村中璃子さん“マドックス賞”はなぜ報道されなかったのか。子宮頸癌ワクチン問題から考える「日米のワクチンに対する解釈の違い」
11月30日、英科学誌『ネイチャー』にてジョン・マドックス賞に、医師・ジャーナリストの村中璃子氏が選ばれたことが一部ネットメディアで報道されました。
子宮頸ガンの発症に大きく関わるHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンへの問題提起が大きく評価された日本人初受賞を受けて、12月11日に放送された『小飼弾の論弾』では、小飼弾氏と山路達也氏がHPVワクチンと、日米におけるワクチンを巡る現状について語りました。
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日本で失われてしまった“ワクチンの接種率”
山路:
科学雑誌で有名な『ネイチャー』が、ジャーナリストの村中璃子を表彰し、ジョン・マドックス賞【※】を与えたという話です。HPVワクチンというのは、子宮頸ガンのワクチンですか?
※ジョン・マドックス賞
英科学雑誌『ネイチャー』にて毎年発表される、公共の利益に関わる科学とエビデンスを広めるために、貢献した個人に与えられる国際的な賞。
小飼:
HPVによって発症する病気で一番有名なのは子宮頸ガンなんですけれども、男にもコンジローマという病気があります。ちょっとグロ注意ですけれども、検索して映像を見てください。だから、このワクチンは男も無縁ではないです。
山路:
それが世界130か国では普通に予防薬として認可され、使われているわけですよね?
小飼:
日本でも認可されて使われるようになって、7割くらいまでいっていたのに、2013年にパタッと止まるんですよ。
山路:
HPVワクチンの効果はかなり実証されていて、外国でもそんなに大きな副作用などもないし、効き目はあるしということで認められていた。
小飼:
なんだけれども、副作用を喧伝した人たちがいっぱい出たわけですよね。そういう人たちの声をメディアも一生懸命取り上げた結果、日本では接種がパタッと止まってしまったんです。
山路:
しかも、たしかWHOが日本を名指しで、ワクチン接種を止めるのはおかしいだろというような非難をしましたよね。
小飼:
ほかにもいっぱいあるんですよね、というのも実は、日本の20数年で失われたもののひとつというのが、ワクチンの接種率なんですよね。
山路:
それはHPVに限らず、インフルエンザとか、あるいは小児マヒへのワクチンもですよね。
ワクチンは社会的に焦点の当たりやすい薬だった
小飼:
実はワクチンというのは、元祖オリジナルの今では接種してもらえない天然痘のワクチン、牛痘ですね。当時にさかのぼって考えてみてもびっくりする。
無毒化、あるいは弱毒化した病原体を体の中に入れることによって、耐性、免疫を獲得するというのは、病気にすることによって病気にならなくするというものなんですよ。
山路:
最初にやった人は発想が頭おかしいですよね。
小飼:
ワクチンは色々な副作用も起こしてきています。特に有名なのはポリオのワクチンで、結構な副作用、要は弱毒化が足りなくて接種を受けたおかげでポリオになっちゃった人もいっぱい出たわけですよ。
昔からリスクリターンの関係で、ワクチンというのはかなり焦点が当たりやすい薬ではあったんですよね。
山路:
HPVワクチンに関しては感染予防の効果が確認されていますが、副作用が怖いというイメージを持つ人が少なからずいます。
小飼:
そうです。さらに副作用があった場合も、ポリオワクチンみたいにすごいことにはならないはずで、反対派の人たちが「これはHPVワクチンの副作用なんじゃないの?」というのを、いっぱい挙げていたんです。
けれども、その意見をひとつひとつ「それは違います」と証拠を上げていった。村中璃子さんがやったのはまさにそれです。
個人の利益だけに留まらない予防接種
山路:
村中璃子さんが、ジョン・マドックス賞を受賞した際のスピーチ全文が公開されているんですけれども、これが結構感動する泣ける話ですよね。
子宮頸ガンワクチンでかなり効き目があると言われていて、感染者を格段に抑えることができるのだけど、日本ではワクチン接種が行われていないために年間で3000人の方が子宮頸ガンでなくなっているそうですね。
小飼:
日本だけでね。わりとありふれたガンではあります。というのもHPVというのは弱いウイルスではあるんですよ。子宮頸ガンの理由でもあるというのがわかる前は、きわめて大人しいくらいだと思われていました。
小飼:
男にもコンジローマという病気があることからわかる通り、男が接種を受けても利益がありますが、予防接種のご利益というのは個人に留まらないんですよ。
山路:
個人に留まらないとは?
小飼:
要はその病原体を包囲殲滅しちゃうわけですよ。だから僕の娘たちというのは、僕よりもずっとあとに生まれたので、元祖オリジナルの種痘というのは受けていません。
ですが、僕は十分おっさんなので、ちゃんと二の腕に種痘のあとがあります。なので、なぜ僕の娘たちが種痘を受けなくてもいいのかと言うと、僕らが受けて包囲殲滅したんですよ。
山路:
社会に大きな利益があると。