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ハンディー扇風機が原因で熱中症に? 対策万全で臨んだはずの猛暑日のスポーツ観戦で緊急搬送されてしまった事例を紹介

 今回紹介するニコニコ動画は『【2020年】万全だと思っていた対策が実は危険を招いていた?熱中症対策の意外な落とし穴 【ゆっくり解説】』というゆっくりするところさんが投稿した動画。
 猛暑日の草野球観戦中に意識を失い、緊急搬送された女性の事例について、音声読み上げソフトを使用して解説しています。


■ハンディー扇風機の使用が逆効果に?

魔理沙:
 さてと、今回はリクエストがあった、熱中症事例の1つを紹介したいと思うんだぜ。

霊夢:
 今日も熱中症の話……。

魔理沙:
 それに、今回も例によって、紹介の一部でショッキングな表現をしている箇所もあるので、そういったものが苦手な人は、あらかじめ注意してくれ。

霊夢:
 な、なんかまだどんなことになるのかわからないけど、気になるからおっけーおっけーしてみるわ……。

魔理沙:
 ヨシヨシ、それじゃ早速本題に入るんだぜ。
 わが国の本州、関東地方某市には、1人の女性が暮らしていた。彼女は隣の市にある、大型デパートに入っている、洋服店に勤務している店員で、この日は休日を利用して、知人の野球試合を見に来ていた。

霊夢:
 野球?

魔理沙:
 ああ。彼女の知人の男性は、趣味で草野球をしており、Aさんの暮らす市の野球場で、この日試合を行うことになっていたため、Aさんはその応援という形で、野球場を訪れていたんだ。

霊夢:
 あぁ~、草野球ね。河原とかで時々試合してるの見たことあるわ。

魔理沙:
 午前8時ごろ。この日は8月上旬。予報では最高気温約39℃の猛暑日で、試合に出る選手はかなり過酷な環境下で動くことになりそうな日だった。

霊夢:
 そんな暑さでも野球するんだ……。

魔理沙:
 Aさんは、出かける前に朝の天気予報で、この日の最高気温や、最も暑くなる時間などをチェックし、熱中症対策として、飲み物をクーラーボックスにいれ、ハンディー扇風機をもって、それらを車に積み込み、野球場へと、むかった。

霊夢:
 かなりしっかり対策してるわねAさん。

魔理沙:
 野球場に到着後、Aさんは知人とあいさつをして、その後観戦席に移動し、彼女と同じく、応援に訪れていた別の知人たちと合流。猛暑の中試合が始まった。この野球場は、グラウンドはもちろん、観客席に屋根はなく、直射日光が当たるようになっており、日傘や簡易的なタープ、頭にタオルをのせ、日陰を作って試合を観戦していた。

霊夢:
 うわぁ……暑そう……。

魔理沙:
 午前11時頃。暑さはさらに増していき、Aさんが携帯電話で調べたところ、この地域の最高気温は、38℃にまでなっていた。Aさんも他の観戦者たちと同じく、頭にタオルを乗せて、首のあたりにハンディー扇風機で風を当てながら、スポーツドリンクで水分を補給しつつ、この試合を観ていた。

 そして、時刻は昼になり、休憩の時間となったため、Aさんは1度車に戻り、少し冷房で涼んでから、一緒に観戦していた知人たちと、食事に出かけようと、観戦席から立ち上がり、知人に話しかけた。

霊夢:
 おひるごはーん!

魔理沙:
 しかし、なぜか彼女は上手くしゃべることができず、知人に自分の意思を伝えることができなかった。

霊夢:
 えっ……? なにそれ??

魔理沙:
 そして、「あれ? おかしいな」と思った次の瞬間にはAさんは病院のベッドで目を覚まし、腕には点滴の管が刺さっていた。

霊夢:
 ハァ⁉ えっ、なになになに、どういうこと?

魔理沙:
 Aさんも訳が分からなかったが、彼女が目を覚ますと、近くに居た看護師が医師を呼び、Aさんはその医師から事情を聞いた。話によれば、Aさんはあの直後、観戦席の床に倒れて嘔吐し、それを目撃した知人たちによって、救急に通報され、最も近かったこの病院に緊急搬送されてきたということだった。

霊夢:
 あの時倒れてたんだ……。

魔理沙:
 搬送先のこの病院で診察を受けた結果、Aさんは熱中症に罹っていると診断されていた。

霊夢:
 熱中症……でも、Aさんって結構ちゃんと対策してたわよね?

魔理沙:
 ああ。確かにAさんは観戦中、直射日光を浴びないようにしていたし、水分補給、塩分の補給もしっかりと行い、またハンディー扇風機によって、首や顔などに風を当てていた。しかし、医師の話によればこの対策では不十分……というより、むしろ危険な行為だった可能性があるということだった。

霊夢:
 ど、どういうこと?

魔理沙:
 Aさんはあの時、気温約38℃の環境下で、長時間野球観戦をしており、その最中、水分や塩分を補給していた。そして、手持ちの小さな扇風機を使い、顔や首、腕などに風を当てていたが、このハンディー扇風機で風を当て続ける行為が良くなかった。

霊夢:
 え、風を当てたほうが涼しくていいんじゃないの?

魔理沙:
 確かに、一般的に人間は、皮膚に風を感じることによって、体感温度が下がると言われている。風速1メートル毎秒の風があたることで、体感温度が約1℃下がると考えられている。ただ、これはあくまでも体感温度で、一時的に涼しいと感じても、それは錯覚に過ぎなかった。

 それにAさんの置かれていた環境下は、気温38℃という、とんでもない暑さ。しかも当時は、夏にしては湿度が低く、Aさんのハンディー扇風機から送られてくる風は、ほとんど外気温と同じ温度だった。

 Aさんは体温を下げるために、首や顔、腕などにこの扇風機で風を当てていたが、汗をかいたこれらの場所に、熱風を当てていたせいで、皮膚の表面にかいていた汗がすぐに蒸発し、本来汗の持つ、体温調節機能を果たせなくなっていた。

霊夢:
 汗の持つ体温調節機能?

魔理沙:
 ああ。汗の最も重要な役割は、体温の調節機能だ。風邪の発熱や、気温の高い環境に置かれた時、体温が上昇することで発汗が起き、汗をかく。この汗の水分が、皮膚の上で蒸発するときに、気化熱によって体温が奪われ、それによって、人は常に体温を、36.5℃前後の平熱に保つことができるんだ。

霊夢:
 なるほど……だから暑いと汗が出るんだ……。

魔理沙:
 いってみればこれは、皮膚の上で「打ち水」をしているようなものだな。この汗が蒸発するまでにはしばらく時間がかかり、この蒸発するまでの時間があるからこそ、体温が下げられるんだが、Aさんのように、温風を当ててしまうと、体温が下がる前に汗だけがすぐに蒸発してしまい、本来汗の持つ、体温調節機能が果たせなくなってしまう。

霊夢:
 そういうことだったんだ……。

魔理沙:
 それに、風を当てる場所も良くなかった。

霊夢:
 場所って首?

魔理沙:
 Aさんは、体温を下げるために、首元といった、動脈などの太い血管が走っている部分に、集中的に風を当てていたが、これはむしろ逆効果で、温風を当てることによって温められた血液が、全身に巡ってしまった。

 このことと、汗による体温調節ができていなかったことによって、十分な水分補給をしていても、身体に熱がこもってしまい、Aさんは熱中症の症状を引き起こし、意識を失ってしまっていたと考えられた。

霊夢:
 まさか扇風機でそんなことになるなんて……。

魔理沙:
 ハンディー扇風機は、実は使い方によって、熱中症予防ではなく、むしろ熱中症を引き起こす要因になってしまうこともあるんだ。

霊夢:
 そんなこと考えたこともなかったわ……。

魔理沙:
 気温35℃を超えるような環境下で、扇風機の風を首にあてるというのは、ドライヤーの熱風を風に当てるような物だったんだ。

霊夢:
 確かに……よく考えると、送り出す元の空気が熱いんだから、扇風機を使ったって、冷たい風がくるわけじゃないもんね……。

魔理沙:
 特に、汗腺が未発達な子供や、汗をうまくかくことのできない高齢者、障碍者、基礎疾患のある人などは、特にこの行為で熱中症になりやすい。

霊夢:
 じゃあ、こういう時はどうしたらいいの?

魔理沙:
 熱中症予防で最も重要なのは、高温となる場所に居ないことだが、やむを得ず、そういった環境下に滞在しなければならない場合は、熱中症対策グッズを上手く利用しよう。

 ここまで、ハンディー扇風機の危険な部分ばかりを話してしまったが、この対策グッズも上手く使えば、十分に熱中症予防に効果が期待できるといわれているので、その使い方や、基本的な熱中症予防をいくつか紹介しよう。

霊夢:
 それは私も知っておきたいわね。

魔理沙:
 まず、熱中症予防をする際に行うのは、自分が暮らしている地域の「暑さ指数」を知ることだ。

霊夢:
 暑さ指数?

魔理沙:
 これは「気温」「湿度」、そして「輻射熱」という、日差しを浴びた時に受ける熱や、地面、建物、人体などから出ている熱の3つを取り入れた、温度の指標のことだ。

 一口に「暑さ」といっても、それは気温だけではなく、これらの3つの要素によってできており、熱中症に関して言えば、気温が高いと危険と考えがちだが、実は湿度の高さも大きく影響している。例えば最高気温が32℃でも、湿度が40%の時と、60%近い日では、湿度が高い日の方が、圧倒的に熱中症患者の数が多くなると言われている。

霊夢:
 湿度が高いほうが危ないんだ?

魔理沙:
 湿度が高いと、汗をかいてもそれが体にまとわりついて、蒸発しにくくなり、体温を下げる効果を弱め、熱を籠りやすくさせてしまうからな。

霊夢:
 あっ……そっか。汗は蒸発してくれないと、体温を下げてくれないもんね……。

魔理沙:
 Aさんの時は、夏にしては湿度が低めだったがな。この暑さ指数は、環境省のサイトや、気象予報系のサイト、ニュースなどで、地域ごとの数値を確認することができる。この指数が28を超えている日は、熱中症患者の発生率が急増するので、特に警戒するようにしよう。

 具体的な熱中症予防行動としては、まず直射日光を浴び続けないこと、屋外では涼しい服装で、こまめに休息をとり、水分、塩分もこまめにとること。この際、カフェインの含まれるものや、お酒といった、利尿作用のあるものは、かえって体の水分を失いやすくしてしまうので、メインの水分補給源にしないこと。

 また、ハンディー扇風機を利用する際は、濡れタオル、タオルを巻いた保冷剤などを首にあてて使うといい。保冷材の場合は、首の動脈を直接冷やし、血液の温度を下げて、体温を下げるため、濡れタオルはこれに加え、首を濡らして、そこに風を当てることによって、継続的に気化熱で体温を下げる狙いだな。

霊夢:
 なるほど……。

魔理沙:
 この濡れタオルを皮膚にあて、風を当てるという方法は、環境省が推奨する、「熱中症の応急処置方法」にも記載されており、高い効果が見込まれる。ただ、ハンディー扇風機を使い、首に風を当てる際は、なるべく顔面には当てないようにすることが大切だ。

霊夢:
 え、顔に当てた方が気持ちよさそうだけど……。

魔理沙:
 確かに顔に風を感じると、体感温度が下がるかもしれないが、近距離で顔に強い風を当て続けることによって、目が乾燥し、角膜がむき出しになって、疲れやかゆみの症状が現れることもあるからな。

霊夢:
 あ、そっか……言われてみると、そんな近くで扇風機の風当ててたら目も乾燥するわよね……。

魔理沙:
 ちなみに、ベビーカーにこのハンディー扇風機を固定し、こどもに風を送る場合は、下からではなく、なるべく高い位置に固定し、顔には直接当たらないようにするほうがいいだろう。温かい空気は通常、高い位置にあるものだが、屋外のアスファルトなどがある場所では、輻射熱によって、地表付近の方が温度が高くなっているため、下からではなく、上から風を送る方が効果的だ。

 このとき、子供に水で濡らした帽子やタオルを頭にかぶせ、先ほどと同じく、気化熱冷却をするのもいいだろう。また、万が一熱中症が疑われる症状が出たら、迷わず救急に助けを呼ぼう。

 熱中症は、1度重症化してしまうと、脳に深刻なダメージを負ってしまうこともあり、2度と元の状態に戻らなくなってしまう。場合によっては、運動障害や言語障害、体が麻痺したままになるなど、深刻な後遺症を残してしまうこともある。

 これは処置が早ければ早いほど、生存できる確率があがる。熱中症の初期症状、めまい、立ち眩みなどがあったら、すぐに体温を下げる行動をとり、筋肉痛や痙攣、汗のかき方がおかしい、吐き気がある、皮膚に異常がある、自分で水を飲むことができない、会話がうまくできない、といった症状が現れたら、助けを呼んだ方がいい。

霊夢:
 そっか……そういえば熱中症が重くなると、脳が煮えちゃって元に戻らなくなるって聞いたわね……。

魔理沙:
 より詳しい熱中症予防、応急処置などを知りたい人は、政府が公開している熱中症予防サイトを参照して見てくれ。

霊夢:
 最近本当に滅茶苦茶暑いし、私たちも気をつけなきゃね……。

 

 手軽に持ち運びできることから人気のあるハンディー扇風機ですが、意外な落とし穴がありました。使用する際は保冷剤や濡れタオルと併用することが大事なようです。
 この解説をノーカットで聞きたい方はぜひ動画を視聴してみてください。


▼動画はこちらから視聴できます▼

【2020年】万全だと思っていた対策が実は危険を招いていた?熱中症対策の意外な落とし穴 【ゆっくり解説】

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