軍手かつ手作業による旋盤使用で起こった悲劇… ずさんな管理体制が招いた恐怖の「旋盤巻き込まれ事故」を解説
今回紹介するのは、ゆっくりするところさんが投稿した『【2018年群馬】高速回転する旋盤に巻き込まれ右手がズタズタになった作業員…彼はなぜ稼働中に手を出したのか?【ゆっくり解説】』という動画では、音声読み上げソフトを使用して、群馬県で発生した旋盤作業巻き込まれ事故について解説します。
ずさんな管理が招いた恐怖の事故
魔理沙:
今回紹介するのは、以前からリクエストがあった「旋盤」に関する事例だ。
霊夢:
旋盤……。確かなんか回す機械だっけ?
魔理沙:
ああ。旋盤はおもに金属などを加工する工作機械で、加工したい材料をセットし、高速で回転させ、それに刃物を当てることによって少しずつ削り、製品に加工していく機械の事だな。
霊夢:
あ、テレビで見たことあるわ。
魔理沙:
主に工業的な現場で使用されるものなので、日常生活ではまず見かけることのないこの機械だが、私たちの身の回りのあらゆる製品を生み出す重要な役割を担っている。
霊夢:
いろんなところで使われてるのね。
魔理沙:
ただ、旋盤はその構造上、使用時にはかなりの危険を伴う。それに、これはあくまでも事故の概要を伝えるものでありすべての事柄を詳細に、正確に解説する動画ではない。なので、以上のことを理解し了承できる人のみ視聴・コメントしてくれ。
霊夢:
回転系の事例って、もうそれだけで悲惨なことになるのが想像できて怖いのよね……。
魔理沙:
さっそく本題に入るぜ。
関東地方に位置する、群馬県。群馬県は古くから製紙産業が盛んで、明治以降の近代化遺産、「富岡製糸場と絹産業遺産群」が日本で初めて「シルク」をテーマとする産業遺産として登録された。
また、豊かな自然や温泉を利用した観光施設が多く、草津温泉、伊香保温泉をはじめとした、日本有数の温泉地もあり、年間を通して多くの人々が訪れる場所でもある。
そんなここ群馬県某所には、機械製造工場があった。ここは大きなものから小さなものまで、様々な機械部品の加工を行っていた。
2018年。そんなこの工場では、作業員男性「Aさん」が、旋盤を使って金属部品の研磨を行っていた。
霊夢:
研磨はヤスリとかで磨くやつだっけ。
魔理沙:
そんな感じだ。Aさんはその中でも、旋盤にコンピューター制御装置を取り付け、自動加工させることができる「CNC旋盤」という種類の旋盤を利用し、金属パーツの切削加工を行っていた。
Aさんはこの日も朝礼後、いつもと同じようにこの旋盤を操作し、パーツ加工を行っていた。
魔理沙:
彼の作業は、操作盤に入力した設定を確認し、台に加工前のパーツをセット、その後スイッチを入れ、完成した製品のチェックを行い、必要に応じて修正作業を行い完成となる。
そして、完成したパーツを手で取り出し、また新しい材料をセットするといったものだった。
霊夢:
ふむふむ。
魔理沙:
しかし作業を始めて数時間が経過したころ。加工していたパーツが設計上の値よりも大きく出来上がったので、彼は加工プログラムの設定を見直し、誤差修正をした後、再加工を行うことにした。
霊夢:
あら、予定よりもちゃんと削れてなかったのかしら?
魔理沙:
だが、時刻はすでに昼少し過ぎ。休憩時間のベルが鳴っていたので、残りの作業は午後に回し、彼は休憩に出て行った。そして時刻は13時ごろ。
Aさんの作業場のすぐ隣で別の作業を行っていた同僚、「Bさん」は、Aさんが操作していた旋盤付近から、「ゴウン」という大きな音を聞き、様子を見に駆けていった。
霊夢:
い、イヤナヨカーンなんだけど……。
魔理沙:
その直後に大きな悲鳴が聞こえてきたため、他の作業員もすぐに旋盤の方に駆けつけた。するとそこには、高速回転する旋盤に巻き込まれたAさんの姿があった。
霊夢:
ヒィ!!!
魔理沙:
彼は右手から巻き込まれたようで、現場は大量の血液で真っ赤になり、Aさんは意識を失って旋盤のなすがままの状態となっていた。
霊夢:
イヤアアアアアアアアアアアアアア!!
魔理沙:
すぐに旋盤の電源が落とされ、救急に通報。ほどなくして現場には緊急車両が到着し、Aさんは旋盤内から救出され、近くの病院に搬送されていった。
しかし彼の右手は形容できないほど複雑に変形してしまっており、それに伴う大量出血による多臓器不全を起こし、病院に到着後、間もなくこの世を去っていった。
霊夢:
う、うわぁぁぁぁぁぁああ!
魔理沙:
事故後、原因の調査が行われた。Aさんが亡くなった直接的な原因は、回転する旋盤に装着していた軍手を挟まれ、そこからさらに作業着の袖をも巻き込まれていたことだった。
また、旋盤内に当時彼が使用していたと思われる、サンドペーパーが落ちていたことから、恐らく彼は旋盤の稼働中に、サンドペーパーを使って、手作業でパーツの微調整を行っていたものだと考えられた。
霊夢:
え、でも設定すれば自動で削ってくれる機械なんじゃなかったの?
魔理沙:
ああ。確かにそうなんだが、以前からAさんはこのような微調整作業を行う際、設定を変えるのではなく、手作業で行っていたこともわかっている。
霊夢:
それってすごく危ないんじゃ……。
魔理沙:
ああ。これはかなり危険な行為だった。その後の調査で、この会社の杜撰な安全管理体制も浮き彫りになってきた。
この工場では、受注した加工物に対応した作業に使う機械、作業方法、作業に関する禁止事項などについて、会社として検討し、作業手順書を作成することなく、そのほとんどを現場の作業者それぞれの判断に任せ、業務を行っていた。
霊夢:
それってまた「自主性を重んじる」とかいって、実質丸投げしてるやつじゃん……。
魔理沙:
ああ。それに各作業者に対して、基本的な安全衛生教育の実施、経営者による職場の巡視などもほぼ行われていなかった。
このような回転する機械、特に旋盤など刃に衣服が巻き込まれるような恐れのある作業では、軍手を着用して加工することは、本来禁止される行為だった。
被災当時、目撃者がいなかったため、現場状況からの推測に過ぎないが、Aさんは午後の作業で極微量の研磨を行うのに、設定の見直しをするよりも、自らの感覚でもって「サンドペーパーで加工した方が早い」と考え、軍手を着用し、直接の加工を行った。
霊夢:
だから右手から巻き込まれてたんだ……。
魔理沙:
ああ。この現場では回転機械の使用時、軍手の使用を禁止していなかったからな。
そもそも、このような自動で加工が行えるタイプの旋盤は、回転部分が露出し、作業者に危険を及ぼす可能性がある場合、カバーや囲いなどを設け、事故を防止する必要があったが、この現場ではそれらの対策は一切取られておらず、いつでも回転部に触れることができる状態だった。
霊夢:
こわぁ……。よく考えると恐ろしい状態で作業してたのね……。
魔理沙:
その後、労働基準監督署によって、労働安全衛生法違反の疑いで、この工場の経営者は書類送検された。そして、同様の災害防止のため、以下の対策が取られることとなった。
まず原則として、高速回転中の物に直接手を近づけて作業を行わせないこと。すべての作業者は、軍手ではなく、巻き込まれにくい素材の手袋を使用すること。
やむを得ず回転する加工物をサンドペーパーなどで研磨する場合は、サンドペーパーを可動式の支持台に装着し、加工物に押し当てて行うなどの安全な方法をとること。また、各機械の操作など、作業方法を事前に検討し、作業手順書を作成。
製品の加工を行う場合、使用する機械、冶具、必要な安全装置などについて、予め会社として検討したうえで、作業方法を決定、作業手順書を作成し、関係作業者に教育すること。
特に、この工場で生産しているような、高精度で作り出される金属パーツなどは、通常の加工とは異なる特殊な方法が取られることも少なくないので、その場合についても、必ず手順書の作成、禁止事項を明確にすること。
そして、安全衛生管理者の選出が行われ、作業員すべてに定期的な安全衛生教育が行われ、その中で今回の事故を繰り返し伝え、同様の災害防止に努められることとなった。
霊夢:
こんなに沢山対策が打たれてるけど、よく考えると「当たり前じゃん」っていうものばかりね……。
魔理沙:
ああ。しかし「当たり前」と思える対策も、このような痛ましい事故が起こらなければ、中々本格的に実施されない現場があることも事実だ。
霊夢:
うぅ……安全教育がされてないと、作業員自体もその危険がわからない状態で事故にあっちゃうっていうのが怖いわね……。
魔理沙:
ああ。「マニュアルは血で書かれている」とよく言われるが、本当にその通りだと思うぜ。
霊夢:
そうね……今の現場が前よりも安全になってるのは、過去の事例の積み重ねがあるからこそなんでしょうね。
魔理沙:
そうだな。だからこそ、教訓として忘れないためにも、安全衛生教育の場などで、繰り返し過去の事例が伝えられているんだろうな。
巨大で強力であるがゆえ、危険も伴う旋盤。会社の杜撰な安全管理体制により引き起こされた痛ましい事故でした。
解説をノーカットで聞きたい方はぜひ動画を視聴してみてください。
『【2018年群馬】高速回転する旋盤に巻き込まれ右手がズタズタになった作業員…彼はなぜ稼働中に手を出したのか?【ゆっくり解説】』
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