『俺の妹』伏見つかさ×『はがない』平坂読 対談──ラノベにおける“現代ラブコメ”を極めた二人に創作論や作品誕生秘話を語ってもらった!
取材・文/白鳥士郎
伏見つかさが『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を出版した時の衝撃は、今もありありと思い出すことができる。
読む前から面白さが伝わってくるタイトル。簡潔で読みやすい文体。スッキリと整理された、しかし魅力と特徴に溢れるキャラクターたち。そして実在のブログを作中に登場させ、発売に合わせそこでインタビュー記事を掲載するという宣伝手法。
ラノベにおける学園ラブコメというジャンルが、2008年8月10日という1日を境にして、激変したかのようだった。
ラノベ作家や編集者たちは『俺の妹』の成功にあやかろうと、似たようなタイトルの作品を大量生産した。
『俺の妹』の凄さは、それまでラノベに興味のなかった層を取り込んだことにある。
結果的にラノベ界は空前のラブコメブームに湧くことになった。
その1年後の2009年8月。
ラノベ界に新たな激震が走る。
平坂読の『僕は友達が少ない』を読んだ時、多くのラノベ作家たちはその破壊的な面白さに絶望した。
『俺の妹』は、圧倒的な新しさと面白さがあったものの、それまでのラノベの王道を踏襲した作品だった。
しかし『はがない』は、ヒロインがゲロを吐くという破天荒なキャラクター造形や、起承転結など意味は無いとでも言うかのような構成など、それまでのライトノベルのお約束そのものを全否定する、恐るべき作品だった。
先輩作家や編集者たちが得意気に語っていた創作論とはまったく違う。異彩を放つ『はがない』は瞬く間に注目を集め、2011年度ライトノベルのシリーズ売り上げ1位を獲得するほどの人気作品となっていった。
『俺の妹』と『はがない』の爆発的なヒットで活気づくラノベ業界だったが、その影では、全く売れずに辞めていく作家も無数に存在した。
私もその一人になるはずだった。
『俺の妹』と同じ2008年に発売したデビュー作は全く売れず、『はがない』と同じ月に発売した2作目も打ち切り。
2作連続で爆死したこともショックだったが……伏見つかさと平坂読という二人の才能に圧倒され、心を折られたから。
「同世代にあんな天才が二人もいるんじゃ、自分の出番なんてない……」
「誰も俺の本なんて読みたくないんだ……」
そんな私を引き留めてくれたのは、とあるラノベ作家のインタビュー記事だった。たった一言だけだったが、その作家は確かに私の作品の名前を口にしてくれていた。
全く売れず、誰にも読まれていないと思っていたデビュー作。
その作品を評価してくれている人がいることに勇気づけられたから――――その作家こそ、『俺の妹』作者である伏見だった。
『俺の妹』と『はがない』の次回作で、伏見と平坂は奇しくも同じ「ラノベ作家」という題材を選び、それを見事に書き切った。
『俺の妹』発売から14年。『はがない』発売から13年。
そして『エロマンガ先生』の最終巻が発売される2日前というタイミングで、二人の対談が実現した。
・俺妹&エロマンガ先生Twitterアカウント
・平坂読Twitterアカウント
※このインタビューは2022年8月8日、リモートにて行われました。
平坂:
お疲れ様です。
──本日はよろしくお願いします! 緊張してきました……伏見先生とは初めてお話しさせていただくので。
平坂:
ああ、面識無いんでしたっけ?
──無いんですよ。メールを一度しただけで。
(時間になっても伏見先生が現れず、関係者がざわざわし始める)
平坂:
伏見さんからLINEが来ました。
なんか……URLをクリックしてもブラウザのほうに飛んじゃって、ZOOMに入っていかない、と。
──第1回の水野先生に続き、この対談企画はすんなり始まらない宿命を背負っているんですね(笑)。
(同席してくれた電撃文庫の編集さんが対応してくれて、何とかなる)
伏見:
大変お待たせしました! 入れました!
──おお~! はじめまして! よろしくお願いします!!
一緒に旅行に行くほど仲良しな二人
──今回はラノベ作家対談の第2回目となります。第1回は、あかほりさとる先生と水野良先生でしたが、今日もあんな感じで自由にお話しいただければと……。
平坂:
あれは面白かったです。
伏見:
あんな大先輩にガスガス言っていけるんだなって……あかほりさんに「ゴツいですね」なんて言えないですよ! こわすぎる!
──お二人が気を遣っていろいろと喋ってくださったので(笑)。あとは、やっぱり残したかったんじゃないでしょうか。ラノベという文化を。後輩たちがキツそうに見えているんだと思います。
伏見:
あんなにもすごいベテランの方々が、あそこまでやる気に満ちあふれていると、やる気出ますよね。こっちも。
ぜひ後輩たちのモチベーションに繋がるような記事にしていただきたいです。
平坂:
白鳥先生がかっこよくまとめてくださるので、そこは信頼しています。
──プレッシャー……! じゃあ、まずはお二人が仲良くなったきっかけから教えていただいてもよろしいですか? 2010年5月の「ライトノベル・フェスティバル」【※】では対談もなさっていて、その頃にはもう仲が良さそうですが。
※ライトノベル・フェスティバル……ライトノベルのファンイベント。
伏見:
平坂さんと仲良くなったきっかけって、僕ぜんぜん憶えてないんですけど、何でしたっけ?
平坂:
最初に『ラノベ部』で『俺の妹』のネタをちょっと入れたら、伏見さんからメールで連絡が来て。それでやり取りするようになって。
それで、二人で「ライトノベル・フェスティバル」に行ったんです。私と伏見さんが対談する前の回くらいの。
伏見:
そうだったそうだった。
──『ラノベ部』は2008年~2009年にわたって出版されたので、そのくらいにお知り合いになったと。しかし伏見先生はどうやって平坂先生の連絡先を知ったんです?
平坂:
当時はブログをやってて、そこに連絡先が書いてあったので。
──じゃあ伏見先生が『ラノベ部』を読んで、自分の作品が取り上げてあったから作者のブログを探して、メールを出したってことですか?
伏見:
確かそんなことしたような気がします(笑)。
僕は賞を取ってなくて。同期が全然いなくて。だからその反動で友達作りに励んでいたような気がします。
──なるほど。私も新人賞を取っていないので、よくわかります。平坂先生は?
平坂:
デビューして間もなく、mixi(ミクシィ)で他の作家さんと知り合うようになって。で、いろいろやらかして……はい。
──お、お友達ができた……ということでいいんですよね?
平坂:
ネット上の繋がりは……はい。
──含みのある答えですねぇ(笑)。
平坂:
当時は地方に住んでいたのでリアルで同業者と会う機会もなく、ネットの交流がほぼ全てでしたね。
──風の噂では、お二人は健康診断に一緒に行くほど仲が良いと……。
平坂:
私が『はがない』のアニメ化を機に上京してからは、一緒にゲームしたり旅行に行くようになりました。
──なるほど。伏見先生はずっと関東ですもんね?
伏見:
長いこと千葉に住んでいたんですけど。
引っ越すたびにだんだんと……編集部に近づいていって(笑)。
──ははは!『エロマンガ先生』では足立区がけっこうイジられてたので、てっきり東京のご出身なのかと思っていました(笑)。
伏見:
足立区には子供の頃に住んでいたんです。『エロマンガ先生』の地元ネタは、幼少時の思い出を使って書いているんですよ。
他の作家に嫉妬する? しない?
(ここで伏見先生の大ファンであるニコニコニュースオリジナル編集の竹中さんが会話に加わる)
竹中:
伏見先生、平坂先生に、白鳥先生も含めて、皆さん同期という意識はおありなんですか?
──伏見先生は私より2年ほど先輩で、さらに平坂先生は何年か早くデビューしていらっしゃいますが……。
平坂:
もう三人とも十年以上やっていて先輩後輩みたいな意識もないので、同期というか同じ業界で一緒に戦ってきた仲間みたいな感覚ですね。
伏見:
当時の先輩方はもちろんそうですが、僕はラノベ作家で嫌な人に会ったことがなくて。皆さんによくしていただいたと思います。
憧れの作家である古橋秀之先生【※1】にお目にかかることもできましたし! 直接「あれの続きどうなるんですか?」って聞くこともできました!
古橋先生と同じくらい憧れていた秋山瑞人先生【※2】も、チラッと見ることができたので、満足しました。話しかける度胸はありませんでしたが(笑)。
※1 古橋秀之……『ブラックロッド』で第2回電撃ゲーム小説大賞・大賞受賞。重厚な作品から軽快な短編まで幅広く書きこなす。後の電撃文庫の流れを築いた。
※2 秋山瑞人……『EGコンバット』で電撃文庫よりデビュー。『イリヤの空、UFOの夏』はセカイ系を代表する作品と高く評価され、ラノベ作家で秋山のファンを公言する者は多い。
竹中:
そうやって話しかけて、憧れの作家さんと仲良くなったことってあるんですか?
伏見:
僕は憧れの作家さんとあまり仲良くなりたくない気持ちがあります。作品と切り分けたいんです。だから、好きな作家ほど、深くは関わらない。
──うんうん。
伏見:
そういうことありませんか? 平坂さん、どうです?
平坂:
ありますあります。
──私はまさに、伏見先生や平坂先生にそういう気持ちを抱いていたところがあります。上の世代の先生方は遠い存在過ぎて、かえって話しやすさがあるかもしれません。
平坂:
とはいえデビュー当時は尖っていたので、mixi(ミクシィ)とかで先輩作家たちの創作論に突っかかっていったりしたこともあり……思い出したくないですね。
──平坂先生は早い段階からSNSを使いこなしておられた印象ですが、若い頃は失敗もなさっていたんですね(笑)。
竹中:
伏見先生は他のラノベ作家の方との交流ってどんな感じなんですか?
伏見:
僕は電撃文庫に関して言えば、他の作家さんとはほとんど会ってないですね。ただ、五十嵐先輩【※1】とか御影さん【※2】とか土橋さん【※3】とか。みんないい人ですよ。
あと、平坂さんが膵炎になるまではけっこう一緒に飲んだりして。
※五十嵐雄策……第4回電撃hp短編小説賞最優秀賞を受賞。代表作『乃木坂春香の秘密』は漫画・アニメ化された。
※御影瑛路……第11回電撃ゲーム小説大賞最終選考候補となった『僕らはどこにも開かない』でデビュー。代表作に『空ろの箱と零のマリア』。
※土橋真二郎……第13回電撃ゲーム小説大賞・金賞受賞。『扉の外』でデビュー。デスゲーム系の小説を得意とし、多くのレーベルで作品を発表している。
──『はがない』8巻のあとがきで書かれていた、本当に笑えないあの事件ですね。最重症の急性膵炎で死ぬほどお腹が痛くて、救急車を呼ぶのがあと数時間遅かったら多分アレだったという……。
伏見:
前日に飲んでたのが僕なんですよ。
平坂:
そう! 最後に飲んでたのが伏見さんなんです!
伏見:
そうそうそうそう! その時、僕はカラスミを持って行ったんです。そしたら平坂さんは最初、お腹が痛くなったのはカラスミのせいだと思ったみたいで(笑)。ひどくないですか!?
平坂:
他に変わったものは食べてなかったので、カラスミの食中毒かなー? って。
──で、近所の病院へ行って「ただの胃腸炎」と診断されて。それで発見が遅れて、危なかったという。
伏見:
こわいですよ! 本当に……。
──亡くなってたかもしれないわけですからね……。GA文庫というぬるま湯で書き続けてきた自分にとって、新人賞の受付が年4回もあったMF文庫Jって、競争が激しいイメージでした。殉職者も出ていて……。
平坂:
関係者が何名かお亡くなりになっているのは事実ですが……だからといってMFが作家にことさら無理を強いるというようなことはなかったと思います。
むしろ、電撃さんとか大手のほうが怖い印象でした。出版枠争いが激しくて、〆切を破ると1年間本が出ないとか聞くと。
伏見:
あくまで僕自身の感覚ですが、ビジネスライクでシビアな環境だと思います。同じ電撃文庫作家に対しても、同業者であって同僚ではないというか。仲間意識はないです。
平坂:
私もレーベルに対する忠誠心というか所属意識みたいなものは、ほとんどありませんでしたね。
ただ、『はがない』が売れ始めた頃は、他のMF作品もヒット作がいっぱい出てて。だから私に限らず作家編集者ふくめMF全体に「このままKADOKAWAを超えてラノベ業界の天下を取るぞ!」みたいなイケイケな一体感はあったように思います。編集さん達と無茶な飲み方もしましたし……。
なので、メディアファクトリーがKADOKAWAに買収されて、気持ちが沈んだ……というか、梯子を外されたような気持ちになったのは事実です。
伏見:
僕は、ラブコメ作家全体というくくりでは、一方的な仲間意識がありますね。新しいラブコメのヒット作が生まれたときも、悔しいという感覚はなくて。
ラブコメのヒット作がどんどん生まれている環境は、僕らにとっては追い風で、いいことでしかないと思うんですよね。新しいタイプのヒロインがブレイクしたり、流行が変化したりしたときは、悔しがるよりも勉強の機会だと思って、パクれそうなところがあれば、パクっていきたい(笑)。
──はははは!
伏見:
見習うべきところは見習って。自分の糧にしていきたいです!
──他の作家に対する意識の話が出たところでなんですが、平坂先生は『妹さえいればいい。』に関するインタビューで「伊月と春斗も作家としてのタイプは違いますが、お互いがお互いにコンプレックスを持っている似た者同士なので、両方とも自分かな」とおっしゃってるじゃないですか。
平坂:
はい。
──しかし私は思うんですよ。メチャメチャ売れた作品を書いてて、業界の誰もが天才と認めている。そんな平坂先生がいったい誰にコンプレックスを抱くんですか?
平坂:
私なんかもうコンプレックスの塊です。たとえば、自分よりも売れている人ですとか、『このラノ』(『このライトノベルがすごい!』)で1位を取った方とかね(笑)。
──あはははは!(※白鳥は1位を取ったことがある)
平坂:
伏見さんや白鳥さんなんて嫉妬対象の筆頭ですよ! すごい小説を読んだら「これ書いたの俺にならないかな……」としばしば思います。
伏見:
はははははは!
──私もコンプレックスを感じるタイプの作家で、世代的に重なる伏見先生と平坂先生には特別な思いがあります。そういう感情があるからこそ、こうして記事を書かせていただこうと思ったんですが……伏見先生は、あまりそういう感情を持つことがないと。
伏見:
そうですね。作品で競争してる感覚はないです。
自分の作品の糧になればそれでいい。あんまり比較はしないですね。
平坂:
一緒にラノベ業界を盛り上げていけたらいいね! っていう気持ちは、私も伏見さんと同じで、あるんですよ。でもそれはそれとして、成功者は妬ましいなぁと。
──平坂先生がそれを言ってしまうと……。
伏見:
でも、(僕らが)売れてなかったころ、『狼と香辛料』がすごく売れてたじゃないですか。
──売れてましたね。私はデビューしたばかりの頃で、ちょうど「ライトノベル・フェスティバル」の講演が支倉凍砂先生だったんですよ。それを一人で見に行きました。羨ましかったですね。一応、自分の本も持って行ったんですが……最後まで出すことはできませんでした。全く売れてなくて、同じラノベ作家だなんて名乗るのが恥ずかしくて……。
伏見:
あれはちょっと妬ましかったかもしれないですね。同じ新人賞で賞を取った方ですし、僕の一方的な逆恨みというか、マウントを取られているような感覚がありました(笑)。
平坂:
ふふふ(笑)。
伏見:
絶対勝つぞ! っていうモチベーションをくれる、ありがたい存在でした。
──そういう感情が生まれないわけではないんですね。
伏見:
作者と直接会ったときは、生まれないわけではないですね。
──人間ですからね。その基準は何なんですか? 売上とかですか?
伏見:
そうですね。自分よりもすごい作品を作っている方じゃないと嫉妬の対象にはならないと思います。
人生を変えた作品
──先ほど少し話題にでましたが、お二人とも新人賞を獲得しておられないという共通点をお持ちで……平坂先生はよく「第0回MF文庫Jライトノベル新人賞」【※】と言ってますけど、そんなの無いわけで。
平坂:
たぶん誤解されてると思うんですが、第0回というのは私が勝手に言ってる冗談ではなくて、ちゃんと賞状や賞金も出てる公式なものなんですよ(笑)。
※新人賞創設以前に編集部へ投稿された作品が対象となった。平坂は『ホーンテッド!』で優秀賞を受賞。なお白鳥は同じようにGA文庫大賞が創設される前に投稿して賞を取らずデビューしているため、まさか第0回などというものが公式に存在すると思っていなかった。
──えっ!?
平坂:
とはいえ、実質的には持ち込みデビューなので、賞に応募して選考を勝ち抜いたわけではないですが。
──そうですよね。最初からドンと売れたり、編集部に押してもらって……という感じじゃない。ヒット作を自力で出して、それである日突然、人生が変わった感じだと思うんです。
平坂:
まあ、そうかもしれません。
──伏見先生は『俺の妹』ヒットがそのタイミングだと思うのですが、いきなり人生が変わって、いかがでしたか?
伏見:
とにかく楽しかったです! 急に注目されるようになって、読者が増えて、そして感想をくれるようになったので。反響が大きいのがすごく楽しかった。
反面、忙しかったはずなんですが……振り返ってみると、当時はすごく必死で。余分なことはほとんど考えていなかったように思います。色々な企画を提案していただきましたが、すべて「はい! やります!」というスタンスで。
──与えられたミッションをこなす、という執筆スタイル?
伏見:
まさにそんな感じですね。企画の提案が来たときは、基本的には断らないようにしています。
この企画(※対談)自体もそうですけど。絶対やったほうが得ですし。すごく嬉しいんですよ!
『俺の妹』新刊発売のときに毎回お話させていただいたアキバBlogさんの企画もそうです。記事自体も面白かったし、PV数もかなりあったし。「いいタイミングで目立たせてくれてありがとう!」という気持ちしかないです。
──宣伝という面も考えておられるんですね。
伏見:
ええ。
──それは、最初の作品が……売れなかった、という経験があるから?
伏見:
(苦笑)それはあるでしょうね。
とにかく当時は……「早く売れたい」とか「お金が欲しい」とか、そういう低俗な思いでいっぱいでした(笑)。
──低俗とは思わないですけど……みんな思ってるし(笑)。平坂先生は『はがない』1巻で人生がガラッと変わった感じかと思うのですが。
平坂:
1巻からガラッとということはなくて、じわじわ売れていった感じでしたね。「なんかこれまでと違うぞ?」と感じたのは2巻が出てからです。
──2巻で。星奈の表紙も良かったということなんでしょうか?
平坂:
色々な要素があったんだと思いますが、2巻が最初から調子がよくて。そこからはどんどん重版がかかるようになって……何だかすごいことになってるなー、と。
──伏見先生は「売れる」ということに対して渇望があったと先ほどおっしゃっていましたが、平坂先生はどうだったんでしょう?
平坂:
もちろん「売れたい」という気持ちはあったんです。けど、『ねくろま。』や『ラノベ部』もそこそこ上手くいっていましたから。それよりちょっと売れるくらい……生活が安定すればいいな、くらいでしたね。
──その上手くいってた『ラノベ部』を3巻で終わったというのは?
平坂:
ラノベネタを出すのが厳しくて……。
──最初から3巻で終わる予定で書き始めたんでしょうか?
平坂:
いや、何巻で終わるとかは考えていなくて。ラノベネタ縛りで話を作るというのが思った以上にすぐ限界がきてしまって ……。
──後の『妹さえ』は創作メインの話でしたが、『ラノベ部』は読書感想という感じの話でしたもんね。
平坂:
そうですね。ラノベについて語り合う、みたいな。評判自体はすごく良くて「日常コメディ、イケるぞ」という手応えを得たので、早々に同ジャンルの新作(はがない)に移ろうと決めました。