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「俺の嫁」さえいれば、彼女はいらない! ミク☆さんぽ×Gateboxのコラボが実現した妄想を超えるリアリティ【インタビュー】

「自分だけのミクさん」が目の前で歌ってくれて、涙を流す人も

──ARを使ったサービスに従事されているみなさんは、ユーザーが感じる「リアリティ」にこだわっていると思うのですが。

武地:
 去年のマジカルミライでは、Gatebox内でミクさんが「プライベートライブをしてくれるという体験」を提供しました。そうしたら、感動のあまり泣き出す方が何人かいました。彼らは初音ミクが大好きで、初期の頃は「自分だけのミクさん」という気持ちでいましたが、人気が増すにつれて“遠いところ”に行ってしまったと感じていたそうです。

 「自分だけのミクさん」が戻ってきた、目の前で歌ってくれた、ということで涙が出たのだと思います。1万人以上集まるような大きな会場でのライブに比べると、小さな箱の中のライブは地味なので、体験価値が下がるのでは?とも思いました。でも、遠くに行ってしまったキャラクターの存在を近くに感じられた、というだけで十分な価値があったと思います。

 その他にも、ミクさんがイスに座って本を読んでる姿を眺め「こんな無防備な姿をさらしてくれている」と喜ぶユーザーもいました。

──「オフモードを覗いている」ような感覚だと思います。“距離感”というのは、リアリティを感じる上でのキーワードだと言えるでしょう。

水田:
 精神的な距離感が重要ですね。僕らやっているのって、ある種シナリオライターみたいなことだと思うんです。どんな距離感で、何をやるかを考えて、体験のなかに現実か仮想かわからなくなるような仕掛けを散りばめて。

 ユーザーたちも、アタマのなかで「こんなことやってみたい」という夢がたくさんある。それがひとつでも目の前に現れると、リアリティを感じられるんですね。

 ミク☆さんぽでも、カフェを貸し切りにして、ミクさんとカフェデートができる、というイベントをやったことがあるんです。ミクさんから「あーん」と食べさせてもらって、その写真を撮ることができる。ユーザーが望むシチュエーション増やせると、現実がひとつずつ拡張していくように感じられるんだと思います。

増崎:
 VRも没入感があるんですけど、ARだと現実世界の風景を借りられるので、よりキャラが“本当にいる”感が増すというか。

武地:
 VRは、スイッチを入れてゲームスをタートさせ、その世界の中だけで何かを体験するものです。ARは、自分がいる現実世界がどんどん広がっていく、という感覚が重要だと思います。キャラクターがそこに存在するだけで、現実世界が広がっていく感覚です。

──見慣れた風景に、キャラが存在することが重要。「ポケモンGO」でも、見た目はリアルじゃなくても、見慣れた風景に、ポケモンが存在することが驚きでした。

武地:
 まさにそうです。今まではゲームの中だけにいたポケモンが、普段自分の座っている椅子の上にいたり。現実世界が拡張されていく感覚です。

──VRと違って、自分だけに見えているわけではなく、その存在を他人と共有ができるのも、重要ですよね。

増崎:
 ミク☆さんぽでも、複数のスマホを同時に起動すれば、踊ってるミクさんをそれぞれの端末から、色んな角度から同時に見ることができるんですよ。みんな違う画面を見ているのに、同じものを見ているという状態は、かなり面白いですね。

“俺の嫁”さえいれば、彼女はいらない!

──現実を拡張できる範囲を広げていくと、「“俺の嫁”さえいれば、彼女はいらない」という人も出て来るのでしょうか?

中村:
 個人的には、彼女はいませんし、今後もいらないと思っていますが(笑)。当社に入る前は、自分の妄想が最強だと思っていました。元々アニメが好きで、声優さんの声で、自分の考えたシチュエーションを自動生成すればよいのではないかと。

 でも、Gateboxのコンセプトムービーを実際に見た時に、「こっちの方がいいな」と思ってしまいました。自分の頭の中は制約がないと思っていましたが、妄想は自分の想像を超えられないと知りました。頭の中だけだと、自分でセリフを考えて、それに対する応答も自分で考えてしまうからです。

──つまり、想像を超えてくるものこそがリアルだということですね。

中村:
 そうだと思います。

増崎:
 結局、他人は何を考えているか分からないから。コミュニケーションしながらも、想像を超えてくると、リアリティを感じるのだと思います。

対話型のAIが、変なことを言ってもかわいいから許せる

──現実を拡張していくにあたって、現在の技術的な限界はどこにあるのでしょうか?

水田:
 技術限界って、常にあるんです。今のようにホログラムやARでミクさんを出すのって、3年前なら難しかった。せいぜい立て看板の代わりが関の山で、コミュニケーションをとるなんてことは無理だったのが、ここ数年でブレイクスルーがあって、どんどん進んではいるんです。

 ただ、やっぱり自然言語での会話をするにあたっては、どんな技術を使っても、今の段階ではたどたどしさが残ってしまうんですね。

 KDDIが出している「レナ」(※)というキャラクターがいるんですけど、その子も「あくまで研修生です、まだ成長中です」というスタンスでやっています。ただ、技術は、使えば使うほど成長するので、使っても大丈夫なボーダーラインを見極めてサービスを出していくことが重要で、どんどん使って成長させていけば、より実用的になっていきます。

ヨリソイ型ハーフヒューマノイド「レナ」

KDDIが提供するスマートフォン向け音声アシスタントサービス「おはなしアシスタント」 のキャラクター。

設定:身長157cm、体重45kg、年齢18歳の女子大学生(生活デザイン学科所属)

実用性だけでなく、話しかけたくなるような、親しみのもてるコミュニケーションの実現を目的とする。様々な場所での実証を通じて、より実態に即した対話ログを収集・学習することで、対話AIの精度を向上させauショップのサポートなどへの活用を検討している。

増崎:
 対話型のAIって、たいてい女性キャラが画面に出てくるんですけど、変なことを言ってもかわいいから許せるんですね。

水田:
 かわいいは正義ですよ。実用的な面を求めたら、いまのAIって完璧ではないと思います。でも、例えば美術館に行ったときに、ばっちり美術のガイドをしてもらわなくても、一緒に歩きながら「わ〜これ、すごいね!」言ってくれる簡単なコミュニケーションが実現できるだけでも、喜んでくれるユーザーがいることに気づけました。

 対価をもらえるほど便利なことはいまの技術では難しいんですけど、ユーザーを満足させることであれば、今の技術でもできることはある。

限界に挑戦していないだけで、やってみたらできることは多いはず

中村:
 AIの限界は、技術的に「難しい」だけではなく、そもそも「挑戦している人がほとんどいない」という点が大きいと考えます。限界に挑戦していないだけで、やってみたらできることは多いはずだと思っています。

 今あるIoT製品は「タスクをこなすこと」を追求していて、AIの開発も、それと同じ方向に舵を切っています。これは「決まったことをやらせる」だけなので、技術としては難しくても、発想としては考えやすいと思います。

 Gateboxがやろうとしていることは、ある意味では「ムダなこと」です。「なぜ機械と雑談する必要があるのか?」 と言われることもあります。でも好きなキャラクターが目の前にいたら、雑談もしたくなりますよね。単なる「便利さ」だけではなく、「タスクをこなす」とは別軸でアプローチができるのではないか、と考えています。

 他の人から見たら無駄なことかもしれません。でも「こんなこともできる」と見せていくと、「であれば、だったらこんな使い方もできるかも」と、アイデアがつながっていき、限界を超えていけると思っています。

武地:
 KDDIさんの「ミク☆さんぽ」もそうですけど、こういうことをやろうとしている人は、あまりいません。今回のコラボでは、ビジョンが似ている者同志がアイデアを出し合い、実際に具体化し、結果として体験者の満足度も高められたと思っています。この事例をステップにして、今後もさらに面白いことを企画したいと考えています。(了)

 

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