圧倒的な立体感を感じさせる新人離れしたサウンドメイク!ボカコレ2023夏ルーキー部門2位に輝いた怪作『百葉箱』
ボカロシーンの中でも、今や避けて通れない一大イベントとなる『The VOCALOID Collection』(通称ボカコレ)。
2023年夏に開催された今イベントの新人部門、「ルーキーランキング」。3700曲以上の作品によって熾烈な争いが繰り広げられたこの場所で、今回一躍大きな話題を集めた楽曲が「百葉箱」である。
文/曽我美なつめ
通常ボカコレ中はなるべく多くのポイントを獲得すべく、大半のクリエイターが集計時間スタートジャストから楽曲を投稿する。その中で約1時間の遅れを取ったにも拘わらず、結果として「百葉箱」はルーキーランキング2位という堂々たる結果に輝いた。
当然ながら、ある種の快挙を成し遂げた楽曲にはやはりそれ相応の理由がある。「百葉箱」の場合は一聴しただけでわかるほどの、ルーキーという名称離れした巧みなサウンドメイクが、やはり大勢のリスナーの心を掴んだのが要因だったのだろう。
制作者であるボカロP・はこ曰く、元々はアマチュア有志によるコンピレーションアルバム「合成音声のゆくえ Alter」提供曲として書き下ろされた本作。
再生ボタンを押した直後わずか数秒でまず多くのリスナーを魅了するのは、驚くほどに立体的な空間造りの施されたサウンドメイクだ。
イヤフォンやヘッドホンで聴くことで、エレクトロニカ調の電子音がまるで自分の周囲360度でころころと転がるような、その特異な感覚をよりダイレクトに味わうことができる。
人によっては、これまで聴いてきた音楽とはまるっきり違うその斬新な響きに、大きな衝撃を覚えたリスナーもきっといたに違いない。
そんな心地よいサウンドの中、楽曲は終始穏やかでポップなかわいらしい響きを主軸として展開する。けっして歌い上げるような旋律ではないが、どこか淡々とした温度ながらも耳に馴染みの良いメロディもポイントだ。
電子音であることを強調するような初音ミクの歌声も、楽曲全体のマッチ度は抜群に高い。
重ねて非常に手の込んだ映像も、楽曲の世界観をより鮮明にすることに大いに一役買っている。
どの学校にも必ずひとつある百葉箱の前で繰り広げられる、二人の少女による何気ない日常の一幕。音楽とも相まって、その柔らかな雰囲気が視聴者の心を癒してくれる。映像も含めて、楽曲がひとつの作品として完成している動画と言っても過言ないだろう。
投稿から約4か月が経った現在、10万再生を越えVOCALOID殿堂入り楽曲ともなっている本作。
いわゆる通常のボカロ楽曲とも少し異なる趣をさらに楽しみたい、という人は、ボカロP・はこの他楽曲や本曲が収録されたアルバムなど、実験的な音楽を作るクリエイターとの出会いをさらに深めても楽しいかもしれない。
「The VOCALOID Collection」 公式サイト
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