夜空が暗いのはなぜ? そのナゾを解き明かす宇宙の神秘「オルバースのパラドックス」について分かりやすく解説してみた
今回紹介する、るーいさんが投稿した『【ゆっくり解説】夜空はなぜ暗いのか?-オルバースのパラドックス-』では、音声読み上げソフトを使用して、「夜空は星で明るく輝くはずなのに、実際には暗いのは矛盾している」というオルバースのパラドックスについて解説していきます。
宇宙に無限に光る星があるなら暗い夜空は存在しないはず
魔理沙:
今回は多くの天文学者を悩ませた宇宙にまつわるパラドックスを紹介していこうと思う。ということで、今回はオルバースのパラドックスについて解説していく。本題に入る前にひとつ質問だ。なぜ夜は暗くなるのか? と聞かれて答えられるか?霊夢:
そんなの簡単じゃない。夜になると太陽が沈んでいくんだから、暗くなるのは当たり前よ。魔理沙:
そのとおり。普通であればこんなものは質問するまでもない内容だ。しかしこの疑問は、普通とは異なる角度から見た時に、とても重大な問題を含んでおり、結果として数百年もの間、多くの天文学者たちの頭を悩ませることになる。簡単に説明すると、仮に宇宙が無限のように広がっている空間だとする。するとこの宇宙には、太陽のように光り輝く星も無限に存在しているということになる。しかしこのように仮定すると、夜空を見上げたとき、どの方向をみても光る星が必ず存在しているはずなんだ。たとえば無限のように広い森にいると想像してくれ。その森の真ん中から真横に向かって矢を放つとする。そしてこの矢は地面には落ちずに、何かに当たるまで飛び続けるものとする。すると仮に近くの木には当たらずに間をすり抜けていったとしても、いずれは必ず木に当たることになるだろう。
森は無限であるため、矢が飛んでいく道筋にはどんなに遠くても必ず木は存在する。同様に、宇宙にも無限に光る星があるとして考える。するとさっきの矢の例と同じように考えると、地球から空のどの角度を見上げても、必ず光る星が存在しなければならないはずだ。仮に星と星の間を見上げても、その奥には必ず他の星があるはずだと考えられた。
つまり、夜空を見上げた時に、星のない、黒く見える部分があるのはおかしい。暗い夜空は存在しないはずだと考えられたんだ。このように存在するはずのない暗い夜空がなぜ存在しているのか、という矛盾した問題のことをオルバースのパラドックスと言う。
霊夢:
なるほど。そう言われると確かに私たちから見える星の数って、たくさん見えるけど無限にはほど遠いわよね。けどそれって単純に遠くにある星からは光が弱くて見れないってだけじゃないの?魔理沙:
確かに昔はそう考える人も多かったが、考えていくうちにそんな簡単な問題ではないということがわかってきたんだ。ではこの問題がいったいどのように考えられてきたのか、その発端から考えていこうと思う。そもそも宇宙には無限に近い数の星があると考えられ始めたのは16世紀頃のことだ。しかしこの頃は夜空はどうして暗いのか? という問題はあまり考えられなかった。遠くにある星は暗すぎて、目に見える明るさにはならないのだろうと考えられていたからだ。しかしこの考え方では解決できないと考える者が現れた。それがジャン・フィリップ・ド・シェゾーというスイスの天文学者だった。
シェゾーは無限に広がる宇宙に、等間隔で同じ明るさの星が存在していたら地球からどのように見えるのかを計算した。簡単に言うと、シェゾーは宇宙に広がる星をこのようにグループ分けした。
そしてこのそれぞれのグループが、地球から見るとどれくらいの明るさになるのかを考えたんだ。その結果、どのグループも地球から眺めたときに同じ明るさに見えることがわかったんだ。たとえば同じ方向にあるいくつかのグループについて考えてみよう。まず当たり前のことだが、星は地球に近ければ近いほど、より明るく光って見える。つまり地球から離れていくほど、星は暗くなっていく。
しかし地球から離れれば離れるほど、グループの体積というのは大きくなっていく。つまり、離れていくほどグループの星の数は増えていくことになる。その結果、遠くにある星ほど暗く見えることになるが、含まれる星の数は多くなる。つまり、近ければ明るい星が少し見え、遠ければ暗い星がたくさん見える。これらは総量で見ると、同じ明るさになるということを証明したんだ。
このシェゾーの計算によって、星が無限にあるのであれば、夜空に暗い箇所は生まれないという結論に至った。そこで現れたのが、このパラドックスの名前となるハインリヒ・オルバースだ。
オルバースは1823年に論文を発表し、夜空が暗いという問題を改めて取り上げた。またオルバースはシェゾーのおかげで、遠くの星の暗さは問題を解く理由にならないと知っていた。そのため、オルバースは夜空が暗いのには他に理由があるに違いないと考えた。オルバースが考えたのは、宇宙には塵やガスが満ちていて、それがはるか遠くの星からの光を遮っているのではないかということだった。
しかし、この考えも理論的に成り立たなかった。もしそうであれば、こうした物質は光を妨げて吸収すると徐々に加熱され、いずれは隠した星と同じ温度に達し、その星と同じ明るさで輝くことになるんだ。これらにより、オルバースの立てたこの問題と答えは、19世紀になるまでほとんど顧みられることはなかった。しかし20世紀に入って、とある人物の登場によって状況が大きく変わることになる。それがアルベルト・アインシュタインだ。
アインシュタインは重力が空間と時間にどう影響するかを考え、これを一般相対性理論として発表した。そしてこの理論こそがオルバースのパラドックスを解決するカギになったんだ。アインシュタインは一般相対性理論を使うことで、宇宙全体の特性を理解できるのではないかと考え、様々な計算をおこなっていた。そんな中、アインシュタインはひとつの大きな問題に直面した。
それは宇宙にある銀河同士も重力によって引かれ合っているのであれば、互いの引力によってすべての銀河は集まり、宇宙はそのうち潰れてしまうということだった。アインシュタインは宇宙は膨張も収縮もしない静止した空間であるはずだと考えており、この結果が受け入れられないアインシュタインは、どうにかつじつま合わせをしようとしたんだ。アインシュタインは宇宙全体が動き出さないように、重力とは逆の力である宇宙斥力というものを導入した。
つまり銀河同士が重力で引き合わないように、打ち消すように反重力の力が存在しているとしたんだ。その後、アインシュタインの間違いを証明するものも現れた。それがエドウィン・ハッブルだ。
ハッブルは地球から遠く離れた銀河が時間とともに遠ざかっていること、そして遠くにある銀河ほど、より遠くに遠ざかっていくことを明らかにしたんだ。これらの事実により、ハッブルは宇宙は膨張しているということを導いたんだ。宇宙が膨張しているということは、過去にはさらに小さかったということだ。
そして時代を十分さかのぼれば、銀河が重なり合って宇宙が窮屈だったころに達する。時間をさらに遡れば、あらゆる物質がさらにぎゅうぎゅうになって、宇宙が誕生する瞬間に達する。
この宇宙の誕生をビッグバンといい、これととともに宇宙は膨張を開始したと考えられていて、これはおよそ140億年ほど前のことだと言われている。また、光というのは時速10億km以上という途方もない速さで進む。そしてこの光が一年間で進む距離を一光年という。つまり私たちが一光年先の星を眺めているとき、その光というのはその星が一年前に放った光ということになる。
実はこのオルバースのパラドックスを解くためには、宇宙の誕生と光速が関係してたんだ。5億光年先の星からは5億年前の光が届き、100億光年先の星からは100億前の光が届く。同様に140億光年先の星からは140億年前の光が届くことになる。そしてさっきも言ったとおり、宇宙が誕生してから現在まで140億年しか経過していない。
つまり、地球から140億光年以上離れた星からの光は、いまだに私たちの地球には届いていないということになるんだ。つまりなぜ夜は暗いのか、という問題の答えは、宇宙からの光が届く範囲が有限だからということで、言い換えれば宇宙にはじまりがあったからということができる。
霊夢:
宇宙にはじまりがあって、ある距離より向こうの光は、まだこちらに届いていないからってことになるのね。私たちからはもう観測することのできない領域が宇宙には広がっていたなんて驚きね。
「夜になると空は暗くなる」という当たり前に思えることは、実はとても不思議なことだったということがわかりました。より詳しい解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画をご視聴ください。
▼動画をノーカットで楽しみたい方は
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