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カニバリズム(食人)について語らないか? 「人間が人間を食べたくなる理由」まとめてみた

葬儀・宗教行為としての食人

主演の渡哲也さんが骨を食べるシーンが話題になった深作欣二監督作品。
画像は『仁義の墓場 [DVD]』Amazonより。

マクガイヤー:
 あとは宗教・呪術としての食人というのもあります。この『仁義の墓場』というのは、渡哲也さん演じるやくざの主人公があまりにも酷い男で、奥さんを死なせてしまうんです。それでも渡哲也は奥さんのことを愛していた。奥さんはただひとり、自分のことをわかってくれていたんです。

しまさん:
 あ、骨を食べるんだっけ?

マクガイヤー:
 そうそう。よく知ってますね。見たことあります?

しまさん:
 いや前に何かでこの映画の話題が出てきたような気がする。

マクガイヤー:
 俺、この映画が大好きなんで、何回も話題にしますよ。「俺が死ぬときはカラスだけが泣く!」とか、そういう同じやくざ仲間から除け者にされているので、お葬式も、誰も参列しないんですよ。渡哲也と焼き場にいる係のおっさんしかいなくて、しょうがないんで係のおっさんと渡哲也のふたりでね。

しまさん:
 そう、ふたりで拾うのお骨を。

マクガイヤー:
 広い焼き場にふたりだけです。渡哲也が泣きながら、奥さんの骨をバリバリ噛むんです。 奥さんの魂を受け継ぎたいと、何か残したいという思いがあるわけですよね。

しまさん:
 血肉に変えたい。

マクガイヤー:
 そうです。自分の血肉にどうしても変えたい。

しまさん:
 カルシウムを摂りたいと。

マクガイヤー:
 じゃない。それは全然違う。奥さんの何かが宿っているカルシウムを摂りたい(笑)。ちゃんと説明したいのは、同じ食人でも、いろんな意味合いがあるよ、ということなんですよ。

しまさん:
 なるほどね、はい、もちろん。

マクガイヤー:
 だから栄養補給だけでないよ。あと、例えばパプアニューギニアは……。

後ろのパネルが気になったしまさんさん。

しまさん:
 これ何? 脳みそ!?

マクガイヤー:
 フランス料理で脳みそを食材にするということなんですけど、これはイメージ映像だから怖くないよ。しかも食材なんでグロくない。これはフランスのスーパーによくある。

しまさん:
 羊とか猿とかのやつ?

マクガイヤー:
 そう、フランス料理は羊の脳みそを食材にする。あとは、アジアには親戚の魂を受け継ぐという意味で、親戚が死んだら親戚の脳を食べるという部族がいるんですよ。死んだ人の何かを受け継ぐために食べる。

しまさん:
 その一部を自分に取り込むという意味がある。

マクガイヤー:
 そうです。それを考えると、例えば人間と、他の動物で最大の違いは何だと思いますか。

しまさん:
 なんだろう。

マクガイヤー:
 ここにちょっとヒントがありますけど。

しまさん:
 ああ、シャーマンキング。呪術的であるということ? 

マクガイヤー:
 例えば、よく言われるのが、人間は社会性の動物であると言うじゃないですか。人間は社会を作っている。でも、アリとか蜂とかも社会を作っていますよね。人間だけが社会性があるというわけではない。ひとつは、人間はその気になれば何にでもなれる。つまり憑依できる。

しまさん:
 それは想像力があるということかな?

マクガイヤー:
 人間は社会の中で、いろんな役割を演じている。だって働きアリが女王になるって難しいじゃないですか。人間は何かを憑依することで違う役割になれる。それが、どんどん転じていって、死んだ人の何かを受け継ぐみたいな憑依もあるわけですよね。

しまさん:
 なるほど、死ぬことを知っているとか、死ぬことを悲しむということを言っていますが、その延長線にあることですよね。

マクガイヤー:
 あとは神とかの魂を入れるとかもありますよね。神というのは人間の発明ですから、何かを憑依できるというのは、実は人間の最大の特徴なんです。そう考えると、実は食人ってすごいんじゃないかと思いません?

しまさん:
 なるほど。

マクガイヤー:
 大丈夫ですか?

しまさん:
 大丈夫(笑)。

薬用としての食人

マクガイヤー:
 あとは薬用としての食人というのがあります。

しまさん:
 薬用!?

マクガイヤー:
 足りない臓器を食べて補う話です。肝臓には栄養がたっぷりありますよね。江戸時代に、山田浅右衛門という人がいました。

団鬼六さん著の『最後の浅右衛門』(右後方)。

マクガイヤー:
 この人は、刀の試し切りとかを職業にしている人です。ですが、試し切りをするのに藁では限界があるわけじゃないですか。だから、死刑場に行って、死体の肉をもらってくるんですよ。それで試し切りをしているんですけども、その時にバラバラになった死体は、もったいないからって、肝臓とか生肝とかを抜いて、それで丸薬を作ったんです

しまさん:
 へえ!

マクガイヤー:
 山田丸とか仁丹とか、それを売って大儲けした人なんです。つまり、この仁丹、山田丸を飲めば、どんな病気もたちまち回復。それが転じて、中国では人の生肝を食べるといろんな病気が治るみたいなのもありました。本当かどうかわからないですけど、人肉カプセルというのがあるらしいですよ。

しまさん:
 本当?

マクガイヤー:
 堕ろした赤ちゃんを素材として薬を作るという闇の商売があるらしいです。

しまさん:
 胎盤食べるとかは、聞いたことあるけどね。

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