ハイテンションなスピード感のあるボカロ曲 訴求力のある歌詞に注目『拍手喝采満員御礼』
つきみぐー、さんがボカコレ2021秋ルーキー枠で参戦した曲「拍手喝采満員御礼」です!
文/「め」
シンセやピアノを織り交ぜた疾走感溢れるバンドサウンドで、これは「ボカロっぽい」特徴として挙がることの多い曲調です。加えて『俺たちの番だろう?』『掴め逆転劇』『自分(てめえ)の解(こたえ)を捻じ曲げんなよ』と下剋上の意思を感じさせる、訴求力のある言葉が前面に押し出された歌詞となっています。
ハイテンションなスピード感や曲中で多用されるかけ声、そして先述の野心的な歌詞はバンド「PENGUIN RESEARCH」からのリファレンスが見受けられます。
このバンドの楽曲と比べるといささか低音域よりも中高音域が前に出ているところは、うまくボカロナイズされているといったところでしょうか。
PENGUIN RESEARCHはニコニコ動画への投稿経験もあるバンドで、メインコンポーザーを務める堀江晶太はkemu名義でボカロ曲を投稿しています。代表作の「六兆年と一夜物語」はニコニコ動画で1000万再生を超える再生数を誇り、”VOCALOID神話入り”を果たしている曲のひとつです。
そんなVOCALOID界において一時代を築いたレジェンドの所属するバンド楽曲を参照するところからは、リスペクトに留まらない戦略的で貪欲な姿勢が見て取れます。これがボカコレルーキー枠という場にこれ以上なくマッチしている!
ボカロ曲をニコニコ動画に初めて投稿してから二年経過していないクリエイターのみが参加可能となるボカコレルーキーランキング。このランキングを見る人の多くが期待しているのは”原石”です。つまり、ボカコレというニコニコ動画全体を巻き込んだ舞台をきっかけに、これからさらに飛躍していくクリエイターを見つけようとしている。そんな中で本曲の上昇志向の強い歌詞は、リスナーの深い共感を呼び、応援したくなることでしょう。
『多少空席(あき)が目立つが 俺らにとっちゃ満員御礼だ』『賛否両論あるが 俺らにとっちゃ拍手喝采だ』から感じる、どんな評価でも嬉しいし受け止めたいという思想。
『金に困る?夢に困る?どちらを選びたいなんて 笑止千万』『譲れないものはこの 皆目不可能 笑われた 目標』という、途方もない夢をそれでも掴みたい野望。
数多のルーキーによる投稿楽曲の中で1位が、あるいはランキング圏外が決まるシビアな場でこんな野心的な歌詞を見たら、「ぜひともランキング圏内に入ってほしい、なんなら1位をもぎ取ってほしい!」とつい考えてしまうのがリスナーの心理というものではないでしょうか。そうして数多くのリスナーの心を掴んだ結果が、ルーキー19位という華々しい順位なのだと思います。
つきみぐー、さんはボカロ曲の制作のみならず自身で歌う活動も精力的に行っており、歌コレ2023春ではまらしぃ部門ランキングにおいて2位となり、超会議にも出演するなど、今後も多方面でのさらなる活躍が期待されている方です。そんなつきみぐー、さんがもっと上のステージへと翔び立とうとしている今こそが、この曲を聴く最高のタイミングかもしれません!
「The VOCALOID Collection」 公式サイト
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