ほぼノーブレーキの自転車と高齢女性が正面衝突… よそ見運転していた小学生の保護者に9500万の賠償請求が下った事例を紹介
今回紹介する動画は、ゆっくりするところさんがニコニコ動画に投稿した『【2008年兵庫】子供が自転車で女性に激突 相手が植物状態となり賠償金9525万請求 過去最高額 【ゆっくり解説】』。
当時11歳の小学生が運転する自転車が高齢女性に正面追突。その後の賠償責任について、音声読み上げソフトを使用して解説しています。
坂道を下る自転車と高齢女性が激突
魔理沙:
今回紹介するのは、自転車に関する事例だ。
霊夢:
自転車かぁ。一時期かなりブームになって、なんかカッコいい自転車で走ってる人多かったわよね。
魔理沙:
そうだな。特に2020年度などは、自転車販売市場は2100億円超となり、過去最高記録を更新したし、高価な電動アシスト自転車なんかも多く登場し、その売り上げもどんどん上がっている。
昨今は品薄や輸入価格の高騰の問題もあるが、感染症が流行して以降、リスクの低い健康的な移動手段として再注目されているな。
霊夢:
確かに、電車みたいに人が密集しないしね。
魔理沙:
今回紹介する事例は、それよりもずっと前、2008年に起きたものだが、その裁判結果が後の法整備見直しなど、様々な部分に大きな影響を及ぼした。
ただ、その一部でショッキングな表現をせざるを得ない部分もあるので、視聴の際はあらかじめ注意してくれ。
霊夢:
それが怖いけど、すごく気になるからおっけーおっけーするわ!
魔理沙:
ヨシヨシ、それじゃ早速本題に入るぜ。わが国の関西地方、兵庫県神戸市の住宅街の一角で、この事故は起きた。
2008年9月。この日の19時ごろ。神戸市北区のとある住宅街の間を通る坂道。市内の小学校に通う男児「Aさん」はこの日、スイミングスクールで授業を受けた後、帰宅するために自転車に乗って、この坂道を走行していた。
彼は当時、11歳の小学5年生で、親からのプレゼントである、26インチのマウンテンバイクに乗っていた。
霊夢:
あんまり大きさがぴんと来ないわね……。
魔理沙:
一般的なマウンテンバイクは、27.5インチが主流になっていて、26インチはそれよりも一回りほど小さい、身長140センチ前後の子供が乗ることが多いな。
霊夢:
あ、見たことあるかも。
魔理沙:
彼は、母親から「自転車に乗る時はヘルメットをしなさい」と言いつけられており、スクールにもヘルメットを着けて向かっていたが、この時はロッカーにヘルメットを忘れてしまっていた。取りに戻ろうか迷っていたが、Aさんは結局そのまま帰ってしまうことに。
霊夢:
あらら……。
魔理沙:
辺りが暗くなってきたので、彼はマウンテンバイクについていたライトを点灯させ、友人と共に自転車で坂道を下った。この道は緩やかな下り坂で、左側に線路とガードレール、右側が住宅地になっており、Aさんは右側、友人は左側を走行していた。
彼は路側帯付近を走行中、ペダルを強く踏み、友人よりも前に出て、坂道を勢いよく下っていった。
霊夢:
すでにイヤナヨカーン……。
魔理沙:
彼はこの時、時速約20キロから30キロの速度で疾走していたという。
霊夢:
あぶないなぁ……。
魔理沙:
その一方。そんな彼の走る先には、市内に暮らす主婦の女性「Bさん」がいた。当時62歳の女性で、この日は知人と夕方の散歩をしており、この坂道の端を歩いているところだった。しかし、坂道を疾走していたAさんは、よそ見をしていて、この女性に気が付かなかった。
霊夢:
ま、まさか……。
魔理沙:
そのことに気が付いた同級生が、「危ない!」とAさんに危険を伝えようと叫んだが、時すでに遅し。Aさんが正面を向いたときには、Bさんはもう目の前に迫っており、ほぼノーブレーキで正面衝突してしまった。
霊夢:
イヤァァァァァ!
魔理沙:
Bさんは衝突された勢いで、約2メートルほど後ろに吹き飛ばされ、頭をアスファルトに強く叩きつけた。知人によってすぐに救急車が呼ばれ、Bさんは近くの病院へと搬送されていき、治療が行われた。
なんとか一命をとりとめたものの、頭部を強打していたせいで、大脳の機能が停止し、視床下部と脳幹のみしか機能しない状態になってしまったため、彼女の意識は戻らないままだった。
霊夢:
えっ……それって……。
魔理沙:
これは所謂、「植物状態」というやつだ。彼女が大きなダメージを負っていた大脳は、知覚、記憶、判断、運動の命令や感情など、高度な心の動きを行うための場所だ。
この部分が機能しなくなってしまったせいで、呼吸な循環機能の調節など、生きていくために必要な最低限の機能しか働かなくなってしまったんだ。脳死状態とは違い、治療を続けることによって、目を覚ましたり、話ができるようになるケースもあるがな。
霊夢:
そんな……。
魔理沙:
この事故が起きた原因は、Aさんが坂道の下りで疾走し、前方を注視しない状態で運転していたため、前を歩いていた女性Bさんに気が付かず、衝突してしまったためだった。
この当時、彼は自転車のライトを点灯させていたが、現場は薄暗く視認性が悪かったし、時速20キロから30キロほどの、こども用自転車としてはかなりの速度を出して走行していたことで、衝突の衝撃が強くなり、被害が拡大していた。
霊夢:
Bさん側は気が付かなかったのかしら……。
魔理沙:
当然気が付いていただろうが、まさか前方から下ってくる子供の自転車が、そのまま減速せずに自分に向かってくるとは思わなかったんだろう。事故後、Bさん側は、Aさんの母親に対し、計1億590万円の損害賠償を求める裁判を起こした。
霊夢:
い、いちおく……。
魔理沙:
この裁判で被害者側は、「母親は日常的に監督義務を負っていたはず」「路側帯でスピードを出し、よそ見をしていたせいで事故が起きた」と主張。その一方母親側は、少年が適切にハンドル操作をし、母親もライトの点灯や、ヘルメットの着用を指導していたとして、過失の相殺を主張。
これに対し裁判官は、「少年は当時、時速約20キロから30キロの速度で走行し、前方を向いていなかったことで女性に衝突していた」「これは前方不注視が原因で起きたと言える」また、「当時少年はライトを点灯させていたが、ヘルメットは未着用だったことから、指導や注意が功を奏しておらず、監督義務を果たしていたとはいえない」として、加害者の少年の母親に対し、合計で約9525万円の賠償を命じた。
霊夢:
子供が起こした自転車事故で、こんなに高額な賠償金になることあるわけ?
魔理沙:
この賠償額は、同様の事故判例を調べても類を見ないもので、過去最高額となるものだった。この賠償額は、被害者女性が亡くなったのではなく、植物状態となり、本来得られるはずであった収入や、それに値するものの損失、そして治療費や介護費、入院費などを合わせたものだった。
裁判官によれば、被害者女性の介護費を、1日8000円とし、女性の平均余命年数を掛け合わせるなどして算出していた。被害にあったBさんは専業主婦。専業主婦が入院により、家事ができなかったとして、月額約23万円相当の基礎収入を、平均寿命の半分の期間、得られなくなったものだとして計算した。
霊夢:
専業主婦でもそういう計算になるんだ……。
魔理沙:
さらに、これらに治療費などを加え、母親に対し、Bさん側に3500万円、Bさんに保険金を支払った。保険会社へ約6000万円の支払いを命じていた。
霊夢:
保険会社にも払うの?
魔理沙:
これは被害者側のBさんと、その夫が加入していた保険会社が、Aさんの母親に対し、賠償金約4600万円の支払い、および支払った保険金6000万円の返還を求めていたためだった。
特に、裁判が行われた時点で、被害者のBさんは約4年間意識が戻っていない状況だったし、それが継続していたため、慰謝料や治療費などが合わさって、この金額になっていたと思われる。
霊夢:
そっか……亡くなった時より、むしろ高額になる場合もあるのね。
魔理沙:
子供が起こした自転車事故にしては、賠償額が高額すぎると感じる人も多いかもしれないが、実は自転車事故で賠償額が高額になることは珍しいことではなかった。
霊夢:
そうなの?
魔理沙:
無灯火で自転車を運転していた女子高生が、看護師女性に追突してしまった事故などでは被害者がその後歩行困難となり、職を失ったことで、女子高生の過失が認められ、保護者に約5000万円の支払い命令が下った判例もある。
例え子供が起こしたものであっても、事故を起こしてしまえば、大人と同等の責任が生じるんだ。ただ、このような高額な賠償金を請求された場合、子供には支払い能力がないため、親が賠償するケースが多い。
霊夢:
そういうことね……。
魔理沙:
そして、自転車保険への未加入で、賠償金を支払うことができず、破産する加害者も多かった。
霊夢:
あ、そっか。確かに自転車でちゃんと保険に入ってるって人あんまりいなさそう……。
魔理沙:
自転車の普及推進や、啓もう活動をしている日本サイクリング協会によれば、全国の自転車保有台数は約8000万台で、そのうちの約3000万台ほどが日常的に利用されているとみられているが、その一方で、自転車の保険加入率については、10%にも満たないと言われている。
霊夢:
ほとんどはいってないじゃん……。
魔理沙:
自動車の場合は、自賠責保険の加入が義務付けられており、任意保険の加入率についても、対人賠償、対物賠償保険のいずれも、約7割以上が加入しているという、高水準となっている。
しかしその一方で、当時自転車は保険加入義務がなく、事故を起こした際に高額の賠償請求が本人や保護者、遺族に降りかかることが多くなっていた。
霊夢:
自転車って、手軽で誰でも乗れるってイメージあるけど、車両は車両だもんね……。
魔理沙:
そうだな。自転車は手軽でエコというイメージが先行しすぎて、教育が行き届いていない部分があることは間違いないだろう。だが、自転車は道路交通法で、「軽車両」に位置付けられており、車の仲間とされている。
なので、走行するときは、車として交通ルールを遵守するとともに、マナーを実践しなければならない乗り物でもあった。今回の事故で、Aさんは当時、道路右側の路側帯内側を下っていた。
霊夢:
そういえば、路側帯って何なの?
魔理沙:
路側帯は、車道の左側に引かれた白線の内側だ。これは歩道が設けられていない道路などに設置されている。
霊夢:
あぁ、この歩行者が歩く線のことね。
魔理沙:
この当時、左側の路側帯走行は認められていたが、歩行者に対しては十分注意を払うべきであり、安全確保のための徐行、または一時停止して、歩行者の通行を妨げてはならなかった。
また、右側走行では、路側帯を車道側にはみ出した時点で、左側走行の車両と対面する形になり、逆走となるため、法規違反にもなる。
霊夢:
そっか。右側の路側帯を走ったら、前から車が向かってくる形になるもんね。
魔理沙:
今回の事故裁判で、母親側は十分に指導をしていたと主張していたが、保護者の指導実績にかかわらず、繰り返し注意し続けていたとしても、実際に子供がルールを違反し、結果事故を起こせば、監督責任が問われることになる。
当時Aさんは11歳。小学校1年から3年生の自転車利用は、一般的な小学校の内規では制限されているが、彼の年齢ではその限りではなかった。
自転車というのは、勢いが付けばペダルを踏まなくても、勝手に進んでいくもので、交差点や一時停止のある場所ごとに、自律的な動作で停止し、安全を確認するなど、運転者の判断による操作が重要な乗り物だ。
しかし、彼のような年少者の場合は、分別や警戒心が未熟であったり、そもそも交通ルールを知らない、漫然とした運転をしやすい。そのため、自転車の利用にあたっては、有効な指導を十二分に行う必要があっただろう。
もちろん、24時間常に親が監視するようなことは、現実的に考えて不可能なので、より適切な交通ルールの指導、教育が必要だった。
霊夢:
そうね……保険に入ることも大事だけど、自転車を運転することの危険とか、注意しなきゃいけないこととか、その理由も合わせてちゃんと教育する必要があったのかもしれないわね。
魔理沙:
何故自転車でやってはいけないことがあるのか、それを破るとどうなるのかなど、ルールがなぜそうなっているのかも一緒に教えないと、あまり効果がないのかもしれない。その後、この事故が起きた兵庫県では、自転車の保険加入の義務化が行われ、その他の地域でも徐々に保険加入の義務化が行われつつある。
ちなみに、2022年の時点で、加入義務化に関する条約がある都道府県は30か所で、その他は努力義務となっている。未加入による罰則などはないものの、未成年の自転車利用について、保護者が子供の自転車保険を準備する義務があると定めている地域も多い。
また、住んでいる地域で義務化していなくても、義務化されている地域に通勤していたり、その場所で自転車を利用する場合は、保険加入を行わなければいけないので、注意した方がいいぜ。詳しくは、各自治体のサイトを参照してほしいぜ。
霊夢:
自転車保険とか、あんまり馴染みがないけど、事故に遭った時のことを考えると、絶対入ったほうがいいわね……。
魔理沙:
そうだな。事故を起こさないことが最も大事だが、万が一事故を起こしてしまった場合、自分やその家族はもちろん、相手の命を奪ったり、その人生を大きく変えてしまうことだってあるからな。
ここまで高額な賠償命令が下った自転車事故は珍しいが、自転車に乗る人はもちろん、普段外を歩くすべての人も、決して他人事ではない事故だったな。
霊夢:
そうね……。最初は単純な自転車のちょっとした事故かと思ったけど、車よりも身近で簡単に誰でも運転できるようなものだし、ある意味で自動車事故よりも怖いのかもね。
魔理沙:
ちなみに、保険加入する場合は、必ずしも「自転車保険」と名前が付くものである必要はなく、事故相手への賠償が補填される、個人賠償責任保険、火災保険や自動車保険、傷害保険などの特約や、クレジットカードの付帯保険などもあるので、気になる人は保険会社やカード会社のサイトなんかを調べてみてほしいんだぜ。
小さな子供でも乗ることができてしまう自転車だからこそ、万が一に備えておきたいものですね。
この解説をノーカットで聞きたい方はぜひ動画を視聴してみてください。
【2008年兵庫】子供が自転車で女性に激突 相手が植物状態となり賠償金9525万請求 過去最高額 【ゆっくり解説】
https://www.nicovideo.jp/watch/sm41837493
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