森喜朗氏の「女性は話が長い」発言はツッコミ待ちのボケだった? 森氏のエピソードを交えて、会長辞任の背景を考察【話者:吉田豪、久田将義】
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の会長だった森喜朗氏が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」という女性蔑視発言が波紋を呼び、辞任に至りました。
森氏は2000年4月から約1年間、内閣総理大臣を務め、その間の「(無党派層は)自民党に投票してくれないだろうから、投票日には寝ていてくれればいい」などの失言も話題となりました。
久田将義氏と吉田豪氏は自身がパーソナリティをつとめるニコニコ生放送「久田将義と吉田豪の噂のワイドショー」ではこの話題について言及。
吉田氏は、以前より失言が多い森氏をトップに置いたシステム自体に問題があることを指摘。
加えて、吉田氏が過去に森氏にインタビューした際に「デリカシーのない親戚のおじさん」と感じたエピソードなどを紹介しました。
※本記事はニコニコ生放送での出演者の発言を書き起こしたものであり、公開にあたり最低限の編集をしています。この番組は2021年2月22日に放送されたものです。
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問題点は誰もがやらかすと思う人をトップに置くシステム
久田:
過去に森さんが言っていた「(選挙に関心がないなら)寝ていればいい」とか「選挙で投票率が低ければ低いほどいい」。
一見すると「はぁ?」と、僕としては「投票率が高くなければ、民意が反映されないでしょ」と思うんですけど。
自民党って絶対に野党になりたくないんですよ。だから「投票日は雪とか大雨だったらいいですね」とか言うとかいうわけですよ。
これはおそらく自民党の中のリベラルじゃない人の本音だと思うので、森さんはこういうことを言うでしょうね。
僕は森さんと話したことないけど、“半径5メートル以内の男”【※】とか言われるじゃないですか。森さんとか麻生太郎さんとか石原慎太郎さんとか。
こういう人たちもいるんですけど、僕はちょっとそろそろ半径5メートル以内で許されちゃいけないんじゃないかなって気もしないでもないんですけどね。
※半径5メートル以内の男
実際に会って話してみたらいい人だったなど、自身の周囲にいる人間を取りこむタイプのスキルの持ち主
吉田:
森元首相は元々本当に失言の多い人だったわけで、それをこんなオリンピック・パラリンピックの偉い人にした時点で、誰もが「これはやらかすぞ」と思っていたはずなんですよ。
だから、誰もがやらかすと思っていた人をトップの座に置いちゃうシステムの問題だと思うんですよね。
これで森元首相を外したところで、その後の流れを見ても同じような人がそこに入れられようとするわけじゃないですか。
森元首相が悪いのは当然として、それ以上に森元首相を代表とするそういう人たちが、「何回やらかそうが、色々お世話になったし、やっぱりこの人」みたいな感じで組織のトップに選ばれちゃう、そういう世の中が良くないって話だと思いますけどね。
そして、森元首相の「女性は話が長い」っていう発言は、ボクの個人的な読みですけど、後に「そう言ってる森元首相自身の話が誰よりも長い」っていろんな人が証言してたじゃないですか。
もしかしたらツッコミ待ちで、自分なりのボケだった可能性があると思うんですよ。「本当に女って話が長いんだよ」「いや、あんたが長いんだよ!」というのを待っていたような(笑)。
いまコメントに「そんなことありえない」的なこと書いてる人がいますけど、森元首相って落語好きで、冗談も好きで、だからすごい座持ちも良くて一部で好かれてたっぽいんですよ。
それはボクも一回取材して実感できたんですけど、ただその冗談がタチ悪いというか、本当にデリカシーのない発言を連発する人なんですよ。これはボクも何度もネタにしてますけど、「えっ!?」と思うことを普通に言えちゃう人なんです。
そしてそれがさほど問題視もされないまま、何度か総理時代は叩かれたりもしたけども、あれに対しても結局自分の中では「マスコミに切り取られた、誤解だ」という思いがあって、そのせいでマスコミとの溝がどんどん深まっていって、それがずっと尾を引いていたんですよね。
今回も叩かれれば叩かれるほど、「またマスコミに俺は切り取られた」みたいな被害者意識が強くなっていて、だから記者会見でも「謝ってない」と言われて当然なんですよ。
なぜなら記者を全く信用してないから。
そういう人を上に置いちゃった時点で、記者ともうまくやれるわけもないし、記者側としても確実に失言をするのが分かってるわけだから、どうやって尻尾を掴んでやろうかみたいに思ってるわけで、うまくいくわけがないと思います。
例えるなら「本当にデリカシーのない親戚のおじさん」
吉田:
ボクがよく言っている森元首相の持ちネタを、念のためここで知らない人もいるかもと思うので言います。
当時、ボクが『情熱大陸』に密着取材されている時に、森元首相を『週刊ポスト』で取材することになって、『情熱大陸』の取材クルーも一緒について来て、それがちょうど政治家引退の日だったんですよね。
最後の本会議があるからって、地方からなんとか急いで戻ってきて、それに出るまでの短い間だけど「ラグビーの話をさせてくれるんだったら取材を受けてやる」って。
ボクはラグビーの話は全然させないで、くだらない話ばっか聞いてインタビューしてたんだけども、だんだん森元首相のスイッチが入ってきて。
ちょうどその頃、政治の世界で色々ゴタゴタしたあとに、「ノーサイドだからみんな仲良くしよう」みたいなことを言っていたんですよね。
そしたら森元首相がそれに怒ってて、「野田(佳彦)さんが『ノーサイドにしよう』って言ったよね。こないだ安倍(晋三)君も言ったかな? それから菅(直人)さんも鳩山(由紀夫)さんも言ったかな。ふざけるなと(キッパリ)。ラグビーをしたこともないヤツが」って。「あいつら、本物のノーサイド知ってんのか、この野郎! ノーサイドも知らねえくせに!」みたいなことを安倍晋三に対してまで言ってるんですよ(笑)。
ラグビーのことなら自民党の大物だって野党とセットで攻撃する、そういうところがいちいち面白かったんで、それを面白がっていたら向こうもスイッチが入ってくれて。順調に話が長くなったんですよ(笑)。
取材の制限時間を平気でオーバーして本会議がはじまるって時間になって、秘書の人がインタビュー中に紙を差し入れたんですよね 。
「もう本会議がはじまります」って書いてあったんですけど、森元首相がそれを丸めて捨てて「お前、話が盛り上がってるのに邪魔すんな、この野郎」って言って紙を放り投げて、インタビューを続けようと言ってくれてたんです。
「うわっ、いい人!」って一瞬思ったんだけど、政治家として考えたら完全にアウトなんですよ(笑)。
久田:
確かに(笑)。
吉田:
取材が終わったら上機嫌でボクに「お前結婚してるのか」とか「子供いるのか」とか聞いてきて、「いや、いないんです」と答えると、「絶対に子供は作んなきゃダメだぞ」「結婚しなきゃ一人前になれないぞ」みたいな余計なお世話を散々言って、「お前の結婚式、呼んでくれたら出てやるぞ、その代わり悪口も散々言ってるからな」みたいな感じで楽しそうに話したあとに、『情熱大陸』の女性スタッフに20代の女の子がいたんですけど、その女性スタッフを指差して「(結婚相手は)あれでどうだ」って言ったんですよ(笑)。
これはもう一発アウトだし、ボクが当時よく言っていたのが、本当にデリカシーのない親戚のおじさんだなっていう(笑)。
会えば「お前結婚はまだか」「一人前になれないぞ」と散々言ったあとで、「近所のあの子なんかどうだ」みたいな、相手のこととか一切考えずに平気で言えちゃう、この人どうなってんだ!? みたいな、全編本当にそういうノリの人なんですよ。
だからそういうノリで世話になったと思う人も山ほどいるだろうし、実際に面倒見もいいんだろうし、気難しい政治家と比べたら楽しい人だし、愛嬌を感じたりもするだろうけど、どう考えたって今のルールならアウトに決まってる人なんですよね。
そういうアウトに決まってる人を、こういうちゃんとした場に置いちゃって、しかもオリンピックが延期になってなかったら、去年だったらギリギリで何とかなってたわけじゃないですか。ボロも出ないまま。それも恐ろしいと思いますよ(笑)。
久田:
確かに、それも怖いよね(笑)。
ラグビーW杯の日本招致は森氏のおかげではない?
久田:
森さんのおかげでラグビーW杯が日本に招致されたって専門家の人たちが言っているんですけど、エビデンスを示して欲しいんですよね。
ラグビーってヨーロッパで始まって、南アフリカでも盛んになっているけど、アジアではそんなに盛んになってないんですよ。一時期は韓国も強かったけど。
W杯はこれまでヨーロッパ、南アフリカ、オーストラリアやニュージーランドで開催してきたので、あとはアジアしか残っていないんですよ。
アジアで一番ランキングが高いのは日本なので、アジア開催となると日本が選ばれますよね。
森さんの力がすごいっていう幻想は専門家が陥る罠みたいな気がして、僕としては「いずれ日本でやるだろう」と思っていたので、これは森さんの力ではないし、それは功績としては認められないと思います。
吉田:
ちなみに一個だけフォローすると、国立競技場で約10万人を集めた格闘技のイベント「Dynamite!」が行われたじゃないですか。
あれを実現できたのは、森元首相のおかげだったと石井館長が証言しています。国立競技場を抑えるのに森元首相の力を使ったと言っていました
久田:
なるほど。その辺の力はあるんですね。
吉田:
そういう力がある人だと思いますよ。
久田:
でもその辺はノイズだと思うんですよね。
ラグビーの話題は超党派! 辻元氏も怒った仰天エピソード
吉田:
(コメントを見て)「根回しがうまい」とか書いてあるけれど、そういう本当に古い時代の自民党の人なんだと思います。ただそれでいて、政治的なこだわりもそんなにないというか。
ボクの大好きな話があるんですけど、辻元清美さんの取材に行ったら、森元首相にすごい怒ってて。
ちょうど国会でバトルしてる時期に森元首相から突然電話がかかってきて、何かと思ったら、2人は同じ早稲田大学出身なので「ラグビーの早慶戦で早稲田の応援が少ないから、ちょっとなんとか都合つかんか?」って言われたらしく。
それで辻元さんが「なんでそんなことを他の政党の人間に言ってくるんだ」って怒っていて、「あの人は町内会長とかやるとうまくいくだろうけど、国会議員はやっちゃダメな人だ」って言っていて、それは本当にうまい例えだと思って森元首相をちょっと好きになったんですよ。
久田:
うまいな(笑)。
吉田:
本当に森元首相はラグビーのためだったら、政党とかを超えられる人なんだっていう。本人も言っていたんですけれど、「森さんってラグビーの上だと超党派の人だと思うんですよ」って言ったら「そうなんだよ、俺、超党派なんだよ」って言ってて(笑)。
久田:
そっかぁ、なるほどね(笑)。
吉田:
ある意味才能だと思います。でも、そういううかつな人なんで、今の時代にこういう立場に置いたらトラブルが起きて当然です。
ただ、あの人の今までの失言というか、いろんな歴史を考えたら、今回の失言はソフトなほうなのにここまでになるんだみたいな戸惑いはあったと思いますけれどね。
久田:
だってはじめの方は辞任しないって言ってたからね。
そもそもの問題の発端となった「うちの恥を晒すようですが」の「うち」ってラグビー協会のことですからね。
ラグビーを盛り上げたのは自分の力だって思っているかもしれませんが、それは本当にやめていただきたいです。
森さんを持ち上げるラグビー関係者も間違いなくいるんですけど、僕はそういう人たちを好きではないしやめていただきたいと思っています。
吉田:
ただ、森さんのラグビーの実績は0でしょうけど、ボクが会った限りではラグビー愛は本物だと思いました。
ラグビーのことだったら喜んで何でもしてくれる人なんだなと、そこだけはボクも目の当たりにしたからフォローしておきます。
久田:
なるほど。ラグビーは好きなんだろうね。途中でやめちゃったからこそ逆に好きなんじゃないですかね。
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