりと、人任せという感じ……?

猪瀬:
 安倍さんがいけないというよりも、万博は建前は国なんですよ、大阪でやるにしても。東京オリンピックは都市。大阪でやろうって提案があったから国が動いたってことであって。じゃあ国は一体なんのお祭りをやろうとしているの? アメリカでは良いも悪いも含めてトランプ祭りだよね。そういう興奮する瞬間、排外主義とかではなくて、自分たちの内部で盛り上がる気持ちみたいなものを持たないと。

津田:
 総選挙でも全く盛り上がらないですからね。

夏野:
 AKBの選挙は盛り上がるのに(笑)。

猪瀬:
 あれも小さいお祭りをやってるわけだよね。

夏野:
 みんなが言っていることは、そういうものを作ることによって、もう一度(国民として)結合することを確認したりすること。国民行事っていうのは、実はものすごい少ないんですよね。国民が盛り上がるっていうのが少ないので、その数少ないチャンスを(東京五輪は)手にしたし、万博は手にしようとしているから、これはちゃんと活かそうよっていう話です。

猪瀬:
 そうなんだよね。

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